安土往還記 の商品レビュー
『一番カッコイイ戦国時代小説』の座、私の中で、何十年も揺るがないままです。 あの時代で、自分も呼吸しているかのような臨場感は「嵯峨野名月記」のほうが、より強かったですが、こちらのほうが登場人物への感情移入がしやすいぶん、数々の場面の印象が鮮烈に残っています。 安土城で信長が、バ...
『一番カッコイイ戦国時代小説』の座、私の中で、何十年も揺るがないままです。 あの時代で、自分も呼吸しているかのような臨場感は「嵯峨野名月記」のほうが、より強かったですが、こちらのほうが登場人物への感情移入がしやすいぶん、数々の場面の印象が鮮烈に残っています。 安土城で信長が、バリニャーノを歓待するために行った『演出』のシーン、何度も読み返しては脳内で映像化して(貧弱な想像力ながら)酔いしれたものでありました…。 思い出しつつ、また再読したくなりました☆何年かおきに読み返すのですが、読むたびに、また違う輝きに出会えるような小説です。 大河ドラマの「信長 King of Zipangu」は、この小説を『原作』にしたくて、でも許諾が得られなくて脚本家さん原作ということにしたのでは…と長年思い続けているのですが…。 今も真相が気になるところです☆
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宣教師に同行した船員の手記の形で描かれるのが新鮮です。 まさに見てきたかのような描写で、臨場感溢れます。 克己的な信長の人物像がくっきりと立体的に浮かんできます。 とても読み応えがありました。
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ジェノバ出身のある航海士が語り手となり、彼が一時期親交を持った大殿(シニョーレ=信長)について書き記すという体裁をとった小説ですが、まずその設定がとても斬新に思えました。読み進めていくとあたかも目の前に当時の出来事が展開しているかのように語り手の視点を追体験することができるくらい...
ジェノバ出身のある航海士が語り手となり、彼が一時期親交を持った大殿(シニョーレ=信長)について書き記すという体裁をとった小説ですが、まずその設定がとても斬新に思えました。読み進めていくとあたかも目の前に当時の出来事が展開しているかのように語り手の視点を追体験することができるくらい豊かな描写力をもって書かれています。非情・残忍なイメージが一般的に定着している信長を「理に適うものを追求することに命を懸ける」戦略家として捉え、くっきりとその人物像を浮かび上がらせることに成功しています。歴史小説として読み応えにある作品だと思います。
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辻邦生さんは大好きな作家さん。 その辻さんが織田信長??と読む前は思ったものの、読んでみて納得。 織田信長がとても知性的でストイックな武将に描かれています。 明智光秀との関係も、とても深い人間同士のつながりのようなものが感じられて感動。本能寺の変に至ってしまった二人の葛藤に、せつ...
辻邦生さんは大好きな作家さん。 その辻さんが織田信長??と読む前は思ったものの、読んでみて納得。 織田信長がとても知性的でストイックな武将に描かれています。 明智光秀との関係も、とても深い人間同士のつながりのようなものが感じられて感動。本能寺の変に至ってしまった二人の葛藤に、せつなさを感じます。 歴史小説、というより、やっぱり文学作品だなあ、と思います。
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期待していたからちょっとなー言う感じ。。。 井上靖の「後白河院」なみの肉感がある感じかと おもったらそこまで信長の質感は出せていなかった感じ。。
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読んだのはたぶん30年以上前だが、辻邦生の中では1,2を争うおもしろさだった。背教者ユリアヌスの次に読んだのかもしれない。こんなに面白い小説を書く人がいるのかとうれしくなってしまった一冊だ。
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この小説はキリスト教布教のための宣教師とともに日本の地に下りた航海士の視点から見た、 という設定で織田信長について描いている。 信長は、自分の意見や面子にこだわらず、ひたすら事の道理のみを求めていた。 自身の納得のいく信条を守るためには、自身の生命さえ捧げたであろう。 いかな...
この小説はキリスト教布教のための宣教師とともに日本の地に下りた航海士の視点から見た、 という設定で織田信長について描いている。 信長は、自分の意見や面子にこだわらず、ひたすら事の道理のみを求めていた。 自身の納得のいく信条を守るためには、自身の生命さえ捧げたであろう。 いかなる迷い・ためらい・偏見もなく、である。 信長は政治の担い手として、常に「事が成る」ための力を必要としていた。 事を成就せしめぬような知識はがらくたにすぎなかった。 そのため、事の成就のために自らを切りすて、ひたすら燃焼して生き抜く人間たちに 言いようのない共感を覚えていた。 それは 「キリシタンの僧たちが大海に乗りだすように、その同じ勇気をもって、仕事に当れ。」 という言葉に表れている。 この小説に描かれた信長は、この時代では異端であっただろうが、 今考えれば、誰もが共感し得る合理的な人物であり、 混乱の時代を切り開く原動力となった。 作者の、みずみずしく格調高い文章のなかに、 強烈に立ち現れてくる一人の男に共感せざるを得ない。
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辻邦生は1957年から61年までフランスに留学していたらしい。 あの国内激動の時代に留守していたんだ。
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荒木よ、合戦において真に慈悲であるとは、ただ無慈悲となることしかないのだ。133頁 歴史には全く詳しくないので何とも言えないのだけれど 信長のことをもっと知りたくなった
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(2006.09.10読了)(2003.01.18購入) NHK大河ドラマで、「功名が辻」を放映しているので、信長・秀吉・家康関連の本を積読の中から探していたら見つかったのがこの本です。安土ですので、信長関連本です。 イエズス会日本布教区関連の書簡が見つかり、それを翻訳したという...
