村上春樹にご用心 の商品レビュー
もしあなたがプロヴァイダの解約をしようとする。 本棚の奥底から引っ張り出してきたマニュアルに記載されたダイヤルに電話をかけてみたら、あらかじめ録音された人の声が聞こえてくる。 その清く正しいリズムの案内を聴き終えて促されるままに番号を押す。 すると、また清く正しいリズムの音声が再...
もしあなたがプロヴァイダの解約をしようとする。 本棚の奥底から引っ張り出してきたマニュアルに記載されたダイヤルに電話をかけてみたら、あらかじめ録音された人の声が聞こえてくる。 その清く正しいリズムの案内を聴き終えて促されるままに番号を押す。 すると、また清く正しいリズムの音声が再生されて彼女が話し終えるのを待つ。 村上春樹の解説本とはそういったものだ。 ひとつの小説から世の中の理へと帰納する。 あるいは、文学の本質に迫ろうとする本は解説本というだけの価値では留まらない。 そして、それがこの本だ。
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>2/26 ウチダタツルはおもしろい。 内容はもちろん文章が。よみものとして。 よみやすく、受け入れやすい。 それは「これってあれそれなんだってー。なぜかは知らないけど」っていう、一般的に答えを出すべきところをぼかしている、というかわからないままにしているところにあるのかなと思っ...
>2/26 ウチダタツルはおもしろい。 内容はもちろん文章が。よみものとして。 よみやすく、受け入れやすい。 それは「これってあれそれなんだってー。なぜかは知らないけど」っていう、一般的に答えを出すべきところをぼかしている、というかわからないままにしているところにあるのかなと思った。 ええ!?ってなるより、そりゃそだよねって思って、受け入れるのだ。 普通だったら、そこわかんねえのかよ!!って言いたくなるけどね。 >3/3 おもしろかったー。胸に迫るものがあった。 p204「『邪悪なものが存在する』ということ」や p227「ふるさとは遠きにありて思ふもの」や p227「「なんだかよくわかんないけど、だいたいこんな感じ?」」など。 そうなんだよねー!それあるあるってちょっと感動してしまった。 となると私って結構考える力(感じ方?)をもっているんだろーか?わかんね。 んで、ウチダタツルは凄い人で文章もおもしろいんだけど、更に上もいる。 2/26で書いた(思った)ようにつきつめたところで、彼は「なぜかは知らないけど」とか「ぼくはわからないけど」とそこで止まる。 うん、それが「不能の感覚」とか「知の節制」なのだろうけど、そこを飛びこえちゃう人も、いるんだろう。 それが、次世界の知の枠組みをつくる人。 それとも―それこそが新しいフレームなのだろうか。 ちょっとワクワクするなぁ。 そしてこれにワクワクすることができる自分ってどの程度にいるの?って思わずにはいられない。 そしてそして思った瞬間、自分の小ささにしょんぼりするのさ。 (※2010年手帳より)
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語り口は易しく面白いが、言っている内容は難しい。久しぶりに知的な快感を味わわせてくれた。村上春樹論で正鵠を射た感じを与えられたのは初めて。
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村上春樹作品をめぐるエッセイのような。 著者さんの日常も楽しく読むことができつつ、 村上文学の秘密を次々に教えてもらえるお得な本。 ひとつの本質的なことがらについても視点やたとえを少しずつ変えて ぐるりと書かれている感じが面白くってわかりやすい。 これまで村上春樹さんの作品を、...
村上春樹作品をめぐるエッセイのような。 著者さんの日常も楽しく読むことができつつ、 村上文学の秘密を次々に教えてもらえるお得な本。 ひとつの本質的なことがらについても視点やたとえを少しずつ変えて ぐるりと書かれている感じが面白くってわかりやすい。 これまで村上春樹さんの作品を、 読んで気持ちがよくて、「読みたい何か」が書いてあるような・・ くらいの理由で楽しんでいたけれど、教えてもらうと改めて おお・・そうだったのか~、と感動、たくさん付箋がついた。 言葉の使い方から倍音的な要素、「雪かき」や共同体の捉え方など。。 でも、そんな村上作品の秘密も探せばまだまだありそうな気が、 著者さんの力の抜けた語り口調を読んでいるとしてくる。 文学者である著者さんが村上春樹さんをとても信頼していて、 一読者としても作品が大好きなんだな、と伝わってきた。
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村上春樹解説というよりは内田樹の解釈雑文。けどおもしろいし村上春樹のインタビューやらなんやらも網羅しており過去の村上作品に新たな解釈のヒントをくれる。とりあえず村上作品読み返したくなったのだから成功してる本と思う
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解釈というより、この人はフィーリングを大切にしているんだということが分かる。 ところどころあれ?と思うところはあれど、新しい発見もいっぱい。 今は日本の批評家も親村上になってきてるけど…それは2006年くらいからなんだよなあ。
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何よりもまず前書きが面白い。 はじめに――― ノーベル文学賞受賞のヴァーチャル祝辞 そういう表題の下で、ユニークな前書き文が始まっている。2006年の10月、ノーベル文学賞者発表の前日に、あるマスコミから依頼されて記したというコメントである。村上春樹党の党員としての凛とした筆...
