約束された場所で の商品レビュー
アンダーグラウンドを読んだ後に読んでほしい。ただ悪の対象でしかなかったオウム真理教が、また違うように見えてくる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
アンダーグラウンドから続けて読みました。自分にとってはすごく「怖さ」のある本で、最近は某宗教団体の問題も色々取り沙汰されているけれど、彼岸と此岸の境目なんてなくて全ては地続きなんだということ、いつ自分が足を踏み入れる分からないということにすごく実感を持ててしまう。もっと言えば踏み入れること自体が悪なのか、結果的に悪しき事件を引き起こすことになったとしても、社会に適合できず他人の用意した物語の中で生きようとすること自体は果たして悪なのか? インターネットもより普及し、オウムの存在した時代よりアクセスしやすい「受け皿」はずっと増えたけれど、血肉ある自分の物語を持つことの重要性は増しているのではないかと思いました。 また河合氏との対談パートがとてもよかった。「会社というのは宗教的な色彩さえある一つのシステムである」「日本人は異質を排除する傾向が強く、時間が経つと『何をまだぶつぶつ言っているんだ』というふうに被害者の方へ敵意を向けてしまう」「麻原が用意した物語に社会が有効な対抗ワクチンを用意できなかった」「内側に悪をもたない組織はやがて外側に悪を置くようになる」「悪を抱えて生きる」など覚えておきたいことが多くあった。
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52冊目『約束された場所で underground 2』(村上春樹 著、2001年7月、文藝春秋) 『アンダーグラウンド』(村上春樹 著、1997年3月、講談社)の続編であり、なおかつそれと対をなすノンフィクション。地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューをまとめた前作に対し、本...
52冊目『約束された場所で underground 2』(村上春樹 著、2001年7月、文藝春秋) 『アンダーグラウンド』(村上春樹 著、1997年3月、講談社)の続編であり、なおかつそれと対をなすノンフィクション。地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューをまとめた前作に対し、本作はオウム真理教の信者/元信者へのインタビューをまとめたものとなっている。 宗教の善悪について考えるきっかけとなる一冊。 巻末には心理学者・河合隼雄との対談が収録。 「世界というのはそれぞれの目に映ったもののことではないかと」
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2023年4月1日読了。村上春樹が地下鉄サリン事件被害者にインタビューした『アンダーグラウンド』の続編、オウム真理教の信者たちに行ったインタビュー8本と河合隼雄との対談を収録。前作のインタビュイーは62人だったが、教団関係者にコンタクトをとって対談にこぎつけるには相当な労力が必要...
2023年4月1日読了。村上春樹が地下鉄サリン事件被害者にインタビューした『アンダーグラウンド』の続編、オウム真理教の信者たちに行ったインタビュー8本と河合隼雄との対談を収録。前作のインタビュイーは62人だったが、教団関係者にコンタクトをとって対談にこぎつけるには相当な労力が必要だったのだろうな…と想像する。著者自身の述懐にもある通り、信者たちは一様にまじめでそれぞれの形で教壇に魅力を感じており(まあ、だから入信したわけだが)「教団のすべてが間違っているわけではない」と考えているのことは、まあその通りだとは思うが、「戦争のすべてが悪いわけではない」みたいな発言のように、特に当事者・関係者としては「そんなことを言う前にやることがあるだろう」という思いが強くなるが、そういうことを彼らに問うても無駄なのだろうなあ…もともと現世に興味がなく解脱を目指した人々に、教義の現実の妥協点・着地点を見いだせ、というのは無理な話。マスコミや一般大衆の無知・いたずらに恐怖をあおるだけの対応は何も生まない、著者のこの試みは小さな取り組みではあるが、日本人・人類にとって有意義なものだったのだと思う。
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読んでいてむかむかして気分が悪くなる。でもやめられない。 信者について、結局、社会人として生きていく上で避けられない、自分の頭で考えて責任を持って働くことや、煩わしい人間関係をどうにか流していくことから逃げて楽をしたい人たちとしか思えなかった。 事件についてどう思うか聞かれて...
