シシリエンヌ の商品レビュー
終始エロティックな描写で脳みそを溶かされる一冊。延々と続く妖艶な描写に気が狂いそうになるものの、これほど一途に愛されてみたいと強烈に焦がれてしまう。絶対に好き嫌いが分かれる作品だが、忘れられない香水のようにずっと余韻が残り続ける私にとっては特別な作品。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ここまで物語の前半と後半で印象の違う小説はそうないと思う。 今まで自分が読んできた嶽本野ばら作品の中でも、秀でて告白ぐあいがすごい。どうしてこんなに倒錯した美しい世界を書くことが出来るのだろう。自分にはどう足掻いたって届きそうもない恋物語が、この小説にはある。それに恍惚として、ちょっと哀しくなる。この感覚は一生忘れない。自分は嶽本野ばらさんの作品の他に、醜いとみなされているものに具備する美しさを赤裸々に語れる作品を知らない。 印象に残ったのは「僕」と「館主」のマリアについての会話と、「貴方」がyohji yamamotoを着る理由、そして、「貴方」の「僕」に対する思いだ。 ブルーフィルムに生きるアングラ世界の住人、「館主」に「僕」は「最低ですね」と言うが、読んでいて自分もそう思った。しかし、「館主」が話を進めていくにつれ、彼の「美学のあるエロス」を聞いていくにつれ、印象がガラリと変わっていく。醜いと思っていたものが、突如、眩しいまでの美しさをまとい始める。 「貴方」は「僕」を閉じ込める監獄であり続けた。「僕」は「貴方」を憎み、愛し、求めた。が、それゆえに「貴方」はまた、不安になっていったと語る。永遠の幸せを信じることが出来なかった、と。やはり「貴方」に対する自分の印象も、ここでガラリと変わる。そして「貴方」――「永久に枯れない薔薇」は、気高くyohji yamamotoをまとった女性であり続ける。このような嶽本野ばら独特の、「貴女」=yohji yamamoto といったファッションの役割が、ものすごく好きだ。 今、この本にはたくさんの付箋が貼られている。すべて自分が興味を持った、或いは心を動かされた会話や表現だ。これ以上語ることも難しい。今はとにかく余韻に浸りたいような気がする。そこで、この小説で心に残った文章を引用して、強引であるけれども感想としたい。・・・・・・本当に大好きになった本でした! ありがとうございました! 『背が高い、顔がいい、手先が器用だ。――そのようなことと同一に、ハンディキャップを飽くまでポジティブに捉えようとする者達がいる。館の女優達は皆、そうなのだ。彼女たちは女優として生きることに己の誇りを持っている。彼女達は強い。しかしそれは最初からあったものではないでしょう。誇りと強さを内に秘めるまで、どれだけの煩悶と挫折、葛藤と自己嫌悪を乗り越えてきたことか。彼女達は美しい。何よりも美しい。』(本文より)
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信頼を置いている野ばらちゃん作品。 今回は他の作品に比べてかなりハードな性描写で休憩を挟みながら読んだが、「貴方」の痛いほどの女らしさが眩しくて心を奪われた。 見返すと殆どのページが性描写。(ただし、厭らしさ<耽美) こんな内容なのに(だからこそ?)愛してると一言も言わなかっ...
信頼を置いている野ばらちゃん作品。 今回は他の作品に比べてかなりハードな性描写で休憩を挟みながら読んだが、「貴方」の痛いほどの女らしさが眩しくて心を奪われた。 見返すと殆どのページが性描写。(ただし、厭らしさ<耽美) こんな内容なのに(だからこそ?)愛してると一言も言わなかったのが最初からねじ曲がった愛だなーと思う。 「貴方」は他の人ができないことを簡単にやってのけて、他の人が簡単にできることができないタイプの人間かな。 また、最初にいた主人公の彼女も中々に大人だと思った。 プラトニックラブがあるように、性的な魅力だけを愛する愛を肯定しているあたり。 やっぱり魅力的な女の人は考えすぎて何考えてるかわからない人。 あと、野ばらちゃんお得意のメゾンの名前を並べる表現、私はあれ大好きです。 野ばらちゃんの作品を読んでいると現代でよく言われている「モテる女の子の特徴!」みたいなのがよりいっそう馬鹿馬鹿しく感じてくる。 本当にモテる「女のコ」はそんなんじゃないのにねーって野ばらちゃんと語り合いたいな。 周りの人に勧めることは絶対にしない、わかる人に分かればいい作品。 野ばらちゃん作品を一通り読んだらまた戻ってくると思います。
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性描写は直接的で過剰であり,好き嫌いがはっきりわかれるところだが,その中に抒情や愛があることはよくわかる。 しかし,この作品の根幹であるはずのセンスの表現がとても残念。服飾や化粧品に対するこだわりを通じて美意識を表現したいのだろうが,その表現方法がブランドネームを横文字で示すとい...