何よりもまず前書きが面白い。 はじめに――― ノーベル文学賞受賞のヴァーチャル祝辞 そういう表題の下で、ユニークな前書き文が始まっている。2006年の10月、ノーベル文学賞者発表の前日に、あるマスコミから依頼されて記したというコメントである。村上春樹党の党員としての凛とした筆致がとても印象的である。 この書こそ世に云う「村上春樹心酔派」の筆頭とも目されている評論家による「村上春樹論」であり、何故に春樹さんは凄いのかということを手を変え品を変えて特異なる緩い筆致で読者を巻き込みながら啓蒙しようという魂胆を(たぶん)隠し持った1冊となっている。 やはりと云うべきなのだろうか、最も興味を引いたのが、村上春樹さんの担当編集者であった安原顕氏に関するくだりである。なんと、春樹さんの生原稿を質屋だかそれに類する店に持ち込んで換金したということを詳らかにしているのだ。公となるこのような著作の中でこの様な個人的とも思えるエピソードを開陳したという意味は大きいと見るべきだろう。内田さんは安原氏に対しては相当怒っていると見えるのである。
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初内田樹。よく「武田鉄矢の今朝の三枚おろし」に名が出ていたが、読んだのは初めて。なんか、良かった。難しいから、理解にはほど遠いけど。もっと、頭よくなりたいな…
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村上春樹は小説には「うなぎくん」が必要なのだという。 作者と読者、そしてうなぎくんの三者協議。 みんな読者と作家のあいだだけで、ある場合には批評家も入るかもしれないけど、やりとりが行われていて、それで煮詰まっちゃうんですよね。 でも、3人いると、二人でわからなければ「じゃ、ちょ...
村上春樹は小説には「うなぎくん」が必要なのだという。 作者と読者、そしてうなぎくんの三者協議。 みんな読者と作家のあいだだけで、ある場合には批評家も入るかもしれないけど、やりとりが行われていて、それで煮詰まっちゃうんですよね。 でも、3人いると、二人でわからなければ「じゃ、ちょっとうなぎに訊いてみようか」ということになります。するとうなぎが答えてくれるんだけど、おかげで謎がよけいに深まったりする。 うなぎって、NLPでいうパートとかフォーカシングでいうフェルトセンスみたいなものなのだろうか。
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わたしは中1から村上春樹が好きで読んできたし、何度も何度も読んだけど、わたしの読み方はまだまだだなあと思った。 こんな読み方があったんだ、と驚くと同時にこれだけ何度も繰り返し読んで来てもまだ新しい面がいくつもある春樹の小説は本当にすごいと思う。春樹の小説が好きなのは何度読んでも違...
わたしは中1から村上春樹が好きで読んできたし、何度も何度も読んだけど、わたしの読み方はまだまだだなあと思った。 こんな読み方があったんだ、と驚くと同時にこれだけ何度も繰り返し読んで来てもまだ新しい面がいくつもある春樹の小説は本当にすごいと思う。春樹の小説が好きなのは何度読んでも違った発見があって、何度読んでもわからなくて、でも居心地が良いから何度でも読めるためだと思う。 しかし内田さんが春樹論を書いてるとは知らなかった。ソシュールについての文章を読んで、この人は頭も人も良さそうだと思っていたが、無意識のうちにわたしの好きな価値観の匂いを感じ取ってたのかも。やっぱり春樹の小説が無意識レベルまで深くわたしの根っこに関わってるんだと思う。 内田さんのわかりやすくリベラルでユーモラスな語りもとても良かった!素敵な人だなあ。他の作品も読みたいです!
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