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夜と霧の隅で の商品レビュー

3.8

48件のお客様レビュー

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2012/11/02

北杜夫の短編集。『夜と霧の隅で』がよみたかったのだけれど、その他の名前の知らない短編も、非常に繊細で理知的で心に残るものばかりだった。人間の不気味さを綺麗な文章で浮き彫りにしているかんじ。前から読みたいと思っていた『夜と霧の隅で』は、想像以上にグロテスクで悲しい話。ナチスドイツの...

北杜夫の短編集。『夜と霧の隅で』がよみたかったのだけれど、その他の名前の知らない短編も、非常に繊細で理知的で心に残るものばかりだった。人間の不気味さを綺麗な文章で浮き彫りにしているかんじ。前から読みたいと思っていた『夜と霧の隅で』は、想像以上にグロテスクで悲しい話。ナチスドイツの時代というだけで物語は陰惨なものになるが、さらに精神疾患の患者たちを題材にして扱っている。深く深くまで心が抉られるような、そんな不気味さであり、本当にグロテスク。視点を登場人物から離して語ろうとすればするほど、描写が真に迫ってくる。ここまでじめじめとした話は久しぶりに読んだ。身体的な意味でも心にダイレクトに入ってくる人間の業の深さ。何が正しくて何が間違っているかなんて時代によって180°変わる。だから今この本を読むのはとても怖いことだけれども、多分そこまで計算して人間の罪深さを配置した本なんだとおもう。

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2012/02/26

北杜夫の小説は実はちゃんと読んでなかったりする。イメージでは「どくとるマンボウ」みたいなユーモアある作品ばかりかと思っていた。しかし芥川賞受賞の表題作を始めこの初期作品は何かピュアな狂気を感じる。 「夜と霧の隅で」は第二次大戦末期のドイツでの治る見込みのない精神病患者、いわゆる(...

北杜夫の小説は実はちゃんと読んでなかったりする。イメージでは「どくとるマンボウ」みたいなユーモアある作品ばかりかと思っていた。しかし芥川賞受賞の表題作を始めこの初期作品は何かピュアな狂気を感じる。 「夜と霧の隅で」は第二次大戦末期のドイツでの治る見込みのない精神病患者、いわゆる(民族と戦争に益のない人間)の安死術を背景にした作品である。ドイツ人医師が患者を安死させないため、非道な治療を試みてしまう話は、抗えない現実には道徳的な矛盾をも呑み込んでしまう人間性を考えさせられる。

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2011/12/08

追悼コーナーで平積みされていたので手に取りました。「追悼」って、普段はなかなか読まない作家と出会うきっかけになるけど、寂しい出会い方だよなあ…。でも、だからこそ印象に残るし、大事に読もうとも思うのです。はい。 正直数編は味気ないというか、つまらないな、ていうのが第一印象でした。...

追悼コーナーで平積みされていたので手に取りました。「追悼」って、普段はなかなか読まない作家と出会うきっかけになるけど、寂しい出会い方だよなあ…。でも、だからこそ印象に残るし、大事に読もうとも思うのです。はい。 正直数編は味気ないというか、つまらないな、ていうのが第一印象でした。地味な交歓?ドラマ性溢れるエンタメ小説と人が死ねば死ぬほど楽しい小説ばっか読んでるせいですね…。こういうの読むと、ギブミー読解力!共感力!て心底思う。 どっこい表題作。これはすごい。ナチスドイツものを日本人(しかも精神病んでる患者)の視点から描いてるのが珍しいし、戦禍に未だ巻き込まれない僻地の微妙な緊張感とか、医者達が静かにおかしくなっていく葛藤とか、息を吐かせず読ませます。 中でも、灰色の脳細胞を研究してる彼の、閉塞感〜狂気〜再びの閉塞感に至る顛末がゾッとするような現実感で迫ってきます。 最後の数行、人間が狂気に陥った後でまた日常に何食わぬ顔で戻ってくる描写が一番怖かった…。 ●岩尾根にて…友を山で亡くして以来、断崖を登ることを止めた私が出会った死体と奇妙な男。 ●羽蟻のいる丘…羽蟻に夢中になる幼子と、緩慢な会話を繰り広げる男女。 ●霊媒のいる町…霊媒の現象に懐疑的な男が出会った霊媒体質の少女と彼が目にした思いもかけない人との一瞬の邂逅。 ●谷間にて…何となく川を遡上した少年が出会った男は、嘗て追いかけた稀少な蝶の話を語り始める。 ●夜と霧の隅で…ナチスの行った「夜と霧」政策。安死術が相応と判断された精神病患者に対して、苦悩する医師達がそれぞれに取り始めた対応とは。

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2011/11/26

先日、お亡くなりになった北杜夫さんの芥川賞受賞作も含めた短編集。どの作品もおそらく題材は身近なものなのではないかと感じました。表題作の「夜と霧の隅で」での精神科医が葛藤する中で静かに流れる時間と、「谿間にて」での蝶の採集人の緊張感溢れる時間の流れのコントラストが楽しめ、それぞれの...

