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の商品レビュー

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75件のお客様レビュー

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学校の教科書に掲載さ…

学校の教科書に掲載されることはないでしょうが、多くの作家に影響を与えた作品です。

文庫OFF

2024/10/06

私たちの人格はどうやって作られたのか。先天的に与えられた部分と、後天的に獲得した部分がある、と言われるが、おそらくはそのいずれにも当てはまるのが、時代、そして地縁・血縁だろう。私という存在は、この時代に、この場所に、この親のもとに生まれるほかなかった。どんなに新しい未来を手にしよ...

私たちの人格はどうやって作られたのか。先天的に与えられた部分と、後天的に獲得した部分がある、と言われるが、おそらくはそのいずれにも当てはまるのが、時代、そして地縁・血縁だろう。私という存在は、この時代に、この場所に、この親のもとに生まれるほかなかった。どんなに新しい未来を手にしようとも、出自から完全に逃れることは不可能だ。一般的に言われるように、文学というものが、何らかの意味で書き手にとって「やむを得ず」書かれるものだとすれば、自分という存在の根源に潜行し、そこから言葉を立ち上げてくる小説が、文学でないはずがない。そういう小説、そういう文学に、青年期にこそ出会いたい。 中上健次は、一九四六年、和歌山県新宮市生まれ。一九九二年に四六歳で没するまで、故郷紀州の土地を舞台に、複雑な家族関係だった自らの出自を見つめる作品を書き続けた。それらの作品群は「紀州サーガ」と呼ばれている(「サーガ」とは、「一家一門の物語を壮大に描く長編の叙事小説」Wikipediaによる)。 『岬』は、一九七六年の芥川賞受賞作。翌年に出版された『枯木灘』はその続編。さらに後年出版される『地上の果て 至福の時』はさらにその続編。主人公ほか、登場人物も時間も連続している。螺旋的に繰り返し紹介されるその複雑な人間関係と、人間の根源が剥き出しの出来事を追いながら、これら三作読み進めていく作業は、文学と向き合うという行為が、生ぬるい娯楽ではないことを教えてくれる。中上文学にいつ入門するか。考えておいてほしい。(K) 紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2016年5月号掲載

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2024/08/16

文学性が非常に高いということがよく分かるような深い文章を書いている印象。 国語の授業で読んだ芥川龍之介の「羅生門」を読んだときと同じ感覚になった まぁ、僕には難しすぎた笑

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2024/08/07

表題作『岬』を含む4編。どの作品も鬱屈とした雰囲気が漂い、特に『岬』は、血、血縁というものを嫌悪しながらも、その繋がりを希求するような、血縁を軸とした「家族」のありようを読み手(私自身)に突きつけてきてように感じました。 中上作品は初めてで『十九歳の地図』を読み、すぐにこの作品を...

表題作『岬』を含む4編。どの作品も鬱屈とした雰囲気が漂い、特に『岬』は、血、血縁というものを嫌悪しながらも、その繋がりを希求するような、血縁を軸とした「家族」のありようを読み手(私自身)に突きつけてきてように感じました。 中上作品は初めてで『十九歳の地図』を読み、すぐにこの作品を読みました。著者のバックグラウンドについてはほとんど知りませんが、それを含めて、中上健次という人物、作品を知りたくなりました。『岬』を数時間前に読了しましたがこの感覚を誰かと分かち合い世界観に浸りたい。 (再読)(読書会課題本につき再読)照りつける太陽、土の匂い、迸る血や汗を感じる。中上健次には夏が似合うように思う。「岬」「枯木灘」「地の果てー」と再読したいが、時間と体力、気力が追いつかない。「火宅」は中上自身のことを描いているの?Help!!

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2024/08/04

紀伊半島の南部を舞台にした著者の経験をもとに書かれた表題作を含め四作の作品が収められている。どの話も重苦しく、特に「岬」は切っても切り離すことができない血縁に縛られた主人公の男の苦しさに、読み手側も辛くなった。 親族関係かなり複雑で時々この二人はどんな関係なのかと分からなくなる部...

