迷惑な進化 の商品レビュー
糖尿病、高血圧、貧血……進化とは、有害な遺伝子を淘汰し、役立つ遺伝子だけを残すものであるはず。なのになぜ、こんなにも弱点のある遺伝子が今も途絶えることなく受け継がれているのか。 その答えが、我々の先祖が暮らしていた環境にあるとしたら。 過酷な環境を生き延びるために、蔓延する風土病...
糖尿病、高血圧、貧血……進化とは、有害な遺伝子を淘汰し、役立つ遺伝子だけを残すものであるはず。なのになぜ、こんなにも弱点のある遺伝子が今も途絶えることなく受け継がれているのか。 その答えが、我々の先祖が暮らしていた環境にあるとしたら。 過酷な環境を生き延びるために、蔓延する風土病や伝染病、感染症に侵されないために、そう、目の前に迫る大きなリスクを回避するために、3~40年後にゆるやかに死ぬリスクを選ぶのも進化だとしたら。 そうやって新たな形質を獲得し、生き残り、子々孫々に生き残りに有利なその形質が受け継がれ、しかし、子孫たちは先祖とは全く違う環境下に生きているとしたら、その形質は体を蝕むだけの“遺伝病” となってしまうとしたら――。 遺伝と病気の関係を紐解くメディカル・ミステリー・ツアー。 本書を読むと、人類はこれまでは「子供のうちに死ぬな、中年まで生きろ」(大人になって子供を産んである程度育ててから死ぬ)というのが生物としての至高の使命だという設定の下、様々な形質を獲得してきたと見える。現代ではさらに高齢期まで生きるのが当たり前になりつつある。人類は今までにない新たな『進化』を促されるステージに立っているのだと思う。
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ウィルスと体の関係。 そして進化について。 科学、医学を通じて進化をわかりやすく理解できる。しかも楽しく。 なんのこっちゃわからん。というのはなかった。 癌とはどういうものか、発生する理由など意外と知らないことが理解できる。 間違ってる記載とかもあるみたいだけど、あくまでも現時点...
ウィルスと体の関係。 そして進化について。 科学、医学を通じて進化をわかりやすく理解できる。しかも楽しく。 なんのこっちゃわからん。というのはなかった。 癌とはどういうものか、発生する理由など意外と知らないことが理解できる。 間違ってる記載とかもあるみたいだけど、あくまでも現時点では。と認識しとけば。 あくまでもアクア説。
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なぜ病気の遺伝子がこれほど多くの人に受け継がれてしまったんだろう?そもそも進化とは、有害な遺伝子を淘汰し、役に立つ遺伝子だけを残すもののはず。なのに、なぜこんな遺伝子が生き残っているんだろう?-進化医学の新鋭、シャロン・モアレムが案内するメディカル・ミステリーツアーへようこそ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
いやー、大好物ですね。この手の本。一気に読み終えました。参考文献一覧も載ってますが、どちらかというと既存の書籍よりは論文や学会発表なんかがベースにされているようで、その辺も非常に興味深いです。 メインテーマは「人間を弱らせるような遺伝子がなぜ生き残り、子孫に伝えられていくのか?」「ヒトの祖先の生きた環境が、今のヒトの遺伝子情報にどのような影響を与えたのか?」「ヒト以外の動物や植物が進化の過程でどのような能力を得て、それがヒトにどのように影響したのか?」といったところです。この軸からぶれず、様々なトピックを取り上げながら「今の」ヒトにとって有害と思われる様々な特性がなぜ受け継がれているのかについて、軽快な文章で話を進めています。 ・ハチミツを赤ちゃんに食べさせてはいけない理由 ・糖尿病になりやすい性質はどこからきているのか ・サングラスをしているほうが日焼けしやすい ・アジア人種が酒に弱くなった理由(酒に弱い原因、ではなく) ・マラリアにかかりにくくなるための変化 ・狂犬病の犬がなぜヨダレを垂らしているのか ・風邪にかかった人がクシャミをする理由 ・致死率の高いウイルスが感染しにくい理由 ・廊下は生き延びるために必須の能力 ・なぜ進化はヒトの出産をこんなに大変なものにしたか こんなトピックのうち、一つでも「面白そう!」と思った方なら、この本はきっと全編通じて余すところなく楽しめます。ぜひ、手に取ってみてください。
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前半は中世から近世のペストが鉄をため込む病気ヘモクロマトーシスを、完新世前に発生したヤンガードリアス期が糖尿病を、マラリアがソラマメ中毒症をそれぞれ人間の遺伝子にもたらしたという話題。後半はジャンピング遺伝子や遺伝子のメチル化、ヘイフリック限界とテロメアといった遺伝子学の内容で、...
