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夜と霧の隅で の商品レビュー

3.8

48件のお客様レビュー

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2022/01/08

北杜夫にとって精神科医である以上書かなくてはならないテーマだったと言っているが、今にしてみれば内容は薄いと感じた。 ひとつ思うことは、戦争という背景があり精神科医の苦悩があってこそ現在のノーマライゼーションの考え方で人格が尊重されているんだなと考えさせられる作品だと思う。

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2021/07/14

恐ろしいほど狂気に満ちた作品だった。 ナチスドイツがさいしょに虐殺したのはポーランド人でもユダヤ人でもなく、同胞ドイツの精神病患者たちだった、という事実。それを当たり前だと賛同していた精神科医師たちが多くいたと言う事実。 狂気の沙汰にあふれた時代を舞台に、患者を救うため一か八かの...

恐ろしいほど狂気に満ちた作品だった。 ナチスドイツがさいしょに虐殺したのはポーランド人でもユダヤ人でもなく、同胞ドイツの精神病患者たちだった、という事実。それを当たり前だと賛同していた精神科医師たちが多くいたと言う事実。 狂気の沙汰にあふれた時代を舞台に、患者を救うため一か八かの博打に打って出た医師ケルセンブロック。しかしそれすら、使命感によって自己正当化された狂気の一端である。 精神科医でもある作者のリアリティ溢れる表現と、鮮明な描写、鬼気迫る行動で、気持ち悪い汗が止まらない。 蒸し暑さが増す部屋で読むべき作品ではなかったな。 正気と狂気の境目はいったいどこなのか?考えさせられる。

Posted byブクログ

2019/06/26

ナチスの指令に抵抗して、患者を救うために苦悩する精神科医たちを描き、極限状況下の人間の不安を捉えた表題作など初期作品5編。

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2018/12/09

頭から順に読んでいくと文芸というか文学というか 解説に云う「透明な論理と香気を帯びた抒情」というふぜい つまり「お話」のない小説でない文章で 心境を情景描写に仮託しているようなそれである 仮託とかいうことばを使う時点でそんなかんじお察し 最後に収められている表題作は他と違って「...

頭から順に読んでいくと文芸というか文学というか 解説に云う「透明な論理と香気を帯びた抒情」というふぜい つまり「お話」のない小説でない文章で 心境を情景描写に仮託しているようなそれである 仮託とかいうことばを使う時点でそんなかんじお察し 最後に収められている表題作は他と違って「お話」が明瞭な小説として読める こういうのだと読み下しやすい またこのお話からみればその他の作品にある作者が描こうとしていたものも なんとなく理屈づけられて見えるような気がしないでもない つまり小説すなわち筋書きのあるお話でないものは 筋書きでいちおう方向が示されているものに比べてどうとでもとれるのではないか どの作者が書いたのかより不明瞭で 詩歌のように短くなるほど表現技術の高低も素人に判別困難になる 絵画でも音楽でも万人が評価するものが優れている証だとは思わないが 評価できるひとにしか評価できないものは どうとでもとれるようにみえるものに多いようにみえるのが素人の感想 文章は手段であり目的のあるものではない 作品は目的を形にしたもので作者にせよ誰にせよ ひとのこころを動かすべく作られたものだが その機能が目的を果たしているかを判断するのは使用者の規格に適合するかで 作者のもとにはないと言える この本については 表題作は小説として無難に良く文句ないが その他は 例えば高校向け国語の教科書に採用されるかどうかという「規格」で評価するなら ややいやはっきり落ちるといえると思う

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2018/10/10

​ひさしぶりに文学な作品を読んだ。 小説と文学の違い(とわたし流の分け方)は、 地の文が説明、解説になっているものと、 文が練れていて、雰囲気が漂うもの とである。 もちろん、前者でも後者でもいいものはいい。 コクがあるものが傑作なのであるし、読む楽しみになる。 こ...

​ひさしぶりに文学な作品を読んだ。 小説と文学の違い(とわたし流の分け方)は、 地の文が説明、解説になっているものと、 文が練れていて、雰囲気が漂うもの とである。 もちろん、前者でも後者でもいいものはいい。 コクがあるものが傑作なのであるし、読む楽しみになる。 この短中編集に収めてあるのは 「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」「霊媒のいる町」「谿間にて」「夜と霧の隅で」 どの作品も心揺さぶられるのだが、やはり芥川賞の「夜と霧の隅で」が印象深い。 第二次大戦中、ドイツ南部の町にある公立精神病院の医師たちは、 ナチス政権による民族浄化というとんでもない思想の影響を受けざるを得ないその苦悩がある。 それが単にドキュメンタリーではなく、文学的で深みがある文章が心にしみた。 迫害されるユダヤ人だけではなく、精神疾患者たちにとってもむごい政策というか仕打ち。 そして病んでいる本人たちには何もわからないのだ。 患者を治療しているドイツ人医師たちの悩みはさまざま。 そこに同盟国の日本人医師も留学生としていたが病み、入院してその不条理を経験する。 その妻がユダヤ人という設定も悲しい。 わたしが映画や文章などで知ったことよりも、この中編は胸に響いた。 それが文学の力と思う。

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2017/08/03

表題作の他にも短編が一緒に収められている。 個人的には表題作ではなく、蝶採集人が語る「谿間にて」が好み。動物を相手に、厳しい自然の中窮地に追い込まれながらもひたすら闘う。ヘミングウェイの老人と海にも通ずると勝手に思っている。 表題作も、初めは淡々と客観的に語られ、患者はもちろん...

