或る少女の死まで の商品レビュー
自伝的小説「幼年時代…
自伝的小説「幼年時代」「性に目覚める頃」「或る少女の死まで」が収録されています。情緒あふれる文体です。
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思ってたより読みやすかった。今の時代に読んでも通じるあたりがすごい。 「幼年時代」お寺に養子に行く経緯、こんなんだったんだ…。猫派なのに小さい頃は犬飼ってたのが意外(笑)。さすが生き物好きな犀星先生。 「性に眼覚める頃」17歳で亡くなった女たらしの友人の存在感たるや。この時代の男女交際関係ってどんなんだっけ??となった。 「或る少女の死まで」お酒を飲んで喧嘩はダメ絶対。
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幼少の頃の思い出は、美化するには容易であり葛藤を描くには複雑すぎる。 その中間で自身の幼少期を私小説化したのが本書にある三作である。 他者の経験にもかかわらず、どこか懐かしい感覚を否定できない。 いまだ自身にとっての世界の真理を知らず、これから自身を確立しようとするとば口に立つ者...
幼少の頃の思い出は、美化するには容易であり葛藤を描くには複雑すぎる。 その中間で自身の幼少期を私小説化したのが本書にある三作である。 他者の経験にもかかわらず、どこか懐かしい感覚を否定できない。 いまだ自身にとっての世界の真理を知らず、これから自身を確立しようとするとば口に立つ者の瑞々しい感覚が懐かしいのだろう。
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3作品目の「或る少女の死まで」を読み了える。 概要 この岩波文庫に収められた、初期3部作は、大正8年の「中央公論」3冊が初出である。 「或る少女の死まで」は、4人グループで酒場で酒を飲んでいて、ある男と喧嘩をして仲間が傷つける。示談の費用にも、面談にも引っ込みがちな友人たちと、警察署内の体験に嫌気がし、宿を替える。 酒場の女の子も死の床に臥し、同宿だった女の子(ボンタンと呼んで親しんだ)も「私」の第1回の帰郷(「都落ち」と記されている)の後に亡くなっている。 感想 詩作では生活できない状況(今もほとんど変わらない)だった事もあり、成功を願って都会に蠢く青年たちがいて、暗い底辺を成していた。着物を売って「私」の借財返済を助けてくれる友人も描かれる。 当時は男尊女卑があったから、か弱い女の死でもって、心境描写の結末を付ける事ができた。現在では、受け入れられない手法だろう。
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金沢旅行の記念に読書。自伝的な内容とは分かっていたのに大どんでん返し的なものを期待しながら読んでしまったので読み終えた直後は物足りなさを感じたが、後から考えれば一人の人生のほんの数年間の切り出しとしては非常に山あり谷ありです。次に室生犀星を思い出した時は詩を読みたい。
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「或る少女の死まで」 おじさん(と言っているけどたぶんお兄さんかな)と少女が、素直な友情を育んでいる様子が、自分には新鮮ですてきだと思った。少女たちがピュアでたまらない。 大人になって苦労を重ねると目が濁っていくだなんて、なんだか虚しいなあ。自分の目も濁っていることだろうと思う。
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犀星先生って、きっとロリコンだよね? しかもロリコンの鑑だよね? 正しいロリコンは、YES、ロリータ、No、タッチ。 ハンバート・ハンバートとは違うのです。 少女との距離感が絶妙、そんな『或る少女の死まで』。 (『蜜のあはれ』も大好きなのですが!) この小説で描かれる、静謐と喧...
犀星先生って、きっとロリコンだよね? しかもロリコンの鑑だよね? 正しいロリコンは、YES、ロリータ、No、タッチ。 ハンバート・ハンバートとは違うのです。 少女との距離感が絶妙、そんな『或る少女の死まで』。 (『蜜のあはれ』も大好きなのですが!) この小説で描かれる、静謐と喧騒、清浄と汚濁、無垢な美しさと卑俗な醜さ…… 後者がより前者を際だたせ、同時に前者は後者を浮き彫りにします。 主人公の「私」と酒場にいる少女間の二律対比は、物語が進むにつれ、やや複雑さを帯びます。 白痴的でか弱い少女と、利発で溌剌とした少女、「私」と画家のS、 (誰かモデルはいるのかな。作家のHは萩原朔太郎な気がする) それぞれが彩で儚い模様を、都会の中で織り上げていくのです。 その筆の感じが、寂しげで淡くて、室生犀星好きだなあってなんとなく私は感じてしまいます。 『或る少女の死まで』というタイトルの意味を理解する読後には、人生の侘びしさと悲しさが胸にしみてきました。 歳をとると荒み、生活に疲れ、しがらみが増えていく。 美しく無垢なロリータたちがそのままでいるには死ぬしかない! 死ぬロリータだけが良いロリータ。 ロリータも歳を取れば、「私」が警察署で会った娼婦のように、野卑にうらぶれてしまうのです。
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「幼年時代」「性に眼覚める頃」「或る少女の死まで」という、犀星の自伝的中編3作品が時系列で並んだ文庫でした。 「幼年時代」では、実の家族と引き離されて義姉に寄り添って成長していく健気な少年の視点で故郷の生活や自然が描かれていて、端正で美しい佳品。 「性に眼覚める頃」は、自意...
「幼年時代」「性に眼覚める頃」「或る少女の死まで」という、犀星の自伝的中編3作品が時系列で並んだ文庫でした。 「幼年時代」では、実の家族と引き離されて義姉に寄り添って成長していく健気な少年の視点で故郷の生活や自然が描かれていて、端正で美しい佳品。 「性に眼覚める頃」は、自意識とか疚しさとかにおっかなびっくり向き合っていく感じが良い。詩仲間の友人やその恋人への感情の描写は瑞々しかった。 「或る少女の死まで」では、最初の上京の終盤から帰郷を思い立つまでの生活が書かれている。この時に20歳ちょっと。都会での人間関係や貧窮などで少し汚れていく詩人の生活、そんな自分が許せないという若い潔癖さゆえの葛藤。文筆家になりたいというストイックな気持ちはいいのだが、作品の中の「私」は潔癖すぎてポキリと折れるんじゃないかとやや心配になる。 しかし犀星は、食べていくために詩から小説へ仕事を広げたり、帰郷した後も何度も再上京して文筆を続け、後世に名を残す作家になったわけで、実際なかなか逞しい。生まれつき繊細な性質の少年が、酒乱の養母に苛められたり小卒で働かされたりする運命に負けなかったから、結果として心身を強く鍛えられたのかも、と思った。
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金沢旅行中に読んだ本 その二 自伝的小説三篇を収録。『幼年時代』『性に眼覚める頃』は、母姉への憧憬、思春期における女性への葛藤が繊細に描かれる。繊細すぎて少し痛ましい。『或る少女の死まで』は、少女へのやさしい愛情が晴れやかで良い。
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1枚の絵のように彼を囲む風景と小さな幸福がかかれていた幼年時代。 静謐の中で友情と、女性への思慕を抱く年頃。 薄汚れた都会で切なく生きる青年時代。 自伝だの私小説だのは好きじゃないけど、「お母さん」を探しているのが端々に読み取れて切なかった。
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