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真剣師小池重明 の商品レビュー

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30件のお客様レビュー

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 なんとも駄目な男が…

 なんとも駄目な男がいた。だが憎めなかった。幾度もトラブルを起こし、そのたびに平謝りするも、またトラブルを起こす。 が、将棋盤を前にしたときは別だ。多くの人々がその男の勝負に魅了された。 まさに人生を「疾走」していった小池氏の人生が綴られている。

文庫OFF

2022/11/30

実在した「真剣師」である小池重明の半生を綴った長編小説。 小池は将棋はべらぼうに強いが、ギャンブル、酒、女にのめり込む癖があっために、アマ棋士では当時最強だったにも関わらず将棋界から追放を喰らったという破天荒な人物であった。 「偏り」とは「才能」であると言える。何かにそこまで入...

実在した「真剣師」である小池重明の半生を綴った長編小説。 小池は将棋はべらぼうに強いが、ギャンブル、酒、女にのめり込む癖があっために、アマ棋士では当時最強だったにも関わらず将棋界から追放を喰らったという破天荒な人物であった。 「偏り」とは「才能」であると言える。何かにそこまで入れ込めること自体が並大抵のことではない。 人は長期的にも短期的にもさまざまなことにバランスを取ろうとする。しかし、それは凡人の発想で、圧倒的な才に恵まれてそれを自覚してしまった人は圧倒的にそれに偏ってしまう。将棋にしろ、スポーツにしろ、仕事にしろ、このように圧倒的にバランスを失ってしまう人は一定数存在する。 また小池の面白さはその人間臭さにある。高圧的で孤高を貫くのではなく、どこか小物で長いものに巻かれる性質がある。圧倒的な才能と人間臭さを併せ持つというこの二面性が彼をより味わい深い男にしているではないか。 自分はここまでバランスを崩すことがないから、このような人物が(多少誇張されているとしても)実在して、壮絶な人生を歩んだということが非常に興味深い。ふとしたときに自分の「まともさ」に失望することがあったが、本当にそのような「才能」ひいては「偏り」を持つことが幸せなことなのかを再考させられた。 「将棋盤の前に座っているときだけが幸せでした。盤の前に座り、駒の動きを見つめている。そこには他に何も介入してくるものがないのです。」本文より

Posted byブクログ

2021/01/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

 将棋の棋士については関心がなかったのだけど、ロマン優光さんがコラムで幻冬舎アウトロー文庫について触れていた際に大好きな本として揚げていらっしゃり、随分前に買った。そうして読んでみると、本当にめちゃくちゃで最高に面白い。将棋の世界で圧倒的に強いのにアマチュアで、プロをどんどんなぎ倒していくのが痛快だ。しかし人生については下手ばかり打ち、袋小路に突き進んでいくのが凄い。将棋の腕前でいくらでもうまくやれただろうし、他の博打にさえ手を出さなければなどと思うのだが、しかしそこで下手を打つところがチャーミングで、応援したくなる。才能とは、幸福とは、など大いに感じさせられる。

Posted byブクログ

2018/10/08

囲碁も将棋もプロになるのはとても厳しい/ 年齢制限が設けられ、小さな頃から地域では天才と称される子どもたちが全国から集められ、その中でも特に抜きんでる天才が生業とするものである/ そんなプロたちをも蹴散らしてきた在野の天才、自己流将棋、新宿の殺し屋、小池重明の生涯を描いた作品/ ...

囲碁も将棋もプロになるのはとても厳しい/ 年齢制限が設けられ、小さな頃から地域では天才と称される子どもたちが全国から集められ、その中でも特に抜きんでる天才が生業とするものである/ そんなプロたちをも蹴散らしてきた在野の天才、自己流将棋、新宿の殺し屋、小池重明の生涯を描いた作品/ 何年も将棋を触らず、肉体労働に従事、酒を飲んでろくに研究もしない、それでも毎日そればかりやっているプロに勝つ/ 日陰の天才/ すべての元凶は一番はじめの奨励会試験を飛ばしたこと/ もったいない/

Posted byブクログ

2018/09/30

小池重明さんの一生を描いた作品。天才とあほが入り乱れている人物。こんな人がいたんだなーって感じです。将棋に関しては天才であったのかな。今で言えば何か発達障害の様な障害があると診断されるかもしれない。 いずれにしても、勉強になる作品でした。

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2018/02/12

あまりにも将棋が強く、将棋以外がダメすぎた男小池重明。 「将棋の鬼」とまで評される強さで並み居るアマプロ強豪をなぎ倒していく対局録は痛快ながら、対照的にさっぱり上向かず放蕩に沈んでいく人生はもの悲しく思える。 しかし、品行方正に将棋の才能を生かし切る人生が小池重明にあり得たのかと...

