物語の役割 の商品レビュー
本書は、『本書を手に取ってくださった方が、改めて物語の魅力を確認し、物語の役割に目覚め、「ああ、本を読むことは何と素晴らしいことであろう」と思ってくれたら、との願い』で書かれた本である。 それでは、物語の役割とは何なのか? 物語を読む時人間の心の揺らぎは目に目えず、効果を数字で...
本書は、『本書を手に取ってくださった方が、改めて物語の魅力を確認し、物語の役割に目覚め、「ああ、本を読むことは何と素晴らしいことであろう」と思ってくれたら、との願い』で書かれた本である。 それでは、物語の役割とは何なのか? 物語を読む時人間の心の揺らぎは目に目えず、効果を数字で測ることも不可能だからこそかけがえがなく、自分が自分であるための大切な証明になること。それが物語の役割である。
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特に物語が生まれる現場ではという章が私に刺さった。即実行できるテクとかを紹介してる訳では無いんだけど、本能で大事だよなと掴んでいた感覚を言語化してもらった形 小川さんは私とは違う物語の受け取り方をされていたけれど、小説家として大事な姿勢を見せていただいた気がした
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『物語の役割』を読みました 小川洋子が2007に講演会の内容を書き起こしした書籍ですが作者の創作哲学が知れて良い書籍でした ボク自身は小川洋子をあまり多読していないのですが『猫を抱いて像と泳ぐ』が人生で最大級の衝撃を受けた書籍であり、影響を受けているような気がします 小川は基...
『物語の役割』を読みました 小川洋子が2007に講演会の内容を書き起こしした書籍ですが作者の創作哲学が知れて良い書籍でした ボク自身は小川洋子をあまり多読していないのですが『猫を抱いて像と泳ぐ』が人生で最大級の衝撃を受けた書籍であり、影響を受けているような気がします 小川は基本的に弱者と呼ばれる人を描く作家でしょうが、その”弱者”という言葉が内包している弱い人・困っている人という意味合いは千差万別です 同じような境遇にあったとしても、そこで起きている現象は何もかもが異なるけれど、言葉にしてしまうと”弱者”という一言でまとめてしまう その1つ1つに向き合い、幾千幾万の言葉を尽くしてその人たちに寄り添う、という小川洋子のスタイルが作品に表れているなぁ、と感じました 久々に小川作品を読み返そうかなぁ
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小説を書くとき、テーマや言葉が浮かぶのではなく、まず映像がいつくか浮かび、その異なる世界の架け橋をかけるようにイメージを膨らませる。あとはひたすら観察者となって、言葉に起こしていく。 小川洋子さんの小説は、なんとなく、登場人物が物語の中でちゃんと生きてる感じがあって好きだなと思っ...
小説を書くとき、テーマや言葉が浮かぶのではなく、まず映像がいつくか浮かび、その異なる世界の架け橋をかけるようにイメージを膨らませる。あとはひたすら観察者となって、言葉に起こしていく。 小川洋子さんの小説は、なんとなく、登場人物が物語の中でちゃんと生きてる感じがあって好きだなと思っていたが、その理由がわかった気がした。 小川さんが、「トムは真夜中の庭で」という児童文学の中で知った「自分が自分でいられる居場所」について、わたしも、小川さんの小説の中にその実感を求めてる気がする。
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小川洋子さんの講演集。小川さんの思いがズンと伝わってきた。 第一部の『物語の役割』では、おもに『博士の愛した数式』がどのようにして生まれたのかが、書かれていた。数学者の謙虚さに興味を持ち、とことん学び、気づきを経てからの執筆。はじめからストーリーがはっきり見えてはいないのに、あ...
