希望格差社会 の商品レビュー
もともと社会学に興味がある自分はよく社会評論を読みます。その中で、この本はとてもよく現状を分析していて実感が伴って理解できます。 私は2000年に社会人になりましたが、その前の年の大変厳しかった就活、その前の年の「山一、拓銀ショック」はよく覚えています。この本はそんな時代を大...
もともと社会学に興味がある自分はよく社会評論を読みます。その中で、この本はとてもよく現状を分析していて実感が伴って理解できます。 私は2000年に社会人になりましたが、その前の年の大変厳しかった就活、その前の年の「山一、拓銀ショック」はよく覚えています。この本はそんな時代を大学生として過ごし、就職したいわゆる「ロスジェネ世代」の自分には納得のいく現状分析の本です。 作者の言わんとするところは単なる経済的な格差ではなく、「希望=先が見えること」に格差ができてしまい、「努力しても報われない」閉塞感を豊富なデータや学問的分析にて記してあります。 その処方箋の記載はわずかしか記されていませんが、この現状分析はとても鋭いなぁと感じました。現状把握には最適な1冊なのではないでしょうか。
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きっと出版された当時(2004年)は衝撃的だったのだろうなぁと思える本。今や日本社会は就職や家庭、教育などあらゆることが不安定で、しかもそのリスクは個人が自己責任の名の下に引き受けなあかんのが当然の風潮なので・・・。読んでいて希望はなくなる内容だけれど、でもそれを理解しておくこと...
きっと出版された当時(2004年)は衝撃的だったのだろうなぁと思える本。今や日本社会は就職や家庭、教育などあらゆることが不安定で、しかもそのリスクは個人が自己責任の名の下に引き受けなあかんのが当然の風潮なので・・・。読んでいて希望はなくなる内容だけれど、でもそれを理解しておくことがとても大切だと思える。 以外本書の中で一番心に刺さった箇所を。 「いつかは受かるといって公務員試験を受け続けても、三十歳を過ぎれば年齢制限に引っかかる。どうせ正社員として雇ってくれないからと就職をあきらめ、単純作業のアルバイトをしていた高卒者は、仕事経験や能力が身に付かないいまま、歳だけとり続ける。よい結婚相手に巡り会えないからと結婚を先延ばしにしていた女性は、四十歳を過ぎれば見合いの口もかからなくなる。当の若者は、考えると暗くなるから考えない。若者自身が、不良債権と化すのだ。」 あと本書の中で非正規雇用が多く、就職の口がない職業の一つとして図書館司書が挙げられて「需要より供給が多い」みたいなことが書いてあるけれど、決して供給が多いことだけが就職の口が少なく理由ではなく、日本は本来司書を置くべきところに人件費の削減を理由に司書を置いてないからだということも付け加えておきたい。
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少し古い本になるので、内容が現代にそぐわないのではないかという不安があったのですが、そんなことはありませんでした。この本が世に出されてから、今に至るまでの日本の状況はたいして変化していないようです。希望格差という言葉を初めて耳にしましたが、自分の日常に引きつけて考えやすく、理解の...
少し古い本になるので、内容が現代にそぐわないのではないかという不安があったのですが、そんなことはありませんでした。この本が世に出されてから、今に至るまでの日本の状況はたいして変化していないようです。希望格差という言葉を初めて耳にしましたが、自分の日常に引きつけて考えやすく、理解のしやすい内容でした。 読むと不安感を煽られ、少し暗い気持ちになります。最終章において、これからの私たちの方針のようなものについて言及されているのですが、個人的に行うことのできる策が少なく、なかなかこの本自体が「希望」になりきれていないように感じてしまいました。 いまの日本を取り巻く環境を見つめ直す、よい機会になりました。現在、義務教育のパイプラインを流されている方に読んで欲しい一冊です。
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10年近く前に書かれた本にもかかわらず、内容は全く古びておらず、むしろ現在の状況を予見していたかのように感じた。 若者を取り巻く状況はむしろ当時より悪化しているし、日本のみならず世界的な経済の落ち込みで、著者が想定していたより現在は深刻かもしれない。 この本に書かれているように...
10年近く前に書かれた本にもかかわらず、内容は全く古びておらず、むしろ現在の状況を予見していたかのように感じた。 若者を取り巻く状況はむしろ当時より悪化しているし、日本のみならず世界的な経済の落ち込みで、著者が想定していたより現在は深刻かもしれない。 この本に書かれているように、徐々に仕事で昇級・昇進していって結婚・子育てをしていくっていう典型的な中流の生活には、自分自身現実感を持てないのが本音である。 未来に対する希望がいまいち持てないから、将来に対する不安に備える為には、できるだけそういうリスクを取らない方がいいのでは、という思考に陥ってしまう。 もしくは今が楽しければそれでいい、という短絡的な思考を持ってしまうのもまた事実である。 だけど将来どうなるかなんてわからない、来年の今頃でさえも予想できないけれど、行動を起こさなければ何も変わらない。 小さな行動、トライ&エラーが将来につながるかもしれないくらいには希望を持ててるのも事実なので、そういった事を積み重ねていくのが大事かも、というのが本書を読んで思ったことだ。 誰もが暗い未来なんて望んでない。 将来に希望を持てる社会を作る事にほんの少しでも貢献していけたら、というのが私自身の願いである。
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(「BOOK」データベースより) フリーター、ニート、使い捨ての労働者たち―。職業・家庭・教育のすべてが不安定化しているリスク社会日本で、勝ち組と負け組の格差は救いようなく拡大し、「努力したところで報われない」と感じた人々から希望が消滅していく。将来に希望が持てる人と将来に絶望し...
(「BOOK」データベースより) フリーター、ニート、使い捨ての労働者たち―。職業・家庭・教育のすべてが不安定化しているリスク社会日本で、勝ち組と負け組の格差は救いようなく拡大し、「努力したところで報われない」と感じた人々から希望が消滅していく。将来に希望が持てる人と将来に絶望している人が分裂する「希望格差社会」を克明に描き出し、「格差社会」論の火付け役となった話題書、待望の文庫化。
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この本はリスク化と二極化という二つのレンズから、日本の社会で起きている問題について考察している一冊である。 以前は一部の人が結婚や仕事において「自ら進んでリスクを取る」だけであったのが、様々なものが自由化され、また自由化によってそれぞれの人が所属する「組織」もリスクを取れなくなり、現在は全ての人が「リスクを取らざるを得ない」状況になっている。 一方近代以前は格差が固定化し、その格差に対して人々も「納得」していた状況が様々なものの自由化によって壊れ、実力が「格差」につながり、(例えば所得が)上の人は上の人同士でくっつき(結婚)、逆に下の人は下の人とくっつくことによって格差の二極化が現在急激に進んでいる。 この2つのレンズによって職業、家族、そして教育の3つの領域を考察している。 職業においては職業が不安定化し、中核労働者と非正規雇用者という2極が出現。一度非正規になった人は正規になることは難しく、中核労働者はどんどん働かされるので、所得・能力の二極化が進む。また非正規になってしまういリスクは誰にも起きる点からリスク化も進んでいる。 家族に関しては、まず女性の状況の変化に着目すれば以前は結婚すれば安泰と考えられていた状況から夫がいつクビになるか分からない状況となっている。また夫の状況に着目しても、人の流れが近代より激しくなったことによって妻が他の男性と出会う機会が急激に増えたため、いつ離婚を突きだされるかも分からない。よって家族が「一緒にリスクを乗り越えて行く共同体」ではなく、「リスクそのもの」になってしまう。また上で述べたように所得水準が高いカップルがくっつくことによって所得水準は上がり、またそれとは逆に所得水準がどんどん下がっていく家族が発生する。これによって家族の状況も二極化していっている。 最後に教育に関しては、以前は「受験」というパイプラインが正常に働いていたが、現在労働市場の変化により企業も人を多く必要としなくなり、「このパイプラインに乗ったつもりだったが、いつの間にかそのパイプからもれていた」というような人が多く発生している。また高い教育を受けた家族は高い教育を受けた子供を再生産し、二極化を促進させる。 これらの「二極化」「リスク化」により人々の間で「希望」に格差が生じている。「希望」とは「自身の努力が報われる感覚である」と、ある社会学者の意見を引用している。 対策としては政府、企業、自治体等の組織が総合的に状況に対処していかなければならないと述べている。様々なデータを巧みに使って意見を主張している点や、以前から自分が疑問に感じていたことを論理的に説明してくれていた。おすすめの良書。
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格差社会の到来と言われて久しいが,これまでは格差の実態について,収入などの「量的格差」に議論が向きがちであった。 しかし本書では,格差の根本にある仕事能力による格差拡大を指摘し,単純労働から抜け出すことができない人の急増,いわゆる「質的格差」の存在を明らかにしている。そしてこの「質的格差」を自覚した人びとが,仕事や将来に対する「希望」を見いだせなくなっているのが現在の日本社会というのだ。 職業は,人びとにアイデンティティを与える。アイデンティティが見いだせない社会構造はやはり問題であるし,結果的に将来の重大な社会不安定要素に繋がる。これを警鐘した本書の意義は大きい。 ただ,教育に対する考え方に違和感を感じたこと,重複する説明が多く,無駄に読み疲れたので星3つ。
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【再録~以前にmixiに投稿したものです~】 経済の枠組みが大きな変化を迎える中、 それに適応できない若者が「希望」を失い、 「希望」を持つ者と、持たざる者との「格差」が バブル崩壊後急速に進んでいる現状が報告されています。 リスク化、二極化、職業・家族・教育の不安定化等の 環境要因を背景に「希望」を失った若者が 再生産される仕組みも理解できます。 読んだ後は、非常に暗い気持ちになるのも事実ですし、 これからは生き難い時代なんだなぁと改めて思います。
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玄田有史著「希望学」で山田昌弘の名前があがっていたため、読んだのが本書。 「希望学」は学問的に成熟していないためか、イマイチだったが、本書はかなりいい!まず著者が非常に切れる。しかも勉強家。多くの文献を引きながら説得力のある論を展開する。以下はこの本のポイント。再び精読することを...
玄田有史著「希望学」で山田昌弘の名前があがっていたため、読んだのが本書。 「希望学」は学問的に成熟していないためか、イマイチだったが、本書はかなりいい!まず著者が非常に切れる。しかも勉強家。多くの文献を引きながら説得力のある論を展開する。以下はこの本のポイント。再び精読することを誓う。 現代はリスクが普遍化している。 その中で、リスクを乗り越えて勝ち組になれる人と、リスクに脅かされながら生きていかなければならない人に二極化している。 例えば、結婚生活。高度経済成長時代は、離婚する夫婦は少なかったが、いまは離婚するのも普通のことになっている。 あるいは就職の問題。大学を出ても正社員になれない人も多い。そういう人はフリーターとして生きていかなければならないリスクを背負う。 また、教育の問題。裕福な家庭は教育にお金を注ぎ込み、子どもは勝ち組のレールに乗る。裕福でない家庭は教育にお金を使えないために、階層化されていく。
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「『格差社会』論の火付け役となった話題書、待望の文庫化」 と帯に書いてあります。 日本の現在とこれからに関する、リアルでシビアな分析。 まとめると、 「日本では格差が固定しつつある。その根本的な問題は『希望』を持てるか、持てないかというところで質的な断裂が起きているところにある。これは構造的な問題で亀裂の存在自体はもう否定しようがない。その中でどういう風に立て直すのかが今後の課題である」 というような内容です。 とにかく、読んでて背筋が寒くなりました。いつの間にか、この国はほんとうに大変なことになっているようです。これが書かれたのは2004年です。自分が今まで考えていたことが、いかにぬるいものだったか、思い知らされました。 読むと辛くなるのですが、今の時代の「親」なら読む価値はあると思った一冊。
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