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流れる の商品レビュー

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67件のお客様レビュー

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2019/03/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

染香さんがいい味出してたように思う。別の家に移って翌日から当たり前のように座敷にご出勤。借金があってもめげずに稼ぐ!最後の方、その姿勢がたくましく、愛しく思えた。 しろと、くろうと、という言葉が随所に出てきたけど、くろうとのほうはそうであることに一種の誇りを持っていたんだろうなと思う。しろとさんには簡単には真似できっこない手練手管を身につけていることへの。 それにしてもやり方どうあれ、どんな場面でも人を立てようとする義理立て?のような心配りってのは角を立てずにやっていく秘訣なんだろうなと思う。 つたの家のおかみさんが不二子と転ぶ時、泊まりに来たお姉さんの寝起き、どんなにか美しく魅力的なのだろうかとあれこれ想像するけれど、きっと本人を見ないと分からない。そして、会いたくなる。この目で見たくなる。そういう、人を引き付ける魅力。 全編共通で描かれているのは鋸山とのお金を巡る攻防。けど、その日々の中で描かれるくろうとの街の日常。もし、こうした街がある時に生きていたら、さぞかし美しく、幾重にも重なる情緒、人情、豊かな芸術が私を魅了したことであろう。 男が変わるほど、女(こっち)は情が深くなっていいもんなんだ。とはとあるお姉さまの名言。万人に当てはまるかどうかは別として、その人の人生から発せられた言葉の背景を、もっと聞きたくなる。そういう奥行きのある深い言葉って名言だなと思う。 この本の最後の一文。確かに脈絡がないけれど、もらった春という名前は主人たちの凋落に対して、梨花の春であるという対比でもあるのだろうかと深読みしてしまう。続きがあったら佐伯と靄のような空気を交わすのだろうか。その後のことは、物語の中の人にしか分からない。

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2018/09/26

零落してゆく置屋の景色と時間を、女中 梨花の視点で華麗に切り取った小説。書かれたのは1956年だが、すでに古典と呼んでも違和感のない風雅さがあり(恥ずかしながら、幸田文はもっと前の時代の作家だと思い込んでいたこともあり…)、現代エンタメ小説が失なってしまった純朴な読書の時間を与え...

零落してゆく置屋の景色と時間を、女中 梨花の視点で華麗に切り取った小説。書かれたのは1956年だが、すでに古典と呼んでも違和感のない風雅さがあり(恥ずかしながら、幸田文はもっと前の時代の作家だと思い込んでいたこともあり…)、現代エンタメ小説が失なってしまった純朴な読書の時間を与えてくれる佳品。 朧げな記憶に「おとうと」を読んだことがある気がするほかは、幸田文はほとんど読んだことがないので、ちくま日本文学ででも読んでみるかな。

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2018/08/20

名作だった。名作ゆえに、読み終わった途端、もう一度じっくり読んでしまった。私の思う名作とは、味わいのある言葉遣いがあること、何度も読み返したくなること、人にすすめたくなること。美味しくて、足繁く通い、友達にも教えたくなる、名店と一緒だ。 物語も、女中が見た没落しかかった芸者置き...

名作だった。名作ゆえに、読み終わった途端、もう一度じっくり読んでしまった。私の思う名作とは、味わいのある言葉遣いがあること、何度も読み返したくなること、人にすすめたくなること。美味しくて、足繁く通い、友達にも教えたくなる、名店と一緒だ。 物語も、女中が見た没落しかかった芸者置き場という、下世話ながら惹かれる内容だ。そこには上流へ流れる者、下流へ流れる者、それぞれのストーリーがある。 最後の著者の言葉、「水は流れるし、橋は通じるし、『流れる』とは題したけれど、橋手前のあの、ふとためらう心には強く惹かれている。」という文章に、この物語の全てが凝縮されているように感じた。ふとためらう繊細な心を細やかに描写している。

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2018/06/22

和三盆のような一冊。出来事ひとつひとつの背景にある女性特有の繊細な心理描写が丁寧に細かく散りばめられている。4,5人以上の個性ある女性が思い思いにとる行動と心理を余すところなく的確に写し撮りつつ、キャラを埋没させずにストーリーを進めていく技術ってとても難しい芸当だと思うんだけど、...