紀伊半島の南部を舞台にした著者の経験をもとに書かれた表題作を含め四作の作品が収められている。どの話も重苦しく、特に「岬」は切っても切り離すことができない血縁に縛られた主人公の男の苦しさに、読み手側も辛くなった。 親族関係かなり複雑で時々この二人はどんな関係なのかと分からなくなる部分もあったので、「岬」は一気読みのほうがいいと感じた。個人的には「黄金比の朝」が一番面白かった。中上健次の他の作品も読みたいと思った。

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2024/06/10

表題の作品のパワーが凄まじい。思わずじっくり読み進めている自分がいた。さすが芥川賞受賞作品。短い文での状況説明や心象表現が特徴的で、戦後直後の朴訥とした荒めで不器用な男っぽさがよく出ているように思った。 「紀州サーガ」シリーズとして、同じ登場人物で同じ紀州で、また違った物語が展...

表題の作品のパワーが凄まじい。思わずじっくり読み進めている自分がいた。さすが芥川賞受賞作品。短い文での状況説明や心象表現が特徴的で、戦後直後の朴訥とした荒めで不器用な男っぽさがよく出ているように思った。 「紀州サーガ」シリーズとして、同じ登場人物で同じ紀州で、また違った物語が展開するらしく、次の「枯木灘」も読んでみたい。

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2024/05/13

舞台は和歌山、田舎、インターネットも何もなく他の世界とつながりようもない時代。 閉じた人間関係、どろどろのしがらみの中での愛憎、ふりほどけそうもない。 主人公は土方の仕事が好きで、毎日汗を流して、精錬潔癖に生きれたらと思ってる。 でも自分に流れる血がそれを許さない、最後はあの男へ...

舞台は和歌山、田舎、インターネットも何もなく他の世界とつながりようもない時代。 閉じた人間関係、どろどろのしがらみの中での愛憎、ふりほどけそうもない。 主人公は土方の仕事が好きで、毎日汗を流して、精錬潔癖に生きれたらと思ってる。 でも自分に流れる血がそれを許さない、最後はあの男への復讐を遂げる場面で終わる。

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2024/01/21

(引用) 彼は、一人残っていた。腹立たしかった。外へ出た。いったい、どこからネジが逆にまわってしまったのだろう、と思った。夜、眠り、日と共に起きて、働きに行く。そのリズムが、いつのまにか、乱れてしまっていた。自分が乱したのではなく、人が乱したのだった。ことごとく、狂っていると思っ...

(引用) 彼は、一人残っていた。腹立たしかった。外へ出た。いったい、どこからネジが逆にまわってしまったのだろう、と思った。夜、眠り、日と共に起きて、働きに行く。そのリズムが、いつのまにか、乱れてしまっていた。自分が乱したのではなく、人が乱したのだった。ことごとく、狂っていると思った。死んだ者は、死んだ者だった。生きている者は、生きている者だった。一体、死んだ父さんがなんだと言うのだ、死んだ兄がなんだと言うのだ。 * とことん下へ下へと潜っていくような気分。いろんなことが乱れたように事あるごとに思ってしまうのは、自分のせいであることを認める勇気がどこかのタイミングで必要だと思う。

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2023/10/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ヒリヒリと痛い、どうか光の輪のような観音様がきて、全てを許すように優しく抱きしめてあげてほしい。逃れられない血の憎しみと哀しさと純潔さと。 彼とか男とか、三人称で話が進むのでパズルを組み立てるようにして読み進めた。 鳳仙花を読んだ後なので秋幸!お前だったんか!とか、美恵はまた子どもみたいになどと、それはもう正月に集まる親戚さながら。 読了後、なぜだかジブリ作品もののけ姫、病者の長のセリフが浮かんだ。 「私も呪われた身ゆえ、あなたの怒りや悲しみはよく分かる。(中略)生きることは誠に苦しく辛い。世を呪い、人を呪い、それでも生きたい。愚かなわしに免じて」

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2023/08/28

表題作をまず読んだ。 舞台は紀州。日常風景に主人公の親戚縁者が登場。読み進めていくうちに関係性が徐々にわかっていくが、最初はすんなり入ってこなくて何度かページをめくる手が止まってしまった。 だが、明け透けなセリフからは登場する人たちの体温がムンムンと伝わってくる。人の死が大きな事...

表題作をまず読んだ。 舞台は紀州。日常風景に主人公の親戚縁者が登場。読み進めていくうちに関係性が徐々にわかっていくが、最初はすんなり入ってこなくて何度かページをめくる手が止まってしまった。 だが、明け透けなセリフからは登場する人たちの体温がムンムンと伝わってくる。人の死が大きな事件に思えてこない不思議。むしろ大事件が起こるラスト3Pのために全てがあるように感じた(初見にて)。

Posted byブクログ