晩年 の商品レビュー
メタフィクションの格…
メタフィクションの格好を取った、自分語り文学の傑作です。
文庫OFF
学生時代、正直、太宰は苦手だった・・と言うか避けていた。 余りのデスパレートな空気感とデカダン、ニヒリズムの象徴たる容貌もあって。 この歳になって、読む気になって手に取るとそこはかとない津軽の香りとともに習作的な手触り感は心地よくゆっくり読み進めた。 秋という時節柄のせいか、「...
学生時代、正直、太宰は苦手だった・・と言うか避けていた。 余りのデスパレートな空気感とデカダン、ニヒリズムの象徴たる容貌もあって。 この歳になって、読む気になって手に取るとそこはかとない津軽の香りとともに習作的な手触り感は心地よくゆっくり読み進めた。 秋という時節柄のせいか、「雨月物語」から取った民話調の「魚服記」関係の一の逆転が面白い「猿ヶ島」情景が目に浮かぶ「尼」はかなり好み。 史的香りのある「地球図」 太宰って、こういった歴史の中の人間関係も書くんだと意外性があり、面白い。 「ロマネスク」「彼は昔の彼ならず」「道化の華」はこの作品集が昭和8~11における遺書的な想いで書かれた背景を考えると最も雰囲気を濃く表しているように思えた(その他の幾つかは焼き捨てたと巻末にあるのを見て驚かされる)
Posted by
中2病文学とかいわれることもあるけど、めちゃくちゃかっこいいのはいつ読んでも毎回思う。逆に、まだ読んでない中2は早く読んだほうがいい。三四郎とかこころとか、そのあたりを1冊読んで、その次にこれを読むとなおいいかもしれない。個人的には中3で読みました。
Posted by
デビュー作、芥川賞の候補になったのは収録されてる逆光と道化の華のようですが、いまでは大家となってるとはいえ、さすがにこのレベルでは石川達三の蒼茫のもつ迫力には負けてる。自分の人生をモチーフにした思ひ出・道化の華はあくまでのちの作品のモデルにはなっても、のちの作品のクオリティには至...
デビュー作、芥川賞の候補になったのは収録されてる逆光と道化の華のようですが、いまでは大家となってるとはいえ、さすがにこのレベルでは石川達三の蒼茫のもつ迫力には負けてる。自分の人生をモチーフにした思ひ出・道化の華はあくまでのちの作品のモデルにはなっても、のちの作品のクオリティには至っていない刺さりが弱い。地球図はキリシタンもので芥川へのあこがれか。猿ヶ島も小説家が使いたがる設定。彼は昔の彼ならずは人間失格の少し明るい感じで意外と太宰イズムが現れててよかった。ロマネスクみたいな寓話が私は好きなようです
Posted by
高校時代の愛読書。 死(自殺)を予感した天才青年の「遺書」として読んだ。 エピグラムに掲げられたヴェルレーヌの「選ばれてあることの恍惚と不安とふたつ我にあり」というセリフに、太宰の天才としての矜持と、その裏の天才なるが故に何でも見えてしまう底なしの恐怖とを感じて胸が詰まった。 太...
高校時代の愛読書。 死(自殺)を予感した天才青年の「遺書」として読んだ。 エピグラムに掲げられたヴェルレーヌの「選ばれてあることの恍惚と不安とふたつ我にあり」というセリフに、太宰の天才としての矜持と、その裏の天才なるが故に何でも見えてしまう底なしの恐怖とを感じて胸が詰まった。 太宰は、処女作において、既に自分の最後を幻視していたとしか思えない。 その美しくも痛ましい心の震えに感応して、読者も途轍もなく苦しくなる。 しかし、そこには甘美さもある。 妖しくも危うい魅力に若者はハマる。 本書は、太宰治の魅力に満ちた初期の傑作作品集だ。 最初に最高傑作を書いてしまった者は、悲劇的な人生を予定されている。 何故なら、それを超えることは不可能であり、この後の全ての作品が処女作の模倣でしかないのだから。 それは、処女作として「一千一秒物語」を、書いてしまった稲垣足穂に似ている。 尤も、足穂翁はそれを自覚して泰然自若として処女作の模倣を行ったが、太宰はそうではない。 処女作を超えるべく、刻苦勉励の文筆活動を行ったのだ。 この美しくも痛ましい短編集は、暗記するほど読んだものだ。 次第に太宰の文体と思考が乗り移って来るような気がした(だけだった)。 太宰治は38歳で亡くなっている。 何と、未だ青年ではないか。 芥川龍之介が、服毒自殺したのは35歳。 まだ、若造ではないか。 三島由紀夫も45歳。 これから脂の乗ってくる時ではないか。 夏目漱石が亡くなったのは、 49歳! 修善寺の大患を経験しているので、彼の晩年の 写真は60-70代の老人にしか見えない。 漱石も、夭折とは言えないにしても、壮年にして 世を去っている。 死というものにせき立てられて、必死に生き延びるのが青春時代かもしれない。 若さの内に唐突に訪れる死。 その強迫観念から逃れられなくなり、若く死んだ文学者たちの声ばかりを聞くようになる。 大宰が若くして死んだことを知っているから、処女作を遺書と見做しただけではない。 自作未遂を繰り返してきた太宰治にとっては、どの作品も遺書だったのだから。
Posted by
葉 意味不明 思い出 青年の思春期ってかんじ 魚服記 スワがおとうを夢に見て、酔っ払って落ちたことを悟って助けに行ったという無理のある別エピソードを考えてみたけどどう考えても近親相姦。ちょこちょこ女、な描写があって嫌な予感したんやってな、胸糞の悪い…。バッドだけど最後の魚の描...
