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アンナ・カレーニナ(上) の商品レビュー

4.1

75件のお客様レビュー

  1. 5つ

    27

  2. 4つ

    19

  3. 3つ

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  4. 2つ

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2021/06/21

 社交界の華であり誰からも好かれ、非の打ちどころのない、青年士官ヴロンスキーは、シチェルバツキー家の三女、キチイの気を引き、花婿候補と見られていたのに、ペテルブルグの名士カレーニン夫人(アンナ・カレーニナ)を一目見た途端、その美貌に心を奪われた。  キチイは彼女に求婚してきた、リ...

 社交界の華であり誰からも好かれ、非の打ちどころのない、青年士官ヴロンスキーは、シチェルバツキー家の三女、キチイの気を引き、花婿候補と見られていたのに、ペテルブルグの名士カレーニン夫人(アンナ・カレーニナ)を一目見た途端、その美貌に心を奪われた。  キチイは彼女に求婚してきた、リョーヴィンという地方の貴族に本心は惹かれていたのだが、ヴロンスキーに愛されていると思って(それにその相手は彼女の母親の価値観に合っている)、リョーヴィンの求婚を断ったのに、結局、ヴロンスキーに裏切られ、恥しさで病気になってしまった。  リョーヴィンも恋敵に負け、もう、自分には結婚の望みは無いという失意のまま、田舎に帰るが、田舎の彼の広大な土地の自然は、彼に元気を与える。植物の芽吹く音が聞こえるくらい、ロシアの森の春は活き活きしているらしい。リョーヴィンはいい男なんですよ。大人の私達には分かるんですよ。大地主として、真面目に農地経営の計画を立て、論文も書き、自分の森の木の数も把握し、どれ位の価値があるか知っている。同じ貴族でも、モスクワやペテルブルグで、コネで適当にいい役職につき、見栄と名誉を重んじ、社交界の付き合いで借金まみれになっている人達とは違うんですよ。  病気になったキチイは湯治先で出逢った、ワーレンカという清楚で無欲で義母に尽くす娘に心惹かれ、あんなふうになりたいと願う。  リョーヴィンとキチイには幸せになって欲しいものだ。  一方のヴロンスキーとアンナ・カレーニナ。二人の不倫関係はヴロンスキーの言葉を借りれば「月並みな社交界の情事ではなく、あの人は俺にとって命よりも大切なものだ。あの連中(二人を責める人々)は幸福とは何かということなんかてんで分かっちゃいないんだ。僕達にはこの恋がなきゃ、幸福も無ければ、不幸もない」というほど本気。アンナにとれば、名士で人々に尊敬され、その名誉のためだけに、アンナに対しての態度まで欺瞞で固めた俗物官僚の夫との生活を守るよりも、ヴロンスキーとの不倫のほうが自分に対して嘘のない、ある意味倫理的なことかもしれない。しかし、ただ一つ気になるのは、息子のこと。一方ヴロンスキーは、アンナが息子のことで、心を痛めていることは理解出来ない。また、自分がアンナに走ったせいで、キチイを傷つけたことにも気づいていない。これ程、周りを傷付けていることに気づかない人というのは、こうまで、自分の気持ちに真っ直ぐになれるものなんだなあ。  アンナはヴロンスキーの子供を身籠ってしまい、そのことをヴロンスキーに打ち明けるとヴロンスキーはカレーニンに正直に話した上で、駆け落ちしようという。多分カレーニンは自分の名誉が傷つくのが何より嫌なので離婚などさせてくれないだろう。それに、息子はどうなるだろう。  アンナ、キチイ、リョーヴィンそれぞれの運命はどうなるのか?  不倫小説だが、細かい所まで、描写が重厚。トルストイがそのモラル、宗教、哲学の全てを注ぎ込んで、完成した不朽の名作の第一部でした。

Posted byブクログ

2021/05/13

読書会課題本。表面的には「不倫」をテーマにしていると言える。しかしそれに留まらないものを上巻の時点で感じる。またキリスト教的要素が、特に本書後半の「第二編」で色濃く出ていて、それをどう受け止めるかで、読後感が大きく変わるだろうと思う。

Posted byブクログ

2021/05/13

まだ上巻しか読めてないけど面白い。 ロシア文学、「罪と罰」しか読んだことがなく、あの重苦しくて隅から隅まで詰めてくる空気感が恐ろしく、避けていた時間が悔やまれる。あれはロシア文学の特性じゃなくて、ドフトエフスキーの特性だったのか。知ってたらもっと早くに読めたのに。 登場人物それ...

