海と毒薬 の商品レビュー
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苦しい状況と自分も手術の現場に居合わせたような居心地の悪さを感じた。文章のリズムが良く、死体解剖など気が進まないような内容の場面でもするすると読めてしまい罪の意識を考えさせる内容にも関わらず読後の後味は気持ち良いものになっている。遠藤周作は宗教観をわかりやすく、荘厳だけど日常に潜んでいるよ的なメッセージで小説を書いているイメージだけど、海と毒薬に関してはアイデンティティの宗教が薄めで個人的には彼の作品で一番好きかもしれない。 好きなシーン 汚いメス犬が孕んだのを嫉妬して石を投げるところ 女中を孕ませてしまい暑さの中避妊具を借りて自らの手で堕胎させるところ おばはんの痰の描写、死
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罪を犯した「人間」が悪いのか?そう単純なものではないと思う。その時の社会情勢、置かれた環境、精神状態。そういうものを全て知らなければ簡単にあいつは悪人だと言いきれないと思う。罪を犯すか犯さないかの判断の際に「神はあるのかな」のセリフのように自分を律するものが(神でなくても)あれば...
罪を犯した「人間」が悪いのか?そう単純なものではないと思う。その時の社会情勢、置かれた環境、精神状態。そういうものを全て知らなければ簡単にあいつは悪人だと言いきれないと思う。罪を犯すか犯さないかの判断の際に「神はあるのかな」のセリフのように自分を律するものが(神でなくても)あれば流されることもなかったのか。
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遠藤周作さんは楽しいダメ親父的なエッセイもありながら、これほどに重い作品も残す。人間の深さを感じる。戦争の中のこととはいえ、罪深い行為だ。日本人だけが蛮行をしたとは言えないだろうが、とても遠い過去ではない時代に、確かになされていたことと認識していきたい。
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仮に自分がこの医師や看護師たちと同じ立場だったら、自分も同じ罪を犯しかねない、自分にも彼らと同じ弱さがあるなと思った。 出世に目が眩んで自分の正義に背くことは自分はない、、、気がする。でも、無意識に出世を考慮して自分の中で正義の定義が変わってしまうことはあるかもしれない。保身のた...
仮に自分がこの医師や看護師たちと同じ立場だったら、自分も同じ罪を犯しかねない、自分にも彼らと同じ弱さがあるなと思った。 出世に目が眩んで自分の正義に背くことは自分はない、、、気がする。でも、無意識に出世を考慮して自分の中で正義の定義が変わってしまうことはあるかもしれない。保身のために自分の正義を曲げてしまうことも抗える、、、気がする。でも、自分だけの保身ならまだしも、仮に妻や子どもも含めた保身となると、どう判断するか自信はない。個人としてそのような程度である上に、戦争など世の中の混乱の中で所属するコミュニティに共通の「敵」が形成されている場合に、その「敵」の尊厳にも気を配れる強さが自分にあるか、自信はない。 そのような自分の弱さを常に自覚して生きていかないと、と思った。 読み終わってから、事件のこととか、著者のことなどをWikipediaで読んでみたりしたけど、この小説をどう受け止めれば良いのかなかなか定まらない。 著者はキリスト教の教えと日本人の特性の矛盾に苦しんだようだけど、さすがにWikipediaを読んでみた程度では全然理解できていない。このような罪を犯してしまう人間の弱さは別に日本人だからというものでもなくキリスト教を信仰している人にもありうるのではないかなと思えてしまう。他の著者も読んで遠藤周作さんの感じた矛盾への理解を深めてみたいと思った。
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宗教のない日本の罪の意識はどこからくるか興味を持った。 この話はただ戦時中で倫理観が崩壊したから起こったのか関係なく起こってしまうようなことなのか感慨深い 実際、宗教があろうが無かろうが、罪の意識の有無は個々人によるものだと感じた。ヒトラーのホロコーストも人体実験を行っていたが...
宗教のない日本の罪の意識はどこからくるか興味を持った。 この話はただ戦時中で倫理観が崩壊したから起こったのか関係なく起こってしまうようなことなのか感慨深い 実際、宗教があろうが無かろうが、罪の意識の有無は個々人によるものだと感じた。ヒトラーのホロコーストも人体実験を行っていたが、無宗教ではなくキリスト教を信仰していたわけだし、、、
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職場の人に勧められて。 遠藤周作先生の著作を読むのはこれが初めて。 何というか、とにかく凄いものを読んだという語彙力皆無の言葉しか出てきません。 実在の事件を下敷きにしたお話。 ただ事件の残虐さや非道さを描いたものではない。 「戦中」という今のわたしたちの価値観では量れない時代の話ではすませない。 特殊な人たちによる特殊な話、ではないのだ。 日常と非日常、日本人と外国人、医者と患者、男と女、人を殺したことのあるものないもの、知るもの知らざるもの、相対する様々なことの比較を交えながら、淡々と物語は進む。 「神なき日本人の罪の意識の不在」その不気味さを描くと粗筋にあるが、この作中の不気味さを今のわたしたちは笑ってはいけないし、フィクションだからと切り捨ててもいけない。 それは今を生きるわたしたちにも言えることなのだから。 わたしたちは、果たして同じことを体験したときに「罪の意識」を覚えるだろうか。 自問せずにはいられない。
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海の描写が印象的。最初のシーンの時系列に最後戻ってこないことにも興味が湧いた。葛藤や、日本人とは何なのか、神とは何なのか、向き合うこと、考えることが増える作品。この本に思い出があることも重なって、面白かった。
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・罪の価値観 「俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけや。──(本文より)」 世間の罪というのは、時代によって異なるとだな思った。例えば、平安時代では一夫多妻が当たり前だったが、今は不埒なこととして世間から見られている。 ・本文の心情描写 さすが遠藤周作...
