ニッポンには対話がない の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
会話は親しい人同士のおしゃべり、対話は異なる価値をすりあわせる行為。この対話について、日本人は非常に苦手な面がある。ムラ社会のせいなのか、島国気質というか、全員が賛成な状況の中で、反対の声を上げにくい。道徳的な面においても、そこの規範意識に反することは否定される。郷に入れば、郷に従えである。しかし、国際社会の中で、ググローバル化に向かうにつれて、今までの日本の常識は通じない。相手はこちらの規範や常識が分からないからである。となると、対話ができる日本人へと変わっていかなければならない。教育でもPISA型の国際標準が叫ばれているが、本書はフィンランド教材作家の北川達夫氏と劇作家の平田オリザ氏の対談である。 日本の教育では、生きる力の育成のもと、学校で指導が行われているが、やはり物事の正解主義的な流れは依然のこっている。話し合い活動になると、意見を言う子が決まっていたり、どうしても力のある意見に流されてしまう。しかし、物事に完全な正解はない。求められるのは、話し合いでみんなの意見を聞くことによって他人の価値判断を知ると同時に、自分で価値判断をしていく学力を身につけるということである。学校の教育の段階で、意見を出し合ってみんなで考えを出し合う経験を増やしていくことが大切である。 そして、ある程度の型は大事だが、型を学び、型通りに表現することは、あくまでコミュニケーションの基本動作である。その通りの表現に違和感を覚えたとき、また、その型を破りたいと欲望が生まれたとき、そこに「自分の表現」「自分の個性」を獲得する道が開けるのである。 表現で最も大切なことは、相手に「伝わること」である。その際、自己移入型(エンパシー)のコミュニケーションを取り入れていくべきだという。つまり、「相手の気持ちは分からない」という前提に立って、「もし自分がその立場だったら、どう考えてどう行動していくか」ということである。そしてグローバルコミュニケーションの中では、自分の立ち位置を明確にして、それをしっかりいえることにすることが大事である。 価値観の共有を前提としない。勝ち負けにこだわらない。変わるをよしとする。いま日本に必要なのは。「対話」の発想を、家庭、学校、職場、地域のコミュニケーションに取り入れることである。そして互いの違いを受け入れた上で、対立を恐れずに話し合いを尽くし、問題に対処していく力をひとりひとりが育てていくことである。
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日本人ー欧米人の価値観/コミュニケーションスタイルの比較より、日本の「詰め込み教育」への警鐘を鳴らす。グローバル化が進む中で、教育の世界規準を日本の教育でも導入していくべきか。など、グローバル化と教育の関係を考える機会を持てる。対談形式になっており、文章自体も大変読み易い書籍。
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日本と、日本以外の国におけるコミュニケーションの違いについて対談している本。日本人の場合、「相手のことは分からなくて当然」という前提のもとで、戦略的に組み立てる「対話力」が足りないと述べている。自分の興味や関心にとらわれたり、「本当の自分」を表現することにより相手と心から分かり合...
日本と、日本以外の国におけるコミュニケーションの違いについて対談している本。日本人の場合、「相手のことは分からなくて当然」という前提のもとで、戦略的に組み立てる「対話力」が足りないと述べている。自分の興味や関心にとらわれたり、「本当の自分」を表現することにより相手と心から分かり合おうとしていたら、対話は永遠にできないと説く。 ちなみに、著者の一人の平田オリザ氏は、政権交代直後、鳩山総理の最初の所信表明演説を書いたゴーストライターであり、また、菅政権においては、東日本大震災直後、最悪の事態に備えて「関東全域に対する避難勧告」の文案を秘密裏に用意した人物でもある。レトリックの運用に関しては天才的に上手い人なんだと思う。
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ブログにレビューを書いてます http://ameblo.jp/happysmile2you/entry-11038657894.html 対話って大事だなと感じます
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非常に面白い本だった。 価値観を同じくしない者同士が対話していくことの大切さ。そのための根気と精神的強さが日本人に必要だという主張が心に残った。「心からわかり合うことだけが、コミュニケーションの本質ではない」ということばは、忘れないようにしたい。 グローバルコミュニケーションとい...
