空の怪物アグイー の商品レビュー
相変わらず、大江健三郎さんの短編集は、どの話もダークな雰囲気の中に皮肉や人間の本質が描かれていてとても面白い。これは他の短編集に比べるとちょっと難解だったかな。 しかし、「敬老週間」はとても皮肉が込められたラストで笑っちゃうし、「スパルタ教育」「犬の世界」などは自分は大好物。「空...
相変わらず、大江健三郎さんの短編集は、どの話もダークな雰囲気の中に皮肉や人間の本質が描かれていてとても面白い。これは他の短編集に比べるとちょっと難解だったかな。 しかし、「敬老週間」はとても皮肉が込められたラストで笑っちゃうし、「スパルタ教育」「犬の世界」などは自分は大好物。「空の怪物アグイー」は長編「個人的な体験」の逆のモチーフでとても興味深かった。 大江作品は亡くなってから読み始めたけど、こうなったら全作品読破するしかないな。
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恐怖からの逃避と自己欺瞞、ここから個人的な体験に繋がるのか、すごい 街の愚連隊だった時分もかれはいかにも卑小な快楽にストイックに充足して生きていたにちがいないという気がするの。
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なかなか難解ではある。 最後の解説を読んで何となーくテーマが明らかになる。 人間の恒常的な状態は恐怖である。 現代人間の欠落した内面は、恐怖という非存在によって埋められる。→恐怖の発見と、その恐怖からの逃亡の拒否(という矛盾)によって人間は成立する。 ↑ 「恐怖の前での自己欺...
なかなか難解ではある。 最後の解説を読んで何となーくテーマが明らかになる。 人間の恒常的な状態は恐怖である。 現代人間の欠落した内面は、恐怖という非存在によって埋められる。→恐怖の発見と、その恐怖からの逃亡の拒否(という矛盾)によって人間は成立する。 ↑ 「恐怖の前での自己欺瞞」 が全体のテーマとして描かれているらしい。
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短編集。めちゃくちゃ心震え感動に胸打たれた!というものはなかったが、どれもそれなりに面白かった。『不満足』は暗すぎて好きではないが。 全体的に暗いのはいつも通りだが、それプラス諧謔、皮肉が効いている印象を受けた。 『スパルタ教育』、『敬老週間』、『アトミックエイジの守護神』は特...
短編集。めちゃくちゃ心震え感動に胸打たれた!というものはなかったが、どれもそれなりに面白かった。『不満足』は暗すぎて好きではないが。 全体的に暗いのはいつも通りだが、それプラス諧謔、皮肉が効いている印象を受けた。 『スパルタ教育』、『敬老週間』、『アトミックエイジの守護神』は特にそう。『スパルタ教育』は特に好き。「恐怖は負け犬でいるよりマシ」というメッセージがとてもストレートに描かれている。 『空の怪物アグイー』は、『個人的な体験』と同じテーマを扱いながらだいぶ軽やかだなと思った。 解説の「副題をつけるとしたら『現代の恐怖』」というのは的確だなと思った。様々な恐怖が描かれていて暗い。
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どれも安定して面白い貴重な短編集。 オーケンが文字で表したい事がしっかり明示され、最初期と比べるとライトさも感じる。彼の入門書として最適解かもしれない。
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30年ぶりの再読。いや、再再読か再々再読か。 いくつかの長編の間の短編集だったと記憶する。 物語世界としては、「不満足」は『個人的な体験』へ、そして「空の怪物アグイー」は『個人的な体験』の赤ん坊が死んだ、(火美子の言うところの)多元的な宇宙の話と受け取れる。 今から30年くら...
