第三の嘘 の商品レビュー
読み終えたが、あまり理解できないのでもう一度読み直す。国の位置や歴史的背景をもう少し調べて読み直す方が理解することが出来るかもしれない。
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本書はアゴタ・クリストフの傑作『悪童日記』三部作の完結編。 一気にこの三部作を読了したが、非常に考えさせられるものがあった。 1作目の『悪童日記』では第二次世界大戦の戦中、戦後の混乱のなか、双子の兄弟が必死に生き残っていく姿が淡々と描かれた。 2作目の『ふたりの証拠』では、別れ別れとなった双子の青年期を東側諸国となったハンガリーに残ったリュカの目を通して描かれた。 3作目の本作では、別れた双子が涙の再会をするのかと思えば、そう簡単な話ではなかった。 この双子の存在自体が虚構であったのではないか、あるいは、いままで述べられてきた物語は全くの空想であったのではないかと読者に思い起こさせるような展開となっていく。 ただ、この三部作については実際のところ、この双子の兄弟にどのような事実があったのかを突き詰めることはまったく必要のないことだと思う。 どのエピソードも事実であり、実際に『誰か』の身の上には起こった物語なのであろうから。 そこを読者がどうとらえるかということなのだろう。 本書は著者の自伝的要素も多分にあり、著者は西側諸国へ運よく来ることができたが、もし東側に残っていたらこういう人生もあっただろうということを想像し、東側に残ったかもしれない「もう一人の自分」の物語を書いていったのだろう。 そう考えると、この戦争が分岐点となり、自分が二つに分かれてしまって、その二人がそれぞれの人生を歩んでいった想像の姿が、この物語に記されていった考えたほうがわかりやすいのかもしれない。そこにはまた更なる分岐点がたくさんあったはずであり、その分岐点の末端をそれぞれすくい上げて、文章に書き記していったと考えると腑に落ちることもたくさんある。 非常に心を動かされた3部作であった。
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ついに悪童シリーズも完結。久々のハイプに注文した本の到着を今か今かと待ちわびた。手にしてからは一気読み。本作の意外な展開に、そうきたか!とまたしても唸ってしまった。 しかしこのアゴタ・クリストフという小説家は引き出しが広い。語り口も1作、2作目とガラッと変わっている。自分の展開予...
ついに悪童シリーズも完結。久々のハイプに注文した本の到着を今か今かと待ちわびた。手にしてからは一気読み。本作の意外な展開に、そうきたか!とまたしても唸ってしまった。 しかしこのアゴタ・クリストフという小説家は引き出しが広い。語り口も1作、2作目とガラッと変わっている。自分の展開予想もいい意味で裏切られた。 自分の中では1作目の『悪童日記』は星6だった。それより少しパンチがなかったけれど、一連の作品ということで星5にした。
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悪童日記、二人のに続く3作目だけど、この物語は3部作というだけで続いていない。それがこの本によって分かる。 テーマへと読者に嘘をつきながら近づいて行く物語は他者では書けない素晴らしい才能。 美しいだけの人生ではない北欧東欧にある人生観も相まって、面白い。 3部作で最高傑作。
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今までの二つの作品と繋がっていないので、困惑し全て日記に記してあったことは嘘か記憶がおかしくなったのかと思った。第三の嘘の中では、母親が不倫をしていた父親を射殺しその流れ弾でリュカが負傷し兄弟は離れ離れとなった。クラウスは父親の不倫相手の母親の家族に引き取られ、リュカは孤児院に引...
今までの二つの作品と繋がっていないので、困惑し全て日記に記してあったことは嘘か記憶がおかしくなったのかと思った。第三の嘘の中では、母親が不倫をしていた父親を射殺しその流れ弾でリュカが負傷し兄弟は離れ離れとなった。クラウスは父親の不倫相手の母親の家族に引き取られ、リュカは孤児院に引き取られお互いに人生をうまくすごせなかった。クラウスと母親は一緒に住むが、母親はいつもリュカのことばかり。兄弟は最後に出会うことができるが、兄弟であることを嘘だと思うことでリュカは自殺した。彼らは戦争、父親の不倫によって人生を狂わされた。兄弟だとわかっていながらなぜ嘘をついたのか?母親のため?
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何が嘘で、誰が私で、どこまでが真実なのか、読んでてどんどん深みにはまってきます。 これはあの2人の物語なのか、アゴタの物語なのか。 誰も何も悪くなくて、ただ時代が悪かった。 戦争がもたらした虚無感というか、人生や感情や大事なひとものをごっそり奪っていってそれがずでんと残っ...
