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仮面の告白 の商品レビュー

3.9

356件のお客様レビュー

  1. 5つ

    92

  2. 4つ

    115

  3. 3つ

    98

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

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2022/10/28

自分が周りとは異なることを気取られないように、戦争による死を願い続けた。しかし、実際直面すると死への恐怖が湧き上がる。自分を偽り続けることで、正常という仮面を貼り付けるが、本心とのズレを常に感じるたびに異常な状態を噛み締めさせられる。 どの時代にも多かれ少なかれ一人ひとりこの感覚...

自分が周りとは異なることを気取られないように、戦争による死を願い続けた。しかし、実際直面すると死への恐怖が湧き上がる。自分を偽り続けることで、正常という仮面を貼り付けるが、本心とのズレを常に感じるたびに異常な状態を噛み締めさせられる。 どの時代にも多かれ少なかれ一人ひとりこの感覚をもって生きているのではないか。

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2022/08/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

同性愛者の自身の半生を綴る体裁。 幼少期から男の肉体、血と死に陶酔を覚える。思春期は周りの男子生徒で自慰を繰り返す。大学時代に友人の妹・園子と親しくなるが、性欲を感じられないことから結婚を断る。が、諦めきれず、園子の結婚後も逢引きを繰り返すが、ダンスホールで青年の肉体美を見て、同性愛者としての自覚を新たにする。 戦争という異常事態下において、不幸と死を夢想する。 同性愛が異常とされていた時代の作品だが、「私」はその異常性を認識する一方で、自身の退廃に酔ってもいる。 自身の心理を詳細に、言葉遣いも仰々しく記述し、ギリシャ神話や聖書のエピソードになぞらえもする。長々しい自分語り。 相変わらず読みにくい文章。漢語が多く、翻訳調で(主格、目的格、所有格をいちいち明記する)、修飾語が長いのが原因。修飾語がどこにかかるのか把握するのに時間がかかるが、どれも直後の語にかかっているのかもしれない。規則性がわかれば慣れるかも。 結婚後の園子は、谷崎潤一郎の『蓼喰う虫』を読んでいる。谷崎潤一郎は三島由紀夫が敬愛していた作家。

Posted byブクログ

2022/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

・私の感じだした「悲劇的なもの」とは、私がそこから拒まれているということの逸早い予感がもたらした悲哀の、投影に過ぎなかったかもしれない。 ・心に染まらぬ演技がはじまった。人の目に私の演技と映るものが私にとっては本質に還ろうという要求の表れであり、人の目に自然な私と映るものこそ私の演技であるというメカニズムを、この頃からおぼろげに私は理解しはじめていた。 ・そのことよりも更に私をみじめな気持ちにしたのは、こうした遅い理解が、必ずしも私の無知からくるのではなく、彼と私の明らかな関心の所在の差から来るのだということだった。 ・私の不安が、私の不確定が、誰よりも早く意識の規制を要求したに過ぎなかった。私の意識は錯乱の道具にすぎず、私の操作は不確定な・当てずっぽうな目分量に過ぎなかった。 ・今まで私は子供らしい好奇心と偽りの肉感との人工的な合金(アマルガム)の感情を以てしか女を見なことがなかった。 ・例の「演技」が私の組織の一部と化してしまった。それはもはや演技ではなかった。自分を正常な人間だと装うことの意識が、一々言い聞かさねばすまぬようになっていた。裏から言えば、私はおよそ贋物をしか信じない人間になりつつあった。 ・私は勝利者なのである。私は客観的には幸福なのであり、誰もそれを咎めたりはしないのである。それなら私にだって幸福を侮蔑する権利はあるわけだ。 ・女が力を持つのは、ただその恋人を罰し得る不幸の度合によってだけである。 ・余人にはわかるまい。無感覚というものが強烈な痛みに似ていることを。 ・お前は人間ではないのだ。お前は人交わりのならない身だ。お前は人間ならぬ何か奇妙に悲しい生物だ。 ・どんな人間にもおのおののドラマがあり、人に言えぬ秘密があり、それぞれの特殊事情がある、と大人は考えるが、青年は自分の特殊事情を世界における唯一例のように考える。

Posted byブクログ

2022/02/06

少し衒学的な記述が目立つものの,それもまた虚飾を支えていると読んだ。理知的な自己分析の部分だけでも読む価値はあると思う。LGBTとかいう概念も随分と正しさで殴っているだけと思う中で,本作で書かれる万人的な苦悩は真に迫るものがあり,むしろ反暴力的で新鮮だった。

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2021/09/24

日本語が比較的高尚だという印象を受けたが、なぜだか文章に引き込まれて、集中して読むことができた。 女の人を愛したいがそれができない主人公の様子描かれていた。 園子とのやり取りの中で、世間的な普通な人間になろうとするが、また別のきっかけで本来の主人公の気持ちが浮き出てくる心情が書か...

