手紙 の商品レビュー
一片の手紙が持つ重み
重大な罪を犯し収監された兄から届く手紙に起因して、兄との断ちがたい絆や、自身や家族と周囲の人々との思うに任せない人間関係に、苦悩し煩悶しながら生きざるを得ない弟の姿が描かれていく。「差別や偏見のない世界」は「想像の世界でしかない」のかと自問しながら、また、一片の手紙が持つ重みやそ...
重大な罪を犯し収監された兄から届く手紙に起因して、兄との断ちがたい絆や、自身や家族と周囲の人々との思うに任せない人間関係に、苦悩し煩悶しながら生きざるを得ない弟の姿が描かれていく。「差別や偏見のない世界」は「想像の世界でしかない」のかと自問しながら、また、一片の手紙が持つ重みやその限界も感じつつ、物語の最終場面に至って、そんな澱んだ心が一気に晴れる感動の一冊である。
fugyogyo
おすすめ!
「強盗殺人犯の弟」……主人公の身に生涯つきまとうレッテル。人生の節目ごとに差別にさらされる主人公と、彼に手紙を送り続ける獄中の兄との絆。「加害者の家族」が抱える痛みを、正面から丁寧に描ききった話題作。
yui
犯罪加害者の家族に焦点があてられたお話。犯罪が、被害者や加害者だけではなく、その家族にまで及ぼす悲しい現実を突きつけられた。重かったです。そしてリアルでした。刊行されたのが20年以上前なので、今だとSNSの影響でもっと酷いかもと想像しながら読みました。 社長の言葉にただただ納得す...
犯罪加害者の家族に焦点があてられたお話。犯罪が、被害者や加害者だけではなく、その家族にまで及ぼす悲しい現実を突きつけられた。重かったです。そしてリアルでした。刊行されたのが20年以上前なので、今だとSNSの影響でもっと酷いかもと想像しながら読みました。 社長の言葉にただただ納得するしかないんだけど、切ないな。そして私も差別している自覚はなくても関わりたくないと距離を置くだろうなと…
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心が震えました。 犯罪の加害者家族の生き方に焦点を当てた作品。 犯罪者の家族としてどう生きるのかを真正面から語ると、こういう物語になるんだなぁ。血縁に殺人者がいるという理由で世間から疎まれ、差別され、かけがえのない人との関係性が次々と奪われていく。 被害者家族が味わった無数の...
心が震えました。 犯罪の加害者家族の生き方に焦点を当てた作品。 犯罪者の家族としてどう生きるのかを真正面から語ると、こういう物語になるんだなぁ。血縁に殺人者がいるという理由で世間から疎まれ、差別され、かけがえのない人との関係性が次々と奪われていく。 被害者家族が味わった無数の苦しみを知ることも、犯罪者の受けるべき罰の一つだと。 フィクションの域を超えて、身に迫るメッセージを感じた。 途方もない大作。
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兄が強盗殺人を犯し加害者家族として生きることになった弟。罪を犯すに至った理由が弟の学費のためというのがまた辛い。加害者家族が世の中でどう見られどう扱われるのか、それが理不尽であっても耐えて生きていかなければならない。兄との決別を考えた弟もそして静かに受け入れる兄もどちらも辛すぎた...
兄が強盗殺人を犯し加害者家族として生きることになった弟。罪を犯すに至った理由が弟の学費のためというのがまた辛い。加害者家族が世の中でどう見られどう扱われるのか、それが理不尽であっても耐えて生きていかなければならない。兄との決別を考えた弟もそして静かに受け入れる兄もどちらも辛すぎた。切なくて悲しくて号泣。東野作品の中でも名作といわれるのが納得の作品。
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平野社長の「どうしようもない」にすごく納得した。 直貴君から兄への手紙と兄から緒方さんへの手紙は涙が止まらなかった。 本当にどうしようもない。
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社長の言葉を聞いて納得する部分が結構あった。犯罪者は、社会的自殺という言葉になるほどなと感じた。 最後、直樹が兄の前で歌を歌った時、兄はどう感じたのだろう。もう2度と会うことはないと直樹は言っていたが、今後もどこかで繋がっていてほしいと思う
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分かりやすいマンガのように、あからさまに直貴を差別する人はいない。 が、みな一様に、まるではれものに触るかのように直貴に気を遣う。 それが犯罪者の家族に対する差別と気づかずに。 電器店の社長がシビアな現実を直貴にガツンと言うことで、直貴を目覚めさせるシーンはハラハラしたが、なんだ...