小川洋子さんの講演集。小川さんの思いがズンと伝わってきた。 第一部の『物語の役割』では、おもに『博士の愛した数式』がどのようにして生まれたのかが、書かれていた。数学者の謙虚さに興味を持ち、とことん学び、気づきを経てからの執筆。はじめからストーリーがはっきり見えてはいないのに、ある場面から物語が広がっていくそうだ。そして、とても謙虚な気持ちで執筆されているのが伝わった。この中で、小川さんが「人間は自分の心の形に合うように、現実を変形させて、どうにか受け入れようとする。もうそこでひとつの物語を作っているわけです。」と書かれていた言葉が印象的だった。 第二部、物語が生まれる現場 第三部、物語と私
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作家・小川洋子さんの物語に対する向き合い方がよくわかる本。 小説というのは現実や作者の人生、考え方と地続きで、それらと無関係に生み出されるものではないと感じた。 以下の内容が特に印象に残った。 ・誰もが現実に起きたことを、自分の心の形式に合うように物語の形式で記憶して蓄積させ...
作家・小川洋子さんの物語に対する向き合い方がよくわかる本。 小説というのは現実や作者の人生、考え方と地続きで、それらと無関係に生み出されるものではないと感じた。 以下の内容が特に印象に残った。 ・誰もが現実に起きたことを、自分の心の形式に合うように物語の形式で記憶して蓄積させている。 ・誰でも生きている限りは物語を必要とし、物語に助けられながら現実との折り合いをつけている。 ・作家は、誰もが作り出している物語を意識的に言葉で表現しているだけである。 この本を読んだ後では、小説を読んだときの感じ方やありがたみが増すと思う。
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物語の役割 著:小川 洋子 紙版 ちくまプリマー新書 053 超書、これを読んで、また小説を読もうかと思いました。 涙がでてきて、あゝ、まだこんな感情が残っていたんだと感じました まえがきにあるように、「ああ、本を読むことは何と素晴らしいことであろうか」との思いです 文中で紹介...
物語の役割 著:小川 洋子 紙版 ちくまプリマー新書 053 超書、これを読んで、また小説を読もうかと思いました。 涙がでてきて、あゝ、まだこんな感情が残っていたんだと感じました まえがきにあるように、「ああ、本を読むことは何と素晴らしいことであろうか」との思いです 文中で紹介されている、『トムは真夜中の庭で』という話よかったです。 気になったのは、以下です ■博士の愛した数式 ・数学の表す真理は、何事にも影響されない。物理的な影響もうけないし、永遠に真実であり続ける。 ・最初からストーリーがはっきりと見えていたわけではなく、ある一場面がまず浮かび上がってきて、そこからいろいろなものが見えてくるというような書き方でした ■ホロコースト文学 ・たとえば、非常に受け入れがたい困難な現実にぶつかったとき、人間はほとんど無意識のうちに自分の心の形に合うようにその現実をいろいろ変形させ、どうにかしてその現実を受け入れようとする。もうそこで一つの物語をつくっているわけです。 ・作家は特別な才能があるのではなく、誰もが日々日常生活の中で作りだしている物語を、意識的に言葉で表現しているだけのことだ。自分の役割はそういうことなんじゃないかと思うようになりました。 ・小説は、作家の頭のなかの空想とか、妄想から生まれるのではなく、現実のなかに隠れているのだ。 ■作家は小説の後ろを追いかけている ・目に見えない偉大な何かの導きがなければ、小説も生まれてこないのです。 ・どこへいったら小説の種に出合えるかは何作書いてもわかりません。それに論理的な起こる現象ではなく、いつもふいに突然前触れもなく、しかも非常に静かにやってくる瞬間なので、じっと待っているしかないのです ・最も言いたいことは、何をテーマにして小説を書こうということに、書き手自身である私は全くこだわっていないということです。テーマからスタートしてしまうと、たぶんうまくいかないのではないかと思います。 ・ほんとうに悲しいときは、言葉にできないくらい悲しいは描ききれない。ですから、小説の中で、「悲しい」と書いてしまうと、ほんとうの悲しみは描き切れない。 ・小説は常に過去を表現するものだという気がします。それは、言葉が常に後からくるものだ、ということと関わりがあるのかもしれない ・何かが起こる。それを表現する。紙の上に再現する。これが言葉の役割です。 ・小説を書いているときに、ときどき自分は人類、人間たちのいちばん後方を歩いているなという感触を持つことがあります。