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星々の舟 の商品レビュー

3.8

332件のお客様レビュー

  1. 5つ

    80

  2. 4つ

    124

  3. 3つ

    85

  4. 2つ

    20

  5. 1つ

    3

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2024/03/17

これは凄い! 家族ひとりひとりが抱える何かしらの不幸、問題、しがらみ、トラウマ、わだかまりの中に見つけたほんのささやかな幸せ。 それを村山さんは、なぜこんなにすんなりと読ませる? 今のところ、村山さんのいちばん。

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2024/03/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

死後5分後くらいに「生きるとは何か?」と聞かれている感じ。壮大な読後感。 あらすじを読んで、直木賞受賞作が兄妹愛だけで書き切れることある?と思ってたけど、とんでもなかった。言葉に溺れた。 恋愛を含む、人生。もはや恋愛を死と並ぶほど、大きなものとして捉えられていた。恋愛小説というか、人生本というか、歴史書。 村山さんは戦争小説ではないと言っていたけれど、どうしてもその印象は強い。自分が生まれるのが少しずれていたら、と考えさせられた。 この時代でできることできないこと、メリットデメリット、たくさん享受してたくさん味わって死にたいな。 ・言葉なんかにこだわるより心が大事だろうという者もいるが、言葉ってのは案外正確に、使う人間の内面を映し出すものだよ。いわば心の鏡みたいなものだ。

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2024/01/16

叶わない恋、叶わなかった恋、人の倫から外れた恋…と、恋愛小説がメインテーマのアンソロジーでありつつ、最終話、父・重之の戦争の話が出てきたところで思わず涙してしまった。 恋愛模様だけではなく、家族愛や母親の無償の愛がそこかしこに感じられて、そしてどのストーリーにもさりげなく出てくる...

叶わない恋、叶わなかった恋、人の倫から外れた恋…と、恋愛小説がメインテーマのアンソロジーでありつつ、最終話、父・重之の戦争の話が出てきたところで思わず涙してしまった。 恋愛模様だけではなく、家族愛や母親の無償の愛がそこかしこに感じられて、そしてどのストーリーにもさりげなく出てくる花々の描写が美しくて、あっという間に読み進められる内容だった。

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2023/10/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

禁断の恋に悩む兄妹、他人の恋人ばかりを好きになってしまう末妹、自身の居場所に悩む長兄、幼馴染への恋慕、親友に対しての劣情を抱えていた孫、戦争の傷を抱える父、それぞれの視点から語られる彼らのこれまでの人生を通して星々を繋ぐように見えてくるひとつの家族の形、彼らの在り方。 「足を踏んだほうはすぐ忘れるけど、踏まれたほうはそう簡単に忘れられないもの」 家族間で互いに様々な感情を向けていたけど、彼ら、特に子供たちの劣情は作中のこの言葉に尽きるなと思った。 読み進めてそれぞれの見てきた世界を知れば知るほど、登場人物の見方が変わる。表面的な情報、断片的な状況で捉えられるものなんてない。わたし達は自分のことすら完全にわかることはできない。だからこそ語り合うこと、自分自身で触れ、確かめていくことが大切なのだと漠然と思った。 途中読み進めるのが辛くなってしまう描写もあったが筆者のあとがきにもあるように、一筋の光があるような構成ではあったのでそこは救いだったなと思う。 印象的だったというか良いなと思ったのは最後まで志津子の語りがなかったこと。後悔も思い出も、これまでの人生に意味を持たせるのも、抱えている気持ちを語るのもあくまで生者だなと思った。

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2023/10/25

人の記憶というのは、楽しい事は断片的であまり残らないが、悲しいこと、辛いことは始終記憶に残る。過去の苦い思い出も「いいもの」に映る、身も心も過去には戻らないがその記憶だけはそのままそっとしておきたいのが人かもしれない。一方、人は寂しい、侘しい時、過去の思いにふけがちだが恋愛、愛で...

人の記憶というのは、楽しい事は断片的であまり残らないが、悲しいこと、辛いことは始終記憶に残る。過去の苦い思い出も「いいもの」に映る、身も心も過去には戻らないがその記憶だけはそのままそっとしておきたいのが人かもしれない。一方、人は寂しい、侘しい時、過去の思いにふけがちだが恋愛、愛で人は変わり、変わる必要がある、思い通りにいかないのが人生というものかもしれない。

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2023/09/06

水島という家族、それぞれ6人の視点から描かれた連作。重いし辛い、最後まで読めるかなと。 内々のことは、なかなか他の人には伝わらないものだが、ある事情を除けばよくありがちな家族だと思う。ゆっくりと年月を隔て、父、母、息子たち、娘たち、息子の娘が内に抱え込んでいる悩み苦しみを主人公を...

