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敗れざる者たち の商品レビュー

4.3

61件のお客様レビュー

  1. 5つ

    24

  2. 4つ

    22

  3. 3つ

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2013/01/10

懐かしい作品。これぞニュージャーナリズムっていうやつなんですかね。この文庫本に収録されている解説が個人的に好きなんですが、本当にそこにも書いてあるとおりなんです。著者は取材対象にギリギリまで行動をともにして密着する一方、一歩引いた冷静な「観察者」としての視点もしっかり兼ね備えてい...

懐かしい作品。これぞニュージャーナリズムっていうやつなんですかね。この文庫本に収録されている解説が個人的に好きなんですが、本当にそこにも書いてあるとおりなんです。著者は取材対象にギリギリまで行動をともにして密着する一方、一歩引いた冷静な「観察者」としての視点もしっかり兼ね備えている。そこがこの絶妙な熱量の文章を産み出してのだと思うし、そこが好き。

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2012/09/05

俺はここ数年ボクシングが好きで、なんかボクシングのルポタージュが読みたく、インターネットであれこれ検索して本書を手に取ったが、最初の目的から大きくはみ出してしまった。 タイトルにある「敗れざる者たち」、妙にひっかかる。このルポタージュに収められている6本のルポタージュのうち、3...

俺はここ数年ボクシングが好きで、なんかボクシングのルポタージュが読みたく、インターネットであれこれ検索して本書を手に取ったが、最初の目的から大きくはみ出してしまった。 タイトルにある「敗れざる者たち」、妙にひっかかる。このルポタージュに収められている6本のルポタージュのうち、3本はボクシングの東洋ミドル級チャンピオンとなったカシアス内藤、東京オリンピックの銅メダルの円谷幸吉、新人王と二回の首位打者を穫った大毎オリオンズの榎本喜八、の三人、いづれも凡人からみれば、輝かしい成果を収めた人達だからである。が、沢木耕太郎は、彼らを「敗れざる者たち」としている。なんでだろうか? 俺が考えた結論は、非常にバカ丸出しの安っぽい結論なんだが、彼らはもっと、イけてたのに、更なる凄い成績を残せる能力があったのに、なんか実力を出し切れずに終わった、そんな感じを描きたかったのかなあ、と思う。 で、三者共通しているのが、己に勝つ事は、ある時期できたものの、良くも悪くも愚純であるが故、ある一定の成果を収めた者に対する大衆の期待がノイズとなり、それに耳を傾け過ぎて、己を崩壊していった様に感じられるのである。あんまり言いたくはない言葉だが、「鈍感力」に欠けていたのではなかろうか? 一流の成績を収めたにも関わらず、崩壊していく様が痛々しい。誰でも努力すれば、いい成績を収められる、しかし、成功に付随するノイズに耐えられる者は、「誰でも」では、ないのかな、そんな事を思った。 このルポタージュは、最後、ボクシングの輪島功一が晩年チャンピオンの座を奪われた相手に挑戦、すでに全盛期を通り越した輪島が勝利する様を描いた「ドランカー」で、結ばれている。「敗れざる者たち」の大半が、生半可な成功者の頭打ち状態を描く中、鈍くさいながらも突き抜けた輪島功一のルポタージュでなんか救われた。

Posted byブクログ

2012/08/30

人の業や性を照らした作品を20年以上ぶりに再読。あの時間を切り取った沢木さんのルポに感動。輪島さん、こんなに凄い人だったんだと改めて感激。自分がちびだった頃の時を思い出せ、日本が一生懸命前向いていた時を再認識。読み返し甲斐がありました。

Posted byブクログ

2012/08/15

今年の夏は例年になく暑いと思う。冷房抑制のせいもあるけれど。  どうせ暑いならば、熱いノンフィクションで燃えようと手にしたのが本書、今から四半世紀前、沢木耕太郎が三十になる前に書いたスポーツ・ルポルタージュ。  圧巻は、円谷幸吉の遺書にまつわる話、それから輪島功一が世界王座奪還に...

今年の夏は例年になく暑いと思う。冷房抑制のせいもあるけれど。  どうせ暑いならば、熱いノンフィクションで燃えようと手にしたのが本書、今から四半世紀前、沢木耕太郎が三十になる前に書いたスポーツ・ルポルタージュ。  圧巻は、円谷幸吉の遺書にまつわる話、それから輪島功一が世界王座奪還に挑戦する話。  暑さごときは大した問題ではないと感じさせてくれる。 スカッとしました。 

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2012/05/09

一瞬の夏ですっかり虜になった沢木耕太郎の私が読んだ2冊目の作品。書かれている人物と直に付き合うからこそ伝わる熱が存分に放出されて、ノンフィクションの醍醐味を知りました。

