空白の叫び(下) の商品レビュー
【少年院を出た彼は本当に更正できたのか 久藤美也は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城拓馬だが、決して奢ることもなく常に冷静で淡々としている。神原尚彦は両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている。〈上巻〉第一部ではこの...
【少年院を出た彼は本当に更正できたのか 久藤美也は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城拓馬だが、決して奢ることもなく常に冷静で淡々としている。神原尚彦は両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている。〈上巻〉第一部ではこの3人の中学生が殺人者になるまでを、その内面を克明にたどりながら描く。その3人が同じ少年院に収容されて出会うのが第二部。過酷で陰湿な仕打ちで心が壊されていく中、3人の間には不思議な連帯感が生まれる。〈下巻〉第三部。少年院を退院した彼らはそれぞれ自分の生活を取り戻そうとするが、周囲の目は冷たく、徐々に行き場をなくしていく。そして、再び3人が出会う日がくる。 少年犯罪を少年の視点から描いた、新機軸のクライムノベル。】 上下巻合わせてずっしりと読み応えありの作品でした。 いわゆる普通のヤンキー久藤、お金持ちで頭脳明晰の美少年葛城、親に捨てられ祖母と叔母に育てられた神原。 どこにでもいるような3人の中学生がそれぞれに殺人を犯してしまい、少年院へ。 上巻は3人が殺人を犯すまでの過程と、少年院でどのように過ごしていたかを。そして、少年院から出てきた3人がまた出会い、風当たりの強い中どのように生きていくのかを下巻で描いている。 3人の背景がかなり細かく描かれていて、単純に「どんな理由があろうとも殺人は許されない!」と声高に言えないような感情が湧きあがる。 とは言え、「仕方ないよね。」とは到底言えないんだけど・・・。 少年法が改正される前の話なので、彼らは1年もたたず少年院から出てくるけど、殺された遺族としてはたまらないんだろうな。 柏木父の復讐の仕方からそれが痛いくらい感じられる。 14歳という年齢を考えればそれもアリかと思う反面、久藤や葛城の潔さや割り切り方をみるにつけ、神原のずるさにはイライラさせられました。それでもやっぱり、最終的に死んでしまった神原を気の毒に思うし、お金を奪った2人に肩入れは出来なかった。 そして、葛城の父や神原の母の自分勝手な子供っぽさにも呆れた。
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全ては「自分勝手な大人に振り回される子供の話」 悲劇でした。 とんでもない運命を背負った三人の子供たち。 作者がこの作品を通して伝えたかった事が何なのかは分かりませんが、 私はこの三人が可哀想でなりません。
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読み応えたっぷり! 少年犯罪を軸にしたクライムサスペンス。もうちょっと高度なトリックと謎解き的要素があれば☆5なんだけど…まあ面白いのは確かだ。 この人の本は2冊目だけど、前回はちょっとポップな内容のものだっただけに、今回のシリアスさはぐっと来た。こんなタッチの方が得意なんじゃな...
読み応えたっぷり! 少年犯罪を軸にしたクライムサスペンス。もうちょっと高度なトリックと謎解き的要素があれば☆5なんだけど…まあ面白いのは確かだ。 この人の本は2冊目だけど、前回はちょっとポップな内容のものだっただけに、今回のシリアスさはぐっと来た。こんなタッチの方が得意なんじゃないか。他も読んでみたい!上巻の感想にも書いたけど、湊かなえ「告白」が好きならオススメ。長いけどね。
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逮捕に至るまで、少年院での生活、出所後の生活の中で少年たちが変わっていく様が恐ろしかった。これを表現するためにはこれだけのページ数が必要なのもわかる。
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下巻は殺人を犯した3人の少年が卒院してからの話。自分が殺した相手に向けた憎悪が、自分たちに向けられているという状態に。ここに「何故人を殺してはいけないの?」の答えの一つの形があるような気がする。 「ぼく」が誰よりも普通と邪悪を兼ね備えていて、恐ろしくて、悲しい。登場する誰の立場に...