分かりやすいマンガのように、あからさまに直貴を差別する人はいない。 が、みな一様に、まるではれものに触るかのように直貴に気を遣う。 それが犯罪者の家族に対する差別と気づかずに。 電器店の社長がシビアな現実を直貴にガツンと言うことで、直貴を目覚めさせるシーンはハラハラしたが、なんだかシビれた。
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2023.05 図書館借本 . 犯罪者家族の生きづらさを考えさせられた。犯罪者よりも残された家族の方がレッテルを貼られ続ける。社会は怖いけどそりゃそうだよなとも思った。 「だが声が出ない。どうしても出ない。」 終わり方が印象的で、兄が合掌しながら見ている姿も想像しやすくて、数十年ぶりに弟を見れた感動(逆も然り)が痛いほどわかる終わり方だった。
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考えさせられるテーマ。 親に先立たれ、兄弟二人だけとなり、兄が弟の為に働いている。弟を大学に行かせたい、そのためにはお金が必要。だから、以前仕事で行った裕福そうな、高齢の女性が一人で住んでいる家からお金を盗もうとした。でも、その女性に見つかってしまい、通報されそうになり、彼女を殺...
考えさせられるテーマ。 親に先立たれ、兄弟二人だけとなり、兄が弟の為に働いている。弟を大学に行かせたい、そのためにはお金が必要。だから、以前仕事で行った裕福そうな、高齢の女性が一人で住んでいる家からお金を盗もうとした。でも、その女性に見つかってしまい、通報されそうになり、彼女を殺害してしまう。 兄は殺人者、とのレッテルは弟を差別と偏見の中に落とし込む。でも、弟は兄の重いが分かるから、兄と絶縁しようとはしない。 でも、結婚し、子どもが出来て、その子どもにまで差別にさらされ、兄と絶縁する。 ラストは、結末を明示していないけれど、多分弟は兄を赦したんじゃないかと思う。 被害者の家族からすれば、犯人は憎むべき対象だし、その家族のことも恨みたくもなる。 でも、周りの人は、家族は別人格として見てあげてもいいんじゃないかとは思った。勤め先の社長は悪い人じゃないけれど、被害者家族が「差別されるのは当然」という考え方、弟が「甘えている」と言うのも、それは違うと私は思う。 でも一方で、「社会的な死からは生還できる。その方法は一つしかない。こつこつと少しずつ社会性を取り戻していくんだ。他の人間との繋がりの糸を、一本ずつ増やしていくしかない。君を中心にした蜘蛛の巣のような繋がりが出来れば、誰も君を無視できなくなる。その第一歩を刻む場所がここだ」と言う社長の考えは受け止められる。 ただ、社会性を取り戻したくても、偏見や差別の中では難しいとも思う。 自分で蒔いた種なら自分で刈り取らないといけない。でも、そうじゃないのに刈り取りだけさせられるのでは辛いと思う。 どうすればいいのか。どうしていけばいいのか。難しい問題。 差別する人はいるけれど、一方で兄は兄、弟は弟と考えて、分け隔て無く接してくれる人たちもいる。後に妻となる由美子や、大学で偶然知り合ったバンド活動をしている寺尾。 彼等のように接することが出来る人の方が少ないかも知れない。でも、そう言う人がいることに、救われる思いもする。
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