先日、お亡くなりになった北杜夫さんの芥川賞受賞作も含めた短編集。どの作品もおそらく題材は身近なものなのではないかと感じました。表題作の「夜と霧の隅で」での精神科医が葛藤する中で静かに流れる時間と、「谿間にて」での蝶の採集人の緊張感溢れる時間の流れのコントラストが楽しめ、それぞれの作品を堪能ました。今回は★評価は「なし」とします。ご冥福をお祈りいたします。

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2013/07/02

企画コーナー「追悼- Steve Jobs・北杜夫」(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。 展示期間中の貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2011/11/1-12/22まで】 湘南OPAC : http://sopac.lib.bunky...

企画コーナー「追悼- Steve Jobs・北杜夫」(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。 展示期間中の貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2011/11/1-12/22まで】 湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1519480

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2011/10/31

北杜夫さんがなくなったので,長く積読だった初期作品集を読んだ.読んだのは,「岩尾根にて」「谿間にて」「夜と霧の隅で」.どれも夢と現実が薄く混じり合うような感じのする作品.山の中で蝶を追い求める「谿間にて」が覚醒した幻想とでもいうべき独特の味わいで印象に残る.ナチスの戦時政策に取材...

北杜夫さんがなくなったので,長く積読だった初期作品集を読んだ.読んだのは,「岩尾根にて」「谿間にて」「夜と霧の隅で」.どれも夢と現実が薄く混じり合うような感じのする作品.山の中で蝶を追い求める「谿間にて」が覚醒した幻想とでもいうべき独特の味わいで印象に残る.ナチスの戦時政策に取材した「夜と霧の隅で」も静かな理性的な文章で昂るところはないが,じっくり読ませる. 10/31追記 「羽蟻のいる丘」を読了.

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2011/08/20

恥ずかしながら、北杜夫のまともな小説を読むのは始めてだった。これまでエッセイやコメディ系の作品ばっかり読んでいたので、彼の事を、てっきりうわっ付いたおっさんだとばかり思い込んでいたが、この小説を読んで考えを改めた。これ程端正な文章を書く人は珍しい。しかもそれだけではなく、内容も読...

恥ずかしながら、北杜夫のまともな小説を読むのは始めてだった。これまでエッセイやコメディ系の作品ばっかり読んでいたので、彼の事を、てっきりうわっ付いたおっさんだとばかり思い込んでいたが、この小説を読んで考えを改めた。これ程端正な文章を書く人は珍しい。しかもそれだけではなく、内容も読者に媚びる事なく、非常にしっかりしている。読んでいて、頭がしびれてくるような感覚に陥ったのは、三島由紀夫以来だった。この振れ幅の大きさは、精神科医であり、自身も躁鬱病を抱えているからこそなのだろう。どくとるマンボウ航海記と同じ時期にこんな作品が発表されたなんて、全く信じられれません。それほど純文学として高水準の作品です。

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2011/06/14

この作品で賞を取っていたんだ、と言うことを知り図書館で借りて読んでみました。初めて北杜夫氏の作品を読んだのはまんぼう記でその後も面白おかしいエッセイや船乗りクプクプのような明るい話ばかり読んでいたのでこんな純文学も買いてらしたんだ、とびっくりしました。(あ、でも楡家の人々は読んだ...

この作品で賞を取っていたんだ、と言うことを知り図書館で借りて読んでみました。初めて北杜夫氏の作品を読んだのはまんぼう記でその後も面白おかしいエッセイや船乗りクプクプのような明るい話ばかり読んでいたのでこんな純文学も買いてらしたんだ、とびっくりしました。(あ、でも楡家の人々は読んだことあったな…) 表題の話よりも台湾で希少種のアゲハを見つけたお話の方がひきこまれました。別に昆虫採集の趣味はないのですが何故か後もう半日、一日待ってみようとジリジリしながら待つ感覚はわかります。なぜでしょうね。

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2011/05/12

霊媒のいる町がよかった。たわごとを感じるとか、不思議な言葉遣いの意味をまだ悩んでいる。他の話も哀しくて優しくて読み甲斐がある。

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2011/01/14

表題作は、ナチスの『夜と霧』政策の進められる社会の隅で絶望感と向き合わされる精神科医の物語。他の作品も作者の体験に近いフィールドを題材としたものが多いですが、洗練された普遍性が感じられるような。 全体的に、20世紀中盤のレトロな雰囲気があります。

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