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雲の墓標 の商品レビュー

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29件のお客様レビュー

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2015/11/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

高校の恩師から卒業の際に渡された『読書リスト』。 まだ半分も読めていないという体たらくですが、なんとか卒業までにあと数冊読みたい。 今回読み終わったのは阿川弘之の『雲の墓標』 学業を中断し、戦争へと巻き込まれていく学生の心情が 生活記録風に淡々と書かれている。 作者自身も東大の国文科の学生だったが、繰上げ卒業し、 海軍予備学生として海軍に入隊したそうで、 その経験を基に書かれているからか、とても現実味がある。 軍への入隊、そして戦況や軍での理不尽に対して憤りなどを時々あらわにしながらも、 国のために死ぬことにはむしろ肯定的な主人公・吉野であるが、 「しかし、自分たちにはもはや、なにものかを選ぶということはできない。定められた運命の下に、自分を鍛えることだけが、われわれに残された道だ」とあるように、 どこか諦めたような部分も垣間見得る。 そのような感情のふらつきが、精神的に訓練され自ら志願した兵士とは違う、 学生らしさ、ひいては親近感を与えるのかもしれない。 また、国文学科であった吉野は、最初、入隊した直後の頃は 万葉集に想いを馳せる描写も多く見られるが、 時間が進み、戦況が悪化していくにつれてその描写もなくなっていく。 段々と、彼の心が戦争に取り憑かれ、疲れやつれ果てていくのが ありありと分かる。 ありきたりな感想になるが、 戦争が人の心をどのようにして疲労させていくのかを 改めて目の前に突きつけられた。 ただ平和を叫ぶ作品ではなく、 淡々と冷静な口調で語られていくからこそ、 心に深く残るものがあった。

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2015/10/22

戦争に肯定的な軍人は、戦時中でも案外少なかったのではないかと思う。日本人特有の空気に支配されていたのだ。 戦時中にこれほど、自分に素直に書いた日記が実際にあったのだろうか?

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2015/10/15

文学青年が軍隊で仲間と、時にはイキイキ過ごしているようにさえ読める日記だが、自分がいなくなった後の日本の将来を考えたり、友人のむごい死に様を目の当たりにしたり、明日特攻に飛び立てと言われた後、落ち込んだり、笑顔に戻ってまた冗談を言ったり、こんなのが現実だった彼らの青春。

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2015/09/08

読み終えたあと虚脱感を感じた。特攻隊として散っていった主人公の思いについて、日記形式に書かれている。主人公の気持ちを考えるも、なんと言うか、リアリティが感じられない。いや、これは想像力が無いだけなんだろうけど。同時代人はどう思うのだろうか。身につまされる思いがするのだろうか。 近...

読み終えたあと虚脱感を感じた。特攻隊として散っていった主人公の思いについて、日記形式に書かれている。主人公の気持ちを考えるも、なんと言うか、リアリティが感じられない。いや、これは想像力が無いだけなんだろうけど。同時代人はどう思うのだろうか。身につまされる思いがするのだろうか。 近頃の子供たちは、小さな科学者、小さな国家主義者として、こまちゃくれた育て方をされているものが多いようである。大人が子供の世界を造ってやることは、やめなければいけない。…自分たちは死んでも、子供たちの上には、ひろびろとした豊かな祝福された次の時代が来なければならぬ。

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2015/09/08

太平洋戦争で海軍の予備学生となった京大生仲間の運命を、主人公・中野の日記を中心に語っていく。最初は戦争や軍隊の規律(という名の体罰・リンチ)に反発するものの、日々の軍隊生活の忙しさや不毛な作業の連続から、少しずつ諦めの気持ちになる様子が日記を通してよく伝わる。しかし、戦争への疑問...

