兎とよばれた女 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
痛い。痛々しい。 小説なのにこんなに作者の実生活を想像せずにはいられないとは… てか澁澤龍彦の元妻!! 永遠の少女は多分死ぬまでずっとうさぎのまま、神さまを信じ続けたんだろう。 読み終わってかなりたつけど、 かなり自分の心になにか残していった作品… きれいで、やわらかい文章を読んでいる間ずっと、心臓にきつく爪を立てられているみたい。でも、私がこれを読んで泣いてはいけないような気がした。
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この本は、何度か借りてきて積んでいたことがあるが、なんとなく入りこめず、読まずに返してばっかりだった。卯年やし~とまた借りてみる。 矢川澄子といえば、『父の娘たち』がたしか矢川作よな~と確認。赤い花の表紙のこの本はいつ頃だったか、読んだことがある。ふつうはこの人は、ハイジ、ア...
この本は、何度か借りてきて積んでいたことがあるが、なんとなく入りこめず、読まずに返してばっかりだった。卯年やし~とまた借りてみる。 矢川澄子といえば、『父の娘たち』がたしか矢川作よな~と確認。赤い花の表紙のこの本はいつ頃だったか、読んだことがある。ふつうはこの人は、ハイジ、アリス、エンデ、グリム童話…等々の訳者として知られているものらしい。 『兎とよばれた女』は、ふしぎなふしぎな話であった。長編小説だというが、短編集のようでもあり、昔話の再話かと思えば、戯曲のようなところもあった。 象徴的なようで、だからこそ、というべきか、なにか私にも身に覚えのあることが物語られているような気がした。 ▼かつて兎がおのれひとりの苦難と思いこんで苦しみ、迷いぬき、あげくの果てに現実を断念せざるを得なかったこと。それは、いまにして思えばけして兎ひとりの身にかぎられたものではなかったのだ。(pp.180-181)
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バリ島での旅行中に読んで、そしたら夢の中に兎が出てきました。 妙なリアリティを伴って、なにやら瞼の裏に広がる漠とした絵と共に、頭の中に残り続ける作品。
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まるでそのことでないかのようにそのことが書けるものだなあと思ったり。 矢川澄子さんのことを良く知らないうちに読むべし。 ユリイカの臨時増刊とか読むまえに。
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《兎とよばれた女》 この作品は痛いほどに切なく、可愛らしい。 ああ、女の子としての甘さと、刹那さと、現実から逃避する為の小道と、現実を見据える大きな眸が浮かんでくるようで、なんとも愛らしい作品。女に生まれて女を全うしたら、こういう作品が書けるようになるかしら。……と思ってみた...
《兎とよばれた女》 この作品は痛いほどに切なく、可愛らしい。 ああ、女の子としての甘さと、刹那さと、現実から逃避する為の小道と、現実を見据える大きな眸が浮かんでくるようで、なんとも愛らしい作品。女に生まれて女を全うしたら、こういう作品が書けるようになるかしら。……と思ってみたり。 すばらしい、すばらしいくらいにすばらしい。 こうも焼きもちを焼いてしまう作品に出会ってしまって。 「そう、やさしいはずですものね、わたしという女は。もしかすると、やさしさだけが、わたしのとりえだったかもしれないのよ。わたしが迷いはじめてしまったのも、じつはほかでもない、そのやさしさをどこまで全うできるかということだったの」 なのに、なんでこんなにも痛いのだろうか。じくじくと。きりきりと。 序文の前に存在する、「彼に」を見た途端、涙が零れ落ちたのは、それは幻だったのかしら。 (2009.03.13)
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あーほんとにやきもちだけで☆4つ すごいんだものー 女子として、この才能と、この才能がゆるされていた環境にやきもちやきまくる。散文的で、どこもみていないような、その先にあるものはしっかりととらえているような、散漫な文章の中で行き来する女子の楽しみ/女子らしさ そして血で汚れるもの...
