ひかりごけ の商品レビュー
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ひかりごけ、思いもよらない構成だった。ノンフィクションというより一個の文学作品という面をしている。人肉食と殺人の罪の重さを比べつつ、その罪を犯した後の心境の変化。何かしら悔いることをした時の、頭が切れ、途端に冷静になり、考えが研ぎ澄まされるあの瞬間。その極みではないだろうか。
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羅臼の難破船食人事件を題材とした表題作を含めた短編集。 いずれの作品も、人間の業の深さや生臭さが際立っている。
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武田泰淳 「 ひかりごけ 」モチーフにしているのは ひかりごけ事件(飢餓の中 死んだ仲間の人肉を食べて生き残った事件) だか、テーマは 生きる苦しみだと思う 人肉を食べて生き残った者の背中に現れる「ひかりごけ」の意味するものは、生きる苦しみを背負った ということだと思う。ひかり...
武田泰淳 「 ひかりごけ 」モチーフにしているのは ひかりごけ事件(飢餓の中 死んだ仲間の人肉を食べて生き残った事件) だか、テーマは 生きる苦しみだと思う 人肉を食べて生き残った者の背中に現れる「ひかりごけ」の意味するものは、生きる苦しみを背負った ということだと思う。ひかりごけに 仏性を感じたのは、死んだ仲間の人生を 肉と一緒に背負ったからではないか 大岡昇平「野火」との違い *野火の主人公は 殺人はしたが人肉は食べなかったことで救われた。テーマは 人間の尊厳 *ひかりごけの主人公は 人は食べたが 殺生はしなかった→自分だけ生き残ったことの 恥と苦しみ
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『ひかりごけ事件』をモチーフにした短編。 しかし件の事件が俗に『「ひかりごけ」事件』と呼ばれるようになったきっかけは、本短編が発表されたことに由来する……という。後半の戯曲部分の『我慢』という台詞が妙に印象的。 同時収録の『流人島にて』も面白かった。
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船長の「我慢」が主体性を失って環境に従うだけの空虚な姿勢を示すのだとすれば、同じものを抱えているだろうとされる天皇もきっと空虚なものとしてあるのだろう。
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(*01) 4編(*02)が収録されており、どのおはなしも面白い。表題作は再読であったと記憶するが、20世紀の日本文学のある地点としてのメルクマークとしての価値は揺るがないだろう。 どのおはなしも宗教的な色が濃く、同時にコンテンポラリーな実存的な哲学、共産的社会的な主義も問題とさ...
(*01) 4編(*02)が収録されており、どのおはなしも面白い。表題作は再読であったと記憶するが、20世紀の日本文学のある地点としてのメルクマークとしての価値は揺るがないだろう。 どのおはなしも宗教的な色が濃く、同時にコンテンポラリーな実存的な哲学、共産的社会的な主義も問題とされている。宗教は、「異形の者」がまさにそうであるように、仏教を主としているようでもあるが、天皇を組み込んだ近代国家神道や、罪と罰に著しいキリスト教、また大陸の儒教の問題も包含しており、むしろ20世紀の宗教や信仰のあり方への問いとなっている。 (*02) すべて昭和20年代の発表であり、当時の民俗が自然主義的に採録されている。「流人島にて」は八丈島周辺、「海肌の匂い」は沼津周辺、「ひかりごけ」(*03)は根室半島から知床半島など、校長などの移住者の視点もあるが、特に海に関わる言葉や習俗が楽しい。 (*03) 食人をめぐる問題は、長い歴史や人類史的な普遍性に達しうる問題でもあり、武田は、大岡の「野火」や野上の「海神丸」を作中で直截に取り上げ、批判を加えている。近代や飢餓には回収されえないカニバリズムは、今後もことあるごとに議論されるだろう。
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戦時中の吹雪の中、難破し羅臼に辿り着いた極限状態に置かれた船員達。生き延びる為に死んでいった仲間達を食べるという「難破船長人食喰事件」に基づく。その中で、 一、たんなる殺人 ニ、人肉を喰う目的でやる殺人 三、喰う目的でやった殺人のあと、人肉は食べない 四、喰う目的でやった殺人の...
