1,800円以上の注文で送料無料

敗れざる者たち の商品レビュー

4.3

61件のお客様レビュー

  1. 5つ

    24

  2. 4つ

    22

  3. 3つ

    9

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

「敗者の美学」に貫かれたスポーツ・ノンフィクション

プロボクシング、プロ野球、マラソン、競馬それぞれのスポーツの勝負の世界に、青春や人生を賭けて挑み、敗れ去っていった者たちを追った6編のノンフィクション集である。著者の「敗者の美学」と丹念かつ多角的な取材に基づき、その鋭敏な視点と感性、深い洞察力をもって各主人公の人間像や勝負の深層...

プロボクシング、プロ野球、マラソン、競馬それぞれのスポーツの勝負の世界に、青春や人生を賭けて挑み、敗れ去っていった者たちを追った6編のノンフィクション集である。著者の「敗者の美学」と丹念かつ多角的な取材に基づき、その鋭敏な視点と感性、深い洞察力をもって各主人公の人間像や勝負の深層に迫っており、勝負の場面では、その臨場感と迫力に思わず引き込まれる。中でも「長距離ランナーの遺書」の円谷幸吉の自死には、幼少の頃のリアルタイムの記憶やその後の報道での見聞も相まって、改めて無念であり、哀惜の情をぬぐえない。著者は、自死の要因について、「『走れなくなった』からといって死ぬことができるのか?」という疑念を埋めるべく取材を重ね、結局円谷は「規矩の人」であり、その死を気質の問題に帰結させているようであるが、やはり円谷は、国民世論の身勝手さやジャーナリズムの報道の在り様も含めて、東京オリンピック銅メダリストというアマチュアのマラソンランナーとしてしか生きられず、そして死んだといえるのではなかろうか。著者が認めるように、勝負にも自死にも「もしも」はない。

fugyogyo

プロ野球の世界で…

プロ野球の世界で、プロボクシングの世界で、競馬の世界で、人生のある一瞬、その道を極め、栄光のスポットライトを浴びて、表舞台に立つプロスポーツ選手たち。一瞬に光り輝き、流星のように消えていく者たち。そこにあるのは、衰えていく肉体と技術。栄光と挫折が人生行路を彩る。 作者は、こう...

プロ野球の世界で、プロボクシングの世界で、競馬の世界で、人生のある一瞬、その道を極め、栄光のスポットライトを浴びて、表舞台に立つプロスポーツ選手たち。一瞬に光り輝き、流星のように消えていく者たち。そこにあるのは、衰えていく肉体と技術。栄光と挫折が人生行路を彩る。 作者は、こうして消えていったプロスポーツ選手醒めた目で描いているスポーツ・ドキュメントである。 醒めてはいるが、温かい作者の目はタイトルを「敗れし者たち」ではな、「敗れざる者たち」としたところに、私は人生のアイロニーを感じまし

文庫OFF

『敗れざる』という言…

『敗れざる』という言葉には色々な意味が含まれている。6つの短編からなっているが、それぞれの『敗れざる』の違いにのめりこんでしまう1冊である。この短編集には2名のボクサーが描かれているが、最後に登場するボクサー(現在は主にバラエティなどで活躍中)は、改めてFANになってしまった。私...

『敗れざる』という言葉には色々な意味が含まれている。6つの短編からなっているが、それぞれの『敗れざる』の違いにのめりこんでしまう1冊である。この短編集には2名のボクサーが描かれているが、最後に登場するボクサー(現在は主にバラエティなどで活躍中)は、改めてFANになってしまった。私の世代ではリアルタイムではバラエティ番組でしか彼を知りえないのだが、本書を読み、若かりし頃の彼に思いを馳せ『かっこいぃ……』。今までの彼に対する私の見方は、誤りではないにしても正しくはなかったのだな…と思わ

文庫OFF

粒ぞろいのスポーツ短…

粒ぞろいのスポーツ短編集だと思います。個人的には、輪島功一氏についてのルポが好きです。テレビ等ではすっかり”お茶目”キャラの輪島氏。しかし、彼がふとしたときに見せる目の奥の油断ならない光は、まぎれもない勝負師であった時代の名残なのだなと思わせてくれる一編です。

文庫OFF

2023/08/19

闘う人たち 負けられない人、燃えられる人、燃えられない人、人によって燃やされる者、燃焼する人、消耗する人… あなたには、彼らの曵く長い影が、はたして見えるだろうか。

Posted byブクログ

2023/01/23

友人に薦められなければ絶対手に取らなかったであろう本。タイトルからして「諦めなければ負けることはないのだ」みたいな説教飛んできそうだし。読み終わってそんな先入観を恥じました。 アスリートは人間のある側面が極端に先鋭化された生き物と捉えることもできるから彼らを写し取ったスポーツル...

