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神を見た犬 の商品レビュー

4.2

59件のお客様レビュー

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2026/02/17

 信仰心の希薄な住民たちの村に現れた奇妙な犬をめぐる表題作をはじめ、幻想、寓意、不条理、ブラックユーモア、痛烈なアイロニー、そしてひと匙のペーソスの詰まった22編。  ブッツァーティ作品では「七階」と「待っていたのは」(未収録)しか読んだことがなかったため、作風も概ねそういうイ...

 信仰心の希薄な住民たちの村に現れた奇妙な犬をめぐる表題作をはじめ、幻想、寓意、不条理、ブラックユーモア、痛烈なアイロニー、そしてひと匙のペーソスの詰まった22編。  ブッツァーティ作品では「七階」と「待っていたのは」(未収録)しか読んだことがなかったため、作風も概ねそういうイメージを抱いていたが左に非ず。確かに「コロンブレ」「七階」「呪われた背広」「病院というところ」「戦艦《死》」などの幻想的で不条理な中に皮肉や風刺、時に黒い笑いすら利いており、冷戦下という当時の国際情勢を皮肉った「アインシュタインとの約束」「一九八〇年の教訓」「秘密兵器」は星新一などのSSを思い起こさせ、「グランドホテルの廊下」や「この世の終わり」のドタバタ感はふと筒井康隆作品を思い出した。  神や聖人を扱いながらもどこか人間臭かったり汎神論的であったりでどこか通常のキリスト教的感覚とは異なる表題作や「天地創造」「聖人たち」「クリスマスの物語」、幻想的で哀感漂う美しいラストが印象的な「護送大隊襲撃」、永遠の平穏よりリスクを承知で夢や希望を求めようとする「天国からの脱落」などなど、「骨の髄からペシミストである」と自らを評したブッツァーティではあるが、作品は多様な顔を持っていたことがよくわかる。  冒頭に「天地創造」が置かれ、掉尾を飾るのが「この世の終わり」という配列の妙も楽しい。

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2026/01/24

呪いか、使命か。人生の先に待ち受ける運命と、運命に向き合わざるを得なくなった人々の姿を描く22篇の短編。人間に対する皮肉な眼差しと、それらを包み込む神の眼差し、どちらも感じられるところが魅力的。表題作と、「クリスマスの物語」が個人的に好き。

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2025/07/16

幻想と寓話の短編集。ブッツァーティの長年の短編から主要な作品を集め色々なスタイルが感じ取れるようにしたという。 不安と恐怖を幻想を元に語る。かなり映像的な文章。イタリア文学界では著名。『タタール人の砂漠』が代表作で既読。『七階』は劇として上演され大きな評判を呼び映画化もされたとい...

幻想と寓話の短編集。ブッツァーティの長年の短編から主要な作品を集め色々なスタイルが感じ取れるようにしたという。 不安と恐怖を幻想を元に語る。かなり映像的な文章。イタリア文学界では著名。『タタール人の砂漠』が代表作で既読。『七階』は劇として上演され大きな評判を呼び映画化もされたという。画家として漫画やイラストも書たらしい。児童文学も書いていて翻訳されている。 規律の厳しい軍隊の憧れ、大自然の恐怖と何もかも包み込むその厳しさ、不条理と不安と恐怖などが構成要素にある。神・聖者が語られることも多くキリスト教文化圏の影響をかなり感じる。 イタリア幻想文学はなかなかよい。役者はロダーリの翻訳者で訳文はかなり読みやすい。 グランドホテルの廊下・神を見た犬・護送大隊襲撃・戦艦《死》。他の短編も良い。

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2025/05/12

イタリア20世紀の短編集。幻想小説。  天地創造からはじまり、ちょっとした不安を徐々に増幅され、ついに飲み込まれてしまう様を病院、科学者、村、神といった要素でもって、最後まで緊張感を持って語りかけてくる。  この短編には現実ではない要素がたくさんある。神様、悪魔、病気の程度で階を...

イタリア20世紀の短編集。幻想小説。  天地創造からはじまり、ちょっとした不安を徐々に増幅され、ついに飲み込まれてしまう様を病院、科学者、村、神といった要素でもって、最後まで緊張感を持って語りかけてくる。  この短編には現実ではない要素がたくさんある。神様、悪魔、病気の程度で階をわける病院、バカでかい戦艦などなど。でも、なぜだか、不思議なくらいに頭の中にはっきりと情景が浮かぶ。 アインシュタインと悪魔が夜の街灯に照らされながら、2人きりで話す様子(アインシュタインの約束)や、 幻の戦艦を現実の戦艦が倒す様子(戦艦《死》)、 見たことはないのに、なぜか読後もその光景が脳裏に焼きついている。

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2024/12/23

おもしろい 「竜退治」が特にいい この話の恐ろしさは竜を殺した人間に与えられる罰(死)ではなく むしろ罰を受けずに済んでしまうこと 竜の叫びに対して沈黙で返す世界に向けられていると思った 未知の存在を徹底的に狩り尽くしてしまう人間の習性はこの地上の支配者としてふさわしくそしてとて...

