君たちはどう生きるか の商品レビュー
再読。 何度も感銘を受ける。教育とはどういうことか、その真理を平易な文体に落とし込んでいる本書には脱帽する。しかも戦前という表現が難しい時代に、信念を持って完成させた著者こそ、立派な大人であろう。 丸山真男の回想も加えて秀逸であり、欠かせない。 - 君に考えてもらわなければなら...
再読。 何度も感銘を受ける。教育とはどういうことか、その真理を平易な文体に落とし込んでいる本書には脱帽する。しかも戦前という表現が難しい時代に、信念を持って完成させた著者こそ、立派な大人であろう。 丸山真男の回想も加えて秀逸であり、欠かせない。 - 君に考えてもらわなければならない問題は、それから先にあるんだ。もしも君が、学校でこう教えられ、世間でもそれが立派なこととして通っているからといって、ただそれだけで、いわれたとおりに行動し、教えられたとおりに生きてゆこうとするならば、ーコペル君、いいか、ーそれじゃあ、君はいつまでたっても一人前の人間になれないんだ。子供のうちはそれでいい。しかし、もう君の年になると、それだけじゃあダメなんだ。肝心なことは、世間の眼よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。そうして、心底から、立派な人間になりたいという気持を起とすことだ。いいことをいいことだとし、悪いことを悪いことだとし、一つ一つ判断をしてゆくときにも、また、君がいいと判断したととをやってゆくときにも、いつでも、君の胸からわき出て来るいきいきとした感情に貫かれていなくてはいけない。北見君の口癖じゃあないが、「誰がなんていったってー」というくらいな、心の張りがなければならないんだ。 - そうでないと、僕やお母さんが君に立派な人になってもらいたいと望み、君もそうなりたいと考えながら、君はただ「立派そうに見える人」になるばかりで、ほんとうに「立派な人」にはなれないでしまうだろう。世間には、他人の眼に立派に見えるように、見えるようにと振舞っている人が、ずいぶんある。そういう人は、自分がひとの眼にどう映るかということを一番気にするようになって、本当の自分、ありのままの自分がどんなものかということを、つい、お留守にしてしまうものだ。僕は、君にそんな人になってもらいたくないと思う。 - だから、コペル君、繰りかえしていうけれど、君自身が心から感じたことや、しみじみと心を動かされたことを、くれぐれも大切にしなくてはいけない。それを忘れないようにして、その意味をよく考えてゆくようにしたまえ。
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この手の内容の読み物は今の時代であれば、さまざまなコンテンツであるような気がするが、本が書かれた時代の価値観を考えると昔から人が大切しようとしてきたものは変わらないし、それらに思い馳せることができていたのだと知ることができてよかった。
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古典的な倫理の本として位置づけられる本。説教くさい本かなとおもっていたけども、想像していたよりは、そんな感じはしなかった。宮崎駿のアニメとはマジで1ミリも関係ないです(あらすじ的には) シンプルにコペルくんの成長譚の小説として面白かったと思う。周りの登場人物も、すごくユニークで...
古典的な倫理の本として位置づけられる本。説教くさい本かなとおもっていたけども、想像していたよりは、そんな感じはしなかった。宮崎駿のアニメとはマジで1ミリも関係ないです(あらすじ的には) シンプルにコペルくんの成長譚の小説として面白かったと思う。周りの登場人物も、すごくユニークで好きになれる。大人になった今では、含蓄あるエピソードだなぁと思えるし、子供のころに読んだとしたら、純粋な物語として楽しめただろう。 確かに、子供に読ませたい本だ。子供の時と、大人で二度は読んでほしい。こうして、説教くさい「君たちはどう生きるかおじさん」が誕生するのか… 内容としては、純粋無垢なコペルくんが、社会や世界に色んな疑問を持ちながら、成長していく物語。途中、叔父さんがコペルくんに語りかけるノートが挿入されるのだが、これがまた良い。コペル君を見て、思った大人の感想を叔父さんがすぐに代弁してくれるため、気持ちよさがすごい。「そうなんだよ、子供ってこうなってほしいし、こういう経験からこう学んで欲しいんだよな」という気持ちを即座に代弁してくれるのだ。 また、こういう倫理の授業みたいな小説は、大抵、小説としては面白くならなかったりするのだが、この作品は普通に小説としてのクオリティが高い。1つ1つのエピソードがすごくレベルが高いのだ。1つのエピソードにドラマ、学び、主人公の成長と、諸要素が確実に入っている。現代文の教科書に掲載されていないのはなぜなんだろうなぁ。 小さな頃に漠然とコペル君と同じようなことを思っていたような気がする。