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ギフト の商品レビュー

4.2

28件のお客様レビュー

  1. 5つ

    11

  2. 4つ

    9

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2024/03/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『ギフト』のタイトル通り、ギフトという単語がこれでもかと出てくる。 ギフトとはその一族に伝わる『不思議な力』父親から息子へ、母親から娘へと伝わり、血が薄まると力も弱まるため定期的に血の濃さを求めた婚姻が繰り返されている。 一族ごとにそれぞれ違った力を持っている。 グライの一族は〈呼びかけ〉のギフトでグライも母親からそのギフトを継いでいる。 血筋の話だけではなくて、世界観もすごい。オレックの住む場所である高地とエモンやオレックの母が住んでいた低地の差も書かれている。高地では本がないので、母親が布から本を作ったという話まである。執念、すごい。そして、本がないのでオレックは母親が本を作るまで本を知らなかったし、父親に至っては本の価値が分からない。母親は低地の人間で文字が読めたので、子供たちに文字も教えている。 文化の差がこれだけでありありと分かるのすごいし、『文字も本もないというのはどういうことか』がこんなに書かれているの、読んでるだけで楽しい。 文字がないという事はそれだけ集団の規模が小さく、他との交流がないという事。それが『低地から来た母親』がいるおかげで、どれだけの差があるのかという事も分かる。母親のメルはあまり出てこないけど、主人公の親としての存在感がすごい。 同時に父親も『ギフト』を使う者としての存在感がすごい。息子がギフトを継ぐことへの期待と失望。それが分かってしまうオレックの痛み。 文字がないから粗野な部分はあるけど、基本は『子供も人間として扱う』姿勢だしそのために散りばめられている細部が素敵すぎる。 『闇の左手』では馴染めなかったけど『ギフト』が伝承やその世界での物語を交えながら進む物語だったことで、作者の書き方がこうなのかなと思った。でも、キャラについてはやはりよくわからない……と思う点はある。 『闇の左手』もキャラがどんな思考・価値観からそうしたのか分からなかった。でも『闇の左手』は誰も何も説明してくれないので、説明されている部分からくみ取るには情報が圧倒的に足りないというものだった。 『ギフト』のオレックの父親は態度は分かるが何を思っているのかよく分からないまま終わってしまった。特にラストの『息子にはギフトがない』と知った後はどう思っていたのか分からないし、この先どうするつもりだったのかも分からない。なぜ、息子を危険な『他部族との争いになる場所』に連れて行ったのか。ギフトがないと分かっているのに……息子にギフトがないのだと納得していたのかも分からない。 父親は『冷たい目』だとオレックは思ったのはわかるけど、オレックの視点なので実際に父親が『冷たくしよう』と思っていたのかも分からない。ただ『戸惑っていた』様子が『冷たい目』に見えただけかもしれない。 『わからない』まま物語は終わる。 わからないけど面白いし、世界観は最高だし、物語も素敵だ。 分からない面白さもあると私は思ってるので、『分からないから不満だ』という感想ではない。キャラの感情をずっとああかなこうかなと考え続けて、ふと、全く別の作品から『こうだったんだと』ひらめく瞬間もある。私はそう言うものも『面白い』と思ってる。 ヤングアダルト作品なので=中高生くらいの子どもにもお勧めの一冊。ファンタジー好きなら、本を開いたところにある『地図』だけで、ワクワクしそう。私もすごくワクワクした。ワクワク。

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2018/10/06

アースシー1巻から38年後に書かれたルグウィンの物語。世界観はアースシーとよく似ていて、完全にルグウィン節が心地よい。ただ、個人的にはこのトリロジーの最初の本書だけが非常にテンポがノレずにストラグルしました。ただ、これを読んどかんと次に響く。舞台となる西のはての地域では”ギフト”...