(2006.09.10読了)(2003.01.18購入) NHK大河ドラマで、「功名が辻」を放映しているので、信長・秀吉・家康関連の本を積読の中から探していたら見つかったのがこの本です。安土ですので、信長関連本です。 イエズス会日本布教区関連の書簡が見つかり、それを翻訳したという設定でかかれています。書簡の著者は不明なので、主人公の名前は分かりません。大航海時代の船乗りで、キリスト教布教のための宣教師と一緒に日本にやってきたということになっています。 日本へやってきたのは、1570年の初夏です。(13頁)上陸したところは、ロの津港。 平戸に滞在した後、堺に向かい津田宗及に会い、持っていた小銃を譲ってくれるように頼まれたが、断った。 1571年初めに、京都のフロイス氏から連絡が来たので、京都へ移動した。キリシタンを保護してくれているのは和田殿である。 岐阜へ行って信長(シニョーレ)に会うことができたのは、日本布教区長のカブラル氏のおかげだった。1572年、カブラルの岐阜訪問にフロイス、オルガンティノ、ロレンソ老人に従って参加した。その後、主人公は信長の下にとどまり、銃の指導をし、船作り、建築のアドバイス、等しながらすごし、信長の死の後まもなく日本を去る。 ●信長 私は彼と話した印象から、彼が極めて道理に耳を傾ける人であることを保障したい。さらに彼は、自らの主義、主張さえも、理にかなった真理の前では、何の躊躇もなく、投げ捨てる。(61頁) 私たちに好意を寄せたのは、鉄砲のためであり、鉄砲隊編成のためであり、カラヴェラ船の造船技術のためであり、天体観測器のためであり、航海術のためであり、諸学術の成果のためである。(65頁) ●黒人(176頁) 大殿もさすがにジェロニモの黒さには驚いたらしい。はじめはそれが生まれつきの肌の色であることをなかなか信じなかったが、オルガンティノが灼熱の太陽に幾代も幾代も焼かれた結果、このような肌の色となったことを説明して、やっと納得がいったらしかった。 信長が戦ったのは、信玄や浅井、朝倉の大名たちであるとともに、比叡山、紀伊長島の仏教徒、大阪の石山本願寺の仏教徒、雑賀の鉄砲衆、毛利水軍、等、実に様々集団だった。 この本は、キリスト教の布教のために日本にやってきた人たちと信長の交流の模様を描くとともに、布教のために日本に来た人たちの人間模様も描いている。結構興味深い本だった。 ☆辻邦生さんの本(既読) 「廻廊にて」辻邦生著、新潮社、1963.07.15 「廻廊にて」辻邦生著、新潮文庫、1973.05.25 「風の琴」辻邦生著、文春文庫、1992.05.10 「花のレクイエム」辻邦生著・山本容子絵、新潮社、1996.11.15 「美しい夏の行方」辻邦生著・堀本洋一写真、中公文庫、1999.07.18 「生きて愛するために」辻邦生著、中公文庫、1999.10.18 著者 辻 邦生 1925年 東京生まれ 東京大学仏文科卒業 1957年より三年半パリ大学に留学 1963年 『廻廊にて』で第四回近代文学賞受賞 1968年 『安土往還記』で芸術選奨新人賞受賞 1972年 『背教者ユリアヌス』で第十四回毎日芸術賞受賞 1995年 『西行花伝』で第三十一回谷崎潤一郎賞受賞 1999年7月29日 死去 ☆関連図書(既読) 「功名が辻(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1976.03.25 「功名が辻(二)」司馬遼太郎著、文春文庫、1976.03.25 「功名が辻(三)」司馬遼太郎著、文春文庫、1976.04.25 「功名が辻(四)」司馬遼太郎著、文春文庫、1976.04.25 「一豊の妻」永井路子著、文春文庫、1984.04.25 「豪姫」富士正晴著、新潮文庫、1991.04.25 内容紹介(amazon) 争乱渦巻く戦国時代、宣教師を送りとどけるために渡来した外国の船員を語り手とし、争乱のさ中にあって、純粋にこの世の道理を求め、自己に課した掟に一貫して忠実であろうとする“尾張の大殿(シニョーレ)"織田信長の心と行動を描く。ゆたかな想像力と抑制のきいたストイックな文体で信長一代の栄華を鮮やかに定着させ、生の高貴さを追究した長編。文部省芸術選奨新人賞を受けた力作である。
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