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魔の山(下巻) の商品レビュー

4.1

22件のお客様レビュー

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2024/06/18

「100分de名著」のおかげで、遭難しかけながらも読み終わることができた。主人公とともに「魔の山」という閉鎖的で退廃的な空間に足を踏み入れ抜け出せるのかと怖くなった。終盤に向かうにつれ、戦争の足音が聞こえ、暴力や苛つきが蔓延し息苦しい。最後の主人公の選択やラストの一文に私は光を見...

「100分de名著」のおかげで、遭難しかけながらも読み終わることができた。主人公とともに「魔の山」という閉鎖的で退廃的な空間に足を踏み入れ抜け出せるのかと怖くなった。終盤に向かうにつれ、戦争の足音が聞こえ、暴力や苛つきが蔓延し息苦しい。最後の主人公の選択やラストの一文に私は光を見たように感じた。

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2024/05/03

長い。とにかく長い小説である。 作家というものは、とにかくいくらでも長い物語を物語れる稀有の人たちであるということを実感させられた。

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2024/02/21

いわゆる教養小説の代表作に位置し,明治の日本文学にも多大な影響を与えていることから,研究目的で読む分にはやりやすいだろう。

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2024/01/19

主人公ハンス・カストルプの高地国際療養所での周囲との交流と成長を描いた小説、 とあらすじはシンプルだが登場人物たちの議論や言動の濃密さとその影響を受けてハンスが精神的に変化していく様は圧倒的な描写で流石にビルドゥングス・ロマンの大傑作。忘れられない読書体験。人間関係のさまざまな側...

主人公ハンス・カストルプの高地国際療養所での周囲との交流と成長を描いた小説、 とあらすじはシンプルだが登場人物たちの議論や言動の濃密さとその影響を受けてハンスが精神的に変化していく様は圧倒的な描写で流石にビルドゥングス・ロマンの大傑作。忘れられない読書体験。人間関係のさまざまな側面、自然、病、科学、政治・経済、宗教、哲学、心霊、文化、遊び…とありとあらゆるテーマが飛び交い、延々と言葉が積み重ねられていく描写は人によっては「退屈」と感じられるのだろうし、長い『魔の山』登山を楽しんでいた私自身でも「一体何を読んでるんだ?」と混乱してくる場面もあったが、多感な青年の成長とは理路整然や首尾一貫よりは混沌としながら進んでいくものだと思うので、そうしたことを読書体験全体としても感じられた。読んでよかった!

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2024/01/16

うーん。あまり面白くなかった。これが世界文学の名作とはね。 まずいたずらに長い。さらに啓蒙と虚無の論争、古い。ただ、ラスト。主人公ハンス・カストロプを捉えるカメラのような語りはよかったかな。そこにいくまで文庫で1400ページ。2月超かかった。はっきり言っておすすめしない。 人生...

うーん。あまり面白くなかった。これが世界文学の名作とはね。 まずいたずらに長い。さらに啓蒙と虚無の論争、古い。ただ、ラスト。主人公ハンス・カストロプを捉えるカメラのような語りはよかったかな。そこにいくまで文庫で1400ページ。2月超かかった。はっきり言っておすすめしない。 人生の意味とかヨーロッパの精神とか、大きなものを大きく考えたい人にはいいだろうけれど…。ある年代を過ぎると無理かもね。

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2023/07/09

最後に至るまで思弁的で、冗長で、密度が高く、読むのが辛かった。 しかし、読み終わって思索してみると、ハンス・カストルプの凡俗さに人間存在の危うさが垣間見れる力作であった。 女性の描かれ方が考えさせられる。観念、理性が男性に割り振られ、情緒、感情が女性に割り振られている。 シ...