葉 意味不明 思い出 青年の思春期ってかんじ 魚服記 スワがおとうを夢に見て、酔っ払って落ちたことを悟って助けに行ったという無理のある別エピソードを考えてみたけどどう考えても近親相姦。ちょこちょこ女、な描写があって嫌な予感したんやってな、胸糞の悪い…。バッドだけど最後の魚の描写からしてハッピーエンドか?
Posted by
『思い出』 みよとの話が切なかった。みよにとって太宰は雇用主の一人でしかなかったのだろう。 『彼は昔の彼ならず』 面白かった。相対性理論の『気になるあの娘』という曲の「気になるあの娘の頭の中はふつうふつうわりと普通」という歌詞を思い出した。ずっと昔にこの感覚をここまでお洒落に描...
『思い出』 みよとの話が切なかった。みよにとって太宰は雇用主の一人でしかなかったのだろう。 『彼は昔の彼ならず』 面白かった。相対性理論の『気になるあの娘』という曲の「気になるあの娘の頭の中はふつうふつうわりと普通」という歌詞を思い出した。ずっと昔にこの感覚をここまでお洒落に描いてるのすごい。
Posted by
どの本をと読んでも太宰治らしさがみえていい。津軽の表現が、多くて風情あった。 でも、全てを理解するのはまだまだだと思ったのであと3年後にもう一回読みたい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
いやぁ。自分は太宰治の熱心な読者というわけではないですし、自虐と自己憐憫の果てに破滅に至るような作品なのかと身構えていましたが、意外なほどの明るさと瑞々しさを湛えた青春の書じゃないですか。 まずもって、27歳の若さで世に送り出した処女作品集のタイトルが『晩年』って。人生に疲弊し切った老人の繰り言のような題です。が、内容を読むにつけ、人生にそれだけ絶望し尽くすというのもまた若さなのかも、と思わされましたね。年齢ではなく、感性において、太宰は本当に若い。逆に若者でなければ書き得ないような鋭さといいますか、斬新な感覚に満ちています。 妻の裏切りを知らされ、共産主義運動から脱落し、心中から生き残った著者が、自殺を前提に遺書のつもりで書き綴った処女作品集。 “撰ばれてあることの 恍惚と不安と 二つわれにあり”というヴェルレーヌのエピグラフで始まる『葉』以下、自己の幼・少年時代を感受性豊かに描いた『思い出』、心中事件前後の内面を前衛的手法で告白した『道化の華』など15編より成る。 1 葉/2 思い出/3 魚服記/4 列車/5 地獄図/6 猿ヶ島/7雀こ/8 道化の華/9 猿面冠者/10 逆行/11 彼は昔の彼ならず/12 ロマネスク/13 玩具/14 陰火/15 めくら草紙 所々、著者自身による前置きや脚注、解説や弁解めいた文言が挿入されるあたり、鼻につかないではないです。四の五の御託を並べるのはいいから、早く本編に行ってよ!と言いたくなる感じ。が、溢れ出る文才の絵の具をキャンバスに叩きつけたようなアオハルっぷりはたまりません。この純度・深度を他の作家で味わうことは困難ですわ。
Posted by
太宰治の最初の本。中編小説15篇が収録。 老年の作家が書いたような「晩年」というタイトルだが、太宰が27歳の時のもの。収録されている作品に「晩年」というそれのものはない。太宰が遺書のつもりで、それまでの人生のすべてを書き残した。 もはや90年近く前の本なのだが、令和の時代に読んで...
太宰治の最初の本。中編小説15篇が収録。 老年の作家が書いたような「晩年」というタイトルだが、太宰が27歳の時のもの。収録されている作品に「晩年」というそれのものはない。太宰が遺書のつもりで、それまでの人生のすべてを書き残した。 もはや90年近く前の本なのだが、令和の時代に読んでも全く色褪せた内容には思えない。
Posted by