あなたに不利な証拠として の商品レビュー
ブクログに参加したての頃、ブックリストで過去の読書歴から紹介したものを再読。 再読して、ほぼ記憶に沿った内容でしたが、ミステリではなかったですね。でも、犯罪もの。最近自分が好きなのは、「犯罪がらみもの」なのだと気づき、まさにそのジャンルです。 海外ドラマや映画の犯罪捜査ものも...
ブクログに参加したての頃、ブックリストで過去の読書歴から紹介したものを再読。 再読して、ほぼ記憶に沿った内容でしたが、ミステリではなかったですね。でも、犯罪もの。最近自分が好きなのは、「犯罪がらみもの」なのだと気づき、まさにそのジャンルです。 海外ドラマや映画の犯罪捜査ものも好きでよく観ますが、そこで感じることのできない匂いや空気感を読ませる…ということで、とても秀逸です。 経験者が紡ぐセミフィクションにはついつい心を奪われてしまいます… 作者の次の作品を聞かないのもそのせいなのか… P315より 警官になった動機を尋ねられると、男女を問わず半数は苦笑いし、あのときはいい考えだと思ったから、と答える。残りの半数は、警察に知っている人がいたし、あのときはいい考えに思えたから、と答える。ほんの一握りの者だけが、ずっと警官になりたかったから、と言いきる。そういう人たちは要注意だ。この仕事が彼らを生きたまま食うか、逆に彼らのほうが仕事を食い荒らすかのどちらかだ。 この文章に考えさせられる。 警察のみなさんに、まず感謝。公僕は…大変です。その自覚があるかどうかに関わらず。 フルマークにするにはセミフィクション要素が強すぎて。 でも、ずっと心に残る1冊。 文庫巻末の池上冬樹さんの解説も必読。 さらにハヤカワミステリマガジン 2025年4月号「21世紀翻訳ミステリベスト!」でも、池上冬樹さんが寄稿されていました。そちらも併せてぜひ。
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女性警官に限ったものは珍しい。女性ならではの悲喜こもごもなお仕事小説。 面白かった。2008年刊。 5人の、女性の制服警官が出会った事件をめぐって短編が10編。 仕事が終わった後で、犯罪という非日常的な出来事に出会った女性のまざまな心理が、繊細な筆致で書かれている。 正当防衛で射殺した犯罪者であっても命の火を消したことへの葛藤。 仕事として割り切れない、警官という職業が持っている命との係わり合いに悩む姿に、特殊な環境で生きていく重みが感じられる。 どうして私に起こったの どうしてこんな目にあうことになったの こういう思いを感じたことは多いだろう。 理不尽だと思われる出来事にであうことはある。 だが身近で起きることは少ない。会うことのほうが珍しいような、本来なら他人事ですむはずの犯罪現場に、立ち会わなければならない警官という職業に悩むことは、自分の人生まで、絶望や虚しさに引き込まれそうになる。 犯罪現場に立ち会うというテーマは、楽しい本ではないが、風景の叙情的な描写や、ユーモアや気の利いた構成で、一気に読んでしまった。 女同士の軋轢や上下関係のわずらわしさはどこも同じか。 作者は実際に制服警官という職業についたことがあるそうで、映画やテレビで見る警官の外観だけでなく、非常にリアルな描写で、装具備品の重さや形や細かな装着の手順まで細かく書いてあり興味深かった。
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5人の女性警察官が抱える苦悩について語られた短編集で、ミステリの賞を獲ってはいるが、事件の謎を解くというタイプのミステリでもクライムノベルでもなく、主人公が警察官だという純文学…なのかな。ハードボイルドミステリの逆。 いわゆる純文学に慣れ親しんでおらずエンタメ小説を乱読するだけの...
5人の女性警察官が抱える苦悩について語られた短編集で、ミステリの賞を獲ってはいるが、事件の謎を解くというタイプのミステリでもクライムノベルでもなく、主人公が警察官だという純文学…なのかな。ハードボイルドミステリの逆。 いわゆる純文学に慣れ親しんでおらずエンタメ小説を乱読するだけの私のような俗物には敷居が高かったです。
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一人称体が基本となり、5人の女性警察官が遭遇した事件と、彼女たちの心情がどのように変化していったかが研ぎ澄まされた文体でつづられる。現代的な視点を兼ね備えたハードボイルド小説のようでもあるが、主人公達の思いが冷静に、冷徹に描かれる様子は純文学と言っても差し支えないだろう。連作短篇...