太平洋戦争で海軍の予備学生となった京大生仲間の運命を、主人公・中野の日記を中心に語っていく。最初は戦争や軍隊の規律(という名の体罰・リンチ)に反発するものの、日々の軍隊生活の忙しさや不毛な作業の連続から、少しずつ諦めの気持ちになる様子が日記を通してよく伝わる。しかし、戦争への疑問、学問への未練、好きな人への思いとともに、戦争で華々しく散らんとする勇ましい言葉も出され、不安定に揺れ動く。ずっと戦争や軍の在り方に反発していた友人が、一番最初に、飛行訓練中に亡くなる。救助に行った中野がみた友人の様子がとてもリアルに描かれていて、おぞましさすら感じさせる。中野はもっと辛い気持ちで見ただろう。昨夜まで一緒にいて語り合っていた友なのだから。中野は特攻で飛び立つがその消息は不明という形で終わる。終戦10年でこのような話が描かれていたことに驚きを感じながら、そんな時だからこそ、当時の思いを忘れないためにもリアルに描かれたのではないかと感じた。

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2014/10/29

本作品は国文学者吉井巖氏の戦時中の日記をもとに書かれたという。どの程度、実際のそれを反映しているのだろう。吉井氏の初期の論文には「雲」に関するものが多い。本作品に見られるような「雲」の印象が実際にあって、このテーマに取り組むきっかけとなったのだろうか。「はじめて空から南九州の海山...

本作品は国文学者吉井巖氏の戦時中の日記をもとに書かれたという。どの程度、実際のそれを反映しているのだろう。吉井氏の初期の論文には「雲」に関するものが多い。本作品に見られるような「雲」の印象が実際にあって、このテーマに取り組むきっかけとなったのだろうか。「はじめて空から南九州の海山をながめて、巻三の長田王、「隼人の薩摩の迫門を雲居なす遠くもわれは今日見つるかも」という感慨をおぼえた」(旧版p.64)といった言葉は、実際の日記にもあるのだろうか。論文は自己の経験を語らない。だからこの小説に想像を掻き立てられる。

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2014/05/10

この本は学生だった主人公が軍隊に入り、軍隊での日々を日記に綴っていく形式で物語が進んでいきます。 入隊したての頃は、今起きている戦争に対して批判的な考えを持っている主人公なのですが 軍隊慣れして徐々に変わってくる精神がなんとも生々しいです。 親しい友人が特攻隊として死んでいく...

この本は学生だった主人公が軍隊に入り、軍隊での日々を日記に綴っていく形式で物語が進んでいきます。 入隊したての頃は、今起きている戦争に対して批判的な考えを持っている主人公なのですが 軍隊慣れして徐々に変わってくる精神がなんとも生々しいです。 親しい友人が特攻隊として死んでいくのを目の前に、そして自分に番が回ってきた時、 彼は何を思ったのでしょうか。 日常に戦争が入り込んでくるなんて、何だか私には想像もつきません。 この先の日本には、こんな惨たらしい戦争なんかが、無くなります様に。 安心して笑っていられる未来があります様に。

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2014/02/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

時間が経つにつれ、変化していく心情。 生きたい、生き残りたい、そして「死んでやるのだ」という心の動きの狭間で、どちらにしても痛みが残る悲しさ。 読み進めて、藤倉のくだりで鳥肌が立った。嘘だ、と言いたかった。彼の苦悩は現代の、戦後教育を受けた私たちにも分かるはずだ。 最後の方は喪失感が途方もなく大きくて、言葉にならない。どうやって生きていくのか、私には分からない。

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2013/07/12

太平洋戦争末期の海軍に徴兵された予備学生の生活がリアルに描かれる。戦争反対をしなかったことを批判するに能わず。どうしようもなかった、敗戦がみえてたのに誰もが決し得なかった。こういった小説で、教訓を後世に残すべし。13.7.12

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2013/06/20

平和な時代の僕達から見れば悲惨な話だが、当の本人は淡々とそれを受け入れている。 以前読んだレマルクの西武戦線異常なしを思い出した。

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