おもしろい 「竜退治」が特にいい この話の恐ろしさは竜を殺した人間に与えられる罰(死)ではなく むしろ罰を受けずに済んでしまうこと 竜の叫びに対して沈黙で返す世界に向けられていると思った 未知の存在を徹底的に狩り尽くしてしまう人間の習性はこの地上の支配者としてふさわしくそしてとても醜い 列車とか行進とか、何かを目指して走り続けている話が多い しかしそれらはすべて進路を間違えていて、今どこにいるのかさえわからない このままでは目的地に辿り着かない、でも引き返すことも止まることもできない そういう不安が強い人だったんだなブッツァーティは 「聖者たち」もよかった。

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2024/06/29

表題作が100頁足らずの中篇。三篇が30〜50頁の短篇。残り十八篇が10頁位の掌篇。 アイロニーに満ちたファンタジー、といった感じか。やはりこの手の短篇集は表題作が代表作で面白い。オチはそれほど意外性はないが、それだけに、その前の村びとたちのドタバタぶりのコントラストが大きい。...

表題作が100頁足らずの中篇。三篇が30〜50頁の短篇。残り十八篇が10頁位の掌篇。 アイロニーに満ちたファンタジー、といった感じか。やはりこの手の短篇集は表題作が代表作で面白い。オチはそれほど意外性はないが、それだけに、その前の村びとたちのドタバタぶりのコントラストが大きい。 「アインシュタインとの約束」は、悪魔がアインシュタインに原爆の開発(の元となる研究)を急がせる話。 アインシュタイン本人が読んだら何と言っただろうか。

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2024/04/05

イタリアが生んだ奇才の作家ブッツァーティが書く不可思議なお話を集めた短編集。 テーマは多岐に渡るが、全てにキリスト教的世界観が通底にある感じがして日本のホラーや怪異とは全く違うのが面白い。 特に聖人が出てくる話が多く、さすがカトリックの中心であるお国柄だと思った。 どの話も面白...

イタリアが生んだ奇才の作家ブッツァーティが書く不可思議なお話を集めた短編集。 テーマは多岐に渡るが、全てにキリスト教的世界観が通底にある感じがして日本のホラーや怪異とは全く違うのが面白い。 特に聖人が出てくる話が多く、さすがカトリックの中心であるお国柄だと思った。 どの話も面白いが  ・アインシュタインとの約束  ・七階  ・神を見た犬  ・呪われた背広  ・秘密兵器  ・天国からの転落  ・驕らぬ心 はとても面白く、教訓めいたものがあった。

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2024/03/08

数年前にTSUTAYAで見かけて読んでみたいと思いながら今回やっと読めた本。 22の短編集なのだが、これは面白かったな。 この時代のヨーロッパの作家の常なのか、神にまつわる話が多いのだけれど、それでも背景に伺える当時の色々な風景が、読んでて味わえるかのような感覚で、ま、ミステリー...

数年前にTSUTAYAで見かけて読んでみたいと思いながら今回やっと読めた本。 22の短編集なのだが、これは面白かったな。 この時代のヨーロッパの作家の常なのか、神にまつわる話が多いのだけれど、それでも背景に伺える当時の色々な風景が、読んでて味わえるかのような感覚で、ま、ミステリーといえばそう言えるものもあり、特に七階が面白かったな。 古典文庫はこれしか出ていないのかもしれないが、他で出ているものも読んだみたい。

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2024/01/22

新聞記事のような癖のない文章でつづられた幻想的な短編小説集。傑作選ということで、どれもこれも印象深い作品ばかり。スイスイ読めて鮮明なイメージが残る不思議な作風だ。表題作の「神を見た犬」では、椅子の下に置いたパンの描写だけで色々思わせて涙が出た。これ含めて、昔ながらのキリスト教徒の...

新聞記事のような癖のない文章でつづられた幻想的な短編小説集。傑作選ということで、どれもこれも印象深い作品ばかり。スイスイ読めて鮮明なイメージが残る不思議な作風だ。表題作の「神を見た犬」では、椅子の下に置いたパンの描写だけで色々思わせて涙が出た。これ含めて、昔ながらのキリスト教徒の精神世界を感じさせる作品が多くて興味深かった。

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2024/01/21

『タタール人の砂漠』で有名なイタリアの作家であり画家でもあるブッツァーティの短編集。『タタール人の砂漠』と同様、幻想的と評される作風で不条理さや不安感、安定のなさ、不思議、奇跡などを描く。それは現実的ではないがゆえに逆説的にリアリティをともなっている。本人はカフカ的と呼ばれること...

『タタール人の砂漠』で有名なイタリアの作家であり画家でもあるブッツァーティの短編集。『タタール人の砂漠』と同様、幻想的と評される作風で不条理さや不安感、安定のなさ、不思議、奇跡などを描く。それは現実的ではないがゆえに逆説的にリアリティをともなっている。本人はカフカ的と呼ばれることを嫌がっていたようだけれど、作風的にはカフカのようで、この世の何ともならなさを描くことに卓越している。 映画監督フェリーニとの映画制作も構想されていたようだけれど、実現はしなかったとのこと。フェリーニの作風も夢や幻想に仮託しながら無意識や奇跡などを描くものであり、親和性はあると思われるだけに実現しなかったのが残念。同時代人のモラヴィアが実存主義文学的作風だったのに対抗することを意識していたようで、その対立も興味深い。 光文社古典新訳文庫がブッツァーティを改めて世に出してくれたことに感謝。

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