あまりにも将棋が強く、将棋以外がダメすぎた男小池重明。 「将棋の鬼」とまで評される強さで並み居るアマプロ強豪をなぎ倒していく対局録は痛快ながら、対照的にさっぱり上向かず放蕩に沈んでいく人生はもの悲しく思える。 しかし、品行方正に将棋の才能を生かし切る人生が小池重明にあり得たのかと言うと、それも無かったのではないか。 団が結びに書き記した「人に嫌われ、人に好かれた人間だった」という一文が小池重明という男を評している。

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2017/11/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「小池は終生、放浪癖を抜けなかった天衣無縫の人間だった。女に狂い、酒に溺れた荒唐無稽な人生を送った人間だった。〜 とにかく、面白い奴だった。そして、凄い奴だった。」 と、ここまで団鬼六に言わせる小池重明。こういう人が存在していた事が時代だなと思うが、こういう人に生きる隙間がある時代はまだ世の中が清潔になりきっていない、生きやすい時代であったのでは無かろうかと思う。 こんな人生がホントにあるのかと驚きとともに、この本は一気に読めてしまう。

Posted byブクログ

2017/01/05

団鬼六による、将棋指し小池重明の評伝。 謙虚なようでどこか図太く、とにかく将棋が滅法強い一方で、生活は破茶滅茶、でもどこか憎めない、というキャラクターを描き出しています。 「こんな人が本当にいたんだ」と驚きながら読み進めていたら終わっていました。 将棋の出来ない私でも楽しめました...

団鬼六による、将棋指し小池重明の評伝。 謙虚なようでどこか図太く、とにかく将棋が滅法強い一方で、生活は破茶滅茶、でもどこか憎めない、というキャラクターを描き出しています。 「こんな人が本当にいたんだ」と驚きながら読み進めていたら終わっていました。 将棋の出来ない私でも楽しめましたが、将棋を知っていれば、よりその凄い指し口を実感出来るのかもしれません。 評伝でありながら、著者の小池重明への愛情も感じられる鎮魂歌のようでした。

Posted byブクログ

2016/07/13

どうしようもなく駄目な人間だが、人を惹きつけずに止まない魅力と才能を持つ男の伝記。自分はこういうアウトローの生き方に未だ憧憬を感じてしまう。どうして自分はまとも過ぎるのかとも思う。 2年以上将棋から離れていた晩年の小池が、アマ名人や奨励会会員などを次々と打ち破っていく「果たし合...

どうしようもなく駄目な人間だが、人を惹きつけずに止まない魅力と才能を持つ男の伝記。自分はこういうアウトローの生き方に未だ憧憬を感じてしまう。どうして自分はまとも過ぎるのかとも思う。 2年以上将棋から離れていた晩年の小池が、アマ名人や奨励会会員などを次々と打ち破っていく「果たし合い」のくだりは何度読んでもぞくぞくする。そして通奏低音のような、鬼六先生の無頼漢に対する優しさ。どんなに酷い話であっても、それがどこか喜劇的な色彩を伴うのは、この底無しの優しさによるものだろう。

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2016/03/06

面白い。小池重明の幼少期から団鬼六に出会うまでのストーリーも面白いし、出会ってからの作者視点で描かれる小池像もストーリーも面白い。 この男は人格が破綻していると言うよりは、単に自制心がなさすぎるんだと思う。そして将棋以外に関する知識、とりわけ人として幸福を追求するために必要な知識...

面白い。小池重明の幼少期から団鬼六に出会うまでのストーリーも面白いし、出会ってからの作者視点で描かれる小池像もストーリーも面白い。 この男は人格が破綻していると言うよりは、単に自制心がなさすぎるんだと思う。そして将棋以外に関する知識、とりわけ人として幸福を追求するために必要な知識が圧倒的に少ないんだと思う。誰かがそれを教えてあげることができていれば、、いや、人生の責任は自分自身で取るしか無い。可能性の話をしても仕方はない。才能があるだけに残念である。しかしその才能自体が、彼の破綻した人格と表裏一体なのかもしれないということを考えると、その表裏一体性こそが彼の魅力そのものなんだろう。実際に彼と交友関係を持ちたいとは微塵も思わないが、物語の主人公としては魅力的であり、彼に対してではなく、彼の物語そのものに対して奇妙な感慨を覚えずにいられない。

Posted byブクログ