八甲田山死の彷徨 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
何という無謀な実験だったのか。記録的な異常気象の八甲田山。踏破し生還した聯隊と、ほぼ全滅の聯隊。 せめて競争ではなく両聯隊が協力して情報を共有し十分な時間があったなら、避けられたかもしれない悲劇。読んでいると手指やつま先がじんと冷え痺れるような気がしてくる。まさに死の彷徨、その描写がすごくてのめり込んで読んだ。八甲田山の名前だけは知っていたが、こんなことがあったとは。。 弘前31聯隊は38名全員生還。青森5聯隊は210名中199名死亡。
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再読。まあ無謀な事をと思うよ。それでも上の命令で進まないと行けない軍下の異常さを思う。知識がある人は生存率が高まった。知識の大切さ。 日露戦争前、ロシア対策に雪山軍行を思いつき、2つの隊に競わせるように雪の八甲田山縦断が決まる。1つの隊はなんとかやり遂げるが、もう一方の隊は雪山で...
再読。まあ無謀な事をと思うよ。それでも上の命令で進まないと行けない軍下の異常さを思う。知識がある人は生存率が高まった。知識の大切さ。 日露戦争前、ロシア対策に雪山軍行を思いつき、2つの隊に競わせるように雪の八甲田山縦断が決まる。1つの隊はなんとかやり遂げるが、もう一方の隊は雪山で遭難しほぼ全員の人(100名以上)が命を落とす。 雪山の恐ろしさ、プロジェクトの失敗例として気付かされる事が多くある。 命令系統 準備不十分 案内人を頼まなかった 部下の妄言を信じた 雪壕を夜中出発したこと 自分がその中にいてもパニックにならない自信がない。
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日露戦争直前に行われた日本陸軍による八甲田山雪中行軍の惨劇を描いている。小説内の氏名は架空のものだが、実在の人物をもとに描かれている。 人智の及ばない氷の世界にただ戦慄する思いがしたし、上役の判断ミスや能力如何によって、運命が左右される部下の悲哀を感じた。また当時の陸軍内部の事...
日露戦争直前に行われた日本陸軍による八甲田山雪中行軍の惨劇を描いている。小説内の氏名は架空のものだが、実在の人物をもとに描かれている。 人智の及ばない氷の世界にただ戦慄する思いがしたし、上役の判断ミスや能力如何によって、運命が左右される部下の悲哀を感じた。また当時の陸軍内部の事情についても伺い知ることができる。 表現に迫力があり、読んでいるこちらが寒さを感じる程だった。
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1902年の八甲田雪中行軍遭難事件をモチーフにしているが史実より新田氏の小説のほうが有名であろう。 年間降雪量世界一の都市は青森市だが特に雪深い八甲田山へ満足な雪上装備もないままの雪中行軍はまさに無謀な人体実験といえる。日清戦争勝利の興奮冷めやらぬまま日露戦争を迎えんとする高揚...