戦時中の吹雪の中、難破し羅臼に辿り着いた極限状態に置かれた船員達。生き延びる為に死んでいった仲間達を食べるという「難破船長人食喰事件」に基づく。その中で、 一、たんなる殺人 ニ、人肉を喰う目的でやる殺人 三、喰う目的でやった殺人のあと、人肉は食べない 四、喰う目的でやった殺人のあと、人肉を食べる 五、殺人はやらないで、自然死の人肉を食べる どの罪悪がより重いのか。 極めて哲学的な背景に基づく作品。
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私は、人間は「自己都合をつけたがる」本能を持っていると思う。 つまり、例えば欲求(ここでは食欲)を満たしたいと思えば、普段だと食べ物に手を伸ばせばよいのだが、それが困難な状況では、人間は脳内で自分に合理的な理屈をこねくり回そうとするのである。 その理屈が合法的な範囲内ならば、それ...
私は、人間は「自己都合をつけたがる」本能を持っていると思う。 つまり、例えば欲求(ここでは食欲)を満たしたいと思えば、普段だと食べ物に手を伸ばせばよいのだが、それが困難な状況では、人間は脳内で自分に合理的な理屈をこねくり回そうとするのである。 その理屈が合法的な範囲内ならば、それでもいい。しかし合法的には不可能な場合はどうか。脳はどういう理屈を見つけ出すか。 「ひかりごけ」には、食料備蓄の全く無い、冬の隔離された小屋に閉じ込められた4人が登場する。そのままいけば4人は共倒れとなってしまう。全員飢え死となるのか。 登場人物の1人の船長の脳内に、ある理屈が浮かんだ。ーいや、全員生存は無理だが、生き残れる可能性がある。- その理屈=自己都合は、果たして正当か。 作者はそれを極限状態下と、救出された後の平常時と、2種類の状態から照らし出そうとする。我々は法治国家で生活する以上、極限であろうと平常であろうと同じルールの支配を受ける。その一般論と、船長が極限下で捻出した自己都合とのせめぎあいが、この作品の核となっている。 この問題はラスコーリニコフによっても提示されているが、どちらが正しいかは今の私にはわからない。私も状況によれば、船長にも、ラスコーリニコフにもなる恐れをもっている。 ある角度から、ある瞬間にだけ光って見えるというひかりごけ。見た者でないと、その光について語ることはできない。 我々は生きる以上、この命題から逃れられないかもしれない。 (2007/8/21)
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宗教的な、哲学的な作品で自分にはなかなか難しかった。ひかりごけという作品は映画があることを知っており、興味をもったのですが、まさか戯曲形式で進むとは思いませんでした。これにはこれで意味があったのでしょうが、、、自分が想像していたものとは大きく違いました。異形の者なども印象的ではあ...
宗教的な、哲学的な作品で自分にはなかなか難しかった。ひかりごけという作品は映画があることを知っており、興味をもったのですが、まさか戯曲形式で進むとは思いませんでした。これにはこれで意味があったのでしょうが、、、自分が想像していたものとは大きく違いました。異形の者なども印象的ではありました。短編が惜しい気がします。
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【本の内容】 雪と氷に閉ざされた北海の洞窟の中で、生死の境に追いつめられた人間同士が相食むにいたる惨劇を通して、極限状況における人間心理を真正面から直視した問題作『ひかりごけ』。 仏門に生れ、人間でありながら人間以外の何ものかとして生きることを余儀なくされた若き僧侶の苦悩を描い...
【本の内容】 雪と氷に閉ざされた北海の洞窟の中で、生死の境に追いつめられた人間同士が相食むにいたる惨劇を通して、極限状況における人間心理を真正面から直視した問題作『ひかりごけ』。 仏門に生れ、人間でありながら人間以外の何ものかとして生きることを余儀なくされた若き僧侶の苦悩を描いて、武田文学の原点をうかがわせる『異形の者』。 ほかに『海肌の匂い』『流人島にて』を収録する。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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