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忘却の河 の商品レビュー

4.4

40件のお客様レビュー

  1. 5つ

    23

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

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2026/03/27

輪廻から脱線したおっさん 一言で言えば、暗い作品。まず何より主人公が暗い。この作品は家族4人の独白談を集めた構成になっており、最初と最後の章を語る男、つまりお父さんが主人公だと読めるのだが、お父さんの性格があまりに暗いために、作品全体がどうしようもなく暗い。  お父さんは、子供...

輪廻から脱線したおっさん 一言で言えば、暗い作品。まず何より主人公が暗い。この作品は家族4人の独白談を集めた構成になっており、最初と最後の章を語る男、つまりお父さんが主人公だと読めるのだが、お父さんの性格があまりに暗いために、作品全体がどうしようもなく暗い。  お父さんは、子供が間引きされていた東北の田舎の家で生き残り、東京の家に養子に出されて成人した。若い頃には、恋仲になって妊娠させた看護婦を自殺に追いやってしまい、妻との間に最初にできた子は生後間も死んでしまい、五十半ばの現在になって、堕胎したばかりの女を行きがかりで世話するようになってしまう。いつも意識を過去と交差させているから、自分でも生きているのだか死んでいるのだか分からない。輪廻から脱線して状況をつかめていないような、おっさんなのである。  こういうお父さんの独白から始まる小説を、読み続けるのはちょっと難儀だった。妻や二人の娘の話はまずまずテンポ良く読めるので、こちらを物語を進める芯にした方がきりりと締まっただろうに。おっさんの話はこってり凝縮させて、暗闇の中にちらりと見えるぐらいである方が、深みが出たのではないかと思う。  現実の世界でも、おっさんの話は鬱陶しいのだよ。自分がおっさんだから余計にそう思う。

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2024/01/26

冥府の河の名前で、死者はこの水を飲んで知覚の記憶を忘れるという――。愛の挫折とそのないことに悩み、孤独な魂を抱えて苦しみを希求するまたの葛藤を描いた。

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2024/01/10

人は人が亡くなった時に、思い出すようにして愛を確かめる。人類の死は繰り返されてきたけど、愛する人の死は個人的に確かな「死」また「愛」として訪れる。そんなメッセージを僕は受け取りました。 生きるとは何か、愛とは何か、このありきたりな問いを新しい形で投げかけてくれる一冊です。

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2022/08/09

セピア色の、どこか寂しくて、だから純潔な心の在り方が、さらさらと水のように流れていく。確かに人の記憶は沈殿そのものだと思う。次第にそれ自体がその重みに耐えかねて、静かに沈んで忘れられてゆく。水面の震えに応じて、時々浮いてはまた沈んで。 心に残るフレーズも時折。大好きな小説。 蒼く...

セピア色の、どこか寂しくて、だから純潔な心の在り方が、さらさらと水のように流れていく。確かに人の記憶は沈殿そのものだと思う。次第にそれ自体がその重みに耐えかねて、静かに沈んで忘れられてゆく。水面の震えに応じて、時々浮いてはまた沈んで。 心に残るフレーズも時折。大好きな小説。 蒼くて、深くて、涯がなくて。

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2022/07/08

高校生の時に出会って情景を気にいってしまい購入した。話の起伏としては普通だが印象的な描写が多く、お気に入り。

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2022/01/02

『草の花』『海市』につづいて福永先生の作品を読むのは三冊目。 連作短編集で、父の語りに始まり娘二人、娘の知り合い、妻など家族それぞれの立場からそれぞれの悩みを描き、ラストはまた父の語り。語り手は変わるが物語は進行しています。 一読しただけでは語るのが難しくて、読後もなかなか感想...

『草の花』『海市』につづいて福永先生の作品を読むのは三冊目。 連作短編集で、父の語りに始まり娘二人、娘の知り合い、妻など家族それぞれの立場からそれぞれの悩みを描き、ラストはまた父の語り。語り手は変わるが物語は進行しています。 一読しただけでは語るのが難しくて、読後もなかなか感想を書けずにいたので、また再読したいとおもいますが、冒頭とラストの父の章が最も印象的でした。これ昭和39年に書かれたんですよね、始まり方が斬新でした。戦死した友人の雨天下の瞳の描写や、賽の河原を訪れる場面等々、福永先生ならではの美しい描写。 一言では語れないので、何度も読み込んで理解したい作品です。 個人的には『草の花』のようにストーリーがわかりやすく、せつなさが前面に出ている作品のほうが好きですが、福永先生が伝えたいことは『忘却の河』に描かれていているような哲学なのだろうなと思います。

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2021/09/27

とにかくすごい小説だった。 寂しくて哀しくて、過去と現在が入り乱れる、揺蕩うような物語。文章がひたすらに美しい。 忘れたまま生きていくということ。 父親のパートでの、こちらの文章が印象的だった。 「私が物語を選んだのではなく、物語の方が私を選んだのだ。」 作中ではサルトルの劇が演...