人間が山登りをしているとすると、そのリーダーとなって先頭に立っている人がいて、作家という役割の人間は最後尾を歩いている ■あらゆるものの観察者になる ・自分の経験した過去を書く必要はないわけです。人が落としていった記憶を想像していけばいい。過去を見つめるという態度は、作家が観察者になることです。 ・あらゆるものが見えてくる。考えるのではなく、あくまで見えてくるのです。 ・私はただ誰かが落としていった記憶のかけらを拾い集めて、その人が言葉にできなかったことを、たまたま自分に言葉という手段があったから小説にしただけです。その物語は語られるのを待って、それを私が見つけただけなのです。 目次 まえがき 第1部 物語の役割 藤原正彦先生との出会い 『博士の愛した数式』が生まれるまで 誰もが物語を作り出している ホロコースト文学の中の物語 人間にしかできない心の働き 物語を獲得するための苦悩 人間が作り出す物語の尊さ 「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」 「数学的媚薬」 「ファミリー・クリスマス」 作家は小説の後ろを追いかけている 第2部 物語が生まれる現場 私が学生だったころ 言葉は常に遅れてやってくる テーマは最初から存在していない 死んだ人と会話するような気持ち ストーリーは作家が考えるものではない 小説は過去を表現するもの あらゆるものの観察者になる 第3部 物語と私 最初の読書の感触 物語が自分を救ってくれた 『ファーブル昆虫記』―世界を形作る大きな流れを知る 『トムは真夜中の庭で』ー人間が特別であることの意味 子供が自我に目覚める時 初めて実感した死 『アンネの日記』―孤独が人を成長させる 曖昧さの中にある真実 本で共通の思いを分かち合う この本に登場した本 ISBN:9784480687531 出版社:筑摩書房 判型:新書 ページ数:128ページ 定価:680円(本体) 発売日:2007年02月10日
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博士の愛した数式の著者の方の講演をもとにした、創作観についてのエッセイ。“良い小説の書き方”的な指南書ではなくあくまで著者は物語(を書くということ)をどう捉えているか、という観点からの著述で、興味深く、同意できる部分もあったが自分とは全体的に考え方があまり合わないと感じ、新しい発...
博士の愛した数式の著者の方の講演をもとにした、創作観についてのエッセイ。“良い小説の書き方”的な指南書ではなくあくまで著者は物語(を書くということ)をどう捉えているか、という観点からの著述で、興味深く、同意できる部分もあったが自分とは全体的に考え方があまり合わないと感じ、新しい発見を求めて読んだので少し残念。合う人には良書だろうと思う。
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小説家、小川洋子さんの講演をまとめたもの。 物語の役割、作り方、幼少期の読書との出会いなどについて語られている。 人間は辛い現実に行き当たった時、その出来事に意味を見つけようとする。 例えば、悲しみの中には希望が、苦しみの中には成長の種がある。そう信じることで自分の心を癒す。...
小説家、小川洋子さんの講演をまとめたもの。 物語の役割、作り方、幼少期の読書との出会いなどについて語られている。 人間は辛い現実に行き当たった時、その出来事に意味を見つけようとする。 例えば、悲しみの中には希望が、苦しみの中には成長の種がある。そう信じることで自分の心を癒す。それは、現実には無い物語を、自分で生み出しているということだ。多かれ少なかれ、誰しもがその力を使って生きている。 実は小説家は、それを掘り起こして、形にしている仕事に過ぎないのではないか…小川さんは謙虚に、そう語られている。 人間の、ありふれた心の動きに、物語は潜んでいる。 なんて面白くて温かい考え方なんだろうと思った。 暗い洞窟で、根気よく掘り続ける発掘家のイメージが沸く。私たちが日々取りこぼしている大事なものを、小説家は言葉に変えて、遺しておいてくれる。 語り手が時間をかけて見つけ出した宝物を、私たちは読むことで、享受することができる。 物語の代え難い魅力と、読書の素晴らしさを改めて感じた。
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現代倫理の講義で紹介され、興味が湧いたので読みました。 物語のあり方を、とても丁寧な言葉で表してくれて、もっとたくさんの物語と触れ合おう、と思いました。
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