下巻は殺人を犯した3人の少年が卒院してからの話。自分が殺した相手に向けた憎悪が、自分たちに向けられているという状態に。ここに「何故人を殺してはいけないの?」の答えの一つの形があるような気がする。 「ぼく」が誰よりも普通と邪悪を兼ね備えていて、恐ろしくて、悲しい。登場する誰の立場に立っても、同じ言語を話しながら、言葉と言葉が通じ合わないことの絶望感と孤独感に息が苦しくなる。
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とにかくすごいの一言。 三人の最初から最後に至る変化が興味深い。 特に目を惹いたのが神原。 徐々に悪に苛まれていく姿から目が離せなかった。 あまりの無邪気さと幼稚さにゾッとした。 まさに瘴気。 彼らの今後が気になるところ。
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3人の少年が院を出たその後の話。あー…そういう方向へいくのか、というかんじ。泥沼にはまっていくというか。ただ、神原が最初と最後では全く違う人間のように思えたことには感動。読んでる途中は「ぼく」としてしっかり連続しているにもかかわらず。気づかないうちに(しかも悪いほうへ悪いほうへ)...
3人の少年が院を出たその後の話。あー…そういう方向へいくのか、というかんじ。泥沼にはまっていくというか。ただ、神原が最初と最後では全く違う人間のように思えたことには感動。読んでる途中は「ぼく」としてしっかり連続しているにもかかわらず。気づかないうちに(しかも悪いほうへ悪いほうへ)壊れていく様がなんとも痛々しい。
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長すぎて何度も読むのを止めようと思ったけど、最後の方はどんどん引き込まれていった。 続きが読んでみたい。
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やっと借りることが出来ました。やっぱ一気に読みたかったな。だったら買ってくれってことになるのですが。 読み終わってしまっても、まだ続くように感じる話でした。 それは3人の少年が若いからなのかな。 3人が大きな罪を犯したとは思えないような精神や思考だったので ふとし...
やっと借りることが出来ました。やっぱ一気に読みたかったな。だったら買ってくれってことになるのですが。 読み終わってしまっても、まだ続くように感じる話でした。 それは3人の少年が若いからなのかな。 3人が大きな罪を犯したとは思えないような精神や思考だったので ふとした時に年齢を思い出して驚きます。 確かに少年と言うだけで同じ罪でも簡単に世の中に出てこれるのは納得いかないと思う。 実際3人も反省しているわけじゃないようだし。 でもやったことを後悔していなくても 決してやってはいけないことだと思えることは良かったんじゃないかと思う。 何度も繰り返してしまう愚かな人間もたくさんいるわけだし。 更に10年後を読んでみたい。
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少年犯罪テーマの作品。それぞれの事情で殺人を犯した三人の少年たち。……加害者側から描かれているので、この事情にはある程度同情もできます。殺しちゃいかんだろ、とは当然思いますけど。 ところが。……「更生」っていったい何なのでしょうね。まあネタバレになるので多くは語れませんが、下巻で...
少年犯罪テーマの作品。それぞれの事情で殺人を犯した三人の少年たち。……加害者側から描かれているので、この事情にはある程度同情もできます。殺しちゃいかんだろ、とは当然思いますけど。 ところが。……「更生」っていったい何なのでしょうね。まあネタバレになるので多くは語れませんが、下巻ではなんでこうなっちゃうんだろうなあ、という感じ。「周りの環境のせい」ってのも一理はありますね。特に前半と後半での変わりっぷりが凄まじい彼……あれは明らかに周りの人間のせいかもしれないしなあ。 とにかくいえるのは、「一度犯した罪は消えない」ってことでしょう。当たり前の話ですが。 ちなみに……実は登場人物の中で一番歪んでたのって、柏木だよね。生真面目が高じて狂気になっている印象を受けました。可哀想だけど……久藤にも同情できるわ。
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