アースシー1巻から38年後に書かれたルグウィンの物語。世界観はアースシーとよく似ていて、完全にルグウィン節が心地よい。ただ、個人的にはこのトリロジーの最初の本書だけが非常にテンポがノレずにストラグルしました。ただ、これを読んどかんと次に響く。舞台となる西のはての地域では”ギフト”という超能力を持つ血族が各部族を統治していて、各部族同士が中よかったりいがみ合ってたりして、色々と問題が起こる。ランドロードの息子として生まれたオレック、生き物を殺す能力の家系。能力の発露を忌み嫌うオレックが目を封印された真の意味というのがシームの一つ。オレックのギフトがどういうものか、いまひとつわからんまま終了。グライという動物と心をかよわせられるギフトを持つ女のこのキャラがとても良い。

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2016/05/12

むうう。 続きが読みたい。 ワクワクでもドキドキでもないけど、読んでしまう。 当初この1冊だけの予定だったと解説に書いてあったが、もしそうだったらかなり寂しい気がしただろう。 早く続き読もう。

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2016/03/25

ル・グウィンの語り口が好きだ。存在の手触りのするファンタジーだと思う。暗い印象もあるけれど、女性らしい優しさも感じる。血を通じて伝わるギフトをめぐる、父と子の葛藤はとてもリアルで悲しい。私たちもまた親からギフトを受け取るけれど、もちろんそれが親の期待するとおりとは限らない。

Posted byブクログ

2016/01/22

物語としての面白さはもちろんの事,人間心理,感情の揺れ動きといった細かい描写が素晴らしく,親子間であれ友情であれ恋愛であれ敵への憎悪であれ生々しく読み手に迫ってくるので,こちらも一緒にイラついたり喜んだりホッとしたり忙しい.そして少年(オレック)が成長していくところがやはりいい.

Posted byブクログ

2016/02/03

大人になるってこういうことですよね。きちんと親離れして自分の意志で生きていく。ギフトのプラスとマイナスに対する考え方、やっぱりそういうことだよなあとすごく納得しました。作者の人に対するあたたかさをとても感じました。

Posted byブクログ

2013/03/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

詩や小説を読むことを好み、本を愛する人であれば、自分にも物語を語る才能、詩を詠むことのできる力があれば、と思ったことがあるだろう。中には天から与えられるように、その力を授かった人もあるだろうが、多くの人は長ずるに及んで、我が身にその才のないことを嘆息とともに受け容れざるを得ない。 主人公オレックが生まれた高地には、低地の者には魔法としか思えないギフトと呼ばれる力がある。部族によって異なるが、オレックの部族カスプロマントの伝えるギフトは「もどし」のギフトと言い、物事を作られる前の姿にもどしてしまうものだ。対象を左手で指し、一言呟けば、馬でも牛でも骨と肉が分化する前の混沌の状態にもどされてしまう恐ろしい力である。 人は、自分にどんな才能があるのかを予め知らされてはいない。望む力を発揮できる人はほんの一握りの人だろう。力を求めながら、自分にそれのないことを受け容れさせるために、どれだけの時間がかかることか。誤って自分の愛する者を傷つけてしまわぬように、自らの目を封印し、暗闇の中で生きる主人公の葛藤が、この物語を暗い色調で覆っていることは否めない。相変わらずというか、またしてもというか、ル=グウィンの描く世界は、若い読者をそう簡単に楽しませるようには描かれない。 主人公を導いてくれる幼馴染みの少女グライはすでにギフトを授かっている。動物の心を読み、彼らの言葉で話しかけることができる「呼びかけ」のギフトは、馬の調教などに使える、いわば前向きのギフト。対するに、カスプロマントや敵対するドラムマントのギフトは、壊したり、殺したりする後ろ向きのギフトである。グライは、ギフトはもともとどちら向きにも使えるものであったが、戦いに明け暮れる裡に、高地の人々の間で、後ろ向きにしか使われなくなったのではないかという考えをオレックに語る。ここに現代の世界に対する批判を読むことは容易い。 暗闇の中でオレックは、母が語ってくれた物語を思い出す。文字を知らない高地人とはちがって低地から嫁いだ母は、本を読み、物語を語ることの好きな女性だった。本で読んだことを思い出しながら語る母の物語には抜け落ちたところがあった。オレックはそれを補うだけでなく、新しく紡ぎ出す才能が自分にあることを知り、母の遺してくれた本を読むために自ら目隠しを外すのだった。それは、制御できない力を持つカスプロマントの跡取りであることをやめることであり、父の願いに背くことでもある。 世界を混沌の状態に「もどす」ことのできる力を、もし前向きに使うことを学ぶなら、混沌状態にある世界に光を当て、秩序立てることもできるにちがいない。オレックの「ギフト=賜物」とは、そういう力だったのではないか。領主としての責任感から自分の領地を守ることにだけギフトを用いる父(男)の世界から、前向きのギフトを持つグライ(妹)の力を借りることで、本来自分の中に潜んでいた自分の周りの人々を幸せにする母(女)の世界を発見するというのが、『ギフト』の構造である。 ユング的な世界観が色濃かった『ゲド戦記』とはうって変わって、男の成長には、母という一人の女をめぐって、息子が父親を殺す過程が避けられないというフロイト的な主題が物語を背後で支えている。今ひとつ、世界は善悪二つの敵対するもので構成されているというキリスト教的な世界観ではなく、本来善と悪は一つのものだという異教的な世界観がある。悪が生じるのは、戦いを好む男社会が、相手を傷つけるものとしてのみ、持てる力を振るうからだというこの作家らしい主張も健在である。 後書きによれば、はじめはこれ一作だけのつもりで書かれたという。『ギフト』は、オレックが、物語を語ったり、詩を朗唱したりする仕事に就くきっかけを作ってくれた低地からの逃亡者の思い出からはじまり、オレックとグライが高地を離れる峠道の場面で終わっている。より開かれた地での二人の活躍を見たいと思ったのは、読者だけではなかったようだ。成長したオレックとグライの活躍は第二作『ヴォイス』で読むことができる。

