雲の墓標 の商品レビュー
戦争終了後から15年程度でこういう作品が書かれるのかと思いきや、よく考えれば大岡昇平とかもそうでしたね。 それを考えると本作、ちょっと重厚感がない感がある。 ただ、時間が経って書かれた特攻の小説より暗さが目立っていて、やっぱり体験の断絶が起きている感がする。
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十年以上前に読んだ本で、ふと思い出して読み返して、また泣いた。学徒出陣で特攻隊に組み込まれた人の日記という形式で終戦までの日々が語られ、時々彼の友人たちの手紙が挟まる。淡々とした語り口の中で、しだいに軍隊に染まっていくさま、思想がごく自然に変わっていくさまを見るのがつらい。死を目...
十年以上前に読んだ本で、ふと思い出して読み返して、また泣いた。学徒出陣で特攻隊に組み込まれた人の日記という形式で終戦までの日々が語られ、時々彼の友人たちの手紙が挟まる。淡々とした語り口の中で、しだいに軍隊に染まっていくさま、思想がごく自然に変わっていくさまを見るのがつらい。死を目前にして、読んでるこちらが泣きたくなるほど美しく景色が描写されるようになるのがつらい。友の死を当たり前のように受け入れるしかない、生と死が限りなく近く、逝くのが先か後かの違いでしかない空間がつらい。死ぬために訓練する狂気の空間が、実際にあったことだという事実が恐ろしい。 もう読むまいと思うくらい全体的に暗くつらい本なのに、戦争の気配がするたび、私はきっとまた読み返したくなるのだろうと思う。
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戦争と少し離れたところに位置していた学生たちが、飛行科の予備学生として海軍に入り、終戦間際には特攻隊員に選出され散っていく。 自分の運命をどう受け入れるかと苦しみ、何としても運命を変えようと考える者、海軍教育のままに運命を受け入れる努力をする者・・・。 いづれにしても、彼らの運命...
戦争と少し離れたところに位置していた学生たちが、飛行科の予備学生として海軍に入り、終戦間際には特攻隊員に選出され散っていく。 自分の運命をどう受け入れるかと苦しみ、何としても運命を変えようと考える者、海軍教育のままに運命を受け入れる努力をする者・・・。 いづれにしても、彼らの運命の行き着く先を考えると胸が痛む。 こういう若者たちを二度と出さない世界になりますように・・・。
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「阿川弘之」を代表する作品のひとつ『雲の墓標』を読みました。 「阿川弘之」の著作はエッセイの『エレガントな象 ―続々 葭の髄から』以来なので、約1年半振りですね。 -----story------------- 青年たちは何を想い散ったのか。 史上最悪の戦術の犠牲となった特攻...
「阿川弘之」を代表する作品のひとつ『雲の墓標』を読みました。 「阿川弘之」の著作はエッセイの『エレガントな象 ―続々 葭の髄から』以来なので、約1年半振りですね。 -----story------------- 青年たちは何を想い散ったのか。 史上最悪の戦術の犠牲となった特攻兵の清廉な魂を描く。 昭和文学の金字塔。 太平洋戦争末期、南方諸島の日本軍が次々に玉砕し、本土決戦が叫ばれていた頃、海軍予備学生たちは特攻隊員として、空や海の果てに消えていった……。 一特攻学徒兵「吉野次郎」の日記の形をとり、大空に散った彼ら若人たちの、生への執着と死の恐怖に身をもだえる真実の姿を描く。 観念的イデオロギー的な従来の戦争小説にはのぞむことのできなかったリアリティを持つ問題作。 ----------------------- 海軍予備学生で特攻隊員の「吉野次郎」が、応召されてから特攻隊員として出撃するまで… 入隊直後の戸惑いから、徐々に海軍の雰囲気に馴染み、洗脳され、特攻隊のひとりとして出撃するまでの日記及び手紙と、同期だが、常に軍隊の考え方に疑問を持ち、反戦的な考え方を貫いた「藤倉」の手紙で構成されています。 ドラマティックな展開はなく淡々とした筆致の作品なのですが、それが逆にリアル感を醸し出していて、作品の中に引き込まれて行く感じがしましたね。 