まだ上巻しか読めてないけど面白い。 ロシア文学、「罪と罰」しか読んだことがなく、あの重苦しくて隅から隅まで詰めてくる空気感が恐ろしく、避けていた時間が悔やまれる。あれはロシア文学の特性じゃなくて、ドフトエフスキーの特性だったのか。知ってたらもっと早くに読めたのに。 登場人物それぞれに起こる出来事や心の移り変わりが楽しく、ロシア貴族たちのすれっからした会話の感じも面白い。でも一番好きなのはリヨーヴィンが自分の村へ帰った後の春のシーン。土と空気とそこに芽吹き始める生命力。そしてそのうららかなぬかるみで活動し始める人たちに息づく明るさが甘すくことなく表現されていて、100年以上前に誰か(ってトルストイだけど)が書いた言葉をこんな風に読めることに、名作の凄みとありがたみを改めて感じる。 読み始めるときは長いしちょっと嫌やな、と思ってたけど、今はまだまだ先があることが嬉しくなっている。中をまた読み進めるのが楽しみ!

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2021/05/03

2021/03/22 読み終わった ロシア文学を読まないとと思って。まずはこれ。 重厚なのは間違いない!大河ドラマを見ているような感覚だった。長いけど、長いことに意味がある方の物語だと思う。 アンナもヴロンスキーも、いけすかないやつだな!特にアンナは、最後まで自分勝手だと思った...

2021/03/22 読み終わった ロシア文学を読まないとと思って。まずはこれ。 重厚なのは間違いない!大河ドラマを見ているような感覚だった。長いけど、長いことに意味がある方の物語だと思う。 アンナもヴロンスキーも、いけすかないやつだな!特にアンナは、最後まで自分勝手だと思った。本当の主人公はリョーヴィンなんだろうな。 この版は1965年くらいの出版なんだけど、翻訳が古めで少し読みづらかった。Kittyをキティでなくキチイと訳すのは現代風じゃないよね。光文社古典新訳文庫でもアンナカレーニナ出てるから、今から読むならそっちの方が良さそうかも。

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2021/03/09

かなり長い間積んでいた本です。 『世界は文学でできている』には『戦争と平和』がお薦めされていましたが、手元にあったこちらを読むことにしました。 この物語はオブロンスキー家の主のオブロンスキー34歳が七人の子持ちでありながら家庭教師の女性と浮気をします。一つ年下の妻のドリイの末妹...

かなり長い間積んでいた本です。 『世界は文学でできている』には『戦争と平和』がお薦めされていましたが、手元にあったこちらを読むことにしました。 この物語はオブロンスキー家の主のオブロンスキー34歳が七人の子持ちでありながら家庭教師の女性と浮気をします。一つ年下の妻のドリイの末妹のキチイはコンスタンチン・リョーヴィンに求婚されますが、ヴロンスキーに恋しているためにそれを拒絶してしまいます。 オブロンスキーの実妹のカレーニン夫人(アンナ)はオブロンスキー家を訪ねてきますが、列車の中で知り合った婦人の息子であるヴロンスキーと一目で恋に落ちます。 アンナはオブロンスキー家に滞在しキチイと親交を深めますが、キチイの気持ちに気づきます。 ヴロンスキーの求愛にキチイの気持ちを知り、アンナは身を引こうとしますが、二人は当然のようになさぬ仲になってしまいます。 リョーヴィンはうちひしがれ、作家の兄を訪ねます。キチイも結核にかかり、田舎へ行って療養します。 アンナとヴロンスキーの仲を知ったカレーニンはアンナを問い詰め、アンナは真実を告白してしまいます。 カレーニンは社会的体面を保とうとします。 そしてアンナはヴロンスキーの子どもを妊娠してしまいます。 キチイは療養先でワーレンカという友人ができて気持ちが明るくなり、ロシアの我が家へ帰ってきます。 作家の池澤夏樹さんが他の本で「この小説が正にメロドラマだ」とおっしゃっていますが、「メロドラマ大いに結構」と思いました。アンナは本当に美しく、ヴロンスキーは凄いイケメンです。アンナとヴロンスキーの二人の場面が、カレーニンは愛のない結婚をアンナとした悪役なのでハラハラしてしまいます。 アンナとヴロンスキーの出会いの場面は本当に素敵でうっとりしてしまいました。 二人の会話も現代のドラマより格調高い会話で本当にうっとりとしてしまいます。 P376より <あの連中は幸福とはなにかということなんか、てんでわかっちゃいないのだ。あの連中には、ぼくたちはこの恋がなくちゃ、幸福もなければ、不幸もない、いや、生活そのものがないってことが、わからないんだからなあ> P391より 「あたしはね、飢えた人がお腹いっぱい食べさせてもらったみたいなものね。そりゃ、その人は寒いかもしれませんよ。服もぼろぼろに破れているかもしれませんし、恥ずかしいかもわかりません。でも、その人は不幸ではありませんわ。あたしが不幸ですって?いいえ、ねえ、これこそあたしの幸福ですわ」 中巻に続く

Posted byブクログ

2020/07/29

「恋愛はテロ」。いつだったか、ある本にそんな台詞があった。恋は盲目ともいうけれど、宗教と恋愛ほど思考停止を招くものはこの世にないのではないか。

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2020/07/12

アンナとヴロンスキー、リョーヴィンとキティ。共に対照的な二組が物語を際立たせる。アンナは情熱的に不倫を受け入れてしまい。刹那的な恋に走り、リョーヴィンは農業を経営しながら、宗教観の何たるかを考え、人生の根源にたどり着く。 トルストイの宗教観・人生・道徳を盛り込んだとてつもない大...