友人に薦められなければ絶対手に取らなかったであろう本。タイトルからして「諦めなければ負けることはないのだ」みたいな説教飛んできそうだし。読み終わってそんな先入観を恥じました。 アスリートは人間のある側面が極端に先鋭化された生き物と捉えることもできるから彼らを写し取ったスポーツルポは必然的に人間、人生に対する深い示唆を与えるのだろうな。

Posted byブクログ

2021/09/11

ノンフィクションの良さが詰まっている。描かれている対象はそれほど有名ではないが、密着して調べた事実がドラマをより引き立たせている。円谷や競馬の話にのめり込んだ。

Posted byブクログ

2021/03/15

本書は、沢木耕太郎(1947年~)が、1976年、28歳のときに発表した2冊目の著作で、1979年に文庫化されたものの新装版(2021年)である。 収録されているのは、以下の6篇。 「クレイになれなかった男」・・・燃え尽きることなく翳りゆくボクサー/カシアス内藤 「三人の三塁手」...

本書は、沢木耕太郎(1947年~)が、1976年、28歳のときに発表した2冊目の著作で、1979年に文庫化されたものの新装版(2021年)である。 収録されているのは、以下の6篇。 「クレイになれなかった男」・・・燃え尽きることなく翳りゆくボクサー/カシアス内藤 「三人の三塁手」・・・英雄を頂点に運命を交錯させる三人の打者/長嶋茂雄・難波昭二郎・土屋正孝 「長距離ランナーの遺書」・・・夭折する栄光の長距離走者/円谷幸吉 「イシノヒカル、おまえは走った!」・・・良血馬たちとの一度限りの決戦に臨むサラブレッド/イシノヒカル 「さらば 宝石」・・・戦いの舞台から降りてなお狂気を放つ名選手/榎本喜八 「ドランカー(酔いどれ)」・・・無謀と嘲笑された挑戦へと疾走する元王者/輪島功一 スポーツ・ノンフィクションというジャンルが確立する前に発表された本書の、その先駆け的作品集としての評価はいまさら言うまでもないが、新装版において加えて語るべきは、報知新聞記者・ノンフィクションライターの北野新太氏による解説にあるかもしれない。 私はこれまで、『深夜特急』にはじまり、『凍』、『キャパの十字架』、『バーボン・ストリート』、『流星ひとつ』、『世界は「使われなかった人生」であふれてる』、『旅の窓』ほか、沢木の様々な作品を読んできたし、最も好きな書き手は誰かと問われれば、迷わず沢木の名を挙げるが、中学時代に沢木の作品を読み、大学時代に出版社のアルバイトで沢木と頻繁に接したことにより、ライターの道を志したという北野氏の解説は大変興味深い。その中には、以下のような印象的な記述がある。 「沢木耕太郎という人は、今までの自分が知り得ていた世界、あるいは想像し得た世界にいる誰とも似ていなかった。会いたい人に会うこと。行きたい場所に行くこと。書きたい何かを書くこと。誰とも群れず、何にも属さず、しかし、あらゆる世界や人々と柔らかく繋がっている。私立探偵のように何らかの発端を得て、人や出来事に深く関わり、ある時間を共に過ごし、去っていく。何かが残れば作品として発表する。」 「長い歳月の中で沢木作品を読み続けると、あることを思うようになる。ノンフィクション、エッセイ、紀行、小説、写真、絵本とあらゆる表現を横断し、連動しながら、彼は「沢木耕太郎」という名の長篇を書き続けているのではないか、と。」 「沢木耕太郎は「夢の作家」である。ノンフィクションの系譜の中では「方法の作家」と語られる。正確な評価だろう。彼が続ける「スタイルの冒険」はノンフィクションの持つ可能性を拡げている。でも、とも思うのだ。「方法」という個性の前には「夢」があるのだと。沢木耕太郎は自分の夢を生きる。そして人に夢を与える。」 沢木ファンには嬉しい新装版である。 (2021年3月了)

Posted byブクログ

2020/09/07

6篇のスポーツノンフィクションから成る。作者20代、50年近く前の作品。結果が決まっているノンフィクションだが、小説を読むように熱くなってページを読み進めていった。特に最後の輪島功一の話は、これ以上ないボクシング観戦記となっている。みる者としてのボルテージの上がりぶりが直に伝わり...

6篇のスポーツノンフィクションから成る。作者20代、50年近く前の作品。結果が決まっているノンフィクションだが、小説を読むように熱くなってページを読み進めていった。特に最後の輪島功一の話は、これ以上ないボクシング観戦記となっている。みる者としてのボルテージの上がりぶりが直に伝わり、私まで熱くなった。今まで読んできた沢木耕太郎の文章の中でも、この表現力は抜群だと思う。こんな熱い試合を観たい。体感したい。そして、このような熱くみずみずしい文章を書いてみたい。

Posted byブクログ

2020/05/12

20200511 事実を追っているので経過についてどう捉えるかがポイント。タイトル通り、勝ち負けはどう判断するか。勝負としては明確なのだが本人がどう思うか、経過なのか?結果なのか経過なのか?結局、真っ白に燃え尽きる事ができたかを基準にまとめているように思った。

Posted byブクログ