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子どもは判ってくれない の商品レビュー

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57件のお客様レビュー

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2011/01/16

この本に一貫して伏流しているのは、世の中がこれからどうなるのかの予測が立たないときには、何が「正しい」のかを言うことができない、という「不能の覚知」である。 その「不能」を認識したうえで、ものごとを単純化しすぎるきらいのある風潮にあらがって、「世の中というのはもう少し複雑な作り...

この本に一貫して伏流しているのは、世の中がこれからどうなるのかの予測が立たないときには、何が「正しい」のかを言うことができない、という「不能の覚知」である。 その「不能」を認識したうえで、ものごとを単純化しすぎるきらいのある風潮にあらがって、「世の中というのはもう少し複雑な作りになっているのではないか」ということをうじうじと申し上げたのである。 「快刀乱麻を断つ」というのがこういうエッセイ本の真骨頂であり、読者諸氏もそのような爽快感を求めておられることは熟知しているのであるが、残念ながら本書はそのような快楽を提供することができない。筆者はああでもないこうでもないと言を左右にし、容易に断言をせず、他人を批判する時も自分は逃げ支度をしており、本書をいくら読んでもそれで世の中の風景が判明になるということは期待できないのである。すまないが。 しかし、言い訳をさせていただくと、昨今の時評類はあまりに話を簡単にしすぎてはいないか。 世界情勢は複雑にして怪奇であり、歴史はうねうねと蛇行し、私たちの日本社会も先行きどうなるのか少しも見えない。そういうときには、それらの事象のうちとりわけ奇にして通じ難いところを「分からない、分からない」と苦渋の汗をにじませながら記述することもまた、面倒な細部をはしょって無理やり話の筋道を通してしまう作業と同じく必要な仕事ではないか、と私には思われるのである。 それゆえ、この本からのメッセージは要言すれば次の二つの命題に帰しうるであろう。 一つは、「話を複雑なままにしておく方が、話を簡単にするより『話が早い』(ことがある)」。 いま一つは、「何かが『分かった』と誤認することによってもたらされる災禍は、何かが『分からない』と正直に申告することによってもたらされる災禍より有害である(ことが多い)」。 これである。

Posted byブクログ

2019/01/16

相変わらず切れ味鋭い考想を展開してくれる。 ちょっとだけ長々として愚説にお付き合いを。 圧巻は「『セックスというお仕事』と自己決定権」の章。 フェミニストたちの売春に関する主張と娼婦たちのそれの違いを指摘しつつ、 さらにはフェミニストの主張のゼロサム構造を看破する。 要約が大...

相変わらず切れ味鋭い考想を展開してくれる。 ちょっとだけ長々として愚説にお付き合いを。 圧巻は「『セックスというお仕事』と自己決定権」の章。 フェミニストたちの売春に関する主張と娼婦たちのそれの違いを指摘しつつ、 さらにはフェミニストの主張のゼロサム構造を看破する。 要約が大変困難であるが、あえてな愚見的解説を付すなら ・フェミニストの主張の大半が父権制批判であり ・それは男性が商品価値の所有を独占しうる構造に問題があり ・結果的に女性は男性に性以外の売るものを持たないプロレタリアートの地位に貶められる ・そして、売春婦は最も阻害された抑圧のシンボルであって ・売春婦をその奴隷的境涯から真っ先に解放される必要がある ここから内田節が炸裂する。 ・これでは、売春婦の解放が主婦や妻の解放に先んじなければならない理由がない ・むしろ、主婦や妻こそ父権制の無自覚な共犯者に他ならないし ・男子の財力をあてにする生き方が否定されるのであれば ・目指すべきは、父権社会の全ての性制度の同時的廃絶であって、売春制度の選択的廃絶ではない そして、 「(前略)父権制批判を徹底させようと思えば、廃娼運動を唱導することは断念しなければならないし、 廃娼運動を優先しようと望むなら父権制批判をトーンダウンさせなければならない」(p148) という論考へ帰着する。 このフェミニズムの主張に対して、売春婦達の主張が一貫して 「人権を守れ=安全に労働する権利」ということに尽くされる点に着眼し、タツルはそこに賛同する。 ただし、タツルは「売春は『嫌なものだ』という考えを私は抱いている」(p164)とも言う。 「現実が整合的でない以上、それについて語る理説が整合的である必要はない。 『すでに』売春を業としている人々にはその人権の保護を、 『これから』売春を業としようとしている人には『やめときなさい』と忠告すること、 それがこれまで市井の大人たちがこの問題に対して取ってきた『どっちつかずの』態度であり、 私は改めてこの『常識』に与するのである」(pp164-165) 嫌なものだとする論拠にはお得意の武道論からくる「身体性の尊厳」を挙げ、 整合の取れないところに関する事例として「『囚人の人権を守る』ということは 『犯罪を肯定する』こととは水準の違う問題である」(p153)を引く。 ものすごい切れ味である。 私自身が以前から感じていた、 ・フェミニストに対する漠然とした嫌な印象 ・売春に対するもやもやとした否定的な感想 を見事に切り取り、批評し、批判し、自説を展開している。 圧巻、ということばがふさわしい論説だった。 *** 書籍の後段は政治色が強く出てきていささか退屈。 だが、本論以降の「文庫版のためのあとがき」で、とても面白い論考が展開される。 書き物の価値を定量する方法、すなわち良書の条件である。 タツルは書かれたものの「耐用年数」を挙げる。 「例えば、法隆寺の五重塔を見て下さい。紀元七世紀の建造物ですけど、いまだに地震で倒れたことがありません。 今日本のゼネコンが建てている建物はたぶん世界最高水準の建築技術を駆使して建造されているのでしょうけど、 その中に起源三四世紀まで残っているものがあると思いますか?万が一物理的には立っていられたとしても、 十三世紀にわたって『残したい』と望む人がいるような建物をあなたは周囲に発見できますか?」(p336) これは気鋭の哲学者・故池田晶子の「古典を読め」という論拠に通ずる。 名著には、時代性・個別性をらくらくと超越し、 それぞれの読者に「これは私のことを書いている!」と思わせる理が記されているのだと思う。

