密会 の商品レビュー
トレヴァーは短篇の名手で評価も高い。今回の『密会』も12編の短篇がおさめられている。 表題作の「密会」は39歳と40代半ばの男女の不倫の恋の物語で、女性の離婚を機に微妙に揺れはじめていく関係を描いている。危険な恋も時間が経過するとある意味、安定し、それからどのような時間を紡いでい...
トレヴァーは短篇の名手で評価も高い。今回の『密会』も12編の短篇がおさめられている。 表題作の「密会」は39歳と40代半ばの男女の不倫の恋の物語で、女性の離婚を機に微妙に揺れはじめていく関係を描いている。危険な恋も時間が経過するとある意味、安定し、それからどのような時間を紡いでいくかはそれそれだろう。 短い物語のなかを一組の男女が、等身大で歩き出すような秀作。
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ジンセイの場面場面はただ静かに切り取られ、断片に残るのは苦みとでもいうような。 心地よいような苦み。
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「外国にいるほうが、自分の国の人間について書きやすい」 当代切っての短編作家とされるトレヴァーだが、不況のなか職探しでイングランドに住み着き、そこで自国アイルランドなどを舞台にした小説を書いているという。 なるほど、アイルランドを思わせる気候や風土、決して豊かではなかった頃のア...
「外国にいるほうが、自分の国の人間について書きやすい」 当代切っての短編作家とされるトレヴァーだが、不況のなか職探しでイングランドに住み着き、そこで自国アイルランドなどを舞台にした小説を書いているという。 なるほど、アイルランドを思わせる気候や風土、決して豊かではなかった頃のアイルランドで暮らす市井の人々の、その生きざまを静かに写し取ったかのような短篇集。 各編、なぜかどうしようもなくやるせない人々ばかりが登場し、目の前に立ち塞がる人生に、その弱さを露呈しながらも生きざるをえない姿を前にして、ただなすすべもなく読み進む・・・そんな小説ではある。 だが、ラストにはそんな主人公たちに共感する自分がいて、決して好きにはなれないのではあるが、いつのまにやらその苦しみや孤独に自然に寄りそっている。 そこにもまた一つ・・・という感じで置かれたなにげないピースが集まって、見えてくる何がしかの人生の真実。生きてゆくというただそのことに、思いがけず尊さなど感じ取ってしまったのかもしれない。
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孤独や哀しみを湛えながら 生きている人々を描いた短編集。 Trevorは彼らを突き放すでも、 やさしく包み込むのでもなく、 遠くからただみつめている。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
●未読 ・「クウネル」2008.09.01号 p.62で江国香織が紹介・短編集 ・短編「孤独」(7歳の子供の架空のお友達の名前(アビゲイルとデヴィ)のラストが意外、とのこと
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人間って寂しいね。そう思うのと同時に、ああ生きるって素晴らしい、と思える。そんな小説たち。クレスト・ブックらしい上質な感触。
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自分はあの時、たしかに愚かだった アイルランドとイギリスを舞台に、執着し、苦悩し、諦め、やがて立て直していく男たち女たち。英語圏最高の短編作家と称されるトレヴァーが、静かなまなざしで描く、人生の苦さと深み。 トレヴァーは、やさしく突き放しながらも共感に満ちた筆到で、平凡な人々の...
自分はあの時、たしかに愚かだった アイルランドとイギリスを舞台に、執着し、苦悩し、諦め、やがて立て直していく男たち女たち。英語圏最高の短編作家と称されるトレヴァーが、静かなまなざしで描く、人生の苦さと深み。 トレヴァーは、やさしく突き放しながらも共感に満ちた筆到で、平凡な人々の孤独、欺瞞、不義、老い、死といった、人生の荒涼とした風景を描き出す。この短編集12篇はいずれも人間の謎と闇を描いているが、トレヴァーはいい悪いといった決めつけをいっさいしない。読んでいると、登場人物に対する彼の同情と理解にときおり呆然としてしまう。そして読後に感じる胸のうずきは、登場人物たちの悲しい運命のせいなのか、それとも人間を見つめる一人の男のまなざしの深さに打ちのめされるせいなのか、わからなくなる。
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どの話も印象的だけれど、いちばん最初の話に最初だからかいちばん驚かされた。読み終わったときに、いままで行ったことない場所に連れて行かれる感覚がある。絶望の果ての本人にだけわかる静かな幸福とか、孤独のつめたさの心地よさみたいなものがよい。
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短篇集。どの作品ももの悲しく、孤独な人々が描かれているのに、読み終わっても憂鬱な気分にならないから不思議。自己憐憫に浸る登場人物がいないからかもしれない。ほんのささいな役でしか登場しない人物さえも、その人生が透けてみえるよう。何が、とうまく言えないのに、何だか好き・・・という、こ...
短篇集。どの作品ももの悲しく、孤独な人々が描かれているのに、読み終わっても憂鬱な気分にならないから不思議。自己憐憫に浸る登場人物がいないからかもしれない。ほんのささいな役でしか登場しない人物さえも、その人生が透けてみえるよう。何が、とうまく言えないのに、何だか好き・・・という、この感じ、子どもの頃、キャサリン・マンスフィールドの短篇を読んだ時に感じたような・・。自らの職業に懐疑的となっている神父と学習障害者の娘との対比が鮮やかな「ジャスティーナの神父」、図書館司書と未亡人との本をめぐる交情とその顛末を描いた「グレイスの遺産」、少女時代から両親と三人で外国を渡り歩いた女性の回想「孤独」、たった一度だけ聴いた音楽を終生、心のなかでよみがえらせ続けた田舎屋敷の召使の「ダンス教師の音楽」が特に心に残った。元夫と、その妄想話を定期的に聞かされる女性との関わりを描いた「路上で」は、男女関係の不可思議さを思う。 ――A Bit on the Side by William Trevor
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