最後に至るまで思弁的で、冗長で、密度が高く、読むのが辛かった。 しかし、読み終わって思索してみると、ハンス・カストルプの凡俗さに人間存在の危うさが垣間見れる力作であった。 女性の描かれ方が考えさせられる。観念、理性が男性に割り振られ、情緒、感情が女性に割り振られている。 ショーシャが連れ戻ってきたピーター・ベーペルコンの存在感が印象的だった。

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2023/06/07

ゲーテのヴィルヘルムマイスターと並ぶドイツ教養小説の名著。1924年作。 主人公ハンス・カストルプはスイス山奥のサナトリウムでの療養という非日常の世界で、出会い啓蒙喪失葛藤を通して成長していく。 思想、政治、イデオロギー、宗教、哲学、文学、オペラ、自然科学、神秘体験等とにかく広範...

ゲーテのヴィルヘルムマイスターと並ぶドイツ教養小説の名著。1924年作。 主人公ハンス・カストルプはスイス山奥のサナトリウムでの療養という非日常の世界で、出会い啓蒙喪失葛藤を通して成長していく。 思想、政治、イデオロギー、宗教、哲学、文学、オペラ、自然科学、神秘体験等とにかく広範なリベラルアーツや当時の西洋アカデミズムに触れることができて面白い。西洋でいう批評精神批判精神がどういうものかもよく分かる。が、上下巻1400ページにわたる大著、博覧強記の教養、読み終えるのに苦労しました… さて、下巻。 いとこで親友のヨーアヒムの臨終の場面はとりわけ迫真で胸に迫る。大人物ペーペルコルンとの出会い対決別れ、憧れの女性ショーシャ夫人との別れを経て、霊感の強い少女ブラントを霊媒に死んだヨーアヒムと再会するが、非業の死を遂げた親友を無理やり呼び出したところでかける言葉などあるはずもない。二人の師の決闘によりナフタは自ら命を絶ち、庇護者である大叔父も死ぬ。失意と諦念の中、主人公は第一次大戦の戦火の中に飛び込んでいく。 この作品は無垢な青年が病い戦争個人的な不幸に翻弄されていく悲劇の物語ではあるが、彼もまた第一次大戦やその他多くの戦争で死んだいった多くの若者たちの一人に過ぎない。主人公ハンスが、自分も他者をも正当化しない潔さというようなものを獲得したということを一つの希望にしたい。

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2021/08/24
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※このレビューにはネタバレを含みます

 ついに読み終わりましたよ、上下巻1400ページの大作!  若い時なんで読まなかった、いえ、読めなかったのでしょうね。大作ということならもっと長大編を読みましたものね。でも、とにかく夏の暑い盛りに(豪雨もありましたが)汗かいてよくこの歳で読めたと自分で感心してます。  作家倉橋由美子さんは病気になるとベットに持ち込み読んで、読み終わると病気が治るのが理想だそう(『偏愛文学館』)10年ごとに読みたくなったそうですが、そんなに病気になるのはちょっとどうも、ですよね。  主人公のハンス・カストルプがスイス高原のサナトリュウムへ、いとこの見舞いに行ったら自分も結核になっていたということがわかり、いっしょに入院、療養に長き時を過ごすその間に、いろいろな人たちがああでもないこうでもない。  ストーリーは複雑ではありませんが、登場人物達のセリフというかおしゃべりが摩訶不思議なので、なかなか噛み応えがあります。  考えさせられるような、しかしわけのわからないような登場人物たちの御託、まじめなんだかどうなんだかですけど、ちょっとユーモラスでもありかつ大変勉強になります。  ハンスが不倫の恋に落ちるクラウディア・ショーシャ夫人は、竹久夢二が描く女性のように「くんにゃり」としているようにわたしは感じました。『トニオ・クレーゲル』に出てくる少年達のように、ハンスが少年の時に好きだったプシービスラフ・ピッペ少年にその夫人がそっくりなところもちょっとドキッとします。思わず『トニオ・クレーゲル』も再読してしまいました。  これはほんのさわり、内容は思索的、精神的なことに色濃い作品です。当然ですよね、ノーベル文学賞作家ですもの。しかし、純真無垢なハンス青年がスイスの恵まれた療養所でゆっくりと(7年も!)思索的人生勉強なんて、やっぱり物語だからです。  トーマス・マンはこの物語で「時の流れ」ということを、とてもうまく表現していると思います。あれもこれも時の過ぎ行くまま、読み終わってほっとしております。

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2020/10/12

 上下巻の大長編なので読み通すのに精一杯、というのが正直な所だが教養小説を志向しただけに、様々な、そして趣の異なった魅力がふんだんに詰まった小説だった。  第一としてはセテムブリーニ、そしてナフタとの議論、この部分が通読して一等面白かった。第二はシャーシャ夫人との恋の行方だろうか...