1902年の八甲田雪中行軍遭難事件をモチーフにしているが史実より新田氏の小説のほうが有名であろう。 年間降雪量世界一の都市は青森市だが特に雪深い八甲田山へ満足な雪上装備もないままの雪中行軍はまさに無謀な人体実験といえる。日清戦争勝利の興奮冷めやらぬまま日露戦争を迎えんとする高揚感と不安感が渦巻く異様な狭間期に起こった事件である。そうした中でも徳島大尉は軍隊的規律と実証的判断を以って11日間の210キロ余の雪中踏破を成し遂げる。対照的に青森第五聯隊の指揮命令系統の混乱や調査不足が199名の死を招いた。では第五聯隊の指揮官が無能であったかというとそうではない。山田少佐しかり神田大尉しかり自責の念に堪えかね自決を遂げている。つまりは厳寒期の八甲田山行軍自体が多分に無謀な計画であり、軍部幹部らの認識の甘さか聯隊の悲劇を生みだしたのである。 さらに単に教訓話や英雄話で終わらず本作を名作たらしめているのは第三章以降である。第五聯隊の捜索とともに、二挺の銃を巡る詳述や遺族補償は「軍」とは階級と規律を重んじる組織であることを思い起こさせ、明治特有の閉鎖的で暗鬱とした雰囲気を横たわらせる。津村中佐の独白のような雪中行軍の意義と日露戦争での各自の顛末は何ともやるせない。 山岳小説家として著名な新田次郎氏であるが、自然に向き合ったときの人間についての深い洞察力を感じさせる。
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冬休みの青森旅行に備えて読了。 小学生の頃にテレビで映画を断片的に見た記憶があるが、本書で衝撃を受けた。 組織のリーダーシップ論と、社会階級制度の怖さ哀しさが、強い想いで描かれている秀作だった。
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有名な八甲田山行軍(演習)のほぼノンフィクション。 最初に添付されている地図の死亡者氏名と小説内の人物名に相違がある為、?が出る箇所があるがそれは無視した方が良い。 当時の陸軍状況や、対ロシアへの意識等非常に勉強になる本である。
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人について、組織について、本質を抉るような本でした。 リーダー論、仕事術、生き方と今に通じます。あと夏に読むと寒くなる。
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日露戦争前に実施された八甲田山雪中行軍遭難事件を題材にした小説。組織のあり方、組織の中での人の振る舞いようなど、示唆に富む。大変な時代の積み重ねのうえに、今の日本があることにも思い至る。
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聞きしにまさる過酷な八甲田山雪中行軍遭難事件、生々しい描写にぐいぐい引き込まれる。弘前第31連隊と青森第5連隊の対比で、心構えを含む準備の違いや指揮官の統率で明暗が分かれるところが興味深い。 青森連帯の神田大佐が聡明であるのに上司に逆らえず死するところが残念。これが良くも悪くも軍...
聞きしにまさる過酷な八甲田山雪中行軍遭難事件、生々しい描写にぐいぐい引き込まれる。弘前第31連隊と青森第5連隊の対比で、心構えを含む準備の違いや指揮官の統率で明暗が分かれるところが興味深い。 青森連帯の神田大佐が聡明であるのに上司に逆らえず死するところが残念。これが良くも悪くも軍隊の有り様か。それに引換え山田少佐の罪かかなり濃厚な印象で、自身は自害したようだが事実とは言え遺族はいたたまれないと想像してしまう。 弘前連帯を途中で先導した開拓農民の滝口さわさんにとても惹かれました。 読みものとしては先が気になりとても興味深く読み進められました。 作者の他の登山作品に興味が湧きました。
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[暗白]日露戦争を 目前に控え、冬期の山中行軍が可能かという調査命令が二つの聯隊に発せられた。競い合うように異なるルートから極寒の八甲田山に乗り出す二組であったが、結果として一方は全員が無事帰還、一方は隊のほとんどが遭難死を迎えるという事態に陥る。あまりに違いすぎるこの差はいった...
[暗白]日露戦争を 目前に控え、冬期の山中行軍が可能かという調査命令が二つの聯隊に発せられた。競い合うように異なるルートから極寒の八甲田山に乗り出す二組であったが、結果として一方は全員が無事帰還、一方は隊のほとんどが遭難死を迎えるという事態に陥る。あまりに違いすぎるこの差はいったいどこから生じたのか......。著者は山岳に関する優れた名作を数多く残した新田次郎。 必ず読み手の中に何かを残す一方で、時代や置かれた環境によって読み手によって得るものが異なる 、というのが(個人的な)名作の一つの条件だと思うのですが、本書はまさしくそういった類の作品。歴史物として読んでもよし、リーダーシップ論として読んでもよし、危機管理論として読んでもよしの秀作だと思います。映画化もされていますが、新田氏の描写の迫力(特に遭難の悲惨さの描写は鬼気迫るものがある)を考えれば書籍版は「外せない」一冊かと。 〜やはり、日露戦争を前にして軍首脳部が考えだした、寒冷地における人間実験がこの悲惨事を生み出した最大の原因であった。〜 たびたび読み返したくなる本かも☆5つ
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