一人称体が基本となり、5人の女性警察官が遭遇した事件と、彼女たちの心情がどのように変化していったかが研ぎ澄まされた文体でつづられる。現代的な視点を兼ね備えたハードボイルド小説のようでもあるが、主人公達の思いが冷静に、冷徹に描かれる様子は純文学と言っても差し支えないだろう。連作短篇集という形を取ることで、抱え込んだ絶望感、焦燥感、喪失感、暗闇と諦念とが本全体に満ち満ちていき、一言で言えばハード。しかしだからこそ、ラストに訪れる情景には何かが赦されたような安心感があった。 中でも良かったのは、正当な行為として射殺を行ったキャサリンの感情をひたすら冷静につづっていく「完全」。停職処分となったモナが現在の自分を見つめることで激情にかられていく様子を二人称で読み手に突きつけてくる「銃の掃除」。そして短篇集の最後に収録された「わたしがいた場所」。 いずれも文体フェチにとっては非常に刺さるものがあり、物語の面でも、視覚の面でも充たされた。こんなに痛みを鋭く描ける人がいただなんて。
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ミステリーだと思って読もうとしている方には、これはミステリーではないことをお伝えしたいです。 ただ文学作品として読もうと心を変えたら受け入れられました。
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あなたに不利な証拠として 2006年の”このミス”や”文春ミステリーベスト”海外部門No.1です。 もと警察官である著者の描写のリアリティには完全に脱帽です。女性警察官なので、男の竹蔵にとってはそのリアリティがどれほど女性に当てはまるかはわかりませんが、とにかくすごい表現力です。現場に踏み込むときの緊張感やその後の弛緩感、通常パトロールの倦怠・退屈。 5人の女性警察官の物語が各人に関して2-3話で語られます。いづれの主人公も心に大きな闇をかかえながら、男社会の警察官という仕事に向き合い、それぞれの人生を織りなしていきます。 謎としてトリッキイなものはありませんが、一つ一つの物語が、重く読者に問いかけて来ます。”あなたは何者?” そして、”あなたはどこに行くのか?” 数日前に読んだ哲学の本などよりも哲学を感じる本です。 ミステリー好きはもちろん、読書好きの方全てに是非読んで頂きたい名著です。 竹蔵
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短編集。 5人のアメリカ女性警官を主人公にそれぞれの物語が語られる。 ミステリーなんだろうけど、フィクションというよりノンフィクションを読んでいるような感じで、謎やどんでん返しはまったくない。 臨場感というか迫力はあるが、ミステリーとしてとらえるとちょっと違和感がある。
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いいねぇ。 ハードボイルドと思わせつつも、文学ちっくというかモヤモヤした描写が入り込んで、この絶妙なバランス。こういう語り口はむしろ日本の小説っぽくもあるけど。いや、むしろ日本にも立場を変えて、警官じゃないっていう場合の小説はいっぱいあるかもしれん。 じゃあ何が良いかって言われる...
いいねぇ。 ハードボイルドと思わせつつも、文学ちっくというかモヤモヤした描写が入り込んで、この絶妙なバランス。こういう語り口はむしろ日本の小説っぽくもあるけど。いや、むしろ日本にも立場を変えて、警官じゃないっていう場合の小説はいっぱいあるかもしれん。 じゃあ何が良いかって言われると、警官っていう、いや常に拳銃持っててしょっちゅう殺人事件が起きるような環境っていうのはやっぱりあらためてアメリカ怖い、だし、あとは語り口かもしれないし、うまくいかねーぜな登場人物たちが気に入ったからかもだし。 このモヤモヤが好きなのよ。
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ミステリーというより文学と思って読んだ方がいいかも。前半は正直言って挫折しそうになったけど、最後まで読んでよかった。
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心を震わせる10編の小説。事件の謎を追うという意味でミステリだけれど、5人の女性警察官それぞれの葛藤や苦しみや絶望、不安、怒りと諦め、そして祈りがリアルに描かれる。そしてそこに惹きつけられて涙が出てくる。これだけ魂を揺さぶられたらもう十分立派な純文学だ。アメリカでは探偵作家クラブ...
心を震わせる10編の小説。事件の謎を追うという意味でミステリだけれど、5人の女性警察官それぞれの葛藤や苦しみや絶望、不安、怒りと諦め、そして祈りがリアルに描かれる。そしてそこに惹きつけられて涙が出てくる。これだけ魂を揺さぶられたらもう十分立派な純文学だ。アメリカでは探偵作家クラブの最優秀短編賞を、日本ではこのミスと文春のランキングで1位となった名作。
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