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2019/01/16

「本が私を読んでいる」とか、 「後悔、後に立たず」とか、 多くの示唆に富む言葉が載っている。 国家のこと、売春のこと、コミュニケーションのことなど、いろいろなことが書かれている。 また、しばらく時間がたってから、読みなおしてみたい。 2001年から2003年に書かれたものだが...

「本が私を読んでいる」とか、 「後悔、後に立たず」とか、 多くの示唆に富む言葉が載っている。 国家のこと、売春のこと、コミュニケーションのことなど、いろいろなことが書かれている。 また、しばらく時間がたってから、読みなおしてみたい。 2001年から2003年に書かれたものだが、今読んでも考えさせられる。 たぶん、今後も通用し続ける内容だと思う。 だからこそ、節目節目で読みなおしたい。

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2010/11/28

 内田樹の「私はそう思う」精神がとても好き。他人の話をドライに受け止めた上で、自分のことをドライに理解しようとする姿勢が自然にとれている人になりたいと思った。もちろんこのドライはいい意味です。  インパクトはまえがきが掻っ攫っていったけど、内容としては第二章の「セックスというお仕...

 内田樹の「私はそう思う」精神がとても好き。他人の話をドライに受け止めた上で、自分のことをドライに理解しようとする姿勢が自然にとれている人になりたいと思った。もちろんこのドライはいい意味です。  インパクトはまえがきが掻っ攫っていったけど、内容としては第二章の「セックスというお仕事」と自己決定権、第三章の「呪いのコミュニケーション」が素敵だった。  とりあえず、なんでもかんでも帰納的に出し入れしようとしてはいけないなぁ、というのがざっくりとした感想。

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2010/11/13

この中の「呪いのコミュニケーション」は目からウロコもの。一緒にいるとなんとなく疲れる人とのつき合い方のお話。 内田樹は、なんとなく、とかもやもや、したものをつかまえたり説明するのがホント上手。変な言い方だけどいちいち腑に落ちる。

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2010/10/31

教養とは実体のないもの。教養の深浅は自分の立ち位置を知るときにどれくらい大きな地図帳を創造できるかによって計測される。教養がある人というのは、世界史地図のような分厚い本を思い浮かべて、そのどのあたりの時代のどのあたりの地域に自分を位置づけたられたらいいんだろうと考えられる人のこと...

