犯罪不安社会 の商品レビュー
実際には、凶悪犯罪は昔より減っているってことは、統計のウソ、みたいな本でも繰り返し目にするから、頭では理解できているつもり。でもやっぱり思い込みがあって、本作のタイトルを見たときも、最初は犯罪の凶悪化に関するものかと思ってしまった。蓋を開けてみると、そんな事実は果たして無い訳で、...
実際には、凶悪犯罪は昔より減っているってことは、統計のウソ、みたいな本でも繰り返し目にするから、頭では理解できているつもり。でもやっぱり思い込みがあって、本作のタイトルを見たときも、最初は犯罪の凶悪化に関するものかと思ってしまった。蓋を開けてみると、そんな事実は果たして無い訳で、寧ろ上記の思い込みに対する警鐘的内容になっている。この問題に関しても、結局は最低限の生活保障が不十分であることに由来するのかと思うと、ホント暗澹たる気分になっちゃいますね。
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内容(「BOOK」データベースより) 猟奇的な少年事件や検挙率の低下などを根拠に、「安全神話の崩壊」が叫ばれ、厳罰化と監視強化が進む。しかし、統計をきちんと読み解くならば、あるいは軽微な犯罪者ばかりで老人や病人の多い刑務所を直視するならば、決して「治安悪化」とは言えないはずである...
内容(「BOOK」データベースより) 猟奇的な少年事件や検挙率の低下などを根拠に、「安全神話の崩壊」が叫ばれ、厳罰化と監視強化が進む。しかし、統計をきちんと読み解くならば、あるいは軽微な犯罪者ばかりで老人や病人の多い刑務所を直視するならば、決して「治安悪化」とは言えないはずである。効果のある犯罪対策を実施するには、正しい現状分析なくして、正しい解決はありえない。そのため本書はまず「『安全神話の崩壊』論の崩壊」を宣告。治安悪化言説こそが「神話」なのである。
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犯罪をどうしたら防止出来るかが書かれている 犯罪原因論 「ある人間がなぜ犯行に及んだのか、その原因を究明しようとするスタンスに立つ。そこでは犯罪者は普通の人間とは異なる特別な存在だとまなされて、犯罪にいたった原因が犯罪者の人格や境遇に求められる。そして、原因となった人格の異常性や境遇の劣悪性を取り戻除くことで、犯罪を防止しようというのが犯罪原因論の思想」 犯罪機会論 「犯罪の機会を与えないことで犯罪を未然に防止しようとする理論。特徴的なのは、この理論は犯罪者を特別視しないこと。 どんな人間でも機会があれば犯罪に及ぶし、また機会がなければ犯罪に及ぶし、また機会がなければ実行しないと考える。それゆえどんな人間にとっても犯罪に及びにくいような「環境」を整えようというのが犯罪機会論の派の発想である。 この理論を補強するのが割れ窓理論である 「建物の窓が割れているのを放置すれが、ほかの窓もまもなくすべて壊されるとの考えに由来している。
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今や常識と化した日本の治安の悪化、凶悪犯罪の増加という現象が実は何ら実体の無い神話であり、その神話が社会に様々なゆがみをもたらしているという刺激的な論考。 1章と4章では浜井浩一が各種の犯罪統計・受刑者統計により犯罪の入口と出口を仔細に分析し、「少年犯罪が激増」とか「凶悪犯罪の増加で刑務所がパンク状態」などといった常套句がことごとく根拠の無い出鱈目であることを浮き彫りにする。特に1章では特異な犯罪とその報道により引き起こされる社会の一時的な「モラルパニック」がパニックに便乗する行政・司法の制度変更により、逆に社会問題として固定化されるという構図を提示しており興味深い。 2章、3章では芹沢一也が識者らの言説の変遷を分析し、「加害者への過剰な思い入れ」がいつしか犯罪者を理解不能な存在として拒絶する態度へ変遷した過程をたどる。そして常に引き合いに出される「コミュニティの空洞化が治安悪化をもたらしている」という根拠不明のノスタルジーについても批判的に検証。不安に駆られた市民が積極的に繰り広げる防犯活動が監視と排除による「相互不信社会」を作り出している現状を告発する。 より犯罪件数が多くても相互の信頼に基づく社会であったかつての日本と、統計的には治安が改善しているにも関わらず「体感治安」が悪化し続け、相互の不信と分断が進行する現代の日本。バラバラにされた無力な個人の財布と労働力を搾り取る自由のみが称揚される新自由主義の広がりとそれは軌を一にしているというのは穿ちすぎだろうか。
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統計と関わりなく犯罪「不安」から対策が独り歩きしていく様子とその結果を描く。二人の記述内容が全く異なり、二つの側面を感じつつ木に竹を接ぐ感もある。ここで挙げられた課題を社会全体で課題と認識させていけるか、今後考えていく必要があるだろう。
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犯罪が増加、凶悪化しているという印象に過ぎない「治安悪化神話」という世迷言を排した犯罪対策を提言する非常に完成度の高い一冊。メディアが垂れ流す、犯罪が増加、凶悪化したという情報は全くの事実誤認であり、科学的根拠もない。科学的根拠に基づくと、殺人、強姦などの凶悪犯罪は、昭和期に比べ増えているどころか減っている。 偽の情報が作り出す印象は社会の転換期(凶悪犯罪の報道により、犯罪者を徹底的に排除しようという論調が高まったことなど)に力を持つそうですが、こうした印象に基づいた犯罪対策が効力を持ち得るか?答えは言うまでもなくNoである。 日本各地の町内の自治会の人々は、児童の登校・下校時間などに町内パトロールに出ることで犯罪者を徹底的に排除しようという閉鎖的なコミュニティを作り出していると同時に、人々が連帯感を覚えていると言う。町内パトロールに出ることが善意であったとしても、「自分は善いことをしているんだ(だから人に認められたい)」という意識が働いているのではないかと私は考えた。 そして、いつも犯罪の報道に触れて思うことは、報道に触れた人々は「物騒な世の中になったな」と呟くだけで思考停止し、自分が被害者になるという可能性はともかく、加害者になるという可能性を考える視点が欠如しているということである。印象に流されず、批判的な視点を持って様々な社会問題について考えていきたい。