 上下巻の大長編なので読み通すのに精一杯、というのが正直な所だが教養小説を志向しただけに、様々な、そして趣の異なった魅力がふんだんに詰まった小説だった。  第一としてはセテムブリーニ、そしてナフタとの議論、この部分が通読して一等面白かった。第二はシャーシャ夫人との恋の行方だろうか。第三にはマンの本作における時間感覚。小説内の時間の問題についてはジュネットの『物語論』を適用させられるのだがそれだけでは済まない〈魔の山〉独特の時間の流れ方を考えてみるのもよいかもしれない。    続けようと思えば何処までも続けられる類の小説なのだろうが、一応の筋はあるので、それに関して思った事と言えば、これは獲得と喪失の話なのだろうな、という事。なるほどハンス・カストルプなる青年は教化されて上巻に比べれば一端の論客になれそうなくらい、知恵はついたし深く物事を考える態度を得た。その一方で、親しい人々が次々と死んでいく。この経験は果たして青年ハンスに何をもたらしたか、そこに内面の成長を喚起させるものがあったか、まああったのだろう、敬虔さを身に着けたのかもしれない。それにしても親しい人の相次ぐ〈死〉という喪失による精神的ダメージを次々と経験していくさまが痛ましいとは思えないか。わたしならこれは堪らない。後追いというわけではないが、ハンス青年は切実な心持ちで〈死〉に接近していたはずだ。  しかしながらマンもあこぎな事をする書き手で、ハンス青年は病が癒えてしまう。結核療養所である〈魔の山〉においては、死神がすぐ横に侍している病人ばかりである。その中でハンス青年は〈魔の山〉においてはストレンジャーになりうざるを得ない。快癒したのならば下山すればよいのだが、彼は幼い時に両親を失っていて、七年間も過ぎたら彼の帰りを待つ人や場所(勤め先)もなくなった。死神に去られたハンス青年は〈魔の山〉の居住資格を失って、かつ帰る場所もない。喪失したアイデンティティーである〈死〉を求めて、あるいはヨーアヒムの果たせなかった軍務を代理して成就させるためを以て、いずれか、それとも両方の理由から第一次世界大戦に出征したのではなかろうか。    この幕引きのための最後の十ページほどの中に戦場に臨むハンス青年の心理や思考は詳しくは描かれない。解釈に正解も間違いもない、マンが答えを示さなかったのだから読んだ人間の数だけ解釈があってよいはずで、なので幾つか『魔の山』論を読んでみたい気にさせた。読み終えてもまだまだ考えたい事柄が残るというのが名作の条件だと個人的に思っていて、その点からすれば本作は紛うことなき名作である。

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2020/09/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アプリによると、上巻を読み終わったのは2012年のことらしい。今から8年前です。 長い年月をかけて、久しぶりに読書を再開して、読み進めてようやく読み終わった。再開するまでは、この本は難しくて面白くもないという印象だったが、久しぶりに開くとなんと面白い本じゃないかと思った。 特に第6章の雪という節には非常に引き込まれた。巻末で、この本の所謂山場はここだという文を読んで納得した。つまらない感想だと思うけれども、人生の煌めきと刹那が詰まっている。 人物も魅力的。ハンスもヨーアヒムも、ナフタもセテムブリーニも、ショーシャもペーペルコルンも、ハンスをめぐるたくさんの人々が現れては去っていく。人生はどれも儚いものだけど、皆それぞれがたくさんの人との出会いや出来事を経験している。ハンスはこのまま歴史の渦に消えていくのかもしれないけども、この本を通して私たちは一人の些細な青年の人生を経験する。

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