迷惑な進化 の商品レビュー
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迷惑な進化 ―病気の遺伝子はどこから来たのか 竹蔵は結構進化の話に昔から興味があって、いろいろな本を読んではいましたが、最近ずいぶんと長い間ご無沙汰していました。 この本、特に後半を読んで進化に関してDNAの調査によってここまでびっくりすることが判ってきたのか!と久しぶりに血が騒いでしましました。 前半は、病気と進化のお話です。ヘマクロマトーシスという鉄分を体内にため込んでしまう体質はペストに対応するために遺伝子が淘汰されたことに起因することや、氷河期を乗り切るために優位だったのが糖尿病の遺伝子だったことなどが、論理的にそしてユーモアを交えて説明されていきます。 後半からはもっと面白くなって来て、動物の遺伝子は過去にたくさんのウィルスの遺伝子を取り込んで来たらしいという話にますはフムフムとうなずいてしまいました。そして、母親がジャンクフードを食べていると子供も栄養が少ない(カロリーは多いけど)環境に備える遺伝子のスイッチがONとなってしまって、太りやすい体質になるという話でヘーとまたまたびっくり。そして、エピジェネティクスと呼ばれる後天的にどのようにある部分の遺伝子のスイッチが入ったり切れたりするのか?を研究する分野が急速に進みつつあることや、老化の仕組みの解明や遺伝病の治療など、様々な先端医療のお話も書かれています。 竹蔵が昔から「突然変異を繰り返していって進化して来たと言われているけど、確率的にありえなくない?」という疑問に対して、ウィルスの滅茶苦茶速い進化のスピードと、その遺伝子がジャンピング遺伝子として組み込まれて環境要因によって活性化するという説明によって、それこそ目から鱗が落ちるように答えてくれたことにただただびっくりしてしまいました。 はてさて、遺伝子の研究と応用はどこまで進んでいくのやら?と少し心配になってしまいますが、それはさておき、ここまでいろいろな学説を分かり易い例をひきながら本にまとめるという離れ業はやはり”クリントン大統領のスピーチライター”だった著者の一人の力量恐るべしといった所でしょうか。。。 進化や遺伝子の分野に興味がある方は、必読です。 竹蔵
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副題に「病気の遺伝子はどこから来たのか」とあるように、適者生存として進化してきた生物としての人類が、糖尿病や皮膚がんなど、現代社会で「病気」として遺伝子資産をもてあましている様子が明快に説明される。 -20100819
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これまで5回くらい読み終わった本。 副題の通り、病気の遺伝子がどこから来たのかを読み解いていく本。 遺伝子の本だが、難しい医学本ではなく、小説としても非常に面白い。 健康に少しでも興味がある人には是非おすすめしたい。
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体内にと鉄分が富む集団ほどペストの害を受けた。 ヘモクロマトーシスの人は、マクロファージに鉄がないため、鉄分過剰でも、ペストの害を受けない。
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遺伝についての新しい知識をわかりやすく書いている。良書。日本語タイトルはミスリーディング。 特に、エピジェニックの話は、新しい知識が多かった。
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詳細は、こちらをご覧ください あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノート → http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1278.html
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環境に適応するように進化してきたはずの人間の遺伝子に、 病気を引き起こす要因となる遺伝子が含まれているのは なぜか。なぜそれが淘汰されずに今もあるのか、という 考えてみれば至極真っ当な疑問に答えてくれる本。なるほど と肯くことも多く、さらに遺伝子というモノがそれほど きっちりとし...
環境に適応するように進化してきたはずの人間の遺伝子に、 病気を引き起こす要因となる遺伝子が含まれているのは なぜか。なぜそれが淘汰されずに今もあるのか、という 考えてみれば至極真っ当な疑問に答えてくれる本。なるほど と肯くことも多く、さらに遺伝子というモノがそれほど きっちりとした四角四面な設計図ではないということにまで 導いてくれる。さらに巻末にはしっかりとした注があり、 引用元もきっちり書かれている。読みやすさ、取っつき やすさを備えながら、なおかつ信頼できると思える。 良書である。
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ヘモクロマトーシスという病気があるらしい。体の中に鉄を溜め込み、年を取ると体の中の溢れる鉄分によって死に至ることもあるような病気である。この病気の因子遺伝子はすでに発見されている。このような病気をもたらす遺伝子がなぜ進化の過程で排除されることもなく、現在まで存在するのか。その解は...
