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峠 改版(中) の商品レビュー

4.1

61件のお客様レビュー

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2017/12/17
  • ネタバレ

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 時刻が、移った。  会議はまとまりがなく、だらだらとつづいている。  継之助はもう、議事の進行に興味をうしない、柱にもたれ、煙管のやにをとったり、ふかしたりしている。  そのうち会津藩の秋月悌次郎がやってきて、 「どうもあれだな、これはまとまらない」  と、小声でこぼした。  継之助はぷっと一服吹き、 「まとまらないんじゃないんだ。どの藩もはじめから意見などもっていないのだ」 といった。  たしかに内実はそうらしい。しかし会津藩としてはどうしても抗戦へまとめてゆきたいという願望がある。 「そのように言われちゃ、実も蓋もない。かれらはこのように集まってきている。集まってきているということ自体、大いなる情熱のある証拠だとみたい」 (情熱だろうか)  継之助は、くびをひねり、すぐ、 「韋軒先生」  と、秋月を雅号でよんだ。 「水をかけるようでわるいが、それは甘い。かれらはたがいに他藩の顔色を見るためにきているのだ。他藩はどうするか、それによって自藩のゆき方を考えようとしている。要するに顔色を見合うための会合だ」 「そうだろうか」  秋月は白皙の顔に、苦渋をうかべた。それではこまる。官軍はこの会議のあいだも、刻々と江戸にせまろうとしているのである。 「とにかく意見がこうもまとまらないと」  と、秋月がなにか言おうとしたが、継之助は言葉を奪い、 「意見じゃないんだ、覚悟だよ、これは。官軍に抗して起つか起たぬか。起って箱根で死ぬ。箱根とはかぎらぬ、節義のために欣然屍を戦野に曝すかどうか、そういう覚悟の問題であり、それがきまってから政略、戦略が出てくる。政略や戦略は枝葉のことだ。覚悟だぜ」 「そう、覚悟だ」 「それが、どの藩のどの面をみてもきまっていない。これじゃ百日会議をやってもきまらない」 「どうすればよい」 「覚悟というのはつねに孤りぼっちな者で、本来、他の人間に強制できないものだ。まして一つの藩が他の藩に強制できることはできない」 「強制じゃない」 「ことばはどうでもいい。要するにてめえの覚悟を他の者ももつとおもって、そういう勘定で事をなすととんでもないことになる」 「そうだろうか」 「史書をみればわかる。韋軒先生ほどのひとがそれがわからないというのは、一個の希望が働いているからだ。事をなすときには、希望を含んだ考えをもってはいけない」  継之助は煙管に莨を詰めた。

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2017/11/17

河合継之助、行動を起こし始める、の巻。歴史上の重要人物が何人も出てくる、すごい時代だなと改めて思った。

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2017/09/23

印象的だった箇所 なにごとかをするということは、結局はなにかに害をあたえるというとだ 何者かに害をあたえる勇気のない者に善事ができるはずがない (207頁) あと、継之助と福沢諭吉のやりとりは刺激的で面白い。普段使っている熟語(自由とか権利とか演説とか)を福沢諭吉が苦心して案...

印象的だった箇所 なにごとかをするということは、結局はなにかに害をあたえるというとだ 何者かに害をあたえる勇気のない者に善事ができるはずがない (207頁) あと、継之助と福沢諭吉のやりとりは刺激的で面白い。普段使っている熟語(自由とか権利とか演説とか)を福沢諭吉が苦心して案出したというのも新鮮だった。

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2016/09/11

河井継之助。良運さん、スネル、ガットリング砲、大政奉還、福地源一郎、福沢諭吉。私は越後長岡藩の家老であるというだけで人の世に存在している。

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2016/04/30

少しずつ事が起こってくる中巻。もちろん星5つの面白さだったのですが、上巻と同じ感想も書けないし、上巻ってどんな感想書いたっけ・・・と読み返すと、めっちゃいいこと書いてる、わたし(笑)上巻の感想にすでにこの小説の全てが書いてある気がする。中巻に起こったいちばんの事は、大政奉還。今ま...

少しずつ事が起こってくる中巻。もちろん星5つの面白さだったのですが、上巻と同じ感想も書けないし、上巻ってどんな感想書いたっけ・・・と読み返すと、めっちゃいいこと書いてる、わたし(笑)上巻の感想にすでにこの小説の全てが書いてある気がする。中巻に起こったいちばんの事は、大政奉還。今まで読んだ小説、見たドラマでは、慶喜ってあまり良く描かれてなかったけど、司馬遼太郎さんの認識としては割と名君なのね。まあ、「無血」がいちばん素晴らしいと今の私の感覚だとそう思うし、だからこそ「血が足りない」と最後へんな方向に走った西郷はちょっと違うとも思う。(うけうり)そう考えると、長岡藩、河井継之助が選んだ道は正しかったのか否か。「家を守る」ことも大事だが、それにとらわれず「民が死なないか、苦しまないか」を考えることも大事。さて下巻、どうなるのでしょう。

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2016/03/27

歴史に疎い自分でも聞いたことのある人物が次々と登場し、尊皇攘夷論や、大政奉還について改めて認識しつつ、幕末の情勢に鋭い見地を向ける経之助の行動力、に目を見張る。 名言が端々にあり、再読して自分のものにしたいですが、とりあえずは下巻を読んだ後に。

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2014/03/26

長岡藩の中立を守るために河井継之助の果たした役割は素晴らしい。中巻は長岡藩を近代化するための布石をうっている様を描いている。

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2013/11/07

人は立場で生きている 継之助が長岡藩の家老となり、藩の改革をはじめる。福沢諭吉との対談シーンが面白く、時代の先を見る力がありながらも藩存続のために行動する継之助の哲学に引き込まれる。

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2013/09/21

長岡藩の重職に就き、家老にまでなって藩政改革を進める。 ひとつひとつ制度改革を行いながら、富国強兵に努めるさまと 時代が変わる、大政奉還~鳥羽伏見~大坂から江戸へを 河井継之助の視点でみると、今まで読んだ本とはまた違った 幕末の様子が見えてきた。

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2013/08/26

西郷・大久保や勝海舟らのような大衆の英雄の蔭にあって、一般にはあまり知られていない幕末の英傑河井継乃助。 維新史上最も壮烈な北越戦争に散った最後の武士の生涯を描く長編小説。

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