性描写は直接的で過剰であり,好き嫌いがはっきりわかれるところだが,その中に抒情や愛があることはよくわかる。 しかし,この作品の根幹であるはずのセンスの表現がとても残念。服飾や化粧品に対するこだわりを通じて美意識を表現したいのだろうが,その表現方法がブランドネームを横文字で示すという程度かと思うとかなり興ざめだった。
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再読。私の感性が変化し、この世界観がわからない、理解できないものになってしまった。ただのエロ本としか思えず、後半は特に気持ち悪くて嫌な読後感。メリザンドの行動も、昔は切なさに想いを馳せられたけど、今は理解不能でしかなくなった。 嶽本野ばらが、大人になった私には必要なくなったのだと...
再読。私の感性が変化し、この世界観がわからない、理解できないものになってしまった。ただのエロ本としか思えず、後半は特に気持ち悪くて嫌な読後感。メリザンドの行動も、昔は切なさに想いを馳せられたけど、今は理解不能でしかなくなった。 嶽本野ばらが、大人になった私には必要なくなったのだと実感。
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詳細に描写される服装の描写といい、てんこもりの性描写といい、こんなにも過剰な文章を読んだというのに、結末にはある静けさを感じる。思い出が美しいまま残るように、「終わる」ことによってもたらされる完成。
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「永遠の幸せではなく永遠の不幸」 本当の純愛とはこういうものなのかもしれない。 「貴方」は最高に残酷だけど、最高に魅力的な女性だと感じた。 ルージュとネイルと下着へのこだわりとか本当に素敵。 性描写が長すぎて不快ではないが読むのに疲れた。
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野ばら作品で初の官能小説だそうで、ものすごく期待して読んだ。 でもエロティシズム全開の表現は、粘膜や粘液ばっかり、 ぬるぬる・べとべと感がちょっとイヤ。 松浦理英子『親指P』の「フラワー・ショー」による パフォーマンスには心踊るけど、 この館に住まうハンディキャップドの女...
野ばら作品で初の官能小説だそうで、ものすごく期待して読んだ。 でもエロティシズム全開の表現は、粘膜や粘液ばっかり、 ぬるぬる・べとべと感がちょっとイヤ。 松浦理英子『親指P』の「フラワー・ショー」による パフォーマンスには心踊るけど、 この館に住まうハンディキャップドの女優たちの仕事には萎え萎え。 「エロチカ」と「ポルノ」の違いかなあ。 この人たちの身につけるものへのこだわりは、 いつもながら見習いたいと思う。 Sabbia Rosaのランジェリーは縁がないだろうけど、 Yohji Yamamotoは好きだったな、あの時代に戻りたいな。 結末の圧倒的な不条理さには思わず言葉を失います。 これって愛? 愛の結末なの? …あたしにはわからないし、わかりたくない。 (2006年12月作成レビュー)
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すっかり忘れていたんだけど、読んでみたら既読だった。 それも、3分の1くらい読むまで気付かずに読んでいた。 しかも、読みながら、「前に読んだことのある本に雰囲気が似てるなぁ。あの本はなんだったっけ・・・?」と思い出そうとしながら読んでいたのに、『あの本』こそがまさにこの本だったこ...
すっかり忘れていたんだけど、読んでみたら既読だった。 それも、3分の1くらい読むまで気付かずに読んでいた。 しかも、読みながら、「前に読んだことのある本に雰囲気が似てるなぁ。あの本はなんだったっけ・・・?」と思い出そうとしながら読んでいたのに、『あの本』こそがまさにこの本だったことに気付かずに読んでいたという・・・
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これはこれは…。 こっそり部屋で読まなきゃいけない類い… でも愛なのかも、これはこれで。 主人公「僕」の出身地、愛用香水、現在の職業までも野ばら氏とシンクロさせてあるのはどんな意図故? お洋服への情熱も相変わらず冷めやらないご様子。
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