前半は中世から近世のペストが鉄をため込む病気ヘモクロマトーシスを、完新世前に発生したヤンガードリアス期が糖尿病を、マラリアがソラマメ中毒症をそれぞれ人間の遺伝子にもたらしたという話題。後半はジャンピング遺伝子や遺伝子のメチル化、ヘイフリック限界とテロメアといった遺伝子学の内容で、エレイン・モーガンの水生類人猿説にも興味を持ったので、得るものが多かった。 水は凍ると結晶が体を傷つけるため、気温が下がると生物は水の量を減らし、糖分濃度を高めることによって氷点を低くしようとする。 皮膚が紫外線に当たると、コレステロールからビタミンDがつくられるが、葉酸(ビタミンB9)は破壊される。 感染症の病原体のうち、宿主どうしが直接接触するか近づいた時に空気を介して移る風邪や性行為感染症は、宿主に動き回ってもらわなければならないため、毒性を高める方向には進化しない。しかし、蚊やハエなどの生物を介するマラリアやチフスなどや、食品や水を介するコレラや腸チフスなどは、宿主を死に追い込んだり、排泄を促すような毒性を高める性質を持つ。 DNAの特定の塩基配列が移動して、遺伝子を活性化させたり休眠させたりするジャンピング遺伝子がある。脳の発生段階では、ジャンピング遺伝子が活性化して脳を独特なものに作り変える。環境が変化した場合にもジャンピング遺伝子が活性化する。抗体反応をする際、B細胞は様々な抗体の遺伝子を集めてつなぎ合わせる(V(D)J遺伝子再構成)。DNAのうち、細胞をつくるために使われるのは3%以下で、それ以外の非コードDNAの半分近くはジャンピング遺伝子が占めている。ジャンピング遺伝子は、逆転写酵素を使って自身のRNAの情報をDNAに書き写すことができるレトロウイルスに似ており、ヒトゲノムの8%はレトロウイルスに由来すると考えられている。複雑な生物ほどジャンピング遺伝子をたくさん持っており、ウイルスに感染する能力を持ったことで進化のスピードが速くなったと考えられる。 妊婦の栄養状態などによって、子どものDNAがメチル化して遺伝子の発現が抑制されることがある。 体細胞は決まった回数だけ分裂すると寿命が尽きるヘイフリック限界がある。これは染色体の末端を保護するテロメアが分裂のたびに失われるためで、人間の場合は52〜60回。癌細胞は、テロメアを延長させる酵素テロメラーゼが活動する状態になったもので、永遠に増殖することができる。
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読み終わったので感想をば。話の展開の仕方が素晴らしいプレゼンテーションを見ているようだった。著者の情報収集能力と知識を統合する能力には脱帽です。私が個人的に興味を持ったのは、ほかの生物に寄生する生物。あたかもそれを狙ったかのような巧みな寄生術に自然の底力を見た気がします。そんな行...
読み終わったので感想をば。話の展開の仕方が素晴らしいプレゼンテーションを見ているようだった。著者の情報収集能力と知識を統合する能力には脱帽です。私が個人的に興味を持ったのは、ほかの生物に寄生する生物。あたかもそれを狙ったかのような巧みな寄生術に自然の底力を見た気がします。そんな行動をするように進化したことも驚きだけども、発見した研究者もすごい!どんな実験系を組んだのか想像もできない。今度は研究する立場から書いた本を探してみようと思っています。
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進化とは本来、自分の生存と種の保存に役立つ遺伝形質を好むはずなのに、なぜこれほど多くの「病気をもたらす遺伝子」が多くの人に受け継がれ、広まってきたのか……という謎を進化論から説明する、ユニークな論考。 著者自身が「ヘモクロマトーシス」という遺伝性の病気の持ち主。放っておくと体...