Posted byブクログ

2012/01/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

<読みかけ p190/286> (書誌:1976年に刊行。沢木耕太郎は、ルポライターとして1970年にデビューしている。本書は、沢木の二冊目の単行本。雑誌に掲載された六つのルポルタージュを所収している。)  ノンフィクションはあまり読んでこなかった。訳あって、読むことになり、今、この沢木の本と、本田泰春の「吉展誘拐・殺人事件」を取材した『誘拐』(1977)、辺見庸の『もの食う人々』(1994)を並行して読んでいる。  並行して読んでみると、大雑把にいって、ノンフィクションには、取材し書かれる対象で読み手を惹きつけるものと、「そうでないもの」があるのだな、とわかる。辺見庸の『もの食う人々』は、書き手が見つけてくる一つ一つの「もの食う情景」が喚起的でおもしろい。『誘拐』は、言うまでもなく、書かれる対象(誘拐事件)がスキャンダラスで人を惹きつける。  で、「そうでないもの」、それ自体は、地味で、そのままでは素通りされるような対象を扱ったノンフィクションがある。沢木の『敗れざる者たち』は、確信犯的にこちら側のノンフィクションだと思う。勝てなかったボクサーや馬、長嶋と同時期に巨人に入った三塁手の二人など、一流とはいえない者たちが取り上げられる。  取材し書かれる対象そのものが、少なくとも多くの人々を惹きつけるものでないのに、それでも「読ませる、おもしろいノンフィクションである」なんてことはあるのか。もちろん、全然、ある。ということが、わかる本だ。    沢木は、文章の中に、その(一見地味であるような)取材対象に入れ込む自分の姿を混入させる。例えば、カシアス内藤のリング下で「いけよ!」と叫ぶ書き手や、ダービー前夜の緊張気味のイシノヒカルに青草をやる書き手の姿を混入させる。こんな風に、はっきりと沢木自身が描かれなくても、文章の中には「対象にグッときている沢木」の存在感が濃密に漂っている。  これが、この本のおもしろさ、入り込みやすさだろう。読み手は、普段なら素通りしてしまいそうな対象に、グッとくることができる。文章の中で、グッときている沢木に、同一化することを通して、それが可能となる。読み手は、「グッとくる作法」を学び取りつつ、対象を追うのだ。そして、グッとくる。  沢木耕太郎のノンフィクションが、今でも、若者にすごく読まれている(ように僕には見える)のは、こんな風に、「グッとくる作法」から教授するような、啓蒙的な側面が沢木の文章にあるからなのかもしれない、と思う。(こうやって、書きながら、村上春樹のことを考える。村上のデビューは1979年。ただ、沢木は1947年、村上は1949年生まれで同年代。)

Posted byブクログ

2011/11/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この本を読めば、バラエティ番組でHなコメントを連発している、あの団子屋のオヤジ「輪島功一」の見方が変わる! 職場の同僚(高校のボクシング部の顧問)とこの本のことで意気投合し、なんとWBAチャンプ柳済斗との再戦のビデオを貸してもらえたので、アパートに飛んで帰って観たのだが意外とこの本ほどは感動しなかった。恐るべし沢木耕太郎。ちなみに試合の実況はあの逸見政孝でした。

Posted byブクログ

2011/11/18

世間に成功者として崇められるスター選手、その裏にほぼ同じ能力を持ちながら日の目を見ることの出来なかった選手達がいたことを改めて知るキッカケになった。生き方に不器用なのか神のいたずらか、選手の苦悩や人生が刻銘に描かれ表舞台に立つ事を許されないやり場の無い葛藤が臨場感と共に伝わってく...

世間に成功者として崇められるスター選手、その裏にほぼ同じ能力を持ちながら日の目を見ることの出来なかった選手達がいたことを改めて知るキッカケになった。生き方に不器用なのか神のいたずらか、選手の苦悩や人生が刻銘に描かれ表舞台に立つ事を許されないやり場の無い葛藤が臨場感と共に伝わってくる。勝負の世界には必ず敗者が存在するが敗者にはスポットは当たらない、厳しい世界に生きたものだからこその心理なのだろう。この本を読んでからスポーツの見方が変わったように思う。

Posted byブクログ

2011/11/06

ふう、沢木耕太郎読むなんて何年ぶりだろう。ん?何十年ぶり?文体が素晴らしい。思い出した、ヘミングウェイだ、、、と思ったらあとがきに本人からもその名が出てきて納得。表面だけさらっと書いたものや上から目線で批判するだけのスポーツライティングが多いなか、「敗れる」人たちをその以前から書...

ふう、沢木耕太郎読むなんて何年ぶりだろう。ん?何十年ぶり?文体が素晴らしい。思い出した、ヘミングウェイだ、、、と思ったらあとがきに本人からもその名が出てきて納得。表面だけさらっと書いたものや上から目線で批判するだけのスポーツライティングが多いなか、「敗れる」人たちをその以前から書き込んでいく手法は素晴らしい。前のめりになって一気に読んだ。短編集だけど、つながっている。

Posted byブクログ

2013/04/06

望みつづけ、望みつづけ、しかし“いつか”はやってこない。そんなスポーツ選手を取材して書かれた6篇のノンフィクション集。 敗れていった人たちの生き様や言葉に妙に共感してしまう。彼らがなぜ「敗れざるものたち」なのかを読んで感じてほしい本です。

Posted byブクログ