生きることの意味 の商品レビュー
著者は在日朝鮮人作家の高史明氏。 戦時下の日本に生まれた高氏の、敗戦を迎えるまでの一在日朝鮮人少年としての生い立ちをたどった一冊。 過酷な状況におかれた少年のおいたちは、一見絶望感があふれていますが、その根底には人間のやさしさがあふれており、どこか温かい一冊です。
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在日朝鮮人二世として戦中の時代に日本で育った著者の自伝。 母は著者が生まれてまもなく亡くなっており、石炭置場や土方で働く寡黙な父と真面目な兄との男だけの長屋生活。 幼いうちは家庭や町内がほとんど全世界であって、それは貧しいながらも保護され、守られた世界であった。 ところが...
在日朝鮮人二世として戦中の時代に日本で育った著者の自伝。 母は著者が生まれてまもなく亡くなっており、石炭置場や土方で働く寡黙な父と真面目な兄との男だけの長屋生活。 幼いうちは家庭や町内がほとんど全世界であって、それは貧しいながらも保護され、守られた世界であった。 ところが小学校に上がり、だんだんと世界が広がってゆくなかで、母がいないこと、貧しさの辛さを痛感する経験を持ったり、”朝鮮人”という生い立ちが~その経緯や意味するところの正確な認はないままに~心に影を落とすこととなる。 成長の中でぶち当たる困難に、これらが色濃く投影される現実の中、少年の心に複雑な形ではびこるさびしさ、被差別感情は読むものを緊迫した感情に弾き込む。 時は日中戦争から太平洋戦争へと軍国日本が破滅に向かって突き進んでいた時代。子供の中にも”朝鮮人”であること、その一方で日本で生まれ育って生活している現実~こうした分裂した存在を生きるということは、子供ながらにも深刻なアイデンティティの乖離をもたらしたものと思う。 そういう中でも、不器用で厳しい父親と真面目で弟思いの兄との衝突を交えながらも、最後の処ではお互いを思いやる優しい心で結びついた家族。阪井先生のような子供に信頼の心を育てることのできる素晴らしい大人との出会いなどを通じて、ぎりぎりのところで死ぬことから踏みとどまってきた大変な生活史である。 戦争が終わったあと、一部の朝鮮人が敗戦国民日本人に対して手のひらを返したように威張り散らしていたようなことを耳にした、この無学で、著者の兄の上等小学校進学にも反対した頑固な父親が言った言葉。 「日本人は、朝鮮が困っているとき、助けてくれようとはしなかった。じゃが、いまは、日本が困難にみまわれているときじゃろ。朝鮮人は、この困っている日本人を踏みつけにして、うらみをかうようなことをしていいんじゃろうか。これまでの日本人と同じことをしては、なんにもなるまい。他人のうらみを買うことをしたら、あとできっとそれは我が身に返ってくることになるんじゃ。困っているときは、だれとでも助け合うのが、人のとる道じゃろ。この人の道を踏みはずしたら、朝鮮の解放もありゃせん。解放されたというからには、困っている人を助けてこそ、ほんとうの解放というもんになるのじゃないのか。いま困っている日本人を、困っているからといって踏みつけにするようなやつは、また朝鮮を滅ぼすようなことをするにちがいないんだ」 学問のあるなし、どんな職業についているか、金持ちか貧乏人か、どんな生い立ちかに関係なく、一人一人の人間にその人を気遣う心をもって接することができる”優しさ”。それが人間存在をぎりぎりのところで支えている人間の尊厳の根本である。
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戦時下の日本に生まれた在日朝鮮人の少年の話。貧しい生活。人種差別。時には、人の優しさに支えられ、強く生きていこうとする。
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著者は在日朝鮮人として多くの困難を乗り越えた経験から,人間として生きることの意味を伝えている。 自分を知ることは,他者を知ること。これは読んでふと頭に浮かんだ言葉だ。 希望を感じることのできる本。
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「道徳・倫理」 小学生のとき、先生から教わった、戦争の悲惨さや、人に対する優しさなど一度は教わったことがあるテーマを、筆者は難解な言葉や言い回しは極力避け、このテーマを自身の経験から導いてくれる。 小学生も読めるような内容だが、大人になってから読んでも十分重みのある内容だと思いま...
