白蝶花 の商品レビュー
大正末期から昭和20年代末頃までの、五人の女性たちが織りなす恋模様。『乙女椿』の登場人物、「和江」と「千恵子」が中心になって物語が創られている。官能的表現が強いものの、物語としては、純文学のようで面白かった。
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こう言った戦中の物語は女目線だからこそ、ぶれる事なく現実味を伝えられるんだろうなぁと思う。 どんな不幸が起こったとしても残された者は生きなければならない訳で、何故って理由はない。ただただ生命を繋ぐ事に必死で、いつだって時間が惜しい。 現代は平和だけれど、余計なことを考えない恋愛...
こう言った戦中の物語は女目線だからこそ、ぶれる事なく現実味を伝えられるんだろうなぁと思う。 どんな不幸が起こったとしても残された者は生きなければならない訳で、何故って理由はない。ただただ生命を繋ぐ事に必死で、いつだって時間が惜しい。 現代は平和だけれど、余計なことを考えない恋愛が出来にくくなっている点ではとても微妙。 信じるしかない時代、辛い時代だけれどとても素敵だと感じた。
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図書館で借りてきた。 実は読みきれず返却。 面白いところだったけど、なかなか刺激強めな、、 次回機会あったら絶対読み切る!
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大正の終わりから昭和にかけて、男尊女卑や家柄等の影響が色濃く出ていた時代の女達の連作短編。 置屋の芸妓、妾、女中等、常に男の身勝手に振り回されて思うままに生きられない女達。 けれど女達の情念は深く、闇のように底知れない。 女達はただ男の言いなりになっているのではなく、自分の強い意志を持ち感情の赴くままに突き動く。 そんな強かな女達の行動に、読み手の心も突き動かされる。 短編が進むにつれ、行く末が気になっていた女達の状況も分かりほっとする場面も。 宮木さんは『花宵道中』に次いで二作目。 今回の作品も女による女のための物語だった。
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男尊女卑の風潮が色濃くただよう昭和初期。 まだ少女と呼べる年頃の女の子が妾にさせられたり、大きな屋敷で書生と女中が内緒で付き合っていたり、女学校ではお姉さまと親密なお付き合いがあったり… そして忍び寄る戦争の影。 昭和を生きた女性は、なくしたものが多すぎる。 家族や恋人が戦地へ行くと決まったとき、どんな思いだったろう。 無事に生きて帰ってくることを、心の中で祈ることしかできないなんて。どれだけの人が、その絶望を胸の奥に隠したのだろう。
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「私は家がなければ生きてゆけない。私は何もできないし、何もできなくても、生きていれば失うばかりだったもの」 「僕が生きてゆかせるよ。そしてあなたに全てを与えてあげる」 「きっとあなたのほうが先に死ぬわ」 「僕のほうが年下だよ、和江さん」 (P.258)
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時代に翻弄されながら儚い恋心を確固として生きる、強い女たちの物語。 やっぱり上手だなぁ、としみじみ世界観にどっぷり浸かりました。 正式に結ばれないまま子を宿してしまう女たち。しかしその背景には、強制的な結婚などよりも、心から強く求めたものがある。それを否定してしまう時代というの...
時代に翻弄されながら儚い恋心を確固として生きる、強い女たちの物語。 やっぱり上手だなぁ、としみじみ世界観にどっぷり浸かりました。 正式に結ばれないまま子を宿してしまう女たち。しかしその背景には、強制的な結婚などよりも、心から強く求めたものがある。それを否定してしまう時代というのが、非常に悲しく感じられた。戦争のために結ばれない男女が、愛し合って子どもを産んだというのに、それを非難してしまうその「時代」こそ、今の時代には考えられない。それと当時に何も手に入らないと嘆く令嬢もまた、時代に遊ばれた一人だと思う。 愛した男を戦争に見送り、残された女たちの、愛した男との子どもと共に生き抜こうという気持ち、強さ、人情、あらゆるものが感じられる。もうなんと云って良いのかわからないが、とても儚く、でもとても強固で美しい。
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戦後70年の節目を迎えた今年の夏は、例年以上にメディアでも戦争が取り上げられていました。 そのうちいくつかは自分でも読んだり見たりしたけれど、 あまりの悲惨さに目をそらしてしまったものも多くて、、それではいけないと思い直しての本選定。 社会的にも女性は地位が低く、 また、戦争の影響で自由も許されなかった時代に 愛する人を信じて強くしなやかに生きた女性5人の物語です。 女中である千恵子は、書生の政吉と恋に落ちる。 間もなく政吉は出征し、 千恵子は身ごもっていることに気が付く。 千恵子は実家に帰ったものの、 「未婚の女が、明日死ぬかもわからない男の子供を産むなど許さない」と父親に勘当され…。(乙女椿) 一個人の人生の転換期の背景として戦争があり、 その理不尽さを身につまされる思いで読みました。 自分は自由が許される今の時代に生まれ 本当に恵まれている。 一番愛した人と一緒におれないなら、死んでしまった方がましだとたぶん自分は思うけれども、 ここに出てくる5人はそうはしなくて、 どうにかして愛した人の子供を産み育てよう、 愛した人の分まで生きようとする。 とても強い。 乙女椿の政吉の手紙を読んで嗚咽してしまった。 戦争の理不尽さと人間の美しさがより悲壮感を産むのです。
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読みやすかった。 短編だけれども、一話一話に出てくる登場人物が長い年月をかけて、再度登場します。 大正、昭和と戦争の混乱の中 生き抜く女性の話です。
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大正の終わりから昭和初期を生き抜いた女性の、報われない愛の物語。 江戸の遊郭の花魁の恋模様を描いた「花宵道中」と同じく、本当に愛しい人とは結ばれない運命にある女たちの連作になっています。 悲恋に身を焦がし時代に翻弄されていく姿は、とても女性的でした。 いまより自由恋愛が難しく女...
大正の終わりから昭和初期を生き抜いた女性の、報われない愛の物語。 江戸の遊郭の花魁の恋模様を描いた「花宵道中」と同じく、本当に愛しい人とは結ばれない運命にある女たちの連作になっています。 悲恋に身を焦がし時代に翻弄されていく姿は、とても女性的でした。 いまより自由恋愛が難しく女性の自立も難しかった時代背景に関わらず、こういう禁断の恋的なのってやっぱり心ときめく媚薬なんでしょうね。 それでも強く生き抜いて世代を繋いでゆくのは女なんですから。 温泉芸妓の菊代と雛代 妾として売られた泉美 女中の千恵子とお嬢様の和江 恋は儚くとも、そこから得た命は続いていくし 羨望も嫉妬も女の友情には欠かせないものなのですな。
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