貴重な両親との面会シーンにじ~んとなったり、 辛い軍隊生活で些細なことを幸せに感じるシーンをしんみりしたり、 特攻隊員の発表で、自分の名前が呼ばれなかったことにほっとしたり、 自分が、もし同じ立場で応召されたら、「吉野」のように考え、行動したんだろうなぁ… と感じながら読み進めた感じです。 雪が徐々に降り積もるように、静かにじんわりと、そして少しずつだけど確実に感動が込み上げてくる作品でした。 さすが戦争文学の傑作と呼ばれる作品だけありますね。 戦争のことを知ることは大切だと思います。 今の時代に生きていることを幸せだと思わなきゃいけないですねぇ。 でも… 読んでいると感情移入し過ぎてしまい、気持ちが沈みがちになっちゃいましたね。
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永遠の0を読んで 戦争を扱った本を読みたくなって選んだのがこれ。 同じ特攻隊の目線で、 でも立場は違ってて予備学生の視点。 やっぱり大きな声では言えない本音が相当あったんだと改めて思った。戦争って本当に恐ろしい。 2011/9/26
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2015.10記。 個人的追悼:小説家阿川弘之氏 (長いです) 小説家の阿川弘之氏がなくなった。とくに若い頃熱心に読んだ敬愛する作家のひとり。 阿川氏は自ら若き士官として務めた旧日本海軍への深い愛情を文学の下敷きにしていた。故に、戦後の文壇からは長く「反動」のレッテルを貼ら...
2015.10記。 個人的追悼:小説家阿川弘之氏 (長いです) 小説家の阿川弘之氏がなくなった。とくに若い頃熱心に読んだ敬愛する作家のひとり。 阿川氏は自ら若き士官として務めた旧日本海軍への深い愛情を文学の下敷きにしていた。故に、戦後の文壇からは長く「反動」のレッテルを貼られ、大江健三郎に代表される「良心的」な作家と不当な形で比較されてきた。しかし一冊でも読めば、彼の作品が痛切なまでの反戦文学であることは容易に読み取れる。 海軍善玉、陸軍悪玉論は阿川氏が確立した史観であり(与那覇潤「中国化する日本」より)、最新の昭和史研究では見直しが進んでいるが、そのことと文学としての価値とはもちろん(無関係とは言えないにせよ)別個の問題だ。 「井上成美」「山本五十六」といった伝記文学、あるいは「暗い波濤」「春の城」といった戦争物の傑作群の中でもとりわけ印象深いのは「雲の墓標」。学徒動員されて特攻隊員として散っていく青年の姿をきりっとした文体で描く。士官学校でのカンニングシーンなどのたくまざるユーモアや、組織の理不尽さ、何より主人公の死を暗示させながら一切の具体的な描写がないラストシーンは強く心に残っている。 それにつけても考えるのは、戦争で亡くなった英霊に、「申し訳ない」と思うのか、「感謝」と思うのか、の違いだ。とくに若い世代が英霊、という言葉を使う場合、「英霊に感謝」という視点が大半だ(小林よしのりの「戦争論」が嚆矢だろう)。 それを決して否定したいわけではない一方、阿川氏も含めた戦争を実体験している表現者の作品に感じるのは、「自分だけ生き残って申し訳ない」という気持ちだ。この世代の人が「すぐ横で死んでいった同僚に感謝」なんて言っているのは見たことがない。
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2016.10.28 自分は何て平和な時代に生きているのだろう。 青年が、生と死の間で葛藤する姿。 死ぬために訓練をする。自分の感情にふたをして生きなければならなかった。 雲こそわが墓標。
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目的化した死が、あらゆる不安をはらいのける サルトルは、自由が人間を縛りつけるのだと言った だが徒競走ならば、自由もへったくれもない きれいさっぱり清められた一本道を、おのが死めがけて突っ走る そのように自らを律して特攻の日を迎えようとする若者たちの手記 というテイで書かれた小説...
