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ゴーレム 100 の商品レビュー

4.2

29件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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2016/02/03

 アルフレッド・ベスターは伝説である。  『分解された男』(別名『破壊された男』、しかし『解体された男』くらいがいいんじゃないかな)も『虎よ、虎よ!』もその内容はさっぱり忘れてしまったが、強烈な印象だけが残っている。  アルフレッド・ベスターは天才である。  天才には初期に大傑作...

 アルフレッド・ベスターは伝説である。  『分解された男』(別名『破壊された男』、しかし『解体された男』くらいがいいんじゃないかな)も『虎よ、虎よ!』もその内容はさっぱり忘れてしまったが、強烈な印象だけが残っている。  アルフレッド・ベスターは天才である。  天才には初期に大傑作をひとつぶたつ飛ばしただけで終わりとか、あとは鳴かず飛ばずといったタイプがいるが、やはり彼はそれに近いのではないかと思う。『コンピュータ・コネクション』は、何か変、という印象だけが残っている。  アルフレッド・ベスターは悪趣味であり、猥雑である。  本書『ゴーレム100』の「100」はスーパースクリプトであり、変幻自在の形態を持つ百手の泥人形。次々と殺人を犯すこのゴーレムを追う探偵物語の体裁を取る。探偵役の3人が登場してくる冒頭のテンポ感はたまらなくいい。しかしその後の展開の奇妙なこと。終結はまるで予想がつかなかったことは白状しておく。  初期2作では怒りに駆られた主人公が物語の軸をなし、悪趣味も猥雑も、主人公の激情の渦動に巻き込まれて収束していく(といった内容だったんじゃないかな)。ところが、『ゴーレム100』では登場人物は操り人形のような、まさに「キャラ」が立っているだけである。それを先進的と呼ぶなら呼べ。  耳元で常にウソウソウソウソと囁かれ続けながら読まされるフィクション。  アルフレッド・ベスターは故人である。  だから、あなたは本書を買って読まねばならない。そうすれば、『虎よ、虎よ!』も再刊されたように『コンピュータ・コネクション』も再刊されるかも知れないし、最後の長編も翻訳されるかも知れない。『分解された男』の新訳も出るかも知れない。  山形浩正氏の解説付き(悪趣味も猥雑も山形氏の形容)。

Posted byブクログ

2015/11/26

西暦2175年。カナダからサウスカロライナ州にかけてのびる<北東回廊>はスラムと化していた。なかでも旧ニューヨーク地区は<ガフ(でまかせ)>と呼ばれ、ありとあらゆる悪徳がはびこる無法地帯となっていた。ただ、そのジャングルは常時死と隣り合わせであるだけに、金の力で住居や移動の安全を...

西暦2175年。カナダからサウスカロライナ州にかけてのびる<北東回廊>はスラムと化していた。なかでも旧ニューヨーク地区は<ガフ(でまかせ)>と呼ばれ、ありとあらゆる悪徳がはびこる無法地帯となっていた。ただ、そのジャングルは常時死と隣り合わせであるだけに、金の力で住居や移動の安全を確保することができる一部の特権階級にとっては、より一層生の輝きが増す場でもあった。その一方で、大衆は半年の間も続く冬の寒さや慢性的な水不足に悩まされ、入浴や洗濯ができないことから北東回廊には耐えられない悪臭が漂い、それを厭うため香水に対する需要が爆発的に増大した。 160年ほど先の未来が舞台。ベスターが描く<ガフ>は、混沌としてはいるが猥雑で生気に満ちた映画『ブレードランナー』に出てくる街のようだ。格差社会は二極化が進み、有閑階級は豪華な<オアシス>にいる限り、安泰だがいつも退屈をもてあましていた。女王蜂リジャイナが率いる八人の蜜蜂レディたちが退屈しのぎに始めた悪魔召喚が事の起こりであった。たびたびの召喚にもかかわらず悪魔は一向に姿を現さない。一方、<ガフ>の警察組織の隊長インドゥニは、目の前で証拠物件が消えてしまったり、百の手が人体から腸を引っ張り出したり、というそれまで見たこともない残虐な殺人事件の群発に手を拱いていた。 同じ頃、香水製造会社CCCでは、ヒット商品を開発してきたシマ博士の様子が近頃おかしいことに困惑し、セーレム・バーンという魔術師を雇う。バーンはシマがフーガという一種の夢遊病状態にあることを見抜き、精神工学者グレッチェン・ナンに頼ることをすすめる。フーガ状態にあるとき別人格のシマが歩くコースと殺人現場が重なっていることが判明し、ナンとシマ、インドゥニの三人が協力して、奇怪な事件の犯人ゴーレム100(百乗の意味)を追う。死体に残されていたプロメチウムという希土類元素を手がかりに、無意識界に潜入し、ゴーレムを追うシマとナン。ゴーレムの正体はフロイトのいうイド。一人一人の時は超自我によって抑圧されていた死の衝動や性衝動が、八人が集合して儀式を行なったことで、本人たちの気づかないままに発動していたのだ。 1980年に発表されながら、翻訳の難しさもあって邦訳が遅れていたアルフレッド・ベスターのSF長篇である。読み終わった後で思うのは、こんな面白い作品が未訳のまま放っておかれたなんて、という驚きだった。確かに、三十五年もたっているので、フロイト学説もそうだが、今となっては懐かしい、と感じられる部分もある。しかし、そんなことはどうでもいい。サイバーパンクの先駆ともいえるようなカーニバル的興奮に満ちた<ガフ>の描写。主要な登場人物三人の人物像のくっきりとした描き分け。生き生きとした会話の妙味。楽譜や挿絵といった図版を駆使したタイポグラフィーの実験。SFに限らない文学的自己言及。何よりも、あからさまなまでにセックスや殺人に対する通俗的な興味をかき立てながら、内宇宙という超俗な位相に展開するそのアイデアに満ちたストーリーが読ませる。 エピローグはジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を思わせる造語で綴られている。柳瀬尚紀の訳を思い出させるその奮闘振りを見ても、訳者の苦労をしのばせてあまりある。本文も俗語、卑語を多用した掛け言葉等の続出で、なるほどこれでは翻訳が遅くなったのも無理はない、と思わされた。原語で読んで見たいなどという恐ろしいことはちらっとでも頭をかすめはしなかったが、解説の中で、一部なりと原文を紹介するような労をとられたなら、翻訳の意義がもっと伝わったのではないか、と思った次第。

Posted byブクログ

2013/01/04

なんだろう、すごい!表現が新しい。 楽譜、大量の絵 シマ、蜜蜂レディー達の存在感がだんだん薄くなっていくのはご愛嬌。ディーテールがよくわからないのはご愛嬌 ニュートリノ見るぐらいはすでにありそう。 最終章も一応読めるし、ものすごくくだらない。 自由奔放と新しさを感じる

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2012/12/03

再読月間ですから。グダグダと炬燵や布団の中で読みながら、私も100乗召喚できる身分になりたいなァとか退廃的な妄想にふけって楽しむのがベスト。

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2011/12/03

蟻走感のごとき文字の羅列と螺旋。狂いだした絵柄は人間の神経を通り脳へ直接伝わる――これぞ意識の流れ、そして無意識の奔流。ゴーレムが象徴しているものといえばもちろん文字そのものであろう。ある文字が消えればただの土くれに戻るという逸話こそがこのデフォルマシオンなる小説を表していて、そ...

蟻走感のごとき文字の羅列と螺旋。狂いだした絵柄は人間の神経を通り脳へ直接伝わる――これぞ意識の流れ、そして無意識の奔流。ゴーレムが象徴しているものといえばもちろん文字そのものであろう。ある文字が消えればただの土くれに戻るという逸話こそがこのデフォルマシオンなる小説を表していて、そこからのベスターの思想も創造も物理化するのだ。ニクロム線のような小説であった。

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2011/09/30

@Sacred_Maggot 嵐を呼ぶ本ですか。完全に僕の趣味になりますが、平山夢明『他人事』、アルフレッド・ベスター『ゴーレム^100』『虎よ、虎よ!』、ボストン・テラン『神は銃弾』、ディヴィッド・ムーディ『憎鬼』、牧野修+田中啓文『郭公の盤』、夢枕獏『上弦の月を喰べる獅子』な...

@Sacred_Maggot 嵐を呼ぶ本ですか。完全に僕の趣味になりますが、平山夢明『他人事』、アルフレッド・ベスター『ゴーレム^100』『虎よ、虎よ!』、ボストン・テラン『神は銃弾』、ディヴィッド・ムーディ『憎鬼』、牧野修+田中啓文『郭公の盤』、夢枕獏『上弦の月を喰べる獅子』などですかね。 一冊だけなら? @Sacred_Maggot そうですねぇ。この中で、”嵐を呼ぶ”ということになるとアルフレッド・ベスターの『ゴーレム^100』ですかね。

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2011/07/19

「蜂の巣」という通り名のまるで、ソドムの街へ飛来した異形の存在、ゴーレム百乗。 彼(ゴーレム百乗)はオンナたちによって異次元から召喚された。 感情のない、欲望の実現者たる、ミスター○○。かれはゴーレム多面体のうちのひとつ。 ○○博士と○○のプロメテチウムトリップで暴かれて追い詰め...

「蜂の巣」という通り名のまるで、ソドムの街へ飛来した異形の存在、ゴーレム百乗。 彼(ゴーレム百乗)はオンナたちによって異次元から召喚された。 感情のない、欲望の実現者たる、ミスター○○。かれはゴーレム多面体のうちのひとつ。 ○○博士と○○のプロメテチウムトリップで暴かれて追い詰められてく、ゴーレム。 そして。

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2011/01/15

おもちゃ箱をひっくり返したような、という形容があるけれどこれはそんななまぬるいものじゃない。あらゆるものが放り込まれるごみ処理場をひっくり返したような小説だった。そこにあるごみをごみと見るか、宝と見るか、それはあなた次第。いやはや圧倒的でございました。

Posted byブクログ

2010/09/25

「虎よ、虎よ!」と「ゴーレム100」を比べると…こちらの方が好きです。結末、というより本の最終ページに行くにつれてテンションがとんでもなく上がっていくのは「虎よ、虎よ!」と同等だけど、それよりも瞬発力があると思います(逆に言うと持久力がないかもしれないです)。という意味で、より(...

「虎よ、虎よ!」と「ゴーレム100」を比べると…こちらの方が好きです。結末、というより本の最終ページに行くにつれてテンションがとんでもなく上がっていくのは「虎よ、虎よ!」と同等だけど、それよりも瞬発力があると思います(逆に言うと持久力がないかもしれないです)。という意味で、より(良い意味で)B級かもしれないです。きっと名作度が高いのは前者でしょう(だから幻とかいわれるのでしょうか?)。そういうわけで「好き」という表現です。ただ、興奮することは間違いないし、素晴らしい!と思うけれど、良くも悪くも時代は感じます。今の時代の方が、より、でも静かに狂ってるかなと。エンタテイメント、表現の仕方として大好きです。好みが凄く分かれると思いますが、他の著書も読みたくなりました。

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2010/07/02

22世紀ニューヨークに出現した、形をもたない悪魔ゴーレム100をめぐる冒険活劇・・・! 相当トチ狂ってる。後半に行けば行くほどブッ飛んでる。 この小説の恐ろしいところは「ゴーレム100は本当に出現したのか」が疑わしいところではないだろうか。 これだけド派手にやらかして「夢オチで...

22世紀ニューヨークに出現した、形をもたない悪魔ゴーレム100をめぐる冒険活劇・・・! 相当トチ狂ってる。後半に行けば行くほどブッ飛んでる。 この小説の恐ろしいところは「ゴーレム100は本当に出現したのか」が疑わしいところではないだろうか。 これだけド派手にやらかして「夢オチでした」ってラストが待ってるんじゃないかと戦々兢々として読んでいたが、読み終わってもやっぱりその可能性が拭いきれない。 中井英夫の『虚無への供物』を読んだときと同じ不安感である。 主人公3人組は、理知的な人物として描かれる。だが、ゴーレム100を追いかける彼らの推理は、どれも何だか胡散臭い。それらしく理屈を通しているけど、腹の底まで納得はできない。少なくとも他の可能性が検証されないほどには完璧な推理ではないように思えてならない(もっとも、SFなんで知ったこっちゃあない言語がたくさん出てくるんだが、それでも直感的に疑わしいと思わせる展開ばかり)。 にも関わらず、現実は彼らの推理した線に沿って展開される。そこが恐ろしい。 そして一番恐ろしいのは、この3人ともが最終的にはヤク中になること。 後半は前半に比べてさらに勢いを増すところから、これは「ヤク中が見た幻覚、妄想」を追体験させられているだけなんじゃないだろうか、と何度思ったことか。この世界を妄想した本人たちにとっては現実だけど、実際は一切そんなこと起こっていなかったのではないか、と。 最後の最後まで本当らしく話は進んで行ったけど、エピローグを読んでも「夢オチ」の線は有力な気がしてならない。 もちろん、その危うい均衡の上での暴走ってところがこの本の最大の魅力なんだけど。 ま、とにかく楽しませてもらいました。

Posted byブクログ