そして殺人者は野に放たれる の商品レビュー
日垣隆の『そして殺人者は野に放たれる』、読了。数年前に映画『39-刑法第三十九条』を見た際に、心神喪失者の犯罪を罰しないことを規定した刑法第39条に反駁するには、この法律が心神喪失者を守っているのではなく、むしろ「異常」という概念を持って逆に差別しているのではないかという論点を持...
日垣隆の『そして殺人者は野に放たれる』、読了。数年前に映画『39-刑法第三十九条』を見た際に、心神喪失者の犯罪を罰しないことを規定した刑法第39条に反駁するには、この法律が心神喪失者を守っているのではなく、むしろ「異常」という概念を持って逆に差別しているのではないかという論点を持ってしかあり得ないのかという思い(と個人的には諦念)を持ったのだが、この本を持ってもやはりそういう印象。人権派(というものが実在すると仮定して)に対してこの法律の廃止を求めて戦っていくには否応なしに相手側のフィールドに乗らないといけないのかと思うとなんか違う気がするんだよな。被害者感情とか、別のフィールドで勝負しないとなかなか苦しいのではないかという気がする。うまく言えないのがもどかしいが、そんな印象。いずれにせよ、この本は一読の甲斐はあります。
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「心神耗弱による減刑」というのは、とりわけ凶悪犯罪の文脈において、量刑決定をどう行えばいいのかを考えさせられる問題である。犯罪者の更生、被害者感情への配慮、これらのバランスを取ることは非常に難しい。この本はどちらかといえば後者に重きが置かれており、その理不尽さを暴き出そうとして...
「心神耗弱による減刑」というのは、とりわけ凶悪犯罪の文脈において、量刑決定をどう行えばいいのかを考えさせられる問題である。犯罪者の更生、被害者感情への配慮、これらのバランスを取ることは非常に難しい。この本はどちらかといえば後者に重きが置かれており、その理不尽さを暴き出そうとしている。 厳罰主義者でも、そうでない人も、この本に書かれていることはしっかりと受け止めるべきだなと思う。死刑存続の可否という文脈でも同様に、死刑推進論者、死刑廃止論者ともに、考えていかなければならない問題であろう。
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-凶悪犯罪は「なかったこと」にされ被害者家族を苦しめる「責任能力」とはいったい何か。その問いを発してから答えらしきものに辿りつくまで、私は、およそ10年の歳月を費やすことになる- 我が国の法廷がいかに被害者不在であるか。刑法三九条二項の削除を主張する著者が、心神喪失により無罪や...
-凶悪犯罪は「なかったこと」にされ被害者家族を苦しめる「責任能力」とはいったい何か。その問いを発してから答えらしきものに辿りつくまで、私は、およそ10年の歳月を費やすことになる- 我が国の法廷がいかに被害者不在であるか。刑法三九条二項の削除を主張する著者が、心神喪失により無罪や減刑となった数々の実事件を、公判はもとより報道までも深く取材し、現行法の不条理を問う。 第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。 刑法三九条といえば、ミステリー小説でも題材としているのをしばしば見かける。 以前から精神病と診断されているのならともかく、普段日常生活を問題なく送ってきた人間が犯行時のみ錯乱していたという理由で罪に問われないというのは納得できる話ではない。私も常々平常心で人が殺せるほうが恐いと思っている。さらには薬物や泥酔などでも適用されるなどというのは理解不能である。 しかも精神鑑定のなんと主観的なことか。自分の行為に責任を負う能力無と判断された人間が、その後何のホローもされない。このような現状は、かえって偏見を生むのではないだろうか。 本書が書かれてから年数がたっているし、世論も異を唱える人が増えてきているということもあり、今はここまで乱発はされていないように思える。もっともそれだけ理解不能な凶悪事件が増えているという憂慮すべき側面もあるのだが。
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ノンフィクション、というか異常犯罪とされて減刑ないし無罪にされてきた犯罪のまとめ。 作者の伝えたい事は最初の30ページくらいでほぼ全て伝わる、あとは補強。 裁判という長期かかるものを題材にしているからか引用物がやや古い感は否めない。 消して娯楽本ではないが、一つの日本の犯罪史の側...
ノンフィクション、というか異常犯罪とされて減刑ないし無罪にされてきた犯罪のまとめ。 作者の伝えたい事は最初の30ページくらいでほぼ全て伝わる、あとは補強。 裁判という長期かかるものを題材にしているからか引用物がやや古い感は否めない。 消して娯楽本ではないが、一つの日本の犯罪史の側面として読んでおくのも良いかもしれない。
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刑法第39条の「心神喪失」「心神耗弱」の乱発により、常人には理解できない犯罪が不起訴/無罪/減軽となり、犯罪者はすぐさま娑婆に帰ってくる。2人殺せば死刑だが、5人殺すのは「異常」だから「心神喪失」で「無罪」になる。 また、アルコールや覚醒剤の摂取後の犯罪も、なぜか「心神喪失(耗弱...
刑法第39条の「心神喪失」「心神耗弱」の乱発により、常人には理解できない犯罪が不起訴/無罪/減軽となり、犯罪者はすぐさま娑婆に帰ってくる。2人殺せば死刑だが、5人殺すのは「異常」だから「心神喪失」で「無罪」になる。 また、アルコールや覚醒剤の摂取後の犯罪も、なぜか「心神喪失(耗弱)」が適用され、減軽される。常識的感覚では刑が重くなるはずなのに、日本では軽くなってしまう! この「異常」な「法治国家」日本の問題点を鋭く抉る日垣隆の秀逸なリポート。第3回新潮ドキュメント賞受賞作品。
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なんとなく記憶にある事件がたくさん出てくる。 そのときはすごくセンセーショナルにとりあげられても 尻すぼみになる事件が多いのには、いろんな理由があるんだな。
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常におかしいと思っていながら、一般人にはどうにもならない問題である、「重罪を犯した人間が、『心神喪失』あるいは『心神耗弱』を認められ、刑が減軽されたり、無罪になったりすること」について、多くの事例を挙げながら具体的に踏み込んで検証している、日本のタブーに挑戦した快著。 本書を...
