密謀(上) の商品レビュー
仰々しく多くを語るような真似をしなくても、素朴で淡々とした言い回しでいつの間にか嵐を呼び、時に腹の奥底を焦がし時に茫然と時を忘れさせて、終いには美しい余韻を胸中に残していく──藤沢作品には毎度してやられて既に心酔の域にまで達しているワタクシですが、今回も全く期待を裏切られること無...
仰々しく多くを語るような真似をしなくても、素朴で淡々とした言い回しでいつの間にか嵐を呼び、時に腹の奥底を焦がし時に茫然と時を忘れさせて、終いには美しい余韻を胸中に残していく──藤沢作品には毎度してやられて既に心酔の域にまで達しているワタクシですが、今回も全く期待を裏切られること無く、見事に切なさと小春日のような幸福感とを同時に植えつけられてしまいましたよ! やっぱり大好きだぁ! それにしても、一つの事件に対する解釈が書き手さんによって全く異なってしまうって点にかけて、歴史小説ってのは本当に面白い。童門先生の『北の王国』読了後間もないからこそそう感じているのでしょうが。 童門先生の直江が妙に落ち着いていたのに対して、藤沢先生の直江は場面によっては物凄く熱かったし。前者では主従間以心伝心で足並みに全く乱れの無かったシーンが、後者では思い切り衝突してひと逡巡あったかのような形で描かれてあったりして。そのくせどっちも「良いね」と思えてしまうのだから、作家さんってのは凄い。 創造の世界に読み手を引き込んでナチュラルに納得させてしまう筆力に、只々脱帽であります。
Posted by
戦国武将の中で、先生に『書いて欲しいな』と思うのが兼続だったけどね…。でも余情はやはり期待通り。兼続を描く作品の中でも秀逸といえるでしょう。
Posted by
上杉家の執政、直江兼続を主人公にした小説。豊臣に従うところから徳川に従うところまで。史実に基づいて作った架空の人物や忍者の一団を入れ、かなり優しいタッチで描かれている。政治家の兼続、というよりは越後に住むとある人物、くらいの感覚で読むといい。
Posted by
これは歴史小説ではなくて文学作品だということが、最後まで読んだらよくわかりました。 藤沢先生はさすがというほかない。
Posted by