あーほんとにやきもちだけで☆4つ すごいんだものー 女子として、この才能と、この才能がゆるされていた環境にやきもちやきまくる。散文的で、どこもみていないような、その先にあるものはしっかりととらえているような、散漫な文章の中で行き来する女子の楽しみ/女子らしさ そして血で汚れるものとしての女子のあざとさをしっかりとらえて見据えている そしてそこにくいを打ち込むようにしながら、女子の甘えに逃げ込みながら、そのどれもがただただ女子としてあって そこここの女子の日記をのぞきこんだとして、ここに見出せる女子らしさのいくつもが垣間見えるだろうけど、自覚的であっても自覚がなくてもそこここに女子としての読者としてのわたしへの嫌悪感や、女子としての読者としてのわたしへの甘えなどが記されている。うさぎのなかにも、かぐや姫の中にも。とにかくこのひとにこれが環境として女子としてゆるされていた、というのが憎らしくてたまらない! おなじところにいたとして、フンとか無視してしまったりもしているのだろうけどそういう肉の俗っぽさをふーんわりと届かないところにいそうなところも憎らしいし、そんなわたしに「ごめんね、ありがとう」とか言いそうなところもにくい、とにかくにくい、嫉妬する
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背表紙で著者のことを「不滅の少女」とかいてあってなんですかそれはとか思ってたら本当に澄子不滅の少女でした。 どんなに頽廃的になってみようとしてもいつまでも少女趣味から逃れられないのは女の業なのでしょうか サンプリングが同年代しかないのに何いってんだですが 「『それではいま一度、...
背表紙で著者のことを「不滅の少女」とかいてあってなんですかそれはとか思ってたら本当に澄子不滅の少女でした。 どんなに頽廃的になってみようとしてもいつまでも少女趣味から逃れられないのは女の業なのでしょうか サンプリングが同年代しかないのに何いってんだですが 「『それではいま一度、あらためてきかせていただきたいのよ。いったいわたしは人間なの、それとも人間ではないの?このわたしという女は?』 『つまらぬことを、いつまでもくどくどと、くりかえさないでくれよ。だいたいきみはすこし幼稚すぎるんだな』男はいらいらして、そっけなく答えた。 『でも、そのつまらないことに、わたしは生涯こだわらずにはいられないのですもの』」 「『醒めてはなりませんでした。あそび呆けること、あくまでも酔い痴れることがだいじでした。醒めたらさいご、われに返ったらさいご、迷いが生じ、足もとに狂いが生じて、この楽園から追放の身となることはわかっていました。ですからわたしは、一瞬だって、ぼんやりとなんぞしてはいられませんでした。理性的に、あくまで理性的に。綿密な計算と周到な配慮がなければ、どうしてこの命がけのおあそびを、あそこまで持ちこたえることができたでしょう。この十年、わたしは全力をあげて、ただひたすら、このお遊戯を生涯つづけおおせるために、わき目もふらずにうちこんでいたのです。』」 醒めたくないよね怖いもの 「『好きだったの!そうです、よくわかってくださいました。おお、好き、好き、好き!好きって、いったい、どういうことなのでしょう。わたしはあのひとが好きだったのです。じぶんよりもよっぽど、あのひとのほうが好きだったのです。好きで、好きで、好きで、好きで、大好きで、大々好きで、気も狂うほど好き、どうしていいかわからなくなるほど好きで、ただもう……』女の声にふたたび熱いものがまじりかけた。 『そうして、おそらくはいまも……』男は、絶句した女の手をそっとひきよせながら、ささやいた。 『いま?さあ、それはわかりませんわ』女は、やわらかい手を男にまかせたまま、おだやかな表情にかえりながら、つぶやいた。 『好きならばいまごろ、こんなところをひとりで歩いたりはしてないはずですもの。好きならばしないはずのことを、わたしはしてしまったのですもの。』」 「『そう、やさしいはずですものね、わたしという女は。もしかすると、やさしさだけが、わたしのとりえだったかもしれないのよ。わたしが迷いはじめてしまったのも、じつはほかでもない、そのやさしさをどこまで全うできるかということだったの』」 女子ですね澄子。こんな、不思議で、愛らしくて、少女のようなひとが澁澤みたいな人に愛されるのだと納得 「神さまはまさしく兎のすべてでした。途方もなく大きくゆたかにひろがって、兎の全身をあたたかくすっぽり包みこんでくれることもあれば、また無限にこまやかに小さく小さくなって、兎の心の微細なひだの隅々にまでわけ入ってきてくれることもありました。」
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