30年ぶりの再読。いや、再再読か再々再読か。 いくつかの長編の間の短編集だったと記憶する。 物語世界としては、「不満足」は『個人的な体験』へ、そして「空の怪物アグイー」は『個人的な体験』の赤ん坊が死んだ、(火美子の言うところの)多元的な宇宙の話と受け取れる。 今から30年くらい前の大学生の頃は大江健三郎の韜晦趣味の文体は非常に気持ちよくてしかしみずみずしさがあって中毒になったものだが、今読み返すとうじうじしてちょっと恥ずかしい。ヘンリー・ミラーの影響がそこかしこにうかがえてそれも鼻につく。読み手の私が年を取ったせい、おっさんになったせいだろう。 でも、その後の『洪水は我が魂に及び』『同時代ゲーム』など、彼の小説に対する向き合い方は好き(政治思想は大嫌いだが)。 というわけで次は『個人的な体験』を30年ぶりに再読しよう。昔付き合った女性に会うみたいでちょっとドキドキする(笑
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これはA子さんの恋人から。 作者の的確な描写により、体臭やら、汗臭さ、街の埃臭さなどの「生の人間」が生きる環境をジリジリと感じ、喫茶店でコーヒーとか軽食取りながら読んでいたら気分が悪くなってしまう。いや、僭越ながら…凄まじい褒め言葉です。 こう,その当時の時代の空気を想像する...
これはA子さんの恋人から。 作者の的確な描写により、体臭やら、汗臭さ、街の埃臭さなどの「生の人間」が生きる環境をジリジリと感じ、喫茶店でコーヒーとか軽食取りながら読んでいたら気分が悪くなってしまう。いや、僭越ながら…凄まじい褒め言葉です。 こう,その当時の時代の空気を想像するに十分な描写。もっと読んでみたくなりました。
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1950年代〜1960年代を舞台にした青春小説。 「異常な世界を平気な様子で生きなければならない時代」という意味では今とそうは変わらないのかもしれない。 この異常な世界に放り込まれた主人公たちを導くのが、いずれも精神異常者や地下社会の人間など「同じ時間を生きているのに、別の世...
1950年代〜1960年代を舞台にした青春小説。 「異常な世界を平気な様子で生きなければならない時代」という意味では今とそうは変わらないのかもしれない。 この異常な世界に放り込まれた主人公たちを導くのが、いずれも精神異常者や地下社会の人間など「同じ時間を生きているのに、別の世界を生きている人間」であるのが興味深い。 危ういバランスで存在している“この世界”と“もうひとつの世界”を私たちは多元的に生きているのだ。 「不満足」の、遺体を積んだオート三輪が早朝の町を駆け抜けるラストシーンは美しかった。
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「敬老週間」はちょっと大江らしくないので意外であったが、あとは読んでいてニヤニヤしてしまういつもの大江であった。「ブラジル風のポルトガル語」なんかはいつにも増して他者性というものがきわだって描かれていたように思う、けっこう好きな作品が多かった。
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大江健三郎、著。精神病院から逃げ出した患者を探して町をさまよう「不満足」、新興宗教団体から脅される記者の心理的葛藤「スパルタ教育」、寝たきりの老人に現代社会は明るいと嘘をつくアルバイト「敬老週間」、原爆被害者の孤児を引き取った男の真意「アトミック・エイジの守護神」、生まれたばか...
大江健三郎、著。精神病院から逃げ出した患者を探して町をさまよう「不満足」、新興宗教団体から脅される記者の心理的葛藤「スパルタ教育」、寝たきりの老人に現代社会は明るいと嘘をつくアルバイト「敬老週間」、原爆被害者の孤児を引き取った男の真意「アトミック・エイジの守護神」、生まれたばかりの障害児を殺した男が憑りつかれた赤ん坊の妄想「空の怪物アグイー」、突如消えた森林の奥の集落「ブラジル風ポルトガル語」、非行少年が住む世界「犬の世界」の七つの短編を収録。 長編「個人的な体験」や「万延元年のフットボール」を書く過渡期の短編集らしく、初期の作風から抜け出そうという工夫が感じられた。特に「敬老週間」「アトミック・エイジの守護神」ではショートショート的な分かりやすいオチが用意されていて意外だった。ただ大江健三郎にそういうものを期待していなかったので少し腑に落ちなかった。暴力にあふれているが衝撃的というより虚脱感のあるオチ、生物・無生物の境界を取り去ったような観念的な視点、鬼気迫る比喩、悪文と捉えられかねない奇妙な文章、それらがこの著者のオリジナリティーだろう。それを考えると「スパルタ教育」と「空の怪物アグイー」が抜きん出ている。同じストーリーで別の小説家が文章を書いても決してここまで奥深い解釈はできないだろう。
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