山水思想 の商品レビュー
本書は長谷川等伯論だ。 だが、等伯を論ずるに先立ちアングルとドラクロワの対立から語り起こすと言う発想に驚かされる。 アングルとドラクロワの対立を、狩野永徳と等伯の対立と同じ構図の下に見通すのだ。 等伯は技量としては永徳に対抗できなかった。それは、ドラクロワがアングルに及ばなかった...
本書は長谷川等伯論だ。 だが、等伯を論ずるに先立ちアングルとドラクロワの対立から語り起こすと言う発想に驚かされる。 アングルとドラクロワの対立を、狩野永徳と等伯の対立と同じ構図の下に見通すのだ。 等伯は技量としては永徳に対抗できなかった。それは、ドラクロワがアングルに及ばなかったのと同じだ。 それでも等伯が永徳に拮抗しようと決意したとき、永徳は若くして死んでしまう。 永徳の死によって、等伯は、永徳と同じ土俵で対抗しようとしていた対抗方針を取り下げ、彼本来の山水画に回帰することで、初めて永徳に拮抗することが出来た、と松岡正剛は論ずる。 これは、等伯展を見ると納得出来る。 等伯はずっと華麗な屏風絵や襖絵を描いてきた。 それは見ていて、個性を感じさせない。 ところが、「松林図屏風」と言う白黒の山水画に至って、誰もが息を呑む。 「松林図屏風」を前にすると誰も沈黙を強いられる。 そこには、今までだれも見たことのない世界がある。 そこに至る道行を松岡の論は納得させてくれるのだ。
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ちょうど長谷川等伯400年忌である。 「界を限って奥を限らず」なんてなるほど~と思えるけどもちょっと怪しげな部分もあったりして。(光悦が鷹が峰に転居したのはむしろ本人が望んだからのはずで、法華を理由に遠ざけられたってのは少し違うんでは?なんて素人の癖にえらそうですが) ベースに中国の水墨の知識も一通り必要ですね。
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この前に読んだのはちくまプリマーブックスだったので実質初セイゴオ本となる。 セイゴオ氏は気楽なスタイルで日本画、特に山水画の歴史について語り始める。静かに語り続けるセイゴオ氏の後を追って、雪舟から等伯までを辿っていく。最初に「日本画について話すよ。そのために雪舟から等伯までを考...
この前に読んだのはちくまプリマーブックスだったので実質初セイゴオ本となる。 セイゴオ氏は気楽なスタイルで日本画、特に山水画の歴史について語り始める。静かに語り続けるセイゴオ氏の後を追って、雪舟から等伯までを辿っていく。最初に「日本画について話すよ。そのために雪舟から等伯までを考えるよ」と宣言されているから、最終着地点については迷わないが、盲目的についていくしかない。 この本は全五部構成なのだが、第五部にいたりようやく副題にもある「負」というキーワードが出てくる。この時これまで連綿と続いて来た具体的な説明が「負」という高度に抽象化された概念に一気につながる。他の思想家と違い、抽象を持って概念を語るのではなく、具象を積み重ねた果てにたどり着く概念の核を提示するスタイルだったのかと得心がいく。 大変面白い知的冒険指南書である。
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雪舟~等伯~狩野正信へいたる 日本美術の底流にある山水思想について 中国からの視座を入れながら縦横に遊んでいる。 その遊び心は、当代随一の渉漁家(といっていいのならば)ならでは。 名だたる水墨の作家を前に一歩もひるまず 絵に飛び込み、闊歩する様は、 心地よい。 この本を読んで、本...
雪舟~等伯~狩野正信へいたる 日本美術の底流にある山水思想について 中国からの視座を入れながら縦横に遊んでいる。 その遊び心は、当代随一の渉漁家(といっていいのならば)ならでは。 名だたる水墨の作家を前に一歩もひるまず 絵に飛び込み、闊歩する様は、 心地よい。 この本を読んで、本物を前にすると 絵の奥にひそむ水墨画家の息遣いが感じられてくる。
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”横山操という稀有な画人は 『病気が回復したら水墨の大作で山水を描きたい。 雪舟から等伯までの墨絵から出発しようと思います。』 と言って死んでいった。”(本分より引用) 引き算の発想。 足りないから想像の中で連想させる。 枯山水のように『そこに水がなくても』水を感じられる。 想...
”横山操という稀有な画人は 『病気が回復したら水墨の大作で山水を描きたい。 雪舟から等伯までの墨絵から出発しようと思います。』 と言って死んでいった。”(本分より引用) 引き算の発想。 足りないから想像の中で連想させる。 枯山水のように『そこに水がなくても』水を感じられる。 想像のための余剰。 日本の文化に流れる、 この湿り気を帯びた部分を 日々の生活で感じずにはいられない。 湿り=霧、はっきりさせない、幻想的な、隠す この湿りが想像の余剰を 大切にする文化を育んだのか? いわゆる『空気を読む』や、 『阿吽の呼吸』に通じるように感じる。 だからこそ、根底にある湿りの感覚が ゆさぶられ、等伯の松林図を見て共感を覚え、 京都の銀閣寺を見て感動を覚えるのだろうか。
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出だしが雪舟で期待したが、くい足らずに終わり、等伯も同じ。 薀蓄は多いが一貫したストーリーとしては大変弱く、中国の山水の歴史的記述はとても退屈だ。 内藤廣が解説を書いていたのは意外。
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長谷川等伯展に行ってきた勢いで買ってしまいました。 長谷川等伯の松林図は昔からなぜか好きで、絵葉書とか持ってました。この絵を見れば、ほぼ間違いなく、これは日本の絵だって分かる。しかし、じゃあなぜ、中国ではなくて日本だといえるか、と聞かれても説明はつきません。 そんな不思議な感覚を...
長谷川等伯展に行ってきた勢いで買ってしまいました。 長谷川等伯の松林図は昔からなぜか好きで、絵葉書とか持ってました。この絵を見れば、ほぼ間違いなく、これは日本の絵だって分かる。しかし、じゃあなぜ、中国ではなくて日本だといえるか、と聞かれても説明はつきません。 そんな不思議な感覚を説明する入口が本書では示されているようです。 ようです。話が古今東西あちゃこちゃ飛ぶうえ、ある程度の美術史の知識を前提としているので、なかなか見えづらい。著者自身手探りで書いているという解説の指摘はまさにそのとおりかと。 しかし、個々のエピソードは非常に興味深い。世界史的に見て、雪舟とレオナルド・ダ・ヴィンチが同時代人だったとか、指摘されなきゃ絶対気がつかなかったです。
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山水思想―「負」の想像力 (ちくま学芸文庫 マ 25-3) 松岡 正剛 (文庫 - 2008/4/9) 新品: ¥ 1,575 (税込)
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