Posted byブクログ

2012/01/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ル=グゥインらしさにあふれた本当に素晴らしい作品です。僕はこれを読んで、映画「ゲド戦記」に対する落胆と憤りを払拭しました(笑) 「西のはての年代記」3部作の1巻にあたりますが、僕にとってはこの3部作にはファンタジーの魅力がたくさん詰まっています。 おこがましい言い方ですが、ファンタジーとはこうあるべきです。 ひと言でいえば、ハリウッドが好んで映画化し、またコンピュータゲームの世界でも好んで用いられる「悪の(暴)力を、それを上回る善の(暴)力で駆逐する、そのための力を手に入れるために主人公たちが超人的な力を身につけ、また破壊的な武器を手にしていく成長過程を描いた愛?と冒険の物語」ではありません。 だから、そうしたストーリーを期待して読むと肩すかしをくらいます。ハリー・ポッターのような超人的な力を持った主人公は登場しません。 むしろ、破壊的な力を持つことを期待されながら、その力を持つことを恐れ、また一方でその力が備わっていないことへの不安を抱えながら、自分に授けられた本当に大切な力(ギフト)を自覚していくという物語です。 でも、ギフトを胸に大人として旅立つ主人公オレックの姿は、本当に雄々しく、また希望に満ちあふれています。 この小説は、おそらくジュブナイル(ヤングアダルト)と呼ばれるジャンルに分類されるでしょうが、世代を問わず人々の心を揺さぶるものをもっています。 主人公オレックの母メルを中心に物語全体に感じられる、子どもに対する温かな「まなざし」に心打たれます。この「まなざし」は、不朽の名作「ゲド戦記」と共通するものです。 僕は、読了後、そんな「まなざし」を持ち、これから多くの力の問題に直面するであろう子どもたちを温かく見守り、希望を託していける大人になりたいと思いました。 きっと、この作品は、(暴)力を(暴)力で制しようし、行き場を見失った大人たちへの問いかけでもあるのでしょう。

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2011/12/26

名前で売れるから、このくらいの地味な導入でも許されるのだろう。ル・グインでなかったらきっと途中で読むのをやめただろう。物語の基本テーマが出てくるまでが長いし、ひとつのテーマをやたら長くひっぱって、これでおしまい? という感じ。それでも続きも読んじゃうんだろうけど。

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2011/11/03

ハリーポッター以降に量産されたファンタジーとは格が違う。やっぱり彼女の作品は期待を外さないなぁ。こういうの、読みたかったんよね。 描写から頭の中に広がる風景は、緑と灰色を基調とした山々や空気、集落。 登場人物の心情は、ただ文章を目で追って頭の中で理解した以上に、私の心に色濃く滲...

ハリーポッター以降に量産されたファンタジーとは格が違う。やっぱり彼女の作品は期待を外さないなぁ。こういうの、読みたかったんよね。 描写から頭の中に広がる風景は、緑と灰色を基調とした山々や空気、集落。 登場人物の心情は、ただ文章を目で追って頭の中で理解した以上に、私の心に色濃く滲み出てきた。時に強く燃え上がり、全てを冷たく拒み、温かくも弱々しい。人間らしいって悲しくもこういうことだ。 主人公のお母さん、いいな。

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