「道徳・倫理」 小学生のとき、先生から教わった、戦争の悲惨さや、人に対する優しさなど一度は教わったことがあるテーマを、筆者は難解な言葉や言い回しは極力避け、このテーマを自身の経験から導いてくれる。 小学生も読めるような内容だが、大人になってから読んでも十分重みのある内容だと思います。
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在日朝鮮人少年のおいたちをたどりながら、人間が生きることの意味を考える。 まとめに「人は、いつも自分を見つめるように他人を見つめ、他人を見つめるように自分を見つめながら、その心を豊かにして、その目を澄んだものにしておくことが大切です。」とある。ん~深い言葉。
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ある大学の講義のプレゼン課題として出会いました 先生に感謝 在日二世の私の父やその兄・姉たち世代の話と被るものが多々ありました 「あの頃はいろいろ大変だった」 いろいろの中身がかなり見えてしまった 三世の私には想像もつかないような内容ですが、読むことができてよ...
ある大学の講義のプレゼン課題として出会いました 先生に感謝 在日二世の私の父やその兄・姉たち世代の話と被るものが多々ありました 「あの頃はいろいろ大変だった」 いろいろの中身がかなり見えてしまった 三世の私には想像もつかないような内容ですが、読むことができてよかった もし書店で手に取る機会があればそのまま読んで頂きたい 或いはレビューなんぞを見て気になったら図書館でぜひ探して欲しいです特に日常に何も見出せず適当に生きていると思うあなた
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父と兄に見守られて育った幼い日々は、学校に通うようになって、がらりと変った。小さな肩に背負いきれないほどのつらい出来事が彼を襲う。さまざまな衝突をくり返し、死を考える彼をささえたのは、人間のやさしさだった。 戦時下の日本に生まれ、敗戦を迎えるまでの一在日朝鮮人少年のおいたちをた...
父と兄に見守られて育った幼い日々は、学校に通うようになって、がらりと変った。小さな肩に背負いきれないほどのつらい出来事が彼を襲う。さまざまな衝突をくり返し、死を考える彼をささえたのは、人間のやさしさだった。 戦時下の日本に生まれ、敗戦を迎えるまでの一在日朝鮮人少年のおいたちをたどりながら、人間が生きることの意味を考える。
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戦時下の日本で在日朝鮮人がどのような生活をしていたのか、どのような扱いを受けていたのか。その描写を読むごとに、胸が締め付けられる思いでした。しかし高史明が書きたかったのはそのような暮らしだけではありません。その暗くつらい生活の中にあっても、そこにありつづけた人のやさしさであったり...
戦時下の日本で在日朝鮮人がどのような生活をしていたのか、どのような扱いを受けていたのか。その描写を読むごとに、胸が締め付けられる思いでした。しかし高史明が書きたかったのはそのような暮らしだけではありません。その暗くつらい生活の中にあっても、そこにありつづけた人のやさしさであったり、また自らが生きているその輝きであったりを彼は書きたかったのです。差別を受け苦しさに絶えた彼自身の言葉によって生きることの意味が表現されるとき、人間のやさしさ、いのちの輝きを今一度考えたのでした。(学校保健フォーラム vol.9 No.84 2005年2月号)
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2回目の満点はエッセイ小説から!これは私の人生の書になるんじゃないかな… 戦争が始まった翌年生まれた在日朝鮮人の男性の少年時代の話。 戦中しか知らない少年は終戦直前には心の安らぎをついには\"死\"の中に求めるようなる。しかし、家族の存在や恩師との出会いから...
2回目の満点はエッセイ小説から!これは私の人生の書になるんじゃないかな… 戦争が始まった翌年生まれた在日朝鮮人の男性の少年時代の話。 戦中しか知らない少年は終戦直前には心の安らぎをついには\"死\"の中に求めるようなる。しかし、家族の存在や恩師との出会いから本当の安らぎはどうすれば手に入るのかを見つけることができる。生きる意味とは何なのか? 変な哲学書や新書なんかを読むくらいなら絶対これを読んでほしい。この本には人の優しい想いがたくさん詰まっています。ぜひ読んで!!!
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