日本語が比較的高尚だという印象を受けたが、なぜだか文章に引き込まれて、集中して読むことができた。 女の人を愛したいがそれができない主人公の様子描かれていた。 園子とのやり取りの中で、世間的な普通な人間になろうとするが、また別のきっかけで本来の主人公の気持ちが浮き出てくる心情が書かれていた。 また戦時中の物語だったので、戦禍の生活の苦しさ感じた。軍人に生き延びていることに後ろめたさを感じさせてしまうような戦争は、本当に人間の平常の感覚を狂わせてしまう。

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2021/09/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ある日、自身が同性愛者だと自覚し、それが異常であると考えてしまう。そして、友人の近江に恋をする。一方で、友人の妹である園子にも愛を感じ、所謂プラトニックな恋愛を経験することになるが、結婚することはなかった。タイトルも秀逸である。

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2022/02/04

三島由紀夫だ。 内面の暴露であろう作品だが、ふと考えさせられる。本当は何を描いているのだろうか。 ただ素直に受け取ると、戦時に生きる同性愛者の青年による告白であるが、それだけでもないぞ、と思わせる部分があった。 読み続けられる重要な作品。 にしても、何でもない動作、心理、情景を...

三島由紀夫だ。 内面の暴露であろう作品だが、ふと考えさせられる。本当は何を描いているのだろうか。 ただ素直に受け取ると、戦時に生きる同性愛者の青年による告白であるが、それだけでもないぞ、と思わせる部分があった。 読み続けられる重要な作品。 にしても、何でもない動作、心理、情景をいちいち美しく表現することに苦労はなかったのだろうか。それとも自然と溢れてくるものなのだろうか。 仮にも私が代筆したなら、ただ下品で見るに堪えない文になること必至である。 時代も彼を追い詰めたんだろうな、と思う。 自分の中にある矛盾や葛藤は、若者や性的少数者が抱える大きな悩みに違いない。 性癖くらい誰にでもある。 口には決して出せないし、ましてや欲求が満たされる瞬間などは一生やって来ないことは明白である。だからこそ底知れない魅力があるのだろう。 美、羞恥、愛、欲望、死。どこまでも個性的なものであり、誰しもが隠匿する強烈な性癖の持ち主である。性癖には本人すらも受け入れることを躊躇するほど、過激なものもある。皆がその性的な欲求を抑えることに日々苦労しているのではないだろうか。 自らの肉欲に対しての嫌悪、純粋さを求める精神の部分、純粋さを汚すことの喜び。 抗し難く本能的に欲する性的な衝動は、理性によるコントロールでかろうじて抑えられている状態である。間違いでもなく、おかしなことでもなく、そういうものだ。 読了。

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2021/06/17

 再読。初読時も感心した箇所。  ―女たちの貴い部分がその濡れた唇をひらいて、幾十回幾百回幾千回とはてしなく、シレエヌの歌をうたいつづけることが。……  中学生のエロ妄想をかくも華麗に描写してしまう。    どこまで空想的な文章を綴ろうと、それは一種の自伝だと考えている。こと三島...

 再読。初読時も感心した箇所。  ―女たちの貴い部分がその濡れた唇をひらいて、幾十回幾百回幾千回とはてしなく、シレエヌの歌をうたいつづけることが。……  中学生のエロ妄想をかくも華麗に描写してしまう。    どこまで空想的な文章を綴ろうと、それは一種の自伝だと考えている。こと三島由紀夫の場合、著作の大半が遺書のように思えてしまう。

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2021/04/13

三島さん作品初読み。同じ土俵に立てないことは百も承知ですが、一個下の歲でこれを書かれたのか…と唖然とする。 昭和前半を生きる同性愛者の方の生きづらさが一貫して伝わってくる中で、中学校時代の近江くんとのエピソードが最高に輝いていた。

Posted byブクログ

2021/01/22

まさに仮面の下の表情をみるような告白文であった。幼少期から二十代と長い期間だ。また自分について考えるきっかけにもなった小説だった。

Posted byブクログ