目的化した死が、あらゆる不安をはらいのける サルトルは、自由が人間を縛りつけるのだと言った だが徒競走ならば、自由もへったくれもない きれいさっぱり清められた一本道を、おのが死めがけて突っ走る そのように自らを律して特攻の日を迎えようとする若者たちの手記 というテイで書かれた小説 その、スマートとすら呼べるすがすがしさは ひょっとしたら同調圧力に負けたおのれをごまかす 自己欺瞞でしかないのかもしれない いや、しかし実のところそれは、要領よく生き延びたとして おのれに恥じないでいられるような人間でありたくはない、がゆえに 自らの意志でつかみとった気高さ、潔癖さであると ・・・生き延びてしまった者が そのように納得してしまうことこそ欺瞞であろう
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最近読んだのに記録がない。フォルダーの整理をかねて探してみたら、見つかった。 昨年一昨年は疲れてメモする気力がなかったので、読みっぱなしの本が多い。記録しようとは思って書き始めても、書き終わってないものが10冊近くあった。これは途中まででも別のホルダーに入れておけばかすかに記憶は残るだろう。 半分は未完もひどい状態なので削除した。再読して書くことがあるかどうか。 最近読んだ気がしていたのに、日付が昨年や一昨年になっている、日が過ぎるのは早い、まさに矢の如し。 「雲の墓標は昨年読んだ。紛れて無くなる前に載せておこう。 昭和31年4月 新潮社発行 平成12年2月 69刷 新潮文庫 「永遠の0」を読んだので思い出して読んでみた。 若い頃に読んだときは、感傷的な読み方で、主人公の吉野が次第に死を肯定して特攻機に乗る、友人の藤倉は批判的でありながら、事故死をする。学府から離れた若い死に胸が詰まった記憶がある。 戦後も遠くなったといわれ、自由を謳歌できる世代が育っている今、読んでみるとまた違った感慨がある。 戦争の経過や、戦況は「永遠の0」でも少しは理解できるが、海軍予備学生は、兵学校卒には軽く見られ、命を兵器にする。 学生生活(学問)に心を残しながら、次第に感化されていく様子が痛ましい。 渦中にあればこのように、自ら命を捨てることを次第に肯定するようになるのだろう、一種のマインドコントロール状態で、敵機に向かって突っ込んで、命を捨て未来を絶つことも厭わなくなるのだろう。 こういった気持ちは、平和になった今やっと気づくものなのだろう。 人権・自由が保障されている今、放縦ともいえる生き方さえ許されている。 たまにこういう本を読むことで、改めて自分を考える時間を持つことになった。 薄い文庫だが、読むことで記憶も薄れ掛けた、戦争があった事実を振り返ってみる。 楽しみのための読書にも、こんな短い時間があってもいいと思った。
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少々堅苦しい文章なので、読むのに疲れて何度も何度も挫折しましたが、今回やっと読み終えることが出来ました。 ただの大学生だった吉野くんが、段々と考えが変わってきて、「潔く死んでもいい」みたいになるのが怖かった。 海軍生活をずっと続けていると、そんな考え方になっちゃうの? 今の時...
少々堅苦しい文章なので、読むのに疲れて何度も何度も挫折しましたが、今回やっと読み終えることが出来ました。 ただの大学生だった吉野くんが、段々と考えが変わってきて、「潔く死んでもいい」みたいになるのが怖かった。 海軍生活をずっと続けていると、そんな考え方になっちゃうの? 今の時代としては、吉野くんの友達の藤倉くんの考え方の方がよっぽど共感できます。 考え方が徐々に変わってはくるんだけど、時々すごく心に響くことをいう吉野くん。 残念です。 そして、私が、この本へ何度目かの挑戦をしているとき、作者の阿川さんがお亡くなりに。 ご冥福をお祈りします。
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