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モデラート・カンタービレ の商品レビュー

3.8

19件のお客様レビュー

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2023/11/24

ちぐはぐな会話と気だるい空気、木蓮の香り、潮の香り、ピアノの音、ぶどう酒、鴨、防波堤、四拍子で、、、2人の会話は噛み合っていないけれど、会話こそが恋愛なのかも、いや、恋愛ではないか、なんだろう、最後にキスだけして終わる。

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2023/06/22

Theフランス文学というような、哲学を背景とした、解題するには難解な作品だ。しかし、その不可思議さに触れるのは気分がいい。

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2022/03/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

一見平和な子どものピアノレッスンのシーンで幕を開けるものの、レッスン場所の近くのカフェで起きた情死事件以降、どんどん倦怠と死の匂いが濃くなっていく。 似た台詞が繰り返されたり、「〜だろう」という文が続いたりといった斬新な小説技法はとっつきにくいものの、倦怠と死への願いを描くには相応しい。 まるでラブロマンスかのような表紙だし、たしかに2人はキスもするけど、ラブロマンスではない。

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2016/06/19

いわゆる静か系の極致。短い本ながら中断を繰り返しながら読んだため、時期を置いてもう一度きちんと読みたい。

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2015/12/06

『太平洋の防波堤』に『愛人』を読んだ以来だから、もう二年近くたつ。 わざと書かないで示す、というのが彼女の大きな文体の特徴といっていいだろうか。 アンヌは、ブルジョワ社会の脱出を試みると、あらすじで言い切ってしまっているが、実際、彼女が望んでいたとは書いていない。ただ、子どもを連...

『太平洋の防波堤』に『愛人』を読んだ以来だから、もう二年近くたつ。 わざと書かないで示す、というのが彼女の大きな文体の特徴といっていいだろうか。 アンヌは、ブルジョワ社会の脱出を試みると、あらすじで言い切ってしまっているが、実際、彼女が望んでいたとは書いていない。ただ、子どもを連れてピアノのレッスンに行くと、子どもはどういうわけか言うことを聞かず、外の海に憧れて、しょうがなくソナチネを引く。近くで起きた事件に心惹かれて訪れたカフェで、自身の生活をのぞき見する男と酒を飲むうちに、彼女は少しずつ、彷徨い歩く自身の何かに気付いていく。別にどうにかして男に会いたいとか、生活に不満だというわけでは決してないのだ。 日々はただ、気だるくモデラート・カンタービレで流れていく。調和しているはずの生活にどういうわけか、不協和音を聞いてしまう。自分の子どもさえも、自分の子どもでないような気がしてくる。木蓮の匂いで満ちる自分の家でさえ、どことなく居心地が悪くて、ここにいたらいけないような気がする。 ここではないどこかへ。自分ではないものに触れることで、自分を確かめる。見知らぬ男への口づけは恋愛だとかそんなものでは決してなく、乾いて乾いてしょうがない他者への渇望が、彼女を突き動かしたのだ。 カフェに通うきっかけとなった事件でさえ、聞かされれば聞かされるほど、魅力を失っていく。誰かに殺してもらうことで、この不協和音に耳が塞げるのなら、とっくに死んでいる。自分を影から見つめるロマンチストな男とは違って、彼女はどこまでも現実に生きていた。 最後に西日に向かう彼女の狂気は、解消されないこの不協和音に耳を塞いで、立ち上がるところにある。聞こえてくるものを聞こえないように毅然と立ち上がる彼女の姿は、サガンの『ある微笑』で鏡に向かって放たれたあの微笑と同じである。彼女の向う狂気は逃避行とか死とかそんなものではなく、赤い西日を受けて歩き出したその醒めた強さなのだと思う。

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2014/04/17

真っ白な背景にシルエットで表現された人物。紺碧の海と夕焼け空、セーターと血とモーターボートと葡萄酒の赤、輝く金髪、木蓮の白い花。磯の香り、木蓮の強い匂い。モデラート・カンタービレのピアノの音。まるでボヴァリー夫人をモダンにしたかのようだが、映画のようでもあり、戯曲のようでもあり、...

真っ白な背景にシルエットで表現された人物。紺碧の海と夕焼け空、セーターと血とモーターボートと葡萄酒の赤、輝く金髪、木蓮の白い花。磯の香り、木蓮の強い匂い。モデラート・カンタービレのピアノの音。まるでボヴァリー夫人をモダンにしたかのようだが、映画のようでもあり、戯曲のようでもあり、デュエットを聴いているようでもある。これは恋ではない。落ちていくためのイニシエーションだ。そして洞窟の比喩でもある。 ピアノの先生、主人公、主人公に絡む男の3人しか名前がないのは新しかった。イニシャルすらなくただの記号のようなロール名しかないとは。パーティーのシーンでも食べ物は色鮮やかに描かれるのに声しか聞こえない。抽象画の文学版のようなもの?モデラート・カンタービレは「普通の速さで歌うように」葡萄酒は真っ赤で透明なロゼかポートワインの気がする。

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2013/11/19

表層を滑る会話で、思惑と感情を描いていき、男女の心の交流を駆け引きを表現しているのかもしれない。滑っていく言葉と、その裏の奥底にある心とがゆっくりと、回っていく。なかなか楽しめる作品だと思う。

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2013/10/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1958年、デュラス44歳の時の作品。情熱と倦怠と喪失の物語。近くのカフェで起こった情痴殺人事件に引き寄せられていくアンヌ。彼女には日常に確たる不満や不安があるわけではない。かといって、そこになんらかの希望を見出すこともできない。そうしたブルジョア的倦怠の中にいたアンヌと、失業中の労働者ショウヴァンとの交錯。それは恋ですらなかっただろう。恋であったのなら、彼女は自分の現在の境遇を捨て去ることで逆にアイデンティティを得られたかもしれない。プロットや設定は全く違うが、どこかカミュの『異邦人』を思わせる。

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2013/06/29

全体に漂うもの憂い雰囲気、気怠さ、倦怠感。一見噛み合っていなさそうな、とりとめのない短い会話の底に沈殿している死への憧れ、誘惑。この小説は文字を目で追って読み込むのではなく、感じ取ることを求められているような気がします。アンニュイな風情の色濃い、フランスっぽい空気感を楽しむことの...

全体に漂うもの憂い雰囲気、気怠さ、倦怠感。一見噛み合っていなさそうな、とりとめのない短い会話の底に沈殿している死への憧れ、誘惑。この小説は文字を目で追って読み込むのではなく、感じ取ることを求められているような気がします。アンニュイな風情の色濃い、フランスっぽい空気感を楽しむことのできる一冊でした。

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2011/12/10

暇をもて余した人妻が、知性でなく情欲をもって帰属社会階級からの脱却をはかるお話。 カミュの『異邦人』と並んで評されたこともあるそうな。 訳者の解説が非常に秀逸で、読者には伝わりづらいような作者の意図を的確に代弁してる。

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