人ってこんなにいて、関係しあっているんだなぁとか、変な思い込みというか。そうした「考え」をより具体にエピソードとして言語化され、描かれているため、もし小さな頃にこの本を読んでいたら、きっとカタルシスがあったと思う。「そうそう!」って言っていた気がする。そして、コペル君と同じように、叔父さんの手記を見て、難しいことを言っているなぁと思っていたかもしれない。 中学生くらいの時に読んで感想文を書きたかった。 以下、好きなエピソードメモ 1章 子供は、いや人間は自分中心に物事を考えてしまう。それを抜け出すのは難しい。でも、コペルニクスは、コペル君は、そこから抜け出せたのだ。それは人間だからできる行為であり、人間らしい素晴らしい行為である。 銀座のデパートの屋上から人々を見て、分子みたいだと言うエピソードからこれを持ってくるのは痺れるなぁ。序章のこれで一気に引き込まれた。 3章 万有引力は、りんごが落ちる様子から。それはそう。じゃあ具体的にどういう連想? そこには想像力とそこで限界に感じた時、なぜを突き止める力があったから。りんごの落とす箇所をひたすら高くしていったらどうなるか。それが、宇宙でもどこでも、万有引力、というものが存在するという考えになっていく。 7章 苦痛を感じてありがたく思う。ヒトとはそのようにできている。そして、人間関係に不和を感じた時、人は苦痛を感じる。 つまり、人間同士は調和し合っているのが普通としているから。 新しい性善説の考え方で、面白いなと思った。 お母さんの石段の話、めっちゃ好き。 後悔するのも、良心がある証拠であり、是正する力があるということ。 また1つ自分の中の後悔エピソードが増えて嬉しい。
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『君たちはどう生きるか』は、お父さんを3年前に亡くした中学2年生、「コペル君」こと本田潤一君が、日常生活で直面するさまざまな問題を通して、母方の叔父さんと、生き方を考えて成長して行く物語。 以下、7つのポイントを通して説明します。 1.ものの見方について 2.真実の経験につい...
『君たちはどう生きるか』は、お父さんを3年前に亡くした中学2年生、「コペル君」こと本田潤一君が、日常生活で直面するさまざまな問題を通して、母方の叔父さんと、生き方を考えて成長して行く物語。 以下、7つのポイントを通して説明します。 1.ものの見方について 2.真実の経験について…「勇ましき友」。クラスのいじめにどう対応するか 3.人間の結びつきについて…ニュートンのリンゴと粉ミルク 4.人間であるからには…「貧しき友」 5.偉大な人間とはどんな人か…ナポレオンと四人の少年 6.友人への裏切りについて…「雪の日の出来事」、「石段の思い出」、「凱旋」 7.これからのあなたの生き方について…「水仙の芽とガンダーラの仏像」、「春の朝」 ------------------------ 「ありがたい」という言葉によく気をつけて見たまえ。この言葉は、「感謝すべきことだ」とか、「御礼をいうだけの値打ちがある」とかいう意味で使われているね。しかし、この言葉のもとの意味は、「そうあることがむずかしい」という意味だ。「めったにあることじゃあない」という意味だ。自分の受けている仕合せが、めったにあることじゃあないと思えばこそ、われわれは、それに感謝する気持ちになる。それで、「ありがたい」という言葉が、「感謝すべきことだ」という意味になり、「ありがとう」といえば、御礼の心持をあらわすことになったんだ。
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単なる内省や贖罪に留まらず、自信を取り戻してひとつ成長した主人公が、人類史や世界史に思いを巡らせ、苦悩しながらも意志と行動によって豊かな未来を切り開いていくことを予見させる。その人生において都度、視座の転換が起こり、現実社会や宇宙を行ったり来たりし、彼自身も、そしてこの本も、歴史...
単なる内省や贖罪に留まらず、自信を取り戻してひとつ成長した主人公が、人類史や世界史に思いを巡らせ、苦悩しながらも意志と行動によって豊かな未来を切り開いていくことを予見させる。その人生において都度、視座の転換が起こり、現実社会や宇宙を行ったり来たりし、彼自身も、そしてこの本も、歴史の網目の中にひっそりと置かれるのだろう、と思いを馳せる。そしてその網目が私たちにも繋がっているのだと思うと嬉しくなる。
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君たちはどう生きるか 吉野源三郎 poplar 中学生に向けた良き教師からの伝言 少しお節介だけれど好奇心の強い 子どもにとっては中々面白い内容なのだろう 題名もイマイチ気になって 漫画のダイジェストを読み始めたけれど 原本も読みたくなった 流石に話の流れも汲み取れて 良い話なの...