読んでいてむかむかして気分が悪くなる。でもやめられない。 信者について、結局、社会人として生きていく上で避けられない、自分の頭で考えて責任を持って働くことや、煩わしい人間関係をどうにか流していくことから逃げて楽をしたい人たちとしか思えなかった。 事件についてどう思うか聞かれても、「わからない」「実感がない」って何なんだろう。何かに対して、どう思うかわからないなんてことはない。わかろうとしていないだけ。考えることをやめて楽してるだけだよね。
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地下鉄サリン事件を経て、オウム真理教について、村上春樹がオウム信者側のインタビューをまとめた作品。純粋におもしろかった。 社会のシステムにうまく順応できない人々が、別の居場所を探して、行き着いたのがオウム真理教。それぞれ色々な事情があり、バックボーンがある。日本は異質を排除する傾...
地下鉄サリン事件を経て、オウム真理教について、村上春樹がオウム信者側のインタビューをまとめた作品。純粋におもしろかった。 社会のシステムにうまく順応できない人々が、別の居場所を探して、行き着いたのがオウム真理教。それぞれ色々な事情があり、バックボーンがある。日本は異質を排除する傾向にあり、社会に受け皿がない。 心理学者の河合隼雄氏との対談で 「サリン事件に巻き込まれてふらふらになっても、ほとんどの人は会社に行っていて、会社には一種の宗教的な色彩さえある」 「日本ほど宗教的な国はないし、日本ほど宗教と無縁に生きてる国はない」という言葉が印象的だった。
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あとがきと河井先生との対談が非常に面白かった。 組織が正しく機能し続けるためには、悪を内含していなければいけない。
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オウム真理教に関するインタビュー集第2弾。今回は信者や元信者8名のインタビューです。一人一人丁寧に淡々とした筆致でそれぞれの人生が描かれています。 そこから感じるのはみんな普通の生活を送ってた人なんだということ。 前著「アンダーグラウンド」とあわせて読むと良いかも。オススメです!
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これは自分をしっかりと 維持しながから読まなければならない 本だと思いました。 オウム真理教元信者に向けての インタビューです。 人生のふとした隙間に入り込んで来た スピリチュアル的なもの、 目に見えるものにはもう救われないと 感じた信者達は、 目に見えないものに救いを求め、...
これは自分をしっかりと 維持しながから読まなければならない 本だと思いました。 オウム真理教元信者に向けての インタビューです。 人生のふとした隙間に入り込んで来た スピリチュアル的なもの、 目に見えるものにはもう救われないと 感じた信者達は、 目に見えないものに救いを求め、 最後は加害者になってしまったのでしょう。 インタビューを受けているのは どこかに痛みがあったり 生きづらさを感じていますが ごく普通の方々です。 道を踏み外す可能性は皆あるのだと 感じました。 日本のヨガ教室で ヨガが持つ約4500年の教えや 気持ちの持ち方を講師が話さないのは オウム真理教のイメージが強いからでは ないでしょうか? 実際マントラで唱える 「オームンー」は 自分が出す振動が 体を落ち着ける効果あるそうですが ヨガ教室では教わりません。 とても残念な事です。 サリン事件は明らかに悪ですが、 「人を殺してはいけません」 なんて当たり前な一言では片付けられない 人間の深い闇があるのだと感じました。
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オウム真理教の信者8人によるインタビューを村上春樹さんの言葉で文書化した本。 冒頭にあった村上春樹さんの言葉で、 「この本はオウム信者たちを非難弾劾するためのものでも無いし、逆に彼らを新しい視点から再評価するために行った訳でもない」 「明確な一つの視座ではなく、明確な多くの視座を作り出すのに必要な血肉のあるマテリアルを提供したかった」 と書いてありましたが、まさにそんな感じの本でした。恐らく絶対数としては家庭環境に恵まれなかった人や社会的弱者の人が多かったとは思いますが、必ずしもそういう人たちばかりではなくて、純粋で素直な優しい性格だからこそ、普通の人なら「まあいいか」と妥協してしまうような事に対して悩んでしまったり、普通の人とは少し違った価値観を持っていた人たちを異物であるとして排除しようとする当時の日本にも問題があったのかなと思ったりもしました。 一連の事件は許される事では無いと思いますが、起こってしまった事は仕方無いものとして、何故そういう結果に至ったのかに対し、批判的な視点では無く当事者目線でその人たちの言い分をしっかりと聞いてあげる事って大事だなと思いました。 ちなみに、後半部分は ユング心理学の権威である 故・河合隼雄先生と村上春樹さんの対談集。すごく良いことがいっぱい書いてありましたが、その中でも特に「一般社会の価値観とはずれた価値観を持った人を排除すれば社会が健全になるというのは大間違い」という箇所はすごく良かったです♪かなり面白かったので、この作品の後に出版された「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」の方も読んでみたいと思います☆
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