ヘモクロマトーシスという病気があるらしい。体の中に鉄を溜め込み、年を取ると体の中の溢れる鉄分によって死に至ることもあるような病気である。この病気の因子遺伝子はすでに発見されている。このような病気をもたらす遺伝子がなぜ進化の過程で排除されることもなく、現在まで存在するのか。その解は本書の中にある。 著者は、その理由を次のような比喩的質問を用いて説明する。「40年後に死んでしまうクスリを、今あなたが飲むとしたら、その理由はなんだろう?」。おそらく誰でも、「その薬を飲むことで、今差し迫った死から逃れること出来るから」と答えるだろう。ヘモクロマトーシス因子遺伝子が存在する理由もまさしくそうである。 時を遡ること数百年。中世ヨーロッパでは黒死病が猛威を振るった。(ここから先は、うろ覚え)黒死病病原菌は、繁殖に鉄を必要とする。ということは、この菌に鉄をやらなければ、この病気に打ち勝てるということである。ヘモクロマトーシス因子遺伝子を持った人は、この菌への対抗策として、鉄を渡さない戦略を実行することが出来る。これによって黒死病を克服した。そしてその数十年後、この遺伝子によって、内臓を痛めつけるほど体中に鉄をため、それにより死に至る(因子遺伝子を持つからといってすべての人がヘモクロマトーシスになるわけではない)。まさに、上記アナロジーと同じ構造だ。 黒死病はヨーロッパの人口の数十%を死に至らしめた伝染病であったため、強烈な進化圧力を持っている。この進化圧力により、ヘモクロマトーシス因子遺伝子をもつヨーロッパ人は30%を超える。これが、進化である。というのが、本書前半である。 残りの半分は、さらに面白い。これ以上書くのが面倒になってきたので、かいつまんで書くと、・ジャンピング遺伝子と呼ばれる、突然変異を起こすための遺伝子が存在する。これにより、ある個体を苛酷な環境におくことで突然変異を誘発させることができる。・獲得形質は遺伝しないという遺伝学の常識を覆すような「エピジェネティクス」と呼ばれる現象が存在する。これにより、ジャンクフードにより太りすぎの女性から生まれる子どもは、低体重で生まれやすく、太りやすい。 これらは、最先端の遺伝子学での研究対象であるのでどこまで仮説か良くわからないが、とにかく、すごいと思いません?
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病気と遺伝の関係について書かれたノンフォクション。 糖尿病を誘発する遺伝子と氷河期の関係、 鉄分が過剰になる遺伝子とペストの関係、 というと雑学といった感じがあるが、 雑学レベルではなく、 それなりにまとまりがあって読み応えもある。 145p「孤立した未知の個体への反応」の考...
病気と遺伝の関係について書かれたノンフォクション。 糖尿病を誘発する遺伝子と氷河期の関係、 鉄分が過剰になる遺伝子とペストの関係、 というと雑学といった感じがあるが、 雑学レベルではなく、 それなりにまとまりがあって読み応えもある。 145p「孤立した未知の個体への反応」の考察が新鮮。 孤立した個体への抵抗感、ネガティブな感情は、 集団から病気を理由に孤立した個体への反応と考えるところが面白い。 149p「感染方法にとる重篤の度合いについて」の考察も良い。 空気感染<蚊などの媒介での感染<汚染された水による感染 (カゼなど<マラリヤなど<コレラなど) で、感染の仕方によって病気は重くなる、だったら空気感染するように進化させれば、病菌は広がりやすいが死ぬようなことはなくなる、 といった考え方は感心する。 他にも、 カゼをひいたときのくしゃみは「症状」というよりも、 より拡散して繁栄するための戦略、といった 今まで知らなかった考え方には納得しつつ関心。
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見た目の体裁より身近で卑近な話題が多くてとっつき良いです。進化に自然淘汰が働くなら、なぜ有害な遺伝子が残っているのか、常々不思議に思っていました、私も! 鉄代謝障害がペスト対策、糖尿病がプチ氷河期対策とは! だいぶ気持ちスッキリ。 「寿命が短い=世代サイクルが短い」が「進化の速度が速い」に繋がるなら、技術革新だか医療の発達だかで平均寿命を伸ばしている人類の先にあるものは…と考えると背筋が寒い。
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