君たちはどう生きるか 吉野源三郎 poplar 中学生に向けた良き教師からの伝言 少しお節介だけれど好奇心の強い 子どもにとっては中々面白い内容なのだろう 題名もイマイチ気になって 漫画のダイジェストを読み始めたけれど 原本も読みたくなった 流石に話の流れも汲み取れて 良い話なのだけれど ヤッパリ「偉い人に」「立派な男」など 中途半端な道徳や倫理的な教えを 望まれても困るよね 自分の思いが大事なのであって 誰かのために自分に嘘をついて生きることはない などと思っていたらジブリから 同名のアニメが公開されると言う おかしな共時性
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日々に追われてすごすうちに、忘れそうになっていた人として最も大事なことを思い出させてくれるお話でした。人として立派であることは、地位や名誉やお金ではない。そのように思ったり振舞った時点で恥ずべき人間なのだと。何かを消費する消費専門家は偉くも何ともない、何かを生み出して世の中の人々...
日々に追われてすごすうちに、忘れそうになっていた人として最も大事なことを思い出させてくれるお話でした。人として立派であることは、地位や名誉やお金ではない。そのように思ったり振舞った時点で恥ずべき人間なのだと。何かを消費する消費専門家は偉くも何ともない、何かを生み出して世の中の人々の役に立つ、生産できる人こそ偉いのだと。 子どもが大きくなった頃に渡して読んでみてもらいたい本です。
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岩波文庫版よりもこちらの方が文字が大きく読みやすい。 スタジオジブリの最新作が来年の夏に公開される予定だ。本書はこの映画の題名のもとになっている(内容は全然別物らしい)。 物語の主人公コペル君は15歳の中学2年生。学校など日常生活を送る中で感じたことに対して、叔父さんが「おじ...
岩波文庫版よりもこちらの方が文字が大きく読みやすい。 スタジオジブリの最新作が来年の夏に公開される予定だ。本書はこの映画の題名のもとになっている(内容は全然別物らしい)。 物語の主人公コペル君は15歳の中学2年生。学校など日常生活を送る中で感じたことに対して、叔父さんが「おじさんのノート」として手紙をしたためる。 最初はおじさんの気持ちになって読んでいたが、とんでもない。自分はコペル君の域にも達していないことを痛感した。なにより経験を自分の糧にできていない。自分の頭で考えるということが全くできていない。 最後の丸山眞男の解説を読んで、読みの浅さもよくわかった。 読んでいて情けなくなった。もっと精進せねば。
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ちょっと前にえらくはやったこの本をいまさらながらに読んでみた。たぶん若者に対する有意義なメッセージが込められているとかいうことで話題になったんだと記憶しているけどそれほどのものでもない気がした。 ただ、この物語が書かれた昭和の戦前の時代ってこういう文化があったのだろうなと思う。「...
ちょっと前にえらくはやったこの本をいまさらながらに読んでみた。たぶん若者に対する有意義なメッセージが込められているとかいうことで話題になったんだと記憶しているけどそれほどのものでもない気がした。 ただ、この物語が書かれた昭和の戦前の時代ってこういう文化があったのだろうなと思う。「こういう文化」っていうのは次代を担う少年たち(少女ではなく)に上質なものを与え、大志をもった立派な人(≒男)として生きていくことを教えるような文化という意味。たとえば『クオレ物語』なんかも同じ系譜だと思う。 上述のことと根っこが共通してそうなんだけど、読みながらびっくりしたのはコペル君をはじめとした学友たちの豊かな生活。コペル君は銀行役員だったお父さんが亡くなって小さい家に引っ越したけど、それでも使用人が2人もいる。下町住まいの級友の家に行って初めてたいやきを食べたというのにもびっくりした。 つまり、彼らは特権階級の家に生まれた男児なわけで、だからこそ「君たちはどう生きるか」ということを考える立場にあるというわけ。それは貧しい者への慈しみをもつとか、「男らしく」卑怯なことをせず公正に生きるということであり、それは持てる者の務めということだろう。 いまの日本は表向き総中流的な意識が蔓延しているし、ジェンダー平等的な考えも取り入れることが奨励され、それはそれでいいことかもしれないけど、「君たちはどう生きるか」が示唆しているようなことを身につけるにはちょっと難しい時代かも。それがこの本がはやった理由のひとつじゃないかな。倫理や道徳という普遍的なものでありながら、現代の文脈では表現できず、昔の文脈を借りてくるしかなかったということだろう。
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書かれた時代の少年少女達は100歳くらいになっているけど、著者が当時の若い世代に託したかった事が戦後成し遂げられたかな?それが今なのかな?今の日本人を見てどう思うのかな?といろいろ考えました。
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