劒岳 新装版 の商品レビュー
日露戦争直後の明治晩年、劔岳に三角点埋設の至上命令を受けた測量官・柴崎芳太郎の偉業を記した小説。当時の劔岳は前人未踏、決して登ってはいけない山と恐れられていた。 陸地測量部は30年間にわたり測量を続け、ほぼ日本の地図を作り上げていた。最後の空白地帯だった越中劔岳。初登頂を目指す...
日露戦争直後の明治晩年、劔岳に三角点埋設の至上命令を受けた測量官・柴崎芳太郎の偉業を記した小説。当時の劔岳は前人未踏、決して登ってはいけない山と恐れられていた。 陸地測量部は30年間にわたり測量を続け、ほぼ日本の地図を作り上げていた。最後の空白地帯だった越中劔岳。初登頂を目指す山岳会に負けぬよう、という背景が、柴崎の挑戦をいっそう過酷なものにしていた。 作者のあとがきが興味深い。どうやって作品が生まれたか、自身で取材のために劔岳に登り、柴崎芳太郎の足跡を辿り。測量作業を文章にすることに苦労したというが、素人でもイメージができるような表現だったと思う。
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剱岳山頂に三角点設置の使命を受けた測量官柴崎芳太郎の歩み。さまざまな困難の中で、雪渓を進む道で頂上にたどり着く。ただ、数百年も前に修験者によって登られていた。測量官のチームとしての動きを描く。剱岳に登りたくなる。
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淡々とその足跡を追わせてもらいましたという感じかな。自分の想像力が足りないというのもあると思います。
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点の記とは、山の頂によく設置されている「三角点」の設定記録のこと。1888年以降の点の記が国土地理院に保管されているそうですが、「点」を追い求めて道なき道を開いた測量官たちの、まさに命懸けの仕事の証なんです。 「地図に載っているのに今は廃道になっている」からって軽々に文句を言っ...
点の記とは、山の頂によく設置されている「三角点」の設定記録のこと。1888年以降の点の記が国土地理院に保管されているそうですが、「点」を追い求めて道なき道を開いた測量官たちの、まさに命懸けの仕事の証なんです。 「地図に載っているのに今は廃道になっている」からって軽々に文句を言ったらバチが当たりますね(^^;)。 (もっとも、今の2万5千図の登山道などは航空写真を参考に描かれているようですが) ところでこの小説は、明治40年、柴崎芳太郎という測量官(実在)が、険峻であり、また宗教上の理由で登ってはならないとされていた劔岳に苦難の末に登頂を果たし(この時、山頂で遠く奈良時代のものと思われる錫杖と剣が発見され、「初登」ではないことがわかった)、立山一帯の地図作製に目途をつけた物語です。 さて登頂は果たしたものの、三等三角点設置のための資材を担ぎ上げることができず、四等三角点を設置するにとどまりました。ところが四等…は、「点の記」としては残らないのです。そこで新田氏が勇躍登場し、かれの功績を現代によみがえらせた、というわけなんですね。 やはり、綿密なファクトの積み重ねによる物語の密度と迫力は魅力的です。最後まで一気に読みました。
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三等三角点埋設とともに剣岳初登頂の至上命令を受けた柴崎芳太郎の物語。剣岳初登頂だけに争点を置かず、山岳会との競争、県庁や軍幹部との確執、立山信仰といった土着文化など、複合的な要素を交えることで本作を重厚な物語に仕上げている。主人公を測量官という特殊な職業にすることで、所々「測量」...
三等三角点埋設とともに剣岳初登頂の至上命令を受けた柴崎芳太郎の物語。剣岳初登頂だけに争点を置かず、山岳会との競争、県庁や軍幹部との確執、立山信仰といった土着文化など、複合的な要素を交えることで本作を重厚な物語に仕上げている。主人公を測量官という特殊な職業にすることで、所々「測量」という観点で描写され、ほかの山岳小説とは一線を画す作品となっている。仕事に誇りを持ち寡黙に職務を果たし部下を労る姿は勇ましい。 著者あとがきにあたる登山記「越中劔岳を見詰めながら」も著者の着想の一端に触れながら物語当時の剣岳が偲ばれ興味深いものであった。
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詳細は、あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノートをご覧ください。 → http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1691.html 本より先に、2009/7/15 映画を見てきました。 こちらを見てね ⇒ URLは https://bl...
詳細は、あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノートをご覧ください。 → http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1691.html 本より先に、2009/7/15 映画を見てきました。 こちらを見てね ⇒ URLは https://blog.goo.ne.jp/pasobo-arekore2005/e/c98e27bdfb4402c97072baf615249847 『映画:劔岳 点の記を見る』2009/7/16 ~ パそぼのあれこれフリーク:Part2
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岩壁に阻まれ明治40(1907)年7月まで三角測量が出来なかった北アルプスの剱岳(2999m、富山県)。そこに登頂と測量を命令された陸軍参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎の物語だ。幾度ものルート探しと挑戦の末に攻略。上司が心配していた山岳会との登頂競争には勝ったが、1000年昔の修験...
岩壁に阻まれ明治40(1907)年7月まで三角測量が出来なかった北アルプスの剱岳(2999m、富山県)。そこに登頂と測量を命令された陸軍参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎の物語だ。幾度ものルート探しと挑戦の末に攻略。上司が心配していた山岳会との登頂競争には勝ったが、1000年昔の修験者が使う錫杖(しゃくじよう)の頭と剣が残され初登頂とは言えなくなった。それでもその偉業は大きい。測量資材を担いであの山を登ったかと思うと驚きだ。もっとも祝福してくれたのがライバルの山岳会だったというのが心地よい。剱岳に登ってみたくなった。
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山岳の測量方法など、全く知識になく、どんなものか読んでいても想像できなかった。 そのために、なかなか感情移入できず。 少し、読み進めづらかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
劔岳登頂を果たした測量官の柴崎芳太郎と仲間たちの記録。 今でこそ一般登山道で最も困難であるが、鎖やはしごがない状態で登頂した彼らは凄いと思う。 ゼロ→1。何事もはじめてをなす事の難しさを思いました。自分達は過去の偉大なひとの実績があるからこそこうして山に立っていられる。
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当時、唯一と言っていい程の日本地図の空白部分を単に埋めるだけの行為ではなく、山岳部との競争要素もあった剱岳初登頂。作者執筆の、八甲田山雪中行軍の悲惨さよりはマシではあるが、それでも半年にも及ぶ測量の過酷さ、立ち向かう主人公をはじめとしたスタッフの仕事への情熱、真摯さに心を打たれる...
当時、唯一と言っていい程の日本地図の空白部分を単に埋めるだけの行為ではなく、山岳部との競争要素もあった剱岳初登頂。作者執筆の、八甲田山雪中行軍の悲惨さよりはマシではあるが、それでも半年にも及ぶ測量の過酷さ、立ち向かう主人公をはじめとしたスタッフの仕事への情熱、真摯さに心を打たれる。 山岳部との競争は心理的なもので、実際のライバルはカラリとしていて拍子抜けしてしまう。 地図と見比べながら読むが、行動の説明や位置関係がわかりにくく途中面倒になることも。 とは言え、山岳物の面白さはふんだんに味わえる。 過去の文献を引用する場面で、少ない文面から作者が想像を膨らませて書いた部分がかなり多い印象です。
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