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[ 内容 ] 猟奇的な少年事件や検挙率の低下などを根拠に、「安全神話の崩壊」が叫ばれ、厳罰化と監視強化が進む。 しかし、統計をきちんと読み解くならば、あるいは軽微な犯罪者ばかりで老人や病人の多い刑務所を直視するならば、決して「治安悪化」とは言えないはずである。 効果のある犯罪対策を実施するには、正しい現状分析なくして、正しい解決はありえない。 そのため本書はまず「『安全神話の崩壊』論の崩壊」を宣告。 治安悪化言説こそが「神話」なのである。 [ 目次 ] 1章 犯罪統計はどのように読むべきか(高まる「犯罪不安」 スローガンばかりが目立つ ほか) 2章 凶悪犯罪の語られ方(宮崎勤から始まった 狂乱の報道合戦 ほか) 3章 地域防犯活動の行き着く先(事後活動から予防活動へ 背景としての新自由主義 ほか) 4章 厳罰化がつくり出した刑務所の現実(不審者とはどんな人か 科学的根拠はあるか ほか) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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・本当に近年は犯罪が増加しているのか?統計を元にその実状を露にする内容。結構痛快。 ・指数治安と体感治安があって、悪化しているのは体感治安だということ。いや、これは面白い。つまり「最近怖い事件ばっかりだよねー。」「うんうん、治安悪くなってるよね。」ってやりとりが体感治安で、報道の...
・本当に近年は犯罪が増加しているのか?統計を元にその実状を露にする内容。結構痛快。 ・指数治安と体感治安があって、悪化しているのは体感治安だということ。いや、これは面白い。つまり「最近怖い事件ばっかりだよねー。」「うんうん、治安悪くなってるよね。」ってやりとりが体感治安で、報道のされ方なんかにかなり依存していると。 ・結構前に読んだから内容忘れちゃった。。とにかく前半は面白かった。「宮崎勤から始まった」の下りもかなり良く書けてると思う。読ませる。 ・俺なんて影響されやすいからさ、こういうの読むとすぐ「いやいや昔の方が治安悪かったんですよ、こういう数字があってですね、」とか話しちゃいそうでね。。。 (八王子図書館にて借る)
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著者らは治安悪化論を「神話」と斬って棄て、厳罰化の世論に反対し、相互監視社会に向かっている日本の現状を批判している。 第1章に統計データがあり、近年犯罪が増加しているわけではないと述べられている。 ただ、本書の最初に提示されているこのデータは、もっと吟味される必要があるの...
著者らは治安悪化論を「神話」と斬って棄て、厳罰化の世論に反対し、相互監視社会に向かっている日本の現状を批判している。 第1章に統計データがあり、近年犯罪が増加しているわけではないと述べられている。 ただ、本書の最初に提示されているこのデータは、もっと吟味される必要があるのではないだろうか。 もしかしたら、様々な問題点を孕んではいるものの、「相互監視社会」あるいは「不審者を排除する社会」が作られてきた結果として、犯罪が実際に抑止されて、提示されているようなデータにおさまったのかもしれない。しかし、本書ではまったくその可能性には触れられていない。 言論人による過去の犯罪についてのコメントに対する批判も、現在から過去を振り返って論評しているのだから、批判できる点はたくさん探すことができて当然である。その意味で、私には著者の言葉遊びにしか感じられなかった。 さらに、著者らの論に説得力を持たせるために書かれたのであろう刑務所の話が、第1章とは異なり、データを基にしたものというより、主に著者の経験談から語られている点も気になる。 著者らが主張したいことはわかる。しかし、説得力がないのだ。その説得力のなさは、解決策についての言及がほとんどないところに大きな原因があると考える。 社会的弱者に対するセーフティネットが機能しなくなったという問題に若干触れられてもいるが、では、それが地域コミュニティの取り組み(確かに問題点もあろうが)を批判することにつながるのか? 端的に言えば、一般人が、安全神話崩壊を感じて何とか身を守ろうとすることと、セーフティネットの崩壊がつながるのか? というところに疑問が残るのである。 セーフティネットの問題を出すならば、批判すべき対象は政府であり、地域コミュニティではないだろう。 多くの点で、本書の主張には問題があると感じる。
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統計上は犯罪は増えてもいないし凶悪化もしていないのに、不安ばかりが膨れ上がっている状態の分析と不十分ながらの対策を記す。 単純にメディアが悪いのだとは思いますけれども。
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