アンナとヴロンスキー、リョーヴィンとキティ。共に対照的な二組が物語を際立たせる。アンナは情熱的に不倫を受け入れてしまい。刹那的な恋に走り、リョーヴィンは農業を経営しながら、宗教観の何たるかを考え、人生の根源にたどり着く。 トルストイの宗教観・人生・道徳を盛り込んだとてつもない大作。読んで終わって欲しいと思いながらも、その先の展開、考え方を学びとおした。 神の教えに従い、しかし人生は流れる如くの連続。その連続の日常こそが愛しいのだと考えさせられた。

Posted byブクログ

2020/05/10

さすが、名作。 他の人から見れば羨むような美しい存在でも、いとも簡単に、切り立つ崖の先にいるかのように暗く、深遠な醜さに満ちた世界に落ちていくもんやと。 ちょっとした生活の綻びからやで。 こんなにも・・・ 良心とか、ほんとに生きるとか、正しいとか、正義とか、そうあるべきだと思...

さすが、名作。 他の人から見れば羨むような美しい存在でも、いとも簡単に、切り立つ崖の先にいるかのように暗く、深遠な醜さに満ちた世界に落ちていくもんやと。 ちょっとした生活の綻びからやで。 こんなにも・・・ 良心とか、ほんとに生きるとか、正しいとか、正義とか、そうあるべきだと思われているもんなんか、あんの?と、それがさらに劇的でも何でもなく日常の端っこをちょっとつまんで引き上げるだけでこんなに出てくるでと、ほんで現代でもありえるねんでと、テレビドラマの比ではない。

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2020/04/22

青年期、中年期に、そして今回の老年期にと3回目の再読です。 このような世界文学をけっこう再読しておりますが、読む時期のパターンがだいたいこのようになっております。 新型コロナウイルス肺炎の自粛が長引く中、再読し遺したものはないか?と頭をよぎるのも精神的影響でしょうか。 この...

青年期、中年期に、そして今回の老年期にと3回目の再読です。 このような世界文学をけっこう再読しておりますが、読む時期のパターンがだいたいこのようになっております。 新型コロナウイルス肺炎の自粛が長引く中、再読し遺したものはないか?と頭をよぎるのも精神的影響でしょうか。 この有名な不倫小説『アンナ・カレーニナ』を選びました(笑)深いわけはありません。むしろヒロインアンナの運命より、副主人公リョーヴィンの堅苦しいほどの真面目な人生観が、若年の頃より印象深く残っているので、もう一度しっかり読んでみたいと思ったのでした。 さて、上巻は美しい魅力的なアンナ・カレーニナが兄オブロンスキーの浮気が原因の夫婦喧嘩を仲裁するためモスクワにやって来て、舞踏会で出会った美青年士官ヴロンスキーと不倫愛に至ってしまうところから始まります。 オブロンスキーの友人リョーヴィンは、オブロンスキーの妻ドリーの妹キチイに結婚を申し込んであっけなく振られます。なぜか?キチイはヴロンスキーが好きだからです。けれどもヴロンスキーはアンナに心奪われていてキチイは目じゃありません。リョーヴィンもキチイも失意のどん底。やがてアンナも好きではない夫カレーニンに、浮気がばれて困りはてるどん底が。 などとあらすじを言うとなんだかハーレクイン出版物のようですね。でも、トルストイさんの筆にかかると世界文学の名作になるのですよ。ま、わたしは登場人物の一人ひとりに寄り添ったるるたる描写が、人間のこころ、気持ちの動きを奥深く見せてくれる、そこに魅力を感じるのです。

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2018/08/16

「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」という世界文学史上、最も知られた警句の一つで始まる重厚な本作こそ、時間のある休暇にはふさわしいと思いセレクト。 夫婦の不貞という現代にも通用するテーマであるにも関わらず...

「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」という世界文学史上、最も知られた警句の一つで始まる重厚な本作こそ、時間のある休暇にはふさわしいと思いセレクト。 夫婦の不貞という現代にも通用するテーマであるにも関わらず、その心理描写は一瞬たりともだれず、紋切り型の描写は一切使われない点に古典の重みを感じる。引き続き中巻へ。

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