水島という家族、それぞれ6人の視点から描かれた連作。重いし辛い、最後まで読めるかなと。 内々のことは、なかなか他の人には伝わらないものだが、ある事情を除けばよくありがちな家族だと思う。ゆっくりと年月を隔て、父、母、息子たち、娘たち、息子の娘が内に抱え込んでいる悩み苦しみを主人公をかえながら綴られていく。 兎に角、ひとりひとり丁寧に描かれていて 一章読むごとにずしりと響く。目頭が熱くなった章もあった。生まれ育った環境のせいにしているとしても、時には道を反れることってあるのでは。特に、長男貢の章が気に入ってしまった。郊外での野菜作りに生き甲斐を見いだす。重い話の中、畑仕事の描写はほっとするひとときだった。 いま、ここに生きているという圧倒的なまでの実感それだけでいいのだった。貢の言葉から、正直な人間臭さを感じる。 親が有耶無耶にしてきたことで、我が子の幸せに影響を与えた。そこが気になった。最後は沙恵と寄り添ってるように見えるが、何があっても親子、ということだろうか。 戦争体験、慰安婦の話は辛く、ずしんときました。これを持ってこられた理由があとがきにかえて、でわかりました。ひとつの家族の在り方はそれぞれ違う。登場人物の生き方に自分自身を投影させたり、何があっても生きてる意味があると、そう感じた作品でした。

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2023/09/04

大工の父親、病気で亡くなった先妻との長男と次男、後妻の連れ子の長女と夫婦の子の次女。6章からなり、それぞれを主人公としながら家族を描く連作短編集の形式をとった一作品です。 母親が亡くなった事で、家族が今までの気持ちを整理し始める。 「雪虫」連れ子の少女に恋をしてしまう次男。二人...

大工の父親、病気で亡くなった先妻との長男と次男、後妻の連れ子の長女と夫婦の子の次女。6章からなり、それぞれを主人公としながら家族を描く連作短編集の形式をとった一作品です。 母親が亡くなった事で、家族が今までの気持ちを整理し始める。 「雪虫」連れ子の少女に恋をしてしまう次男。二人は、互いの気持ちを認め合う。しかし、父親が同じである事を知らされる。次男は家族から離れて生きる。 「子供の神様」次女は自分が家族の交差点となるように振る舞ってきた。姉も父も子と知った後の喪失感。彼女のその後の恋愛観に影を落とす。 「ひとりしずか」兄への気持ちが残る長女。善良な男との結婚にも踏み切れない。 「青葉闇」早くから父親の不倫を知り家を出ていた長男。公務員となりしっかりした家族があるが帰宅拒否気味。50にして初不倫。 「雲の澪」長男の娘の夏の厳しめの経験。 家族は、なんらかの諍いがあろうと、生き違う時間があろうと、一つの舟に乗ったり降りたりしながら生きていく。各章の主人公の性別や年齢が変わるので、共感できる章があるのではと思います。 「名の木散る」が最終章で父親の戦争体験から家族を得ていく章なのですが、作者さんここに力を入れています。ですが、書きたいことは読めたつもりですが、どんな経験をしたとしても、この父親の不倫隠蔽や暴力が認められる根拠に思えず。 幸福とは呼べない幸せ が村山さんのたどりついた感慨との事です。

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2023/06/25

2007年09月20日 19:18 直木賞受賞作。 一つの家族のそれぞれの人物の視点が6つの章に分けて書いてある。 ただ、話が過去に行ったり現在に行ったり、過去の過去に行ったりして最初のうちは戸惑ったが括弧の工夫がなされていたので助かった。 有り触れた内容と言えば有り触れた...

2007年09月20日 19:18 直木賞受賞作。 一つの家族のそれぞれの人物の視点が6つの章に分けて書いてある。 ただ、話が過去に行ったり現在に行ったり、過去の過去に行ったりして最初のうちは戸惑ったが括弧の工夫がなされていたので助かった。 有り触れた内容と言えば有り触れた内容かもしれないが、 文章力・表現力で読ませると思う。 最後の父親の章は、実際に話を聞いて書いただけあってリアルだと思う。 戦争体験について、あまり知らない人は読んだ方が良い。 しかしながら、帯にもある「こころふるえる感動の物語」とまではいかなかった。

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2023/06/25

兄妹は禁じられた恋にはまり、末の妹は不倫にはまり、初登場の時は常識人と思っていた長兄も実は不倫にはまり、そんな兄弟達の父は妻がいるのにお手伝いさんとの不倫にはまり。 家族として成立しそうもない状況なのに、家族であることを取り繕っているように思えて、正直不快な作品だと思っていまし...

兄妹は禁じられた恋にはまり、末の妹は不倫にはまり、初登場の時は常識人と思っていた長兄も実は不倫にはまり、そんな兄弟達の父は妻がいるのにお手伝いさんとの不倫にはまり。 家族として成立しそうもない状況なのに、家族であることを取り繕っているように思えて、正直不快な作品だと思っていました。 しかし、最終章を読むうちに評価は反転。一人一人の事情や想いが掴めた途端に、一気に作品に色彩を感じました。 最終章までの鬱展開が辛かったので星4つですが、その不快感を綺麗に洗い流してくれるラストに感動させて貰いました。

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2023/03/29

雪虫 子どもの神様 ひとりしずか 青葉闇 雲の澪 名の木散る の6章立て。 家族6人それぞれのお話になってます。 「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。」 両想いなのに決して報われぬ恋もある。 人から見たら、幸福ではないかもしれない、不毛な恋かもしれない。 その恋で自分...

雪虫 子どもの神様 ひとりしずか 青葉闇 雲の澪 名の木散る の6章立て。 家族6人それぞれのお話になってます。 「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。」 両想いなのに決して報われぬ恋もある。 人から見たら、幸福ではないかもしれない、不毛な恋かもしれない。 その恋で自分は、苦しんで苦しんで苦しんだ。 でもどうしても、そこから進めない、そこからどこにもいけない、その恋から逃げられない… だから、せめて好きでいることだけは、自分で認めてあげたい。許してあげたい。 決して報われなくても。その恋を否定したら、その恋を適当に扱ってしまったら自分ではなくなってしまうのだから。 自分の宿命は自分で背負い、河を舟で流れていこう。 夜空に輝く星々のように。 第129回直木賞受賞作。 とても良い作品です。

Posted byブクログ