表題作の他にも短編が一緒に収められている。 個人的には表題作ではなく、蝶採集人が語る「谿間にて」が好み。動物を相手に、厳しい自然の中窮地に追い込まれながらもひたすら闘う。ヘミングウェイの老人と海にも通ずると勝手に思っている。 表題作も、初めは淡々と客観的に語られ、患者はもちろん医者も変わり者、というように始まった。そこからの切り返し。しかし語り口は変わらず。絶妙だと思った。

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2017/07/22

「岩尾根にて」 山中で自我を失ったような気分になる話 クライマーズ・ハイかな? 「羽蟻のいる丘」 自暴自棄のため放射能Xの女王蟻に自分を重ねる女がいて 気の毒なのはそれにつきあわされる幼い娘だが 「霊媒のいる街」 逃げ場のない大人たちはロマンを求めてたわごとを言う 本当に過去...

「岩尾根にて」 山中で自我を失ったような気分になる話 クライマーズ・ハイかな? 「羽蟻のいる丘」 自暴自棄のため放射能Xの女王蟻に自分を重ねる女がいて 気の毒なのはそれにつきあわされる幼い娘だが 「霊媒のいる街」 逃げ場のない大人たちはロマンを求めてたわごとを言う 本当に過去を忘れられない坊やはハードボイルドにひたって生きる 「谿間にて」 蝶の採集で名を成したいあまりに精神の様子が少しおかしくなった人の話 かつて失われた全能性が蝶のまぼろしとなって現れるのだろうか 「夜と霧の隅で」 ナチスの断種政策によって収容所送りにされる患者を1人でも救おうと 無謀かつ無意味な実験手術に走る精神科医の話 まったくの本末転倒である

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2016/12/10

第二次大戦下、ナチスによって行われていた障害者の虐殺を題材にした物語。病院の医師の無力感はいかばかりであったか。国家の利益にならないものと切り捨て、死へと連行するSS、一人でも多くを救おうと常軌を逸した治療を患者たちに施す医者。誰が狂っていて、誰が狂っていないと一体誰が断定できる...

第二次大戦下、ナチスによって行われていた障害者の虐殺を題材にした物語。病院の医師の無力感はいかばかりであったか。国家の利益にならないものと切り捨て、死へと連行するSS、一人でも多くを救おうと常軌を逸した治療を患者たちに施す医者。誰が狂っていて、誰が狂っていないと一体誰が断定できるだろう。あの時代は誰もが精神を病まずにはいきてきけなかったのではないだろうか。なんとも後味の悪い物語ではあるが、相模原の障害者施設事件のことを思うと、ただの昔の物語とは言えない気がする。

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2016/11/11

北杜夫氏の初期作品集 氏がそう状態の時に書いた、さまざまなユーモアあふれる小説ではなく、深い思索に入った時に書かれた作品が集められている。 自然に入る、山に入る作品についても、その自然の描写、山の描写は主題ではない。そこに置かれた人の内面を抉り出すように書き残す。 そして表題作の...

北杜夫氏の初期作品集 氏がそう状態の時に書いた、さまざまなユーモアあふれる小説ではなく、深い思索に入った時に書かれた作品が集められている。 自然に入る、山に入る作品についても、その自然の描写、山の描写は主題ではない。そこに置かれた人の内面を抉り出すように書き残す。 そして表題作の「夜と霧の隅で」 ナチスドイツの優生思想の中に置かれた、精神科の医師たちの姿。 北杜夫という偉大な作家の、ひとつの面にじっくり浸ることができる作品。

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2016/08/21

「夜と霧の隅で」ナチスのユダヤ人だけでなく不治の精神病者まで間引いていく命令に、考えられる治療を全て行い、患者が連行されていくのを防ごうとする医師。不治の対称でなかった日本人だけが治り、ユダヤ人の妻がもういないことを悟る。退院間近に自殺してしまうが、様々な苦難の現実に覚醒され、彼...

「夜と霧の隅で」ナチスのユダヤ人だけでなく不治の精神病者まで間引いていく命令に、考えられる治療を全て行い、患者が連行されていくのを防ごうとする医師。不治の対称でなかった日本人だけが治り、ユダヤ人の妻がもういないことを悟る。退院間近に自殺してしまうが、様々な苦難の現実に覚醒され、彼を絶望に導いたのか。他初期作品4編。2016.8.21

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