和三盆のような一冊。出来事ひとつひとつの背景にある女性特有の繊細な心理描写が丁寧に細かく散りばめられている。4,5人以上の個性ある女性が思い思いにとる行動と心理を余すところなく的確に写し撮りつつ、キャラを埋没させずにストーリーを進めていく技術ってとても難しい芸当だと思うんだけど、女中でありながら大変に有能な梨花を一段上の視座に立たせて解説を入れることによって、その手ブレを補正してるんだろう。 満員電車でなくカフェでゆっくり読んだ方がいいなと感じた。これは二度味わうべき本だ。もったいない読み方をしたな。

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2021/06/22

住み込みの女中である梨花の目を通して描かれる芸者たちの世界。はかなく浮き沈みの激しいその人生を、ぞんざいで愛情ある口調で語りながら、いつのまにか梨花自身の生き様が見え隠れします。

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2018/04/28

文章に独特のセンスが光るが、女性視点の置屋の内実が赤裸々に語られ、なにか夢が削がれる感じがして読み投げにしてしまった。

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2018/01/04

芸者の置屋に女中に出た人の話。 ところどころにでてくる、女のこけかた?や起き方が男に見せる美しさっていうのが、女子会みたいですごくおもしろい。 主人のおねえさんが姿がよくて所作もきれい、三味線も上手で一世を風靡した芸者さん。その周りにいる芸者たちもみんななんだかんだでかっこいい。...

芸者の置屋に女中に出た人の話。 ところどころにでてくる、女のこけかた?や起き方が男に見せる美しさっていうのが、女子会みたいですごくおもしろい。 主人のおねえさんが姿がよくて所作もきれい、三味線も上手で一世を風靡した芸者さん。その周りにいる芸者たちもみんななんだかんだでかっこいい。花柳界はその狭さがすくえそうな狭さっていうのがおもしろかった。 あと、みんな誰かをあてにして生きていて、それを歯がゆく主人公は思っているけど、いちばんちゃんとしている蔦次だって、主人公だって、結局流れてしか生きていけないんだなと思う。この時代の女だからっていうのではなくて、人は目の前にあるものでどうにか生きていくんだろう。

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2017/09/03

幸田文『流れる』新潮文庫。 林芙美子の『放浪記』と河上肇の『貧乏物語』を足したような、日本がまだ繁栄を見せぬ、経済的に未完成の頃を舞台にした女の物語。暗く、じめりとした閉塞感の中に描かれる人間模様は余り好みではない。 四十過ぎの未亡人・梨花は没落しかかった芸者置屋に住み込みと...

幸田文『流れる』新潮文庫。 林芙美子の『放浪記』と河上肇の『貧乏物語』を足したような、日本がまだ繁栄を見せぬ、経済的に未完成の頃を舞台にした女の物語。暗く、じめりとした閉塞感の中に描かれる人間模様は余り好みではない。 四十過ぎの未亡人・梨花は没落しかかった芸者置屋に住み込みとして女中を始める。花柳界の風習や芸者たちの生態に戸惑いながらも、梨花はそこに起きる事件を極めて冷静な目で観察していく。

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2015/12/24

物凄く文章が読みづらいなぁと思って読んでいたら、昭和32年の発行だったとは。幸田露伴の娘だったとは。驚いた。 文章は、思考の流れのように行ったり来たり、頁にぎっしりと詰まっておりなかなか骨が折れる。しかし、なんやかんやでさくさくと最後まで読んでしまった。出てくる女性たちが皆弱くて...

物凄く文章が読みづらいなぁと思って読んでいたら、昭和32年の発行だったとは。幸田露伴の娘だったとは。驚いた。 文章は、思考の流れのように行ったり来たり、頁にぎっしりと詰まっておりなかなか骨が折れる。しかし、なんやかんやでさくさくと最後まで読んでしまった。出てくる女性たちが皆弱くて逞しい。

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2015/11/22

やっと手に取った幸田文。期待を裏切らない面白い作品だった。漢字変換されてない言葉が多々あるので慣れるまで少し読みにくかった。意地があって口が達者な女しかいない置屋の内情。主人公:梨花が素人で所謂普通の感覚を持っている人、という設定が読む側が素人であるだけにスッと話に入っていきやす...

やっと手に取った幸田文。期待を裏切らない面白い作品だった。漢字変換されてない言葉が多々あるので慣れるまで少し読みにくかった。意地があって口が達者な女しかいない置屋の内情。主人公:梨花が素人で所謂普通の感覚を持っている人、という設定が読む側が素人であるだけにスッと話に入っていきやすかった。会話の箇所を読むと往年の女優が喋っているのが容易に想像できる。この頃の人はみんなこんな早口でスパッと話したもんなんだなぁ。裏の中華料理店と五目そばの受け渡しをするシーン、可笑しくて可笑しくて声たてて笑ってしまった。途中、同映画も観てみたが、そのシーンがちゃんと入っていてムフフとなる。映画も素晴らしかったけれど原作の方が梨花の黒い部分も出てて好きかな。他の幸田作品も楽しみ。

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