とにかくすごい小説だった。 寂しくて哀しくて、過去と現在が入り乱れる、揺蕩うような物語。文章がひたすらに美しい。 忘れたまま生きていくということ。 父親のパートでの、こちらの文章が印象的だった。 「私が物語を選んだのではなく、物語の方が私を選んだのだ。」 作中ではサルトルの劇が演じられるが、まさにサルトルのいう、「地獄とは他人である」という世界をこの小説で描こうとしたのかもしれない。 立体的に描かれていく家族の歪みと澱。生きることの罪。捨てていくこと。サルトルの「他者」。お見合い結婚の時代だからこそのままならない諸々のこと。秘密。賽の河原。愛と死。忘れるけど忘れないこと。死に近いから愛すること。 ーー登場人物、それぞれ皆好きになった。 なかでも、人妻でありながら出征前の青年と愛しあった母の過去についての話が好き。 「このまま死んでもいい」 と言って、人を愛する。それでも死なずに生きていかないといけない。 人は人を愛した瞬間に死ぬようにできていたらいいかもしれない。 そんなことを思った。 惜しむらくは、全体的に素晴らしいだけにラストが少々陳腐に感じてしまうところかなあ…。 しかし、素晴らしく言葉の美しい小説だった。

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2021/12/22

会社の社長を務める男が、豪雨のなか倒れていた女を発見し、彼女を部屋に送り届けることになります。その後、なりゆきで彼女の部屋を何度か訪れることになった男は、彼女が部屋を出たあともその部屋を借りて、ときおり一人だけの時をすごしていました。 男には病気で寝たきりの妻と、二人の娘がいま...

会社の社長を務める男が、豪雨のなか倒れていた女を発見し、彼女を部屋に送り届けることになります。その後、なりゆきで彼女の部屋を何度か訪れることになった男は、彼女が部屋を出たあともその部屋を借りて、ときおり一人だけの時をすごしていました。 男には病気で寝たきりの妻と、二人の娘がいました。妻は、人間味の感じられない夫に不満をいだいており、娘たちも父親とのあいだに温かい心の交流を感じていません。じつは男は、かつて愛した一人の女性を死に追いやってしまった過去をもっており、そのことが彼の結婚生活に影を落としていました。一方で、妻も夫のいない戦争中に一人の若い男性に想いを寄せた過去があり、そんな二人のあいだで娘たちも自分の出生についてひそかな疑いをいだいていました。 次女の香代子が大学の舞台でサルトルの『出口なし』を演じるくだりがありますが、本作の背景にも「地獄とは他人のことだ」という思想が流れているように感じられます。家族といえども、おたがいに相手に明かすことのできない秘密をかかえており、かりそめの関係である一方で、そうした関係のなかでもおたがいにつながりあうことのできる道筋を示した作品といえるように思います。

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2021/08/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

家族ってなんだろうという疑問を個々の魂のありかた、ゆくえから見つめている作品。  といって、難しい言葉が並べてあるのではなく、日常の生活を描き積み重ねてあるのですっとはいってくるのだ。  父親と母親と二人の年頃の娘、時代は昭和30年代なかば 生活は上等の部類。  なに悩むことあろうと思うのだが、父はなぜだか心ここにあらず(これが物語の芯)、母は不治の病、長女は母の看病で家にしばられ鬱屈したよう、妹はひとり楽しげな大学生生活を送っているようで家族てんでばらばら。  現代の複雑なストレスのたまる家族たちと変わりないではないか。だから古いものがたりだけれど今読める。  ちなみにわたしの娘時代と一致するが、わたし及び家族がこんなにも悩まなかったので、当時に読んでもきっとシンクロしなかったと思うのは、しあわせだったのか、おきらくだったのか。それなりにいろいろあったような気がするんだけれど、もう忘れたほど単純だった。    「現代のストレスのたまる家族たち」と書いたけれど、ほんとこのごろはくたびれることが多い。 「愛」などと意識しなくてもよかった時代がなつかしい。  どうしてこうなっちゃったんだろと今の自分の身にふりかえて考えさせられ、読ませられた。と、こう身につまされる、しかし構成がすばらしい、薫りたつ文芸作品だった。

Posted byブクログ

2020/09/29

扉にこうある。 レーテー。「忘却」の意。エリスの娘。タナトス(死)とヒュプノス(眠り)の姉妹。また、冥府の河の名前で、死者はこの水を飲んで現世の記憶を忘れるという。 「ギリシャ 神話辞典」 これでこのタイトル。それはもう。 四つに組んで読みましょう。

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