何が嘘で、誰が私で、どこまでが真実なのか、読んでてどんどん深みにはまってきます。 これはあの2人の物語なのか、アゴタの物語なのか。 誰も何も悪くなくて、ただ時代が悪かった。 戦争がもたらした虚無感というか、人生や感情や大事なひとものをごっそり奪っていってそれがずでんと残って離れないような感覚。 もがいてぶつける場所がここだけやったんやなって。 自伝と物語の狭間で揺れながらも、最後のところがぞっとする。 淡々とそれでいてむき出しなアゴタ健在。 また最後の解説が深くて、読みいってしまいます。
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双子の秘密が明らかに…しかし、これどこまで真実なのか分からない。もしかして、全てが嘘であったとしたら。 ただ、嘘だとしてもクラウスと実母の関係程悲しいものはない。クラウスにとってはリュカは大事な存在だが、母のリュカへの後悔の思いが強すぎて、リュカの生死不明な状態を羨ましく思い怨も抱えてしまっている状態は出口のない八方塞がりな状態。最後の文は絶望感の深さにゾッと鳥肌。だけど、この部分もクラウスの創作の可能性も捨てきれないのが、この小説を闇の中に引き摺り込む。
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見かけの大枠は、悪童日記は双子が2人で書いた日記、ふたりの証拠は双子のうちおばあちゃんの家がある街に留まったリュカの物語、本作は第一部と第二部からなり、双子それぞれの視点で語る物語である。ただ、それが揺らぐのが面白い。 三作品とも、読み始めたら一気に最後まで読めてしまうくら...
見かけの大枠は、悪童日記は双子が2人で書いた日記、ふたりの証拠は双子のうちおばあちゃんの家がある街に留まったリュカの物語、本作は第一部と第二部からなり、双子それぞれの視点で語る物語である。ただ、それが揺らぐのが面白い。 三作品とも、読み始めたら一気に最後まで読めてしまうくらい文章そのものは軽く、淡々としている。A・クリストフが理系ということに非常に納得する。淡々としているため読んでいる時は、展開的にもこのままずっと淡々と行くんだろうなと思わされるが、そんなことはない。しっかり衝撃的な部分がある。 悪童日記の最後では、双子の別離によって、主人公が分裂したように感じられた。ふたりの証拠の最後では、双子の一方の物語を読んでいたつもりであったのに、双子の存在と日記の信憑性に疑念を抱かされた。どう考えてもリュカとクラウスの存在に矛盾が生じてしまう。疑念は第三作目の前半まで続き、読者に悪童日記もふたりの証拠も双子の存在も、全て嘘であったと思わせる。しかし、第一部の最後で双子は存在していたと語られ、真実と思われる物語が第二部で第一部とは別の主人公の視点から語られる。 ただ、第三の嘘で語られる物語が必ずしも真実とは限らない。本作品には繰り返し嘘という単語が登場し、複数の嘘が重ねられるが、本作品のタイトルが第三の嘘である以上、筆者は大きな括りでも嘘をカウントしている。悪童日記が第一の嘘、ふたりの証拠が第二の嘘、本作品が第三の嘘だと仮定すると、真実の物語を語っている作品はこの三作の中に無いと言える。この作品のどの部分も真実としてありうるし、どの部分も嘘としてありうるように思われる。もっとも、もっと読解力があって細かく分析していけば嘘と真実を区別できるのかもしれないが…。 しかし、どこが真実でどこが嘘であろうと、これらの物語は単独でも三冊まとめてみても巧妙であり、非常に面白い作品達だと思う。淡々としていて、シリアスで、ミステリーチック。今読んでる物語は嘘かもしれないから淡々と読もうとする反面、物語そのものの魅力に惹き込まれてしまった。 嘘をどうカウントしているかについては別の見方もあるかもしれないので、読み返した際にまたじっくり考えたいと思う。 一冊の本はどんなに悲しい本でも、一つの人生ほどは悲しくないという言葉が胸に焼き付いている。どんなに本を読んでその世界に浸っても、実際にその物語を歩んだ者の世界を見ることはできない。
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三部を通して、結局、この物語には真実は何もないのかもしれない。ただ、幼児期に受けた喪失感は後年まで残り続けるし、お金や人並みの生活水準が幸福感に与える影響は大きいんじゃないかと思う。何をきっかけに狂うか、何をきっかけに立ち直るかはそれぞれだと思うけど、この物語においては、立ち直った側が酷く醜くみえる。
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「悪童日記」から始まる三部作の最終章。評価が分かれる作品だと思うが、自分は一作目のインパクトが余りにすごくて、残念ながら二作目、三作目では最初の衝撃を超える事が出来なかった。この本は第二次世界大戦をドイツや旧ソ連の支配下で過ごした人々の悲哀と諦めと無力感を描いた作品として広く欧州...
「悪童日記」から始まる三部作の最終章。評価が分かれる作品だと思うが、自分は一作目のインパクトが余りにすごくて、残念ながら二作目、三作目では最初の衝撃を超える事が出来なかった。この本は第二次世界大戦をドイツや旧ソ連の支配下で過ごした人々の悲哀と諦めと無力感を描いた作品として広く欧州諸国で受け入れられているのだろう。ただ、少なくとも「悪童日記」は是非一読をお勧めしたい。
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