・罪の価値観 「俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけや。──(本文より)」 世間の罪というのは、時代によって異なるとだな思った。例えば、平安時代では一夫多妻が当たり前だったが、今は不埒なこととして世間から見られている。 ・本文の心情描写 さすが遠藤周作。色々な背景を持つ人物それぞれの思惑を見事に描き出されている。『沈黙』のようなダイナミックな文体ではなかったが、このような心情描写が精緻な文体も味わい深い。
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みなさんには、自分の生き方を変えた1冊はありますか? ぼくは、子供のころから本を読むのが好きでした 高校生くらいまでは、推理もの、いわるるミステリ、というジャンルのものを手に取ることが多かったです 大学生になり、友達がこの本を勧めてくれました 今まで手にすることがなかった種類...
みなさんには、自分の生き方を変えた1冊はありますか? ぼくは、子供のころから本を読むのが好きでした 高校生くらいまでは、推理もの、いわるるミステリ、というジャンルのものを手に取ることが多かったです 大学生になり、友達がこの本を勧めてくれました 今まで手にすることがなかった種類の本 読むうちに物語の中にどんどん引きずり込まれていきます 読み終わった時、自分の中の倫理観というものが根底から覆されていました 若かったのもあるのでしょう、自分の今までの考え方が全て変わってしまうほどの衝撃でした 今も時々読み返す本作はぼくにとって特別な存在です テーマは、神なき日本人の罪の意識 遠藤周作さんは、カトリックでもあり、「日本人でありながらキリスト教徒である矛盾」をテーマに創作活動をされた作家だとぼくは思っています 晩年の作品「深い河」は、宇多田ヒカルさんもインスパイアされ、「Deep River」という楽曲を製作されています、本作もお好きだそうですね 太平洋戦争末期、九州の大学付属病院で米軍捕虜の生体解剖実験が行われた 参加者たちはなぜ解剖に参加したのか? 実際の事件をモチーフにしたフィクションです 悪いことをしてはいけません、いいことをたくさんしましょう 悪いことって何だろう、いいことって何ですか? それは誰が決めることですか? 日本は法治国家なので、法の下に善悪は判断されるのだと思います では、個人の倫理観というものは、どうやって形作られるのでしょうか 法ですら解釈により判断が変わるのに、倫理観とは何とあいまいなものなのか 疑うことなくそのあいまいな倫理観を全ての善悪の判断基準としていた大学生のぼくは、慄然としたのです 解剖に参加した主人公の勝呂医師を責めることができませんでした もし自分が勝呂医師だったらそれに参加しなかったのだろうか ぼくが勝呂医師になることなんてないのだから、そんなことを考えても無意味なのだろうか なら、人の気持ちを想像したり慮ったりすることも無意味なのか ぼくはこの本を読んだ後、本当にずっと考えています 読んだ後数年間は本当に苦しみました、罪を犯した人の気持ちを過度に慮る行為をやめることができずに 最近のSNSなどを見ていても、個人的には思います 切り取られた情報から、判事でもないのに自分のものさしで善悪を判断し、匿名で、不特定多数が自由に閲覧できる場で、人を批評することが恐ろしくないのかな 必ず傷つけることになるのに、知らない誰かを 本というのは、誰かの人生を変えてしまうくらいの力を持つ それを知ってから様々な本と出会い、様々な考えに触れ、あれから数十年生きた先に自分の心が豊かになった気がしています そんな、ぼくにとって新たな読書人生のスタートとなった大切な1冊です 実質上の続編となる「悲しみの歌」は、年を重ねて読むとまた味わいが全く異なる本です、こちらもよかったら あの日ぼくの中に生まれた「海」と「毒薬」は、生きていくなかで少しずつ変容しています
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ヒーーーー、えぐい話 激ヤバ人体実験に関わる人たちの罪の意識を描いた作品 "闇の中で眼をあけていると、海鳴りの音が遠く聞こえてくる。その海は黒くうねりながら浜に押し寄せ、また黒くうねりながら退いていくようだ。" 動揺の感情表現の比喩やばすぎる "...
ヒーーーー、えぐい話 激ヤバ人体実験に関わる人たちの罪の意識を描いた作品 "闇の中で眼をあけていると、海鳴りの音が遠く聞こえてくる。その海は黒くうねりながら浜に押し寄せ、また黒くうねりながら退いていくようだ。" 動揺の感情表現の比喩やばすぎる "恨み悲しみ、悲歎、呪詛、そうしたものをすべてこめて人々が呻いているならば、それはきっと、こんな音になるにちがいなかった。" 遠藤周作の言葉選びが凄すぎるんだけど…… 色んな人の視点からオペという一つのシーンに収束していくのが面白かった 勝呂パートから戸田のアンニュイで影のある人間性を感じていたけど戸田パートでおまえ………………!!!!!!好きだ……………!!!!としか言えなくなった こういう男が好きなんです………………… 自分に良心があるかを確かめるためにしっかりとオペに参加してしっかりと己の非人道性を感じているね! もはや平成生まれのガキ(21歳)からすると戦争の話なんて本当にSFというか残酷な作り話のように感じてしまって、良くないなと思うんだけどもオペシーンの迫力たるや……百数十ページを息も瞬きもせずひたすら捲る時間があった もうほんとに戦争やめようね
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