非常に面白い本だった。 価値観を同じくしない者同士が対話していくことの大切さ。そのための根気と精神的強さが日本人に必要だという主張が心に残った。「心からわかり合うことだけが、コミュニケーションの本質ではない」ということばは、忘れないようにしたい。 グローバルコミュニケーションというと、日本人が外に出ていくシチュエーションばかり思い浮かべてしまうけれど、「移民」というケースも、もはや日本人に縁遠いものではないという指摘にははっとさせられた。確かに私のご近所さんにはブラジル人(日系含む)が結構多い。 「これは!」と思ったところを手帳に書き留めていたら、数ページが真っ黒になってしまった(笑)
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名言だらけの濃い1冊だった。 これから移民が増えるとしたらとても楽しみだし、そこでうまく共存できる日本だといいなと思う。 すべての人に読む事をおすすめしたいです。
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日本人が国の違う人と海外において、あるいは国内において、そして日本人同士も、これからどのようにコミュニケーションしていけばよいかの指摘やヒントがいっぱい。示唆に富んだ本。 日本の教育者は自分の価値観や価値判断を押し付けがちだというのは確かにその通りだと思った。 「読書をすれば心...
日本人が国の違う人と海外において、あるいは国内において、そして日本人同士も、これからどのようにコミュニケーションしていけばよいかの指摘やヒントがいっぱい。示唆に富んだ本。 日本の教育者は自分の価値観や価値判断を押し付けがちだというのは確かにその通りだと思った。 「読書をすれば心が豊かになります、だから読書をしましょう」ということもふつうに言われていますが、「他人の心が豊かであるかどうか」の判断がなぜあなたにできるのか、そんなことはあなたが決めることではない、それは子どもといえども個人の内面に踏み込むことだという感覚が、大人たち側にあまりにもないんじゃないかと思うんです。(p.10) 自分がよいと信じたものを子どもがわかってくれなくてもそれはそれとして受け入れていかなくてはいけない。 それはすごく難しいことだけど、人を教えるということはそういう孤独に耐えていくことなんだと。 そういう意識のある教育者が日本にどれだけおられるでしょう!?自分自身、教員免許を取る過程でそんな意識はまったくなく、今もそういう発想はなかったので目から鱗でした。 広島や長崎に原爆が落ちたことは事実だけれど、それをどうとらえるかは色々な考え方があるのも事実だと。 原爆問題を劇で演じるとすれば、あなたが原爆爆撃機のパイロットだったら、あなたが地上戦に向かうアメリカの兵士の母親だったら、植民地支配されている韓国人だったらどういう選択をしますかというふうに、それぞれの立場を自分の問題として考えないとほんとうに演じきることはできない…。 原爆は決して落とすべきでなかったと教師が思っていてもそれを子どもに押し付けてはいけない…なるほど…でもなんて厳しいことだろう。 だから表現するということには必ずリスクを伴うことになる。 水俣病の問題にしても、チッソが悪かったという朗読劇にするのは簡単だけど、先進国である日本の中学生がそれをすると、発展途上国の中学生たちに「だから経済発展よりも環境を優先しなければなりません」と言うことになる、と。 いやはや本当に難しい。 と、一つの方向に導く日本的教育を受けてきたわたしは思うけれど、フィンランドでは「心とか考えというものは全員違うのがあたりまえ」と思っているから、こう感じなければならないんだという指導はむしろ罪に近いというのだから驚きだ。
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すべての人に読んでほしい一冊。対話を、会話とは区別し、ある種の創作活動のように位置づけている。相手の考えを取り入れて、自分の考えを発信するというやりかた。日本人は、対話の力を持っていないため、国際社会で生き残っていけないのではないか、という論を展開している。 戦争について討論...
すべての人に読んでほしい一冊。対話を、会話とは区別し、ある種の創作活動のように位置づけている。相手の考えを取り入れて、自分の考えを発信するというやりかた。日本人は、対話の力を持っていないため、国際社会で生き残っていけないのではないか、という論を展開している。 戦争について討論したとき、中身を深く考えなければ、「戦争はいけない」という主張にあまり意味を感じない。「戦争はいけない」という考えを支えるための情報や、戦争をする人々の立場、状況までも考え、それを取り入れなくてはならない。どこに妥協点を置くかということが、違う考え方を持つ人々と共存するには必要なのである。
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<ニッポンには対話がない-北川×平田>互いを主張する個性が社交性を持ち掛け合わさることが多文化共生社会では必要とされるが、その手法としての対話が日本人には欠けているとのこと。自らを他者に投影して考え、行動する=Empathyの考え方。様々解決策はあれど、僕はコレ一番大事と思う
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名言の嵐です。何度読んでもしびれます。 『伝えたいという思いは、伝わらないという体験からしか生まれない』平田さんの言葉。
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