常におかしいと思っていながら、一般人にはどうにもならない問題である、「重罪を犯した人間が、『心神喪失』あるいは『心神耗弱』を認められ、刑が減軽されたり、無罪になったりすること」について、多くの事例を挙げながら具体的に踏み込んで検証している、日本のタブーに挑戦した快著。 本書を読んで初めて知ったのだが、検察は起訴前に被疑者の精神鑑定(本来は違法であるそうだ)を行い、心神喪失が認められそうだと判断した場合、被疑者を不起訴とするそうで、その数は年間数百例に上るという。しかも、中にはきわめて残忍で凶悪な殺人犯も多く含まれているというのである。このような事態が起こる理由は、なんと起訴した事件について無罪判決が出たとき、担当検事の出世に響くから、ということだというからあきれる。そのようなくだらない理由で犯罪被害者の人権を踏みにじり、時には命までも奪った者を何のお咎めもなしで世の中に返しているのである。この点で司法は社会秩序を守るためのその機能をまったく果たしておらず、また、加害者の「裁判を受ける権利」すら認めていないことを著者は激しく指弾する。 さて、心神喪失、心神耗弱と認められる状態についてであるが、知的障害、精神障害等が当てはまるものであるということは一般に認知されているところである。ところが驚くべきことに、日本においては心神喪失状態を、加害者自らが招くような積極的な行為、覚せい剤の使用や飲酒による酩酊状態についても認めているというのである。さらに、例えば5人を殺した殺人者について、裁判所が「5人も殺す合理的理由が考えられない」と判断すると「理解不能な犯罪を犯したのであるから、犯行当時は心神喪失状態であった可能性が否定できない」などという、その言こそ理解不能な判断をされるという。まったく恐ろしい国に生まれたものだと、背筋が寒くなる思いがする。 著者はこうした問題を、犯罪加害者の処遇施設が刑務所しかないところに帰結させて考えている。つまり、責任能力がないと判断され、しかし重大な犯罪を犯した者を例えば医療福祉的なアプローチから矯正、処遇できる施設がないということである。そのために、「殺人者は野に放たれ」てしまうのであると。 殺人とは被害者の人権を最大限に踏みにじる行為であるから、人を殺した人間には、基本的に人権はないと私は考えている。昨今増えている言われる老老介護や認認介護などといったような特別な事情がない限り、人を殺す人間は障害があろうとなかろうと、社会において危険分子にほかならない。重罰主義が一部の人権派知識人によって非難される風潮もあるが、彼ら知識人が、例えば通り魔殺人の被害者家族となったら同じことが言えるだろうか。 著者は精神障害者を兄に持ち、弟は少年事件によって不条理に殺害されている。まさに、この点においてただのインテリではなく、精神障害者家族として、また犯罪被害者家族としての当事者そのものなのである。当事者の言葉は重い。本書中でも紹介されているように、世界的にみても異質な日本の刑法は、即刻改められるべきであろう。もちろん、多角的な議論は必要となる。別の角度から障害者の犯罪について考えられている『累犯障害者―獄の中の不条理』(山本譲司著)なども合わせて読まれたい。 私も一国民として、また人の親として、安心・安全に暮らせる国を願う一人である。
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重い刑法ってどうなってるの?難しそう、よくわからない…という方に!! 提起された問題を通じて、殺人や強姦などの刑罰の仕組みについて、知ることができます。 …悲しいことに、それらがどれほどアバウトなものであるかということを!
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読むに耐えなくなって後半は読み飛ばした。 内容がつまらないわけではなく。 犯罪の異常性が増せば増すほど、「常識では理解できないので、被告は心神耗弱の状態にあった」と判断され、却って罪が軽くなる傾向にあり、それが一部の人間にとっては、残虐性を増すインセンティブになることや、その被...
読むに耐えなくなって後半は読み飛ばした。 内容がつまらないわけではなく。 犯罪の異常性が増せば増すほど、「常識では理解できないので、被告は心神耗弱の状態にあった」と判断され、却って罪が軽くなる傾向にあり、それが一部の人間にとっては、残虐性を増すインセンティブになることや、その被害者や遺族のどうしようもない怒りと諦めが気の毒で、途中で読むのが苦しくなった。ひどい。
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ズシリ、と重たい。 それは著者の思いだけでなく、取材を重ねた中で得た事実にある当事者の現実や歴史があるからだ。 感情的にならずに淡々と書いて欲しいとは思わない。 冷静に整理しても僕には理解できないかもしれないから。 そんな冷静さは出来損ないの法律で十分だ。 被害者の悲痛な思い...
ズシリ、と重たい。 それは著者の思いだけでなく、取材を重ねた中で得た事実にある当事者の現実や歴史があるからだ。 感情的にならずに淡々と書いて欲しいとは思わない。 冷静に整理しても僕には理解できないかもしれないから。 そんな冷静さは出来損ないの法律で十分だ。 被害者の悲痛な思いよりも、加害者の息づかいが静かに伝わってくる。それは何よりも知っておくべき現実なのだ。
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