進化とは本来、自分の生存と種の保存に役立つ遺伝形質を好むはずなのに、なぜこれほど多くの「病気をもたらす遺伝子」が多くの人に受け継がれ、広まってきたのか……という謎を進化論から説明する、ユニークな論考。 著者自身が「ヘモクロマトーシス」という遺伝性の病気の持ち主。放っておくと体の中に鉄が蓄積して、肝臓やすい臓にダメージを受け、ついには死に至る。この遺伝子は西ヨーロッパ人の30%以上が保有しているという。 なぜこんな遺伝子が、これほどまでに広まっているのか……。〈40年後にかならず死ぬとわかっている薬をあなたが飲むとしたら、その理由はなんだろう? 答えはひとつ。それはあなたが“明日”死ぬのを止めてくれる薬だからだ〉 じつは、ヘモクロマトーシスの人は、伝染病に強い白血球の持ち主でもあった。14世紀のヨーロッパで人口の3割を死に至らしめたペスト禍を生き延びた人たちに、この遺伝子の持ち主が多かったのは必然だった。 このほか、糖尿病をもたらす遺伝子は「氷河期を生き延びるためだった」説や、肌の色がビタミンD生産と紫外線の害のバランスで決定されてきたという話、ヨーロッパ人がアジア人に比べてアルコールを分解する酵素をいっぱい持っているのはなぜか……みたいな話もおもしろい。統合失調症の原因が、もしかしたらトキソプラズマ(ネコに寄生したときだけ症状を起こすとされている脳内寄生虫だが、人間にも寄生する)が影響を及ぼしているのかもしれない、という話はネコを飼うのが少し恐ろしくなるね。 人間がいかに「いきあたりばったりに進化してきた」かということ、そしてその進化が現在の環境とミスマッチなせいで多くの病気がもたらされているということが平易な文章で要領よく書かれている。大学時代の生物の講義で「鎌状赤血球」の話を聞いたことを思い出す。あれは赤血球が変形しているせいで悪性の貧血にかかるのと引き替えに、マラリアに強くなるという話だった。この本を読んで、鎌状赤血球のような事例が「特殊事情」ではないこと、むしろ世界中のあちこちで無数に行われてきた結果、いまの人類ができあがっていることが理解できた。 本書のすべてが「正しい」かどうかは異論あると思うけれど、読み物としてはすっごくおもしろい。
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進化の過程で、不利な遺伝子は淘汰されていくはずなのに、どうして病気の遺伝子が生き残っていくのか?という話。とても面白かった。 遺伝子の難しい話は分からないけど、なんとなく「進化は突然変異のみで起こる」「たまたま有利な変異を起こしたものが生き残る」というような話はピンときてなかっ...
進化の過程で、不利な遺伝子は淘汰されていくはずなのに、どうして病気の遺伝子が生き残っていくのか?という話。とても面白かった。 遺伝子の難しい話は分からないけど、なんとなく「進化は突然変異のみで起こる」「たまたま有利な変異を起こしたものが生き残る」というような話はピンときてなかったところ、この本で説明されているような、獲得形質(だったかな)の遺伝のこととか、母体環境による遺伝子スイッチのオンオフといった話の方が、それなら納得できるような気がした。(といっても、何が正しいのか、本当なのか、私には判断できる知識もないのが残念なところですが^^;) あまり現実的ではないのでしょうけど、抗生物質で細菌といたちごっこをするよりも、人体との共存の方向での淘汰圧を細菌にかけることを考える、というのは面白いなぁ、て思いました。
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すべての?病気は進化の過程で手に入れた宝物である。残念ながら、もちろん我々は病気で死んでしまうが、それもこれも進化の過程で、神?が与えてくれた、ある意味での宝物であると思う。病気は確かに悲しくてつらいと思うが、この本を読むと、同時に病気でさえも愛おしくなる。生きることは、また同時...
すべての?病気は進化の過程で手に入れた宝物である。残念ながら、もちろん我々は病気で死んでしまうが、それもこれも進化の過程で、神?が与えてくれた、ある意味での宝物であると思う。病気は確かに悲しくてつらいと思うが、この本を読むと、同時に病気でさえも愛おしくなる。生きることは、また同時に生物であれば、病気になることでさえ、すばらしい。
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生物が進化の過程で、得た物が環境の変化で、病気の原因を引き起こしているという。遺伝子に基盤とした進化論といっていいのか。この本を読んでひとつ解ったことは、私の糖尿病から、祖先はマンモスをおってシベリアの最北まできた人がおじーちゃんなんですね。
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