真剣師小池重明 の商品レビュー
おもしろい人の人生だけど、三十一番勝負の方を読んでいたので、二度目という感じ。 もっと小池将棋についての評論が読みたかった。
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団鬼六と言えばSMというイメージしかないのだが、趣味の将棋では89年から将棋ジャーナルのオーナーとして93年まで私財をはたいて発行を続けた。その団が6年ぶりに小説家として復帰したのが92年に亡くなった新宿の殺し屋こと真剣師の小池重明の懺悔録「流浪記」を基にした本作だった。余命1年...
団鬼六と言えばSMというイメージしかないのだが、趣味の将棋では89年から将棋ジャーナルのオーナーとして93年まで私財をはたいて発行を続けた。その団が6年ぶりに小説家として復帰したのが92年に亡くなった新宿の殺し屋こと真剣師の小池重明の懺悔録「流浪記」を基にした本作だった。余命1年と宣告された小池に懺悔録を書かせ将棋ジャーナルに連載したのもその団の仕掛けだった。団と小池の付き合いが始まったのが88年ごろで、冷静に見れば団はいいカモにされているのだが、破滅型の小池を見捨てきれなかったようだ。 中学生で将棋を覚えた小池は高校に入ると学校に行かずに将棋にのめり込む。ほぼ一年で三段になり中部日本学生将棋選手権では大学生も破り優勝した。小池の最初の真剣(賭け将棋)は通いつめた将棋クラブで席主の娘に片想いし、その娘と仲の良い大学生に彼女をかけての勝負を挑んだのがきっかけだった。結局不良高校生の応援団を引き連れた小池は勝負には買ったが真剣禁止の将棋クラブからは出入り禁止にされ、彼女はのちにこの大学生と結婚している。 高校を中退し売春宿の番頭を振り出しに喫茶店、酒場などで働くが長続きしない。岐阜のホテルに勤めた際には浮気をするオーナーの当て付けにとオーナーの奧さんに誘惑され関係を持つのだが、わざわざそのことをオーナーに言いつけ、逆にそのまま関係を続けろと言われたのに逃げ出してしまう。後にも度々仕事場から金を持ち出したり、未亡人や人妻と3度駆け落ちしているが金と女にはとにかくだらしない。 酒にもだらしなく団には娘に会いたいと泣きつきもらった金をその日のうちに飲んで使い果たしてしまうなど、飲みだすとコントロールが効かなくなる。大山名人との対局前夜には深夜営業のスナックでビールを飲み始めて口論になったボーイを殴り、留置場から対局場へ二日酔いで向かうのだが角落とは言え大山名人の考慮時間74分に対しわずか29分しか使わず完勝してしまう。この辺りが破滅型の天才と言われる所以だ。 岐阜から戻った小池は名古屋の将棋クラブに居候をしながら真剣師と交流を持ち始めこのころ将棋の腕を上げていく。21歳でアマ名人戦の愛知県代表になりこの年名人になった関則可を頼って東京に出将棋修行を始める。奨励会入会試験の口利きを松田八段の推薦を取り付けたのはいいがキャバレーの女に入れ込んで道場の金を使い込み、松田にも関にも顔を合わさず名古屋に逃げ帰ってしまう。一定期間は真面目に働くのだが周りが信頼し始めたころに酒や女に溺れるとコントロールが効かなくなり逃げ出すしかなくなってしまう。時には世話になった店の金や車を持ち出して逃げるのだが、一応借用書だけは書いておくあたり弱い自分に対して言い訳を作っている。 小池が新宿の殺し屋として名を挙げ出したのは名古屋で働いた葬儀屋をその仕事で知り合った未亡人と駆け落ちし再度東京に出てきてからだ。32歳になった小池は鬼加賀と呼ばれるアマ名人にもなった大阪の真剣師と死闘に挑んだ。初日勝てば50万円の5番勝負、二日目は1番10万の10番勝負を戦い、トータル7勝7敗ながら初日の勝ちが効いて加賀は小池を日本一の真剣師と認めることになった。翌80年からは2年連続でアマ名人を取り表の世界でも日本一となるとプロにも連勝し1982年には棋聖を取った森雞二に角落、香落ち、平手と3連勝をする。将棋は勝ち続けるが生活は破綻しており出入りしていた将棋酒場の金を持って女と逃げ出し、さらにはサラ金地獄。賞金百万円の大会で優勝してもその場で借金取りに抑えられてしまう。 このころ再度プロ入りの話が出たのだが棋士会は反対し、更には新聞にに寸借詐欺の記事が出てアマチュア将棋界からも追放された。子供の将棋道場を作る、プロになるために紹介料がいると言って集めた金はすぐに使い込んでしまうのだった。この時小池は35歳になっていた。そしてまた数年間将棋界から姿を消した。 小池の最後の公式戦は亡くなる前年で相手は竜王戦でプロ相手に3連勝をしたアマ名人の天野高志、結果は小池の2連勝だった。すでに肝硬変を発症していた小池は対局数日後にまた血を吐き、負けた天野は準決勝で丸山忠久相手に必勝の将棋を落とした。今やコンピューターが強くプロでもなかなか勝てなくなってきているが20年前はまだこういう時代だったのだ。
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・ストーリー 最初に,最後を匂わせて,ストーリーテラーから徐々に離れていく,という書き方は読者をひきつける。 ・キャラクター~テーマ~世界観 この本は小池重明のキャラクターだけでもっている。 モーツァルトを思わせる破滅型の天才。人間として出来損ないであるが,出来損ないであるという弱さが,そして絶対に将棋だけは負けないという矜持が背反し,人を引き付ける魅力となっている。ある人は,こんな人がプロに勝ちまくっていることに痛快感を覚えるのだろう。ある人は,このような男に嫌悪を憶えるだろう。 しかし,議論を呼んでもそれこそが人間的な魅力であり,これが本作のテーマであり,団鬼六の愛する世界観でもある。。 勝負の中だけにしか生きられない人種。そういう男が勝負の場さえ奪われ,真剣に生きられなくなった男の悲哀。男ならわかるところがあるはずだ。
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プロ棋士になるには厳しいルールがある。プロ棋士になれなかった真剣師の小池重明は、将棋ではアマはもちろん、プロにも負け知らずの生活破綻者なのである。将棋は確かに強いのだが、飲む打つ買うのデタラメな生活を続ける。結局、そんな生活にも終止符が打たれることになる。生涯、大好きな将棋との...
プロ棋士になるには厳しいルールがある。プロ棋士になれなかった真剣師の小池重明は、将棋ではアマはもちろん、プロにも負け知らずの生活破綻者なのである。将棋は確かに強いのだが、飲む打つ買うのデタラメな生活を続ける。結局、そんな生活にも終止符が打たれることになる。生涯、大好きな将棋との縁が切れない、彼の将棋を愛しつづける姿に感動を覚えた。
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もう何度か読んでいる本だが、ときどき読みたくなる。 こんなにわかりやすく、かつ、とてつもないスケールで破綻する人なんて、他にいないだろう。誰にでもできることではない。そこに、憧れのような気持ちを持ってしまう。
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勝負の世界で強い人が生き残る世界にいるにもかかわらず、強いが故に破滅的な人生を歩んでしまった小池氏。 競馬で100万円買った翌日に今度は競馬で全額すって、その翌日には飯場での肉体労働に身を置くというくだりが凄まじ過ぎる。 自分勝手な行動で周囲に迷惑をかけ続ける小池氏ですが、読んでいても全く不快感を覚えず、逆に共感を覚えるのは、書き手の思い入れから来るものなのかもしれない。
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大崎善生「赦す人」を読んで、小池重明という人に団鬼六氏以上の強い印象を受けた。まさに破滅型の天才。本書は、期待に違わぬ達意の文章で、紛れもない天分を持ちながら、ついにまっとうな道を歩むことなく死んでいった愚かで愛すべき男の人生を浮かび上がらせている。 本書を読むと、少し前までは...
大崎善生「赦す人」を読んで、小池重明という人に団鬼六氏以上の強い印象を受けた。まさに破滅型の天才。本書は、期待に違わぬ達意の文章で、紛れもない天分を持ちながら、ついにまっとうな道を歩むことなく死んでいった愚かで愛すべき男の人生を浮かび上がらせている。 本書を読むと、少し前までは将棋界というのも今とはずいぶん違ったものだったのだなあということがよくわかる。谷川名人、そして羽生名人の誕生というのがいかに大きな出来事だったのか、門外漢の私にも少し理解できたように思った。 小池重明氏はちょうど時代の変わる潮目に巡り合わせたということなんだろう。彼がもう少しだけ後に生まれていれば、棋界を席巻したのではないだろうか。いや、やっぱり無頼の性は変えられなかっただろうか。そんなことを考えずにはいられない。
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これは傑作だ。そして怖い。まだこれが途中団鬼六が茶化して書いたみたいに、時代劇なら良かった。そうではなくて、舞台が昭和や平成で、場所は新宿や横浜や所沢だ。 私はこういう踏み外した人生が怖い。
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賭け将棋で収入を得て、生計を立てる真剣師。プロも何人も破り、史上最強の真剣師だった小池重明を描いたノンフィクション。天才であると同時に、将棋以外は何をやってもダメな超破滅型人間。「破滅の美」をまさに体現している。破滅の美に若干の羨望を覚えると共に、教育の重要性を感じる一冊。子供に...
賭け将棋で収入を得て、生計を立てる真剣師。プロも何人も破り、史上最強の真剣師だった小池重明を描いたノンフィクション。天才であると同時に、将棋以外は何をやってもダメな超破滅型人間。「破滅の美」をまさに体現している。破滅の美に若干の羨望を覚えると共に、教育の重要性を感じる一冊。子供には読ませちゃダメ。
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まっとうに生きるチャンスは多々あったのに残念だ。 才能があっただけに悔やまれる人生だったと思う。 表現を変えれば「健康的・建設的な人生」と「そうでない人生」との わかれ道に何度もさしかかり、そしてみごとにそうでない人生を 選択してしまう。 これは偶然ではないと思う。 感情的な...
まっとうに生きるチャンスは多々あったのに残念だ。 才能があっただけに悔やまれる人生だったと思う。 表現を変えれば「健康的・建設的な人生」と「そうでない人生」との わかれ道に何度もさしかかり、そしてみごとにそうでない人生を 選択してしまう。 これは偶然ではないと思う。 感情的な生き方から、冷静に人を洞察し、 周囲に調和する生き方に変わる。 すなわち社会性を獲得することが人としての成長だとするなら、 彼に何があれば建設的な人生を選択できたのか。 もう一回読み返してみたい。
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