教養とは実体のないもの。教養の深浅は自分の立ち位置を知るときにどれくらい大きな地図帳を創造できるかによって計測される。教養がある人というのは、世界史地図のような分厚い本を思い浮かべて、そのどのあたりの時代のどのあたりの地域に自分を位置づけたられたらいいんだろうと考えられる人のこと。 人間は必ずその人が必要とする時に必要とする本と出会う。 本が私を選び、本が私を呼び寄せ、本が私を読める主体へと構築する。本に呼び寄せられること、本に選ばれること、本の呼び声を感知できること。それが本と読者のあいだに成立する一番幸福で豊かな関係である。 正論家の正しさは世の中が悪くなることによってしか証明できない。 正論家は世の中がより悪くなることを無意識に望んでいる。 自分の考え方で考えるのを停止させて、他人の考え方に創造的に同庁することのできる能力、これを論理性と呼ぶのである。 ほとんどのフリーターに未来はない。それは社会の責任ではない、自分が何を嫌いか、何ができないのか、をきちんと言語化することを怠った人間の限定的なデータから優れたシステムとそうでないシステムを判別することのできなかった人間の自己責任である。 自立とは、馬鹿な他人にこき使われないですむこと。 人間にとっての価値とは人間にとって価値があると人間が認知したものである。 人間がどれほど変化しても変化しないもの、それは変化する仕方である。絶対に怒らないこと。クールになること。戦争は私たちが創造しうるもっとも残酷で悲痛な出来事である。だからこそ、それを呼ぼうするためには地制のパフォーマンスを最大にしておくこと。 競争社会というのは全員の代替可能性を原理にしている社会である。

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2010/09/28

この間、中沢新一さんと釈徹宗さんとお話されてるのを見て「この人ら胡散臭いなー」と兄と2人で言ってた内田樹さん(笑)わかんないんです、ぜーんぜん。内田さんの本のレビューを見ると、「難しいことを簡単に」書いてくれてるってよく見るけど、それでもわからん私はとてつもなくアホなんやなって凹...

この間、中沢新一さんと釈徹宗さんとお話されてるのを見て「この人ら胡散臭いなー」と兄と2人で言ってた内田樹さん(笑)わかんないんです、ぜーんぜん。内田さんの本のレビューを見ると、「難しいことを簡単に」書いてくれてるってよく見るけど、それでもわからん私はとてつもなくアホなんやなって凹んだりする。でも現段階の言い訳をすると、内田さんが頭のいい人なんだってことはよくわかる。教授さんだからとかそういうことじゃなく、たぶん内田さんは私のすきなタイプの大人なんだ。だから読もうと思う。なんかわからんけど面白いし。

Posted byブクログ

2010/09/28

内田先生のブログコンピレーション本。難しいことをわかりやすく、真面目なことをおもしろく語る。そんな内田先生の本が好きだー!

Posted byブクログ

2010/09/13

そうそう、そうなんだよ!という共感のオンパレード。自分の中の言語化出来ない考えを次々に解明してくれる。 特に正論好きな人の部分。就活中にグループディスカッションしている時にそんな人が絶対にいて。「ああ君が正しい事はよく解った、でもそんなことわざわざ言ったところで話が進まないんだ。...

そうそう、そうなんだよ!という共感のオンパレード。自分の中の言語化出来ない考えを次々に解明してくれる。 特に正論好きな人の部分。就活中にグループディスカッションしている時にそんな人が絶対にいて。「ああ君が正しい事はよく解った、でもそんなことわざわざ言ったところで話が進まないんだ。時間無くなるからいい加減に黙っとけ!」とよく思ってしまっていた。 あの時のそんな人達に物凄く読んでもらいたい一冊。 「つまり、わが国のこれまでの歴史的経験のみから『有事』を定義すると、それは『世界最強の武力を誇る覇権国家によって、三百六十年に一回くらいの頻度で領土を侵犯されること』というローカルな定義を得ることができる。」 という一文に笑った。日本はたいてい無事なんですね!

Posted byブクログ

2010/08/02

今世の中の人が感じている「感覚」をこれほどまでに巧く言語化できる人はそうそういないと思う。矛盾はあるかもしれないけど、それも仕方ないよねっていう「あの」感覚。特に「『セックスというお仕事』と自己決定権」にそれがよく表れてると思う。彼がそういう態度を取るのも彼が「日本一のイラチ男」...

今世の中の人が感じている「感覚」をこれほどまでに巧く言語化できる人はそうそういないと思う。矛盾はあるかもしれないけど、それも仕方ないよねっていう「あの」感覚。特に「『セックスというお仕事』と自己決定権」にそれがよく表れてると思う。彼がそういう態度を取るのも彼が「日本一のイラチ男」だからである(「話を複雑にすることの効用」)。 毎度楽しませてもらってます。こういう内田樹的態度が今後の日本を牽引してくれると面白